FASHION

もう、コンバースさえあればいいのかもしれない。【後編】

創業から110年以上が経過した今なお、足元の揺るぎなき大定番。〈CONVERSE コンバース〉が生み出すプロダクトは、カジュアルファッションを文字通り“土台”として支えている。【前編】では稀代の名作「ALL STAR オールスター」を軸に語ったが、もうひとつ忘れてはいならない存在が。思わず“ニヤリ”とするディテールを備えたマスターピース。そこから話を再開しよう。

スマイルとヒゲに品格を宿す
バドミントン由来の大物。

勘のいい読者諸兄姉なら察しはつくだろうが、「JACK PURCELL ジャック・パーセル」について紐解いていく。誕生は1935年。オールスターのリリースから17年後に生まれた今作は、伝説のバドミントンプレーヤーの名前をそのままモデル名に使用した。自らも開発に携わった彼の目覚しい活躍もあり、ジャック・パーセルは瞬く間に名を広める。そして、高い信頼性ゆえにテニス界からもラブコールが。デビス・カップに臨むアメリカ代表チームのシューズに採用され、市場での人気をさらに高めていった。

「ALL STAR」と双璧をなす〈CONVERSE〉のもうひとつの大傑作「JACK PURCELL」。

ここでひとつトリビアを。今ではコンバースきっての巨星として知られるジャック・パーセルだが、当初はタイヤメーカーの〈B.F.グッドリッチ社〉が製造し、スポーツ用品メーカーの〈スポルティング社〉が発売していた。その後1950年代に入るとB.F.グッドリッチ社が全権を握り、1972年には同社のシューズ部門がコンバースと統合。こうして“コンバースのジャック・パーセル”が正式に誕生したのだ。

閑話休題。ジャック・パーセルといえば、やはり“スマイルマーク”を思い浮かべるだろう。トゥの溝に入れられた特徴的なライン。まるで笑った口のように見えるミニマルなディテールワークは、このシューズの洗練を端的に示すものだ。同時に、ヒールラベルにもアイコニックなデザインをあしらう。それが“ヒゲ”と呼ばれる2つの三角マーク。内側を高く、外側を低く設計した初期のインソールを記号化したもので、高いクッション性の証しでもあった。なお、アウトソールも見どころのひとつで、波状の溝が入るヘリンボーンソールやウェーブスリットソールが存在。現在は一般的に、フラットなスラブソールが使われているようだ。

「JACK PURCELL」の特徴的ディテール。左:つま先の“スマイルマーク”、右:ヒールラベルの“ヒゲ”。

フラットなスラブソールも「JACK PURCELL」ならではのディテールのひとつ。

シンプルながら圧倒的完成度を誇るジャック・パーセルは、スポーツシーンの枠を飛び越えて支持を拡大。ジェームス・ディーンやスティーブ・マックイーンといった当時の銀幕スターがこぞって愛用した。ファッション界への影響という点では、カート・コバーンの着用シーンが印象深い。その影響は計り知れず、あの〈UNDER COVER〉もサンプリングを行うなど後陣の模範となった。現在はコンバースの「タイムラインシリーズ」にも名を連ね、日々新たなファンを獲得する。(→「JACK PURCELL」に関連する記事はこちら)(→〈UNDER COVER アンダーカバー〉に関連する記事はこちら

「JACK PURCELL」をサンプリングした〈UNDER COVER〉の傑作スニーカー。

中毒患者を呼び込む
「進化するヴィンテージ」。

古き良き傑作を現代に蘇らせる「タイムライン」シリーズと同様に、ブランドの新たな側面を垣間見せるのが「CONVERSE ADDICT コンバース アディクト」だ。「中毒」を意味する名前が示すように履くものを虜にする快適性を備えたシリーズは、ブランド100周年のアニバーサリーイヤーである2008年に初披露された。

