FASHION

〈ショット〉ライダースジャケットが体現する“男の憧れ”

世の中には“男の憧れ”と称されるものが数多く存在する。車、バイク、腕時計、革靴、スーツ…etc. 。そのどれもが、幼少期からテレビドラマ、映画、雑誌など様々な場所で目にし、脳内いや、 DNA にまで刷り込まれてきた“男はかくあるべし”という普遍的感覚を体現するアイテムたち。

我々はそんなアイテムたちが持つプロダクトとしての魅力と、そこに紐付いた“語れるウンチク”に心躍るのだが、残念ながら大半の女性は理解出来ないと言う。ならばせめて感覚を共有できる同志諸君とともに、その魅力を改めて学ぶというのはどうだろうか。

今回はその“男の憧れ”の中でも、ある種、別格の存在であるライダースジャケット。それもアメリカが生んだ老舗〈Schott ショット〉とその傑作モデルたちに迫る。

100年以上の歴史を誇るレザーカンパニー。
“完璧”の名を冠するダブル。

1913年、アメリカ・ニューヨークにて、アーヴィンとジャックのショット兄弟により設立された〈Schott ショット〉。その歴史の出発点が、レインコートの製造だったというのは意外な事実。1928年に、世界で初めてフロントジッパーを採用したレザー素材のライダースジャケット「Perfecto パーフェクト」シリーズを発表し、人気レザーブランドとしての地位を獲得する。

その後は時代の変遷とともに、本来のターゲット層であるバイカーズのみならず、ミュージック&ファッションシーンにおいても支持を拡大。ライディング時の防寒・防護服に過ぎなかったライダースジャケットを、様々なカルチャーに紐付いたアイテムとして認知させた同ブランドの功績は実に大きい。

さて、そもそもライダースジャケットと一括りにしてみたが、一般的にはフロント胸部の合わせが二重になった“ダブルライダース”を思い浮かべる人がその殆ど。その起源を遡れば、1900年代初頭に広まったダブルブレステッドのロング丈レザーコートに辿り着くというのが通説。そこから時間を重ね、1939年に〈HARLEY-DAVIDSON ハーレー・ダビッドソン〉が発表した「AVIATOR STYLE アビエイタースタイル」が記念すべき原型。

エポレットに輝く“ワンスター”
それは永遠の定番モデルたる証。

ハーレー・ダビッドソンのような大型アメリカンバイクでは上体を起こして座り、足と腕を大きく前に伸ばしてゆったりと乗る。そのために袖の付け根にはリブを配して運動性を確保。同時にシルエットに余裕を持たせつつ、シートに座った状態でダボつかないように着丈は短めに設定。この特徴を備えるのが、星型スタッズをエポレットに打ち込んだ「613」。通称“ワンスター”。1950年代に登場したこのモデルが、のちに“アメジャン”と呼ばれるライダースジャケットの雛形となり、ショットの人気を確固たるものに。

通称ワンスターこと「613」

無骨なステアハイドのボディ。そのタグに記された“Perfecto パーフェクト”の文字は、創業者であるアーヴィン・ショットが愛喫していたキューバンシガーに由来するというが、このモデルの完成度の高さをも物語っていると感じられる。

エポレットにはアイコンたる 星型スタッズ。背タグには“ Perfecto ”の文字。

ちなみに、映画『the wild one 邦題:乱暴者(あばれもの)』にて、マーロン・ブランド演じるアウトローバイカーの主人公・ジョニーが着用したモデルともいわれているが、公式記録が残っておらず、〈Durable デュラブル〉社製の「ワンスターライダース」であるという説もあり、今でも議論の的となっている。しかしながら彼が残した強烈な印象により、以降の“ライダース=不良のアイテム”という公式が成立したことには間違いないだろう。

よく似ているけれども別物。
着やすさの点では、ややリード。

定番とされるラインアップの中には、違いの見分けづらいモデルが存在する。「618」はその代表格。素人目には「613」にしか見えないが、細部に目を落とすと意外に別物であることが分かる。

