CULTURE
USA Vol.02

様々なストリートスタイルで重用された最重要ブランド〈リーバイス〉の真実

メンズストリートファッションの歴史の中で、最重要ブランドははたして何か?難しい問いだが、あえて言い切るとしたら、これしかないのではないだろうか。

「リーバイス!」

異論のある人は、そう多くないと思う。ストリートスタイルにも色々あるが、時代及びジャンルを股にかけ、もっとも多く名前が上がるブランド、それがリーバイスだ。

『ストリート・トラッド〜メンズファッションは温故知新』の著者であり、雑誌『smart』の元編集長・佐藤誠二朗氏が、リーバイスという稀有なブランドの歴史と、USストリートスタイルに与えた影響に迫る。

リーバイ・ストラウスが発明した
画期的な作業用パンツ「501XX」。

ファッションに興味がある人はどこかで聞いたことがある話かもしれないが、まずは〈LEVI’S リーバイス〉の歴史を紐解こう。世界で一番歴史があり、世界で一番有名なジーンズブランドの起点は、19世紀中頃までさかのぼる。

ユダヤ系ドイツ人移民の家に生まれたリーバイ・ストラウスは、弱冠24歳だった1853年、義兄とともにサンフランシスコで織物類の卸売会社を起こす。それが「リーバイ・ストラウス&カンパニー」だ。会社の取り扱い品目は、労働者用の作業パンツといった衣料品、寝具、ハンカチ、財布などだった。

Photo by Fotosearch/Getty Images
リーバイ・ストラウス

当時のサンフランシスコは、ゴールドラッシュに沸いていた。金鉱山でハードに働く労働者たちが、丈夫な作業パンツを強く求めていることに目をつけたリーバイは、本来テントや馬車の幌を作るためのキャンバス帆布を使ったパンツ作りを思いつく。

そして生地をインディゴで染め、「ガラガラヘビにかまれない作業用パンツ」として売り出すのである。インディゴにはピレスロイドという「ヘビや虫の嫌がる成分が含まれている仕様」との宣伝文句だった。実際は、染料としてのインディゴに含まれるピレスロイドは微量なので、本当にヘビよけになったかどうかは微妙だが、汚れが目立たちにくく丈夫なブルーデニムは労働者たちに重宝されたという。

1873年、リーバイは上顧客であったネバダ州のテイラー、ヤコブ・デイビスと共同で、ポケットのコーナーなどを金属リベット打ちで補強した作業用パンツを開発、特許を取得する。商品名は「ウエストオーバーオール」とされた。この新しいスタイルの作業用パンツこそが、世界初のジーンズである。1890年、リーバイスはウエストオーバーオールにロットナンバー「501XX」を付ける。XX(ダブルエックス=エクストラ・エクシード)とは、当時のデニムの最高級品質を示す符号だった。

インディゴ染めとリベット留め以外の「501XX」のディテールは、ボタンフライのフロントと、チェンジポケットを含めて4つのポケットを持つというもの。飛ぶ鳥の姿を連想させるバックポケットに施された特徴的なアーキュエットステッチは、1873年の開発当初から、2頭の馬がジーンズを引っ張る絵を描いた通称“ツーホースパッチ”は、1886年から付けられている。

1901年には消費者のリクエストにより、バックポケットをこれまでの1つから2つに変更。1922年にはベルトループが追加され、現在でも受け継がれているジーンズの形状がほぼ完成する。

ちなみにアーキュエットスティッチはアメリカンイーグルが羽ばたく姿をモチーフにしたいう説があるが、1906年のサンフランシスコ大地震でリーバイス本社は焼失、創業当時の資料がなくなってしまったため、今でも謎となっている。ツーホースパッチは品質保証書のようなもの。1873年に取得した金属リベットの特許が1890年で切れるため、その後にも商品の頑丈さをアピールする印として考案されたものだったのだ。

リーバイスの製品は頑強だったため、あっという間に労働者の間に広まっていくが、それとともに世には様々な模造品も出回った。そこで1936年、遠くからでも他社製品と見分けられる目印も考案された。右のバックポケット左側に縫い付けられるレッドタブだ。1971年以前までのものはビッグE(LEVI’S)、以降はスモールe(LeVI’S)の文字が使われている。