2008年にスタートした「CONVERSE ADDICT」。

コンセプトはずばり「進化するヴィンテージ」。ゆえに、単なるリプロダクトの枠には収まらない。随所に先端のマテリアルや技術を忍ばせ、傑作の面影はそのままに別次元の履き心地を提供するのだ。なかでも、アウトソールの出来は白眉。たとえば写真のモデルは1983年に初めて採用されたカモフラージュ柄を再現したチャック・テイラーだが、その底には世界に名高い〈VIBRAM ビブラム〉製のソールを装着。濡れた地面でも滑りにくく、耐摩耗性にも優れた1足へと生まれ変わった。

ヒールラベルの「三ツ星」やサイドの当て布など1960年代の「Chuck Taylor」を再現したデイテールと1983年登場のカモフラ柄キャンバスという夢の共演。

左:〈VIBRAM〉製のソール、右:「三ツ星」期の雰囲気を再現しつつも現代の技術を忍ばせ快適な履き心地を実現したインソール。

コンバース アディクトの物欲アラートは、誕生10周年を迎えた2018年の11月10日に一層力強く鳴り響いた。満を辞して蘇った伝説のレアモデル。「ONE STAR LOFFER ワンスターローファー」が、市場をある種の混乱に陥れるのだ。オリジナルはリユース市場で10万円近辺の値札がつけられるほどの希少種とあり、主な販売店ではリリース即日に完売、あるショップには1日で100件以上の問い合わせがあったとも言われる。当然、復刻版に当たる“アディクトバージョン”もすでにプレミア化している。

2018年11月に待望の復刻を遂げた伝説的レアモデル「ONE STAR LOFFER」。

「CONVERSE ADDICT」からの復刻とあり快適性も抜群。数量限定であったためすでにプレミアム化している。

また、レアモデルの復刻という観点では、「CHUCK TOGGLE HVS チャックトグル HVS」も押さえておきたい1足である。ワンスターローファーと同様にデッドストックで10万円オーバーも珍しくないモデルだが、こちらは復刻の経緯がユニークだ。事の発端は、WEBマガジン『HOUYHNHNMフイナム』の人気コンテンツ「古着サミット」。ヴィンテージフリークたちが自慢の逸品を語り合う企画にて議題に上がり、それが初めての復活の足がかりとなった。モデル名の一部に「HVS」(フイナム古着サミットの略)と表記され、ディテールにもこだわりの微修正が。アッパーにはワンスターローファーのような毛足の短いスウェード素材を採用。’70年代にチャック・テイラーの廉価版として発売されていた「COACH コーチ」のトゥバンパーとアウトソールを再現するなど、まさしく通好みの仕上がりだ。

著名なヴィンテージフリークの想いが実を結び復刻されたレアモデル「CHUCK TOGGLE HVS」。なお“HVS”とは、“HOUYHNHNM VINTAGE SUMMIT(フイナム古着サミット)”の略称。

「Chuck Taylor」の廉価版であった70年代「COACH」のトゥバンパーとアウトソールをあえて搭載した通好み仕様。特徴的な星型の意匠からこだわりの強さが窺える。

時代を先取った“変化球”も必見。

シンプルの王道をひた走るブランドのなかでも、変化球的なモデルに少し触れておこう。1985年登場の「ODESSA オデッサ」をご覧いただきたい。

1985年登場のランニングシューズの「ODESSA」。シューレースが中央より外側に配されている。

血管の圧迫を抑えるため、シューレースを甲部分の中央から外側にずらした左右非対称なビジュアル。どこかで見覚えはないだろうか。そう、〈NIKE ナイキ〉の「FOOTSCAPE フットスケープ」に似たアイデアだ。しかし、フットスケープが発売されたのは1995年。そこから遡ること10年前に、すでにコンバースは画期的なランニングシューズを作り上げていたのである。(→〈NIKE〉の「FOOTSCAPE」に関連する記事はこちら

1995年に登場した〈NIKE〉の「AIR FOOTSCAPE」。当時のハイテクスニーカーブームもあり大人気モデルとなった。

なお、オデッサもまた華麗なる復活を遂げている。2015年、生誕30年の節目の年に「CONS RENNOVATOR コンズ リノベーター」と呼ばれるラインからリボーン。人気ブランド〈N.HOOLYWOOD N.ハリウッド〉の尾花大輔が手掛けたそれはシックなベージュのカラーリングを纏い、街に映えるモダンな面持ちに。「オリジナルをもとにアレンジ・アップデートされた見事なコラボレーション」。そう謳う今ラインの真価を、遺憾なく発揮している。(→〈N.HOOLYWOOD〉に関連する記事はこちら