「618」 。 一見すると「613」と瓜二つ。

違いを挙げていくと、大きさの異なるエポレットや、そこにあしらわれた星型スタッズの有無にはじまり、レザーの厚み(※613は厚く、618は薄め)、フロント襟部分のスナップボタンの数(※613は2つ、618は4つ)など枚挙に遑がない。もちろんロットナンバーからも推察できるように、先に誕生したのは「613」。ゆえに時代背景や需要の変化によって、より着やすく進化した結果と考えられる。

「613」とは違い、星型スタッズがないシンプルなエポレット。襟のスナップボタンも左右上下に付き、合計4つに。

名作「613」を
日本人体型にもフィットするようにリサイズ。

ライダース選びの要所にして難所がフィッティング。いかに名作「613」といえども、肩幅が狭く、身体の厚みがない日本人体型にフィットさせるのは困難。そこで着丈をやや長く、身幅やアームホールなどはタイトに再構築したのが「613US」。

日本人向けにリサイズされた「613US」

左:「613 」 右:「613US」同じサイズだが、並べるとシルエットの違いは一目瞭然。

こちらはブランドタグに1970年代まで使われていたデザインを採用するなど、各部を1960~70年代のヴィンテージ仕様で復刻。通好みの意匠と着やすさを兼ね備えており、ビギナー向けのエントリーモデルとしても秀逸。

無駄を削ぎ落としたミニマルなデザインで、
スマートに魅せるシングル。

ライダースジャケットにおけるもうひとつのスタンダード。それが“シングルライダース”。本稿ではダブルタイプを先に紹介しているが、シングルタイプの方が先達。歴史に初めて登場したのは1931年。こちらもまた、ハーレー・ダビッドソンが販売した「Leather Zipper Jackets レザージッパージャケット」からだとか。

ダブルタイプに漂う武骨さとはまた違い、こちらを一言で表すならばスマート。削ぎ落とされた装飾は合わせるアイテムを引き立たせ、スタイリングの幅を広げる。

運動性を高め、着やすく洗練された
クラシックレーサースタイル。

ダブルライダースの代表作が「613」ならば、シングルライダースの代表作に当たるのが「641」。1969年公開の映画『Easy Rider イージーライダー』にて、名優ピーター・フォンダ演じるキャプテン・アメリカが着用していたのが、同型でラインの切り替えを施した「671」。これによって、ショットのシングルライダースの知名度は爆発的に広まった。

スタンドカラーのシングルライダース「641」

素材にはマットな風合いのステアハイドを使用し、着込んでいくたびに柔らかく身体に馴染んでいく。だが、本作の魅力はそれのみにあらず。スウィングバックで肩の稼動域を確保した背面に加え、脇下も蛇腹状にデザインしてスムーズな動きをサポート。これらのディテールにスタンドカラーも相まって、洗練されたクラシックレーサースタイルを演出する。

首元に加えられたアクセントが、
タウンユーズでの汎用性を高める。

繰り返しにはなるがスタンドカラーが特徴的なシングルライダース「641」。首のストラップとポケットのジップ以外に装飾的要素のない、ミニマルで洗練された佇まいが当該モデルの魅力ではあるが、ことスタイリングにおいては一抹の物足りなさを感じるケースも。だが「642」ならば、そのウィークポイントも見事に克服。

襟付のシングルライダース「642」

もとは東京・上野の老舗インポートショップの別注モデルだったといわれるこのモデルは、まず総丈を1cm短くしてシルエットを若干変更。これによって袖とのバランスも良くなり、レイヤリング時にもインナーの裾あしらいが容易に。さらにスタンドカラーから通常の襟へとチェンジ。襟の形状が変わるだけで首元にアクセントが加わり、纏う雰囲気も一変。よりタウンユーズに適応した1着となっている。