ジーンズの進化の歴史そのものともいわれるリーバイス「501」は、年代によって様々なマイナーチェンジが施されているが、名作中の名作として名高いモデルは1947年に誕生したもの。そして現在、一般的に「501XX」と呼ばれるジーンズは、1947年頃〜1967年頃に生産されたモデルをさしている。

〈リーバイス〉の「501XX」

純・作業用パンツだったジーンズが
若者のファッションに取り込まれていく。

では、頑丈で汚れが目立たないことを目的として作られた、実用本位の作業用パンツだったリーバイスのジーンズが、“かっこいいファッション”と認識されるようになった過程を見ていこう。原点は1940年代後半から1950年代に注目されたアメリカ西部のカウボーイスタイルとバイカーズスタイルにある。

ジーンズは開発された当初から、西部の牧場で働くカウボーイの作業着としても人気があった。そして第二次世界大戦後、航空機産業で経済が潤っていたロサンジェルスという街が注目されるようになると、カウボーイスタイルは全米でブームとなり、彼らの穿きこなすジーンズがかっこいいファッションアイテムと認識されるようになる。

ほぼ同時期、南カリフォルニアに登場した、大型バイクで街を爆走する不良少年集団・バイカーズも、リーバイスのジーンズを愛用していた。社会への反抗の証として、敢えて労働者階級のアイテムであるジーンズを選んだ彼らの生態は1953年、マーロン・ブランド主演の映画『ザ・ワイルド・ワン』で取り上げられる。するとジーンズ、特に映画の中で使われていたリーバイス「501XX」には、“アウトローが穿くヤバくてかっこいいパンツ”というイメージがつけ加えられた。

ジーンズ=かっこいいというイメージはさらに、1955年に公開されたジェームズ・ディーン主演映画『理由なき反抗』で決定的なものになる。ジェームズ・ディーン演じる17歳の不良少年ジムが穿いていたジーンズは、リーバイスではなく〈Lee リー〉の「101ライダース」だったが、劇中で彼が着ていた白いTシャツや赤いスウィングトップとともに、ブルーデニムは青春のシンボルになっていくのである。

Photo by: Universal History Archive/UIG via Getty images
映画『理由なき反抗』のジェームズ・ディーン

バイカーズは「501XX」の裾をロールアップし、いかついエンジニアブーツを目立たせるような穿き方をしていた。『理由なき反抗』のジェームズ・ディーンもまた、「101ライダース」の裾を軽くロールアップして穿きこなしている。彼らに憧れ、ジーンズを最新ファッションと捉えた若者たちは皆、同じように裾をロールアップして穿くようになった。この穿き方は、ジーンズをローティーンの間に浸透させる一因にもなった。こうすれば身長伸び盛りの彼らも、大事なジーンズを長く穿き続けることができたのだ。

バイカーズのイギリス版であるロッカーズも、当然のように「501XX」を穿いた。ライダースジャケットやエンジニアブーツをはじめ、本場のバイカーズを極力忠実に模倣しようとしていたからだ。ただ、アメリカのバイカーズが作業着の延長線上にあるような、やや太めのシルエットで穿いたのに対し、イギリスのロッカーズはジャストフィットのサイズを好んだ。(→ライダースジャケットに関する記事は、こちら

そしてリーバイスが若者の普遍的スタイルであるということの証左が、ロッカーズに対抗する勢力であったモッズにも愛されたという事実だ。同じロンドンを根城としながら、趣味・嗜好、生き方、出身階級などが相容れず、激しく対立したモッズとロッカーズが、なぜか共通して「501XX」をワードローブとしたのである。また1960年代後半に登場するモッズの進化系であるスキンヘッズもまた、「501XX」を好んで穿いていた。(→UKストリートスタイルに関する記事は、こちら

ロッカーズ以上にタイトに穿くのがクールと考えたモッズやスキンヘッズは、新品の「501XX」を穿いたまま浴槽に入って縮ませたり、色褪せさせたりしていたという。

またアメリカでバイカーズよりも少し後の1950年代後半に登場したビートジェネレーションにも、「501XX」の愛用者が多かった。自らもビートジェネレーションであったカリスマ、ボブ・ディランをはじめとするフォーク・ロックのミュージシャンの多くが、自由と反抗の証としてリーバイスを穿いたのに影響を受けたのだ。