「ODESSA」を復刻した「CONS RENNOVATOR」は〈N.HOOLYWOOD〉のデザイナー尾花大輔がデイレクションするライン。「RENNOVATOR」とはINNOVATOR(革新者)とRENOVATION(再生)からの造語。

コラボレーションに見る愛の形。

前出の尾花大輔は、コンバース アディクトとの合作でも知られた存在である。両者のシェイクハンドによってこれまでに数々の名作が生み出されたが、こちらの「CHUCK TAYLOR NH OX チャック・テイラー NH OX」もファン垂涎の品だ。オリジナルのディテールを踏襲しながら、アッパーには上質なスウェードをオン。ミリタリーライクなカラーパレットが独特の色気を放出する。シュータンにはN.ハリウッドのタグを備え、特別感を演出した。

「CONVERSE ADDICT」×〈N.HOOLYWOOD〉の「CHUCK TAYLOR NH OX」。

シュータンにはお馴染みのブランドタグ。上質なスウェードとミリタリーカラーは、まさに絶妙。

それ以外でも、コンバースのコラボレーションモデルは多数確認できる。たとえば、日本を代表するバッグメーカー〈吉田カバン〉に属する人気ブランド〈PORTER ポーター〉との1足。

こちらは、オールスターの生誕100周年を祝うアニバーサリーモデルでもあった。イメージソースとなったのは、ポーターの定番である「SMOKY スモーキー」シリーズ。そこで使われるコーデュラダック生地をアッパーに採用し、ポーターらしいオレンジカラーをヒールラベルにあしらった。(→〈吉田カバン〉〈PORTER〉に関連する記事はこちら

〈CONVERSE〉×〈PORTER〉の「ALL STAR」生誕100年記念モデル。

〈PORTER〉定番の「SMOKY」シリーズのコーデュラダック生地を使用。バックスタイルでさりげなくコラボレーションを主張。

珍しいところでは、アメコミ界のダークヒーロー「BATMAN バットマン」とのモデルも登場。バットマンは幾度となく映画化され、その度に大きな話題を振りまいてきたが、なかでも1989年公開のティム・バートン監督、マイケル・キートン主演の作品は、それまでのバットマンのイメージとは一線を画し、その後のバットマン映画に大きな影響を与えた。同作の公開とともに発売された無数のバットマンロゴが散りばめられたコンバースとのコラボレーションシューズはどこから見てもインパクト抜群。2013年には復刻も果たし、キッズサイズも展開された。

2013年に復刻された映画「BATMAN」とのコラボレーションシューズ。キッズサイズも展開。

シュータンにも雰囲気抜群の「BATMAN」タグ。

さあ、こちらの趣深いヴィンテージを紹介して、コンバースの系譜にひと区切りをつけよう。

と見せかけて、実はこちらもコラボレーションモデル。2006年に発売された「UNITED ARROWS ユナイテッドアローズ」の別注品だ。前編で紹介した’70 年代のオールスター、通称「一ツ星」を完全再現。過去の傑作アーカイブを復刻させる動きは多く見られるものの、一ツ星のそれは今作のみ。ヘビーユースを経て堂々たるエイジングが現出した姿からは、オーナーの強烈な愛が感じられるだろう。

いずれにせよ、コラボレーションの豊富さは作り手の多大な愛情、リスペクトからくるもの。ここにも、老若男女を虜にするコンバースの凄みが凝縮されている。

前人未到のその先へ。

安心と革新。着用者の“好き”を加速させる仕掛けに富んだコンバースは、すでに前人未到の領域に辿り着いている。だからこそ、これからの歩みにも期待せずにはいられない。

そんなことを思いながら、今日もコンバースに足を通す。流行に流されない絶対定番とともに、どこまでも歩いて行こう。

【前編】はこちら

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