FASHION

あらゆる境界線を無力化する“猛毒”、アンダーカバー【後編】

“裏原”で台頭し、パリで覚醒。その後も世界を舞台に際立ったコレクションを発表し続ける〈UNDERCOVER アンダーカバー〉。デザイナー高橋盾が持つ華麗かつ毒気のあるクリエイティビティは、実際に買い手となる消費者だけでなく、彼と同様に作り手である多くのブランドにも伝播してファッション業界全体を揺るがしてきた。

アンダーカバー単体としてではなく、第三者と手を組むことによってますます広がりを見せる“ジョニオ”の創作意欲は、今後の展開にも多くの希望を抱かせる。今回は、そんなコラボレーションアイテムを中心に魅力を紐解いてゆこう。

マスターピースの誕生はコラボレーションの布石か。

〈UNDERCOVER〉のマスターピースのひとつジャックパーセルタイプのスニーカー

と、その前に。〈UNDERCOVER アンダーカバー〉の服以外の作品に触れておきたい。こちらのスニーカーは、デザイナー自身のみならず多くの著名ファッション業界人が愛用したことでも知られる90年代の傑作だ。オーセンティックないわゆる「JACK PURCELL ジャックパーセル」をベースに、繊細な味付けが施されている。

アッパーのレザーは絶妙な角度で切り替えがなされ、丸みを帯びた独特なフォルムを形成。なにより、つま先のくぼみに入れられたブランドネームがシンプルながら雄弁に個性を物語る。ちなみに、当時このモデルの製作を担当したのは、靴職人としての出自を持ち、自身のブランド〈GENERAL RESEARCH ジェネラルリサーチ〉で一世を風靡し、現在は〈……RESEARCH ……リサーチ〉を手がける小林節正だったそうだ。

ひと目でそれとわかるつま先のブランドロゴやアッパーの切り替え

このスニーカーの爆発的ヒットは、服だけではないファッションブランドとしての成功を暗示させるピースとなった。そして、ブランド自体の広がり、さらには他社とのコラボレーションの実現に向けても、重要な布石だったのかもれない。そう思わせるかのごとく、コラボレーションの皮切りもシューズに深く関係する。

キャンバスタイプも存在し、その人気は根強い

アスレジャーの先駆け的存在に。

2010年、高橋は〈NIKE ナイキ〉と手を組んで〈GYAKUSOU ギャクソウ〉をスタート。ランナーグループ「Team GIRAチームギラ」を率いるほどランニングに熱中した高橋の想いが宿ったプロジェクトで、パフォーマンスランニングコレクションとされるラインナップには機能的なアイテムが数多く顔を揃えた。と同時に、モダンなカラーリングを纏うことでアーバンテイストも実現。シューズのみならず服(通称「GIZ柄」と呼ばれるプリントが入ったものなど)も展開し、いずれもランナー向けの本格仕様ながら街での見栄えも秀逸な、“アスレジャー”の先駆けともいうべき存在だ。

〈GYAKUSOU〉の名は、 通常時計回りに走る東京の代々木公園をチームギラは「反時計回り」=「逆走」していたことに由来するという。

鮮やかなカラーが流線形のデザインに映える「ZOOM PEGASUS 35 TURBO GYAKUSOU」では、超軽量&超高反発の「ZOOM Xフォーム」を搭載。フィット感を高めるフライメッシュの採用や、シューレースと一体化したケーブルなどディテールも技ありで、ランナーのみならず洒落者の足元を支える。

〈GYAKUSOU〉の「ZOOM PEGASUS 35 TURBO GYAKUSOU」

ギャクソウとは異なるラインのナイキコラボも実現している。「DAYBREAK デイブレイク」はその代表的な1足。80年代初頭の名作ランニングシューズを再解釈し、近未来的なビジュアルに仕上げている。長いヒールクリップ、異素材がミックスされたアッパーは、アンダーカバーのキーコンセプトである「カオスバランス」に敬意を評したものだという。(→関連する記事はこちら

〈NIKE〉×〈UNDERCOVER〉の「DAYBREAK」

コラボレーションならではのダイナミックなヒールデザイン

なお、今年に入ると前述のギャクソウはさらなる発展を遂げる。「ナイキ.アンダーカバーSU19」と呼ばれるプロジェクトへと昇華し、再び話題をさらった。

日本を、世界を、狂乱の渦に巻き込む。

話題をさらうという面では、2012年3月にローンチされた「UU」は凄まじい反響を呼んだ。コラボレーションの相手は、あの〈UNIQLO ユニクロ〉。ベーシックブランドと手を組んで作り出したコレクションは「家族」をテーマとし、キッズはもちろんベビーラインまで展開された。