「501XX」から進化していったジーンズも
様々なストリートスタイルで支持された。

以上のストリートスタイルで登場したリーバイスは、選ぶサイズ感の違いはあっても、基本的に「501XX」であった。そしてここから進化がはじまる。

アメリカ西部で重用される作業着からスタートし、若者の先端的ファッションという地位を得て急成長したリーバイス社は1960年代、アメリカ東海岸へ進出。5ポケットや要所のリベット留め、インディゴ染めなどの基本仕様は踏襲しつつ、シルエットやディテールを変化させた新モデルを市場に投入していく。

初期のリーバイスのジーンズはすべてボタンフライだったが、1954年には消費者の要望に応えてジップフライのモデル、「501ZXX」が売り出されていた。このモデルを発展させ、1961年にはジップフライで裾にいくにつれて細身となるテーパードシルエットの「551ZXX」を発表。

ジップフライモデルの「551ZXX」

「551ZXX」は1966年頃から品番変更により、ロットナンバー「505」となった。「501XX」よりも細身でスタイリッシュな「505」は、防縮加工が施されたジーンズでもあった。それまでのジーンズの生地は、どこのブランドのものも生デニムばかりで、洗うと必ず縮んでいき、最終的な縮み幅は2〜4インチと個体差が大きかった。そのためジーンズには「Shrink-to-Fit」(=縮めてサイズを合わせるもの)という説明書きのタグがつけられていたのだが、スマートなシルエットを重要視していた東海岸側のアイビーボーイからは、不満の声があがっていた。

洗練された美しいテーパードシルエットの「505 Big E」

「505」は60年代半ば、アイビーを起点とする小ぎれいなファッションを好んだ東海岸のシティボーイをターゲットとして投入された商品だったのだ。リーバイスの目論見は的中してアイビーボーイの間で支持が広がり、「505」は確固たる地位を確立。「501XX」一辺倒だったジーンズの世界を一歩前進させることになる。

一方、60年代後半から70年代前半に大増殖した西海岸側のヒッピーは、東海岸のスマートなアイビーボーイへの対抗の意味もあったのか、彼らと正反対のシルエットを選び、リーバイスもその要望に合わせた型番を投入していく。裾にいくにつれて幅が広がるフレアタイプ、通称“ベルボトム”「646」、あるいは通称“ビックベル”「684」、もともとはカウボーイのために開発されたという“サドルマン”ことブーツカットの「517」である。

通称ベルボトム「646」 ベル(鐘)のようにひざ下から裾にかけて広がっている

「646」さらに裾の広がったビックベルこと「684」

「646」「684」に比べ、実用性も高いブーツカットの「517」

ヒッピーはこれらのフレアジーンズに、スタッズを打ったり刺繍をしたり、ペインティングをしたりと、思い思いのカスタムを加えて穿いた。自由と平等と平和を愛したヒッピーたちにとって、こうした突飛なデザインのジーンズは、反体制の象徴でもあったのだ。

1970年代中頃になると、ニューヨークを中心にパンクスが登場する。ニューヨークパンクスの間では、1969年に発売された細身モデルの「606」に人気が集中。痩身に穿いた極細の「606」にDIYで穴を開けて穿くスタイルも発明される。ラモーンズやリチャード・ヘルに、その典型スタイルを見ることができる。

スリムなシルエットが特徴の「606」

タイト化するロック系とは反対に、ヒップホップ文化ではジーンズのルーズ化が進行した。1980〜90年代のBボーイの間では、極端なスーパールーズサイズがもてはやされるようになる。ギャング文化であるBボーイズの間では、「ムショ帰り」であることが自慢の種になったので、刑務所で支給されるようなオーバーサイズのデニムを腰穿きにするのがオシャレとされたのだ。この動きに注目したリーバイスは1980年代にルーズフィットモデルの「509」、その上をいく「569」、さらに太い「570」というモデルを次々と投入していく。

クラッシュ&ダメージ化は、パンクやスケーターファッションの影