CULTURE

スウェットシャツとパーカーという愛おしき当たり前の「日常着」。

おそらく誰もが一度は袖を通したことがあるほど身近な存在。

かつ外出の時のオシャレとしても、またはトレーニングウェアとして、はたまた自宅でくつろぐ際のルームウェアとしてだって広いシチュエーションで違和感なく着まわせる。そんな汎用性の高いアイテムに心当たりはなかろうか。

この問いに対する圧倒的多数の同意を得られるであろう答え。 それが「スウェットシャツ」と「パーカー」だ。

歴史は巡り、流行は繰り返すという。 ことファッション業界におけるここ数年の80’s、90’sのリバイバルの波は、今しばらくは引かないともいわれている。

スウェットやパーカーはまさに80’s、90’sを代表するアイテムの代表格だ。

そこで今回の『knowbrand magazine』では、春にも大活躍のスウェットシャツ、パーカーにスポットを当ててみる。お馴染みのあのブランドはもちろん、ジャパンメイドの名作の数々の魅力を紐解くことで、私たちの生活に当たり前の「日常着」として存在してきたスウェットやパーカーが、一気に愛おしき存在として映るようになるかもしれない。

誤解されがちなスウェットという言葉。

誤解されがちなのだが、そもそも「スウェット」とは「生地」のことを指す言葉だ。

ここ日本において我々が日頃スウェットと呼んでいるものは、正確にいえば「SWEATSHIRTS スウェットシャツ」のことである。またスウェットシャツにフードが付いたいわゆる「パーカー」は、英語圏ではフード付きを意味する「HOODED SWEATSHIRT フーデッドスウェットシャツ」であり、より一般的には「HOODIE フーディ」と呼ばれる。

スウェットは表裏二重構造の生地で、表面は「平編み」、裏面はタオルのような「パイル編み(裏毛)」、またはパイル編みを起毛させた「裏起毛」となっており、適度に厚みがあるのが特徴だ。素材は吸汗性の高いコットン(綿)が基本となるが、そこに速乾性と耐久性を増すためポリエステルを混紡したものも一般的だ。 裏面がパイル地であれば汗を吸収しやすく春夏向け、裏起毛であれば保温性が高く秋冬向けともいえ、生地の厚みの差も考慮すればオールシーズンに対応しうる生地だといえる。

このスウェット生地を使ったプルオーバータイプの長袖で、首回りや袖口、裾に伸縮性の高いリブ編みの素材を有したものがスウェットシャツであり、日本では広くスウェットと略されて呼ばれる衣料なのだ。

スウェットシャツの絶対的「王者」。

一説によると現代に通ずるデザインの原型は、1920年代には誕生したといわれているスウェットシャツ。 およそ100年にも及ぶ歴史の中で、スウェットシャツを製造してきたメーカーは数知れず。だがパイオニアとして業界を牽引し、その歴史を紡ぎ続けてきたといえるブランドといえば〈Champion チャンピオン〉をおいて他にない。

創業は1919年。設立当初の主力商品は、縮絨され目の詰まったウール製のニットウェアで、その品質の良さからアメリカ陸軍士官学校へトレーニングウェアとして採用され評判となった。そして1924年のミシガン大学との提携を皮切りに、チャンピオン製品は多くの大学へも浸透していった。その後、1930年代になると、ウールに代わって吸汗性が高く、軽量で快適な着心地のコットンを用いたスウェットシャツを投入。時を同じくして同社が開発した生地へのプリント技術の発達も手伝い、ロゴがプリントされたコットン製スウェットシャツは瞬く間に支持を拡大することとなる。

だがここで大きな問題が浮上する。 洗濯をすると生地が縮み、着丈が短くなることで、フィット感が大幅に損なわれるとクレームになったのだ。

死活問題ともいえるこの難題に対して、チャンピオンが導き出した答え。

それが「REVERSE WEAVE リバースウィーブ」だ。

リバースウィーブとは、いうなれば「防縮」を可能にした製法のことである。この製法が斬新かつ画期的だったのは、生地そのものを改良したのではなく、生地の使い方を工夫した点だ。

当時のスウェットシャツが縮む主な原因はコットン生地にあった。コットン製のスウェット生地は縦編みされており、それを「縦向き」に配しボディを仕立てるのが一般的だった。だが縦編みされたコットンは、洗うと縦方向に縮む性質があり、結果着丈が短くなってしまうという不具合が生じる。そこでチャンピオンは、縦編みの生地を思い切って「横向き」に配置し、スウェットシャツを仕立ててみた。すると縮みを大幅に軽減することに成功したのだ。

「編み=WEAVE」の縦横の向きを「逆=REVERSE」にするという意味から「REVERSE WEAVE リバースウィーブ」と名付けられたこの製法は、1938年に特許を取得。その後、横方向への縮み防止と運動性能向上のためボディ両脇下に「サイドアクションリブ」を入れるなど改良を重ね、14年後の1952年には二度目の特許を取得した。