とりあえず覚えておくべきは、
ステアハイドとホースハイドの2つ。

先に述べたライダースジャケットというキーワード同様。レザーと一括りにされてしまっているが、案外うろ覚えなレザーの種類とその違い。ショットでよく使用され、代表的なのはステアハイド(牛革)とホースハイド(馬革)の2種類。

まずはステアハイドから解説。こちらは基本的に食肉用の雄牛の革。男性ホルモンの分泌を抑えて肉を柔らかくするために去勢された牛(生後2年以上)から採れる皮を鞣したものを指し、最も一般的なレザーといえる。それよりソフトなカウハイドは、生後2年以上経過した産後の雌牛の革。ライダースジャケットに使われる牛革としてはこの辺りが基本。

次にホースハイド。その違いを知ってもらうためにも前述の「641」とホースハイド版の「641HH」を並べてみる。着用感があるとはいえ左の方がツヤ感も強くてハリのあるタッチ。着込んでいくと徐々に刻まれていく独特の細かい皺も、育てる楽しみを助長させる。また同じ厚みであれば牛革よりも軽いため、上位仕様に位置付けられることが多い。

左:ホースハイド製 「641HH」 右:カウハイド製 「641」

ツヤや皺の風合いで革質の違いがよくわかる。

ところでヴィンテージのレザージャケットにはホースハイドが多いということはご存知だろうか。これは生産された1930~50年代の交通手段として、馬や馬車が日常的に使われていたから。だが、その後のモータリゼーションの発達に伴い、馬の需要自体が減ることでホースハイドの供給数も減少。ゆえに現在もあえてホースハイドを採用し続けているブランドは、それだけレザーに矜持と誇りを持っている証拠といえる。

ホースハイドのタグ

ちなみに混同しがちなハイドとスキンの呼び分け。前者は牛や馬などの大型動物の原皮で、小さい物はスキンと呼んで区別している。今後のためにも覚えておいて損はない。

1世紀を超える歴史の遺産、
ライダースジャケット以外も面白い。

ここまでではダブルとシングルの傑作を押さえつつ、レザーの素材による違いもしっかりと脳に刻んだ。となれば次に目が向くのが、ライダースジャケット以外の変化球というのは定石。ショットが1世紀以上の歴史の中で積み上げてきたデザインアーカイブから、リユース・マーケットだからこそ見つかる、グッドプロダクト3点をご覧いただく。

西部のタフガイたちが愛した、
アメリカン・クラシカルな佇まい。

西部の荒野で颯爽と馬を駆るカウボーイたち。読者諸君よりもふた周りほど上の世代にとって、彼らの存在もまた男の憧れ。「RANCH COAT ランチコート」とは、アメリカ西部の大牧場(ランチ)で、そんなタフガイたちが着用する腰丈の防寒コートを指す。

「RANCH COAT ランチコート」

ライニングや襟元にボアやファーを使い、表地はスウェード素材がマナー。ちなみにこちらは和製英語。アメリカでは「シアリング(※羊の毛の刈り込み)コート」と呼ばねば通じない。

見た目のタフさと重厚感を、
良い意味で裏切るライトな着心地。

レザーダウンジャケットをクールに着こなすといえば、〈GOOSE COUNTRY グースカントリー〉を着用したオールドスクール期のラッパー、ランDMCの姿がまず浮かぶ。だがショットとて負けてはいない。

「LEATHER DOWN JACKET レザーダウンジャケット」

軽くて柔らかなシープスキンにダウンを封入することで、レザーの弱点でもある保温性をカバー。同時にレザーの難点である重量感も克服。ざっくりと羽織れるビッグシルエットと、黒一色でまとめられたタフな表情は、今こそ需要があるのでは。

ダウンとレザーのハイブリッド、
1着で完結するモックレイヤード

ここまでは、あくまでレザージャケットという点にこだわってきたが、ダウンジャケットにレザーベストを重ねた様なこちらはいかがだろうか。袖部分をジップで取り外すことが出来るので、ダウンベストとしても着用可能な2WAY仕様。

