FASHION

もう、コンバースさえあればいいのかもしれない。【前編】

究極のスタンダード。〈CONVERSE コンバース〉の魅力を一言で表すなら、きっとそこに落ち着く。街中を歩けば、それこそ老若男女を問わず愛用者に出くわすだろう。創業110年を超える老舗の、シンプルで親しみ深いプロダクトは、カジュアルシーンにおいて今なお脅威の“足元占有率”を誇る。よくよく考えれば、これは相当な事件なのだ。

ではなぜ、これほどまでに支持を広げたのか。なにがコンバースをコンバースたらしめるのか。その鍵はやはり、ブランドの歴史であり、そのなかで生まれた傑作であり、今も派生し続ける多くのバリエーションにありそうだ。

ではあらためて、キング・オブ・スニーカーの凄みを紐解いていこう。コンバースさえあれば、ほかはいらない。ついそんな気になってしまう予感が早くも漂うのだが…。

伝説の一歩目はラバーシューズから。

まずはオリジンから探ってみよう。〈CONVERSE コンバース〉の創業は1908年、創設者はマーキス・M・コンバース。彼が米国マサチューセッツ州モールデンにて立ち上げた「コンバース・ラバー・シュー・カンパニー」が、ブランドの源流である。会社名からもわかるように、当初はゴム製のラバーシューズを専門的に製造していた。降雪量が多く、深い森や湿地帯の続くマサチューセッツ州では、防水性に秀でたラバーシューズの需要が大きいと判断したからだ。

その目論見は正しく、会社は急成長を遂げる。創業から2年後の1910年には、350人もの従業員を抱える有力企業となっていた。とはいえ売上は冬場に集中し、通年での安定性に欠けたのも事実。そんな状況を打破するためタイヤやテニスシューズの生産に着手するなか、ひとつの“金脈”を掘り当てる。それこそが、当時YMCA(※1)で教鞭をとっていたジェームズ・ネイスミス博士により“冬のスポーツ”として考案されたバスケットボールだ。

新しいスポーツのための新しい靴。そのアイデアは、のちに伝説へとつながっていく。試行錯誤の末、1917年に誕生した歴史的なキャンバススニーカー。足首を保護するためのハイカットデザインを携えたその1足こそ、今やコンバースのアイコンともなった「ALL STAR オールスター」にほかならない。

(※1)YMCA(Young Men’s Christian Association)。1844年、青少年の成長を目的にロンドンで誕生した非営利団体。職業教育、語学教育、野外教育、国際交流活動などその活動は幅広く、現在120の国と地域で、6500万人以上が活動している。

色褪せないチャック・テイラーの存在感。

前述の通り1917年に端を発するオールスターの軌跡は、まさに奇跡である。何を隠そう、現在も愛され続ける特徴的な機能性とフォルムは、誕生当時からほとんど変わっていないのだ。そんな高い完成度の根幹をなすもののひとつに、バルカナイズド製法が挙げられる。アッパーとアウトソールをラバーテープで巻き、高温で加熱。そうして生まれた高い強度とクラシックな面構えは、今見ても圧巻である。

誰もが一度は目にしたことのある「ALL STAR」。誕生以来、特徴的な機能性とフォルムはほぼ変わっていない。

昔ながらの製法を踏襲する一方で、多少のマイナーチェンジが施されるのも名作の常。オールスターも御多分に洩れず、年代ごとにディテールが異なる。それだけに、現行品にはない“名残”を感じるヴィンテージモデルは特有の価値を持つ。なかでも人気が高いのが、通称「Chuck Taylor チャック・テイラー」と呼ばれるハイカットスニーカーだ。

名前の由来は、往年の名バスケットボールプレーヤーであるチャールズ・H・テーラー。引退後はコンバースに入社するほどオールスターに惚れ込んだ彼のシグニチャーモデルが、いわゆるチャック・テイラーである。ただし、それを正確に定義するのは難しい。オールスターのくるぶしについたアンクルパッチには今も「Chuck Taylor」と記載されているが、それらはヴィンテージ愛好家からすれば“真のチャック・テイラー”ではないとされる。