こうして、今とほぼ変わらないスウェットシャツの不朽の名作が誕生したのだ。

以降、そのブランド名の示す通りスウェット界の絶対的「王者=Champion」として君臨しているチャンピオン。その歴史はまさにスウェットの歴史といって過言ではない。

〈Champion〉の70年代製「リバースウィーブ」製法によるスウェットシャツ
なおブラックボディのUSA製のスウェトシャツやパーカーは球数も少なく人気が高い。

ヴィンテージ市場ではプリントの段数、プリントの仕様の違いで値段が大きく変わる これは三段ラバープリント

リバースウィーブ製スウェットシャツのアイコンともなっているボディ両脇下の「サイドアクションリブ」

特別仕様のパーカー。

スウェットシャツにフードが付いた通称「パーカー」。

トレーニングウェアであるスウェットに、首元を冷やさないためのフードとハンドウォーマーとしてのポケットを前面に備え、より防寒機能を加えたものだ。

諸説あるもののパーカーという名称の由来は、アラスカの先住民族イヌイットが動物の皮革でつくったフード付きの防寒着「parka(パルカ)」だというのが一般的だ。よってパーカーは、本来フード付きのジャケットやアウターのことであり、フード付きのスウェットシャツという意味合いは日本独自のものだ。

パーカーが生まれたといわれる1940年頃は、通常のスウェットの襟廻りにフードを縫い付けた「後付け」パーカーが一般的であった。その後、フードはボディと一体化し、現在の形となってゆく。

80年代製の「USMA」用のパーカー フードと袖口のリブにネイビーを採用した2トーン仕様は非常にレア

写真のパーカーは「United States Military Academy(アメリカ陸軍士官学校)」=「USMA」のトレーニングウェアとしてつくられた80年代製のものだ。

USMA用のものにだけ搭載される首元の通称「前Vガゼット」

実はUSMAに納品されているものは特別仕様であることで知られている。注目は首元の通称「前Vガゼット」だ。これは着脱時の襟廻りの伸縮を補強するためのもといわれ、1960年代頃まで見られるヴィンテージ特有のディテールだ。当然80年代のリバースウィーブ製法のスウェットやパーカーには見られないはずだが、USMA用にだけには、なぜかガゼットが採用されているのだ。このあたりのディテールの謎も100年続くブランドならではの魅力のひとつだろう。

一味違った魅力のリバースウィーブ。

スナップボタンによって前を開閉できる通称「スナップカーディガン」。

まさにカーディガンの如く、さっと羽織ることができ、スナップボタンのとめ具合で雰囲気も変えられる。ボディサイドにポケットも装備しており、抜群の機能性の高さと着回しの良さを誇る。

通常のスウェットシャツ、パーカーとくらべ、なぜか袖と裾のリブの長さが短いといったディテールの違いも面白く、リバースウィーブの中でも一味違った魅力から人気の高いアイテムだ。近年では、特に80’sの良好な程度のユーズドも少なくなってきており、今後は年々市場価値は上がるに違いないだろう。

80年代製の「スナップスウェットカーディガン」 袖口と裾のリブが通常のスウェットシャツなどより短い

通称「トリコタグ」がつく スナップボタンに刻印の入っていないものは80年代初期のものとされ希少性も高め

製法にこだわりし傑作たち。

チャンピオンのリバースウィーブ製法によって生み出されるスウェットシャツやパーカーが不朽の名作であることは、揺らぐことのない事実だ。とはいえ世界は広い。製法に強いこだわりを持つ傑作と呼ぶに値するスウェットやパーカーは他にも存在する。 かつて「ものづくり大国」といわれたこだわり者の多き日本においては、ことさらである。

「吊り編み機」をご存じだろうか。 1960年代までは一般的な編み機として、スウェット生地を生産していた旧式の機械のことだ。しかし1時間にわずか1mほどしか編むことができず、稼働にも専属の職人が必要とあって、その生産効率は決して良いものではなかった。そして高度成長期による大量生産、大量消費の時代の到来とともに、コンピューター制御により数十倍の生産能力を誇る高速編み機の登場後、急速に衰退。現在、稼働している吊り編み機があるのは、世界でも日本の和歌山県のみとあって、極めて貴重な存在となっている。

1999年より、この吊り編み機による昔ながらの製法でスウェトシャツをつくり続けるブランドが〈LOOPWHEELER ループウィラー〉だ。

〈LOOPWHEELER〉のスウェットシャツ

左袖口のカタカナ表記のタグは日本のブランドである誇りと品質の良さの目印

吊り編み機によるスウェット生地は、テンションを加えずゆっくりと編まれているため、その柔らかさと風合いは格別だ。さらに洗濯を繰り返しても、柔らかな着心地は保たれ、かつ生地としてのタフさも合わせもつという。そんな吊り編み機が織り成すコットン100%の生地で仕立てられたループウィラーのスウェットシャツは、まさに傑作。「吊り編み=LOOPWHEEL」に由来するストレートなまでのブランド名から、古き良き伝統製法へのオマージュと品質への自信を感じずにはいられない。