袖を取り外しダウンベストとしても着用できる2WAY仕様の「126」。

ユニークなデザインに目を奪われがちだが、ナイロン素材のボディにグースダウン60%.グースフェザー40%を内封することによって得た防寒性は十分。背面もウエスタンヨークで独特のバックビューとなっている。

コラボレーション・プロダクトがもたらす進化、
その可能性。

近年はレザープロダクトやモーターサイクルカルチャーといったイメージの枠を飛び越えて、自由なアイテム展開を見せている同ブランド。そのアグレッシブでフレキシブルな姿勢に惹かれ、コラボレーションのリクエストは後を絶たない。

中には〈Supreme シュプリーム〉のように、自分らだけでなく〈UNDERCOVER アンダーカバー〉〈COMME des GARCONS SHIRT コム・デ・ギャルソン・シャツ〉などの共犯者を引っ張り込み、独自の世界観を形にするブランドも。このように既存のショットファンにさらなる進化の可能性を示してきたコラボレーション・プロダクト。その一例がここに。

共存する武骨さとスマートさ、
“ショーンフォント”のアクセント。

シュプリームを東海岸スケートカルチャーが生んだカリスマと呼ぶなら、西海岸サーフ&スケートカルチャーが生んだ巨人が〈STUSSY ステューシー〉。

1992年に日本初の直営店〈ステューシーギア〉が東京・自由が丘にオープン。以降の日本におけるブレイク及び、確固たる地位の獲得までの軌跡は、ストリートで青春期を過ごした者ならばご存知の通り。両者のコラボでは数多くの名作が生み出されており、2013年のショット100周年の際にもカプセルコレクションをリリースするなど、その関係性は良好。

さてそのコラボだが、近年でいえば本作が秀逸か。ベースモデルは「Classic Truck Jacket クラシックトラックジャケット」。シングルライダースジャケットの定番「641」とも似ているが、一番の違いはファスナーではなくボタンに変えたカフス部分。

〈Schott〉×〈STUSSY〉の「Classic Truck Jacket」

また着丈も長く、ライナーには独特のショーンフォントで書かれた5大都市名が。ショットらしい武骨さは残しつつ、自分らのテイストを巧みに落とし込んでモダンに仕上げた逸品である。

ディテールをミニマルに整えることで
“ワンスター”をモダナイズ。

ストリートブランドが猛威を振るう1998年。ミニマムなデザインを軸に、洗練された日常着を求めてスタートしたのが、清永浩文により設立された〈SOPH. ソフ.〉。

サープラスの用途に忠実なディテールや、アウトドアの機能を追求した素材などに着目し、その高い機能性をカジュアルな日常着に落とし込んだコレクションを展開。2002年にはブランド名を〈SOPHNET. ソフネット.〉へ改名。昨年にはブランド設立20周年を迎えた。

本作はブランドの旗艦店〈SOPH.TOKYO ソフ.トウキョウ〉の15周年記念コラボプロジェクトの一柱として2015年にリリース。

〈Schott〉×〈SOPHNET.〉の「ONESTAR RIDERS」

「613」をベースに、その象徴である“ワンスター”を落とし込んだサテン地のライナー、ジップポケットを追加した左袖、エポレットを小型化し、ウエストベルトはオミット。ミニマルなディテールアレンジとポップな意匠が描く絶妙なバランスにより、名作モデルからさらなる魅力を引き出すことに成功している。

かつては反逆のウェアと認識されていたレザーライダースジャケット。時に疎まれ、恐れられ、されど我ら男にとっては永遠の憧れ。

冒頭でも述べたように、遺伝子に刻まれたその感覚はレザープロダクツ自体に対してもだが、それ以上にレザーが似合う男に対するリスペクトに他ならない。

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