一般的に“真偽”を見極めるポイントとされているのが、アンクルパッチではなくヒールラベル。そこに「Chuck Taylor」の表記がある1946年〜1970年代製のものだけが、紛うことなき“本物”と呼べるのだそうだ。ヒールラベルに大小3つの星が並ぶ「三ツ星」は特に珍しく、ファン垂涎のディテールとなっている。

1960年代中期から1970年代初期のヒールラベルには、大小3つの星があることから通称「三ツ星」と呼ばれる。好事家の間では、アンクルパッチとヒールラベルにその名が記載されているものだけが真の「Chuck Taylor」。

そのほか、優れたクッション性を示唆するインソールの表記や、アッパーの補強のためのステッチワークなどもヴィンテージならではのディテールポイント。これらを眺め、当時の光景を想像するだけでも楽しいはずだ。

「三ツ星」期のモデルのインソールには、「CONFORT ARCH」、「CUSHION HEEL」と表記され機能をアピール。

補強のために当てられた内側の布を止める両サイドのステッチも、ヴィンテージならではのディテール。

なお、ハイカットではなくローカットのオールスターも存在する。それが1957年に登場した「ALL STAR OX オールスター・オックスフォード」。オックスフォード大学の学生が履いていたとされる履き口の浅い紐靴から名付けられた同作はローカットならではの汎用性の高さが特徴で、バスケットボールを由来としながら街履きとして人気を集めた。こちらもいくつかのバリエーションが確認されており、1970年代のモデルはヒールに「一ツ星」と呼ばれるディテールを搭載。同年代のモデルまでが、“チャック・テイラー”ファミリーに分類されるようだ。

1957年からハイカットに加え、ローカットモデルも登場した。左「ALL STAR HI」、右:「ALL STAR OX」。

「一ツ星」と称される1970年代のモデルのヒールラベル。インソールは、シンプルなデザインとなった通称「囲みロゴ」。

希少性の高いレザー製オールスター。

オールスターといえばキャンバス素材。ごもっともだ。ただし、1969年までは。以降は、より耐久性に優れた素材が採用され始めるのだ。そうして生まれたのが、スターと2本のバーをサイドにあしらった「STAR & BARS スター&バーズ」。ただし、バルカナイズド製法に欠かせない高熱にレザーが耐えられなかったため、当時はソールに接着剤を塗った“応急処置”が取られていた。

伝統の製法に立ち返ることができたのは、1971年のこと。同年には表革ではないスエード製のモデルもラインナップに加わっている。いずれにせよ、“オリジナル”とされるスター&バーズが生産されたのは1973年までの5年間のみ。日本でも「JACK STAR ジャックスター」の名で親しまれる同作は、実は希少なモデルでもあるのだ。

ジャパンメイドでリプロダクトされた「STAR & BARS」。日本では「JACK STAR」の通称で知られ、オリジナルは大変貴重とされる。

希少性で見れば、幻とまで称される「ONE STAR ワンスター」に触れないわけにはいかない。スター&バーズの後継機として世に出て以来、わずか2年間で製造を終えている。アッパーのスターマーク、クッション製に優れたソール、耐久性の高いライニング。花も実もある傑作ながら、素材となるスエードの供給が十分でなかったことなどが早世の要因だったようだ。(無論、ジャックスターと同様に後年に復活を遂げて人気を博すのだが…)。

アーカイブモデルを復刻する「TIMELIME」シリーズで蘇った「ONE STAR J VTG」。こちらもオリジナルは希少。

スター&バーズに、ジャックスター、ワンスター。ここまでをオールスターのレザー版として紹介してきた。が、「名前が違うじゃないか!」とのツッコミもあることだろう。早合点するなかれ。実はこれらはすべて通称で、「SMOOTH LETHER ALL STAR スムースレザーオールスター」もしくは「SUEDE LETHER ALL STAR スエードレザーオールスター」が正式名称として採用されている。あくまで、レザー製のオールスターで相違ないのだ。