究極のカットソーづくりを目指し2007年に誕生した〈FilMelange フィルメランジェ〉のスウェットシャツへのこだわりも目を見張るものがある。フランス語の「混ざった(Melange)」「糸(Fil)」に由来するブランド名は、昔からスウェット生地に使われてきな濃淡の色が織り交ざった「杢」色を意味する。

〈FilMelange〉のスウェット「BYRD」

生地表面にリサイクルコットン、裏面はオーガニックコットンで編まれている

素材選びから、生地、縫製に至るまで自社生産にこだわる姿勢から生まれるスウェットの着心地は極めて柔軟で、一度袖を通せばその品質の良さを実感できる。またリサイクルコットンも積極的に取り入れており、過去の伝統と現代の技術が見事に融合したフィルメランジェのスウェットシャツもまたマスターピースとしておすすめだ。

ブランドを知らずとも愛用者が多いことから、写真のジップアップパーカーになんとなく見覚えがあるという方もきっといるだろう。

〈N.HOOLYWOOD〉の「47 piecies」

〈N.HOOLYWOOD エヌハリウッド〉を代表するジップパーカー「47 piecies」だ。

シンプルで無駄がないデザインで一見無個性に思えるも、その圧倒的な完成度ゆえアイテム自体がアイコニック。そいう意味では、キングオブスウェットのチャンピオンに引けをとらない存在。

独特の霜降り感がたまらない杢グレーのコットンスウェット生地は、柔らかく甘い編み上がり。身幅、着丈、細身のアームホール、フードの大きさなどすべてが絶妙なさじ加減でバランスされ、これ以上でもこれ以下でもない。袖のリブ付けや背面センターの縫い代、着心地を考えての平らに縫われるフラットシームの採用など細部まで隙はない。随所にヴィンテージの要素や魅力が溢れており、古着のバイヤー出身であるデザイナーの尾花大輔氏ならではのこだわりが詰まっている。間違いなく日本で生まれた現代のジップアップパーカーの完成形のひとつだ。

フードの大きさも程良いボリューム 背タグにはお馴染みのタグ

ひと目でそれとわかる背面センターの縫い代

なお2018年には、先述のループウィラーとN.ハリウッドがコラボレーションしたスウェットシャツも話題となったばかりだ。

もちろんスウェトシャツ、パーカーの生まれ故郷アメリカにも、傑作を生みだすブランドは存在ある。そのひとつが1948年に生地の生産工場として発足以来、多くのブランドに生地やスウェットシャツを提供してきたカットソー専門の老舗ファクトリー〈CAMBER キャンバー〉だ。

特に12オンスという非常に肉厚な生地に、サーマルライニングが施されたスウェット地のジップアップパーカーは、もはやアウターといっても良いほどの存在感だ。

USA製の〈CAMBER〉のジップアップパーカー

サーマルライニングが施された12オンスの肉厚なスウェット生地

軽い着心地や洗練されたシルエットといったファッションっぽい文脈とは、趣を異にし、むしろ道具的とも思えるヘビーデューティーな作りは、一貫して「Made in U.S.A」こだわり続けるブランドだからこそ成せるものだろう。

きっといくつになっても着続ける。それこそ女性も男性も、老いも若きも関係なく。

スウェットシャツやパーカーというアイテムは、ファションという以前に、性別も世代も国境も超え多くの人々の傍に当たり前の「日常着」として存在している。当たり前の日常着は、当然ヘビーローテーションされ、着込まれ、洗い込まれる。そして共に過ごした月日の中で、徐々に自分のものとなりゆく色合いや肌触り。そのぬくもりにも似た着心地ゆえに、いつの間にか手放せなくなってしまう。例えばうっかり飛んでとれなくなったケチャップの染みだって、もはやチャーミングにすら思えるほどに。

当たり前のようにあるスウェットシャツやパーカーは、そんな愛おしき日常着になのだ。

色褪せ、擦り切れ、たくましい表情となったヴィンテージに、時として猛烈な魅力を感じ取るのも同じ心理かもしれない。それは、数々のダメージや汚れのひとつにひとつに物語を感じるからだろう。

永きを共にできる当たり前の存在を見つけることは実は容易ではない。だからこそ一度見つけたならば、それが一枚のスウェットシャツだって有り難き存在だ。

変わらないものしか愛せない。そんなアイテムがひとつくらいあったって良いのだ。この春、そんな1枚に巡り合うかもしれない。

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