〈UNIQLO〉と〈UNDERCOVER〉のコラボレーション〈UU〉

モッズパーカを筆頭に、リーズナブルながらデザイン性に優れたモノ作りは多くの需要を生み、ファンの拡充にもつながった。とあるインタビューで高橋が語っているように、ベーシックなものにひと捻り加えたアイテムを低価格で発表することはある種の挑戦であり、このコラボレーションはそれが成就した好例と言えそうだ。

〈UNDERCOVER〉のテイストが見事に表現された〈UU〉のモッズパーカー

世界規模で見るならば、説明不要のキング・オブ・ストリート〈Supreme シュプリーム〉とのコラボレーションが記念碑的な存在だろうか。2015年3月28日の発売日前日早朝から“並び”が絶えず、一部店舗前には救急車すら出動したとされるほどの熱狂ぶりは、もはや社会現象といっても過言ではないほどだった。(→関連する記事はこちら

当然ながら今なお高い人気を誇っており、「Satin Hooded Flannel Shirt」も入手困難なレアアイテム。フランネルシャツに光沢感のあるサテン地のフードが備えられ、カットオフされた裾はグランジテイストを醸す。さらに、背面にはアンダーカバーのアイコンのひとつである“目隠しベアー”が鎮座するが、その目元にはシュプリームの代表的な“ボックスロゴ”が。コラボレーションの矜持があふれる、ファンならずとも涙ものの1枚である。(→関連する記事はこちら

〈Supreme〉×〈UNDERCOVER〉の「Satin Hooded Flannel Shirt」

ファンにはたまらない目隠しベア―とボックスロゴの共演

幅広いキャッチアップ、そして原点回帰。

ワールドワイドに名を馳せるメガブランドだけでなく、国内の気鋭をキャッチアップしてタッグを形成。そこにもアンダーカバーの懐の深さを感じさせる。こちらは、大阪生まれのグラフィックアーティストVERDYが立ち上げた〈Girl Don’t Cry ガールズドントクライ〉とのコラボレーションだ。

今年9月にオンラインストアが開かれる以前はポップアップなど限られた場所でしか入手できなかったにも関わらず、ストリートで多くの支持を集める同ブランド。そのロゴを大胆にあしらったパーカは、シンプルで使い勝手抜群。着用者の性別を問わず、多くのシーンで活躍が期待できそうだ。

〈Girl Don’t Cry〉×〈UNDERCOVER〉のパーカ

袖口にさりげないイラストが施されている

一方で、ある意味で“原点回帰”とも捉えられるシェイクハンズも行ってきた。それが藤原ヒロシとの協業である。高橋と藤原はアンダーカバー創立以前からの旧知の仲であり、ショップ「NOWHERE」をオープンする際にも手を取り合っている。そんな名タッグの完全復活を宣言したのが、藤原が手掛ける〈FRAGMENT DESIGN フラグメントデザイン〉とのコラボレーションだ。

〈The Shepherd UNDERCOVER〉×〈fragment design〉×〈ALPHA〉のMA1

こちらは、アンダーカバーの別ラインとして16年に立ち上がった〈The Shepherd UNDERCOVERザ・シェパードアンダーカバー〉とフラグメントデザインのアイテム。裏地にキュプラをあしらった「MA-1」ベースのリバーシブルジャケットだ。ホワイトレザーで切り替えられた左袖には両ブランドのロゴが控えめに並ぶ。

左袖だけをレザーで切り替えたアシンメトリーデザイン

ちなみに高橋と藤原は94年から、「Anarchy Forever Forever Anarchy(アナーキフォーエバーフォーエバーアナーキ)」を意味する〈AFFA エーエフエフエー〉というユニット活動を不定期で行なっており、MA-1といえば往年の彼らが作ったマスターピースとも言える作品。それを、高橋の「今の自分が着たい服」という思いが込められたラインからコラボアイテムとして発表したことは、なんとも粋な計らいではないか。

アニバーサリーイヤーを眼前に控えて。

ストリートとモードをボーダレスに飛び回るアンダーカバーは、あらゆる垣根を無力化する。進化をやめないコレクションや多彩なコラボレーションワークを見れば、それは明らかであろう。そして2020年、アンダーカバーは生誕30周年を迎えることになる。

眼前に迫る而立の時を前に、今なにを思うか。業界の異端児が巡らす企みに、大いに期待せずにはいられない。

前編はこちら

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