当時のカタログに記載された正式名称は、左:「SUEDE LETHER ALL STAR」、右:「SMOOTH LETHER ALL STAR」。

スポーツシューズとしての発展。

バスケットボールシューズのレザー化は、1970年代に入ると一層加速していく。競技中に負荷のかかる足首の保護、シューズ本体の耐久性アップのため、各ブランドがレザー製のバッシュ製造に本腰を入れていったのだ。その流れを汲み、コンバースからも新しいシューズが。「PRO LETHER プロレザー」が誕生したのは、アメリカの2つのプロバスケットボールリーグABAとNBAが統合した1976年のことだった。(※2)

(※2)ABA(American Basketball Association)は、1967に発足したアメリカのプロバスケットボールリーグ。1976年、財政難から所属チームがライバル的存在であった1946年設立のもうひとつのリーグNBA(National Basketball Association)に加入し、ABAは解散となった。

生誕40年を記念し、2016年に復刻を遂げた「PRO-LEATHER 76 HI」。

このモデルは、伝説的名プレーヤーの愛機としても知られる。豪快なダンクシュートなどを代名詞に、バスケットボールの歴史を変えたとされる男。かのマイケル・ジョーダンも憧れたといわれる”Dr.J”ことジュリアス・アービングその人だ。まるで彼の華々しいプレーと同調するように、プロレザーは一躍バスケットボールシューズ界の寵児となったのだ。

1986年には、同じくレザーを使ってさらに機能面へとフォーカスしたモデル「WEAPON ウエポン」が発表された。くるぶしまでしっかりサポートするY字型のカッティングやソールの優れたグリップ力は、プレーヤーにとってかけがえのない武器に。同時に、デザイン製の高さからストリートでも人気を博している。なお、こちらも往年の名手に愛されたモデルで、ラリー・バードやマジック・ジョンソンらの足元を支えた。

2016年、誕生30周年を迎え、当時のディテールを忠実に再現された「WEAPON 86 HI」。

当時すでにスター選手だったラリー・バードとマジック・ジョンソンを起用した広告戦略が話題となり、「WEAPON」は大ヒットした。

時代が進み1980年代の後半に入ると、バスケットボールシューズにもハイテク化の波が押し寄せる。1988年発表の「CONS ERX-400 Hi コンズ ERX-400 ハイ」は、その権化ともいえよう。高い反発性能を実現する技術「エナジーウェーブ」を搭載したボリューミーなデザインは、ロケットを模した広告ビジュアルでも話題に。まさしく近未来的なルックスで異彩を放った。

オリジナル「CONS ERX 400 HI」のアッパーデザインをベースにソールをアップデートした「CONS ERX-400 EW Hi」。

もうそろそろ【前編】もブザービーターを迎えるが、最後にちょっとした変化球を。コンバースが手掛けたテニスシューズをご紹介しよう。この記事の序盤で触れたように、元来レザーシューズに軸足を置いたコンバースは、通年での安定した経営を図るため新たな可能性を探ってきた。そんな努力がテニスの分野でも身を結んでいるのだ。1940年に生まれた「ALL STAR SKID GRIP オールスタースキッドグリップ」、ヒールに特徴的なスターの入った1971年製の「ALL STAR TENNIS SHOES オールスターテニスシューズ」がその代表格。両者とも、古き良きアーカイブを今に蘇らせるシリーズ「TimeLineタイムライン」に堂々名を連ねている。

アーカイブを蘇らせる「TimeLine」シリーズより、1972年発売の「LEATHER TENNIS ALL STAR」を復刻した「ONE STAR J VTG HS」。

踵に大きく入ったスターマークから「ヒールスター」の愛称もある。

“スター”はまだまだ存在する。

希代のマスターピース「ALL STAR オールスター」を軸にした【前編】だけでも、まさに星の数ほどの逸品が名を連ねた。しかし、そこは110余年の歴史をもつコンバース。名家のストーリーにはまだ十分の余力が残っている。

オールスターと双璧をなす、もうひとつの大傑作。そして、新たな歴史を紡ぐコラボレーション。それらの魅力は、また【後編】で。

【後編】へつづく

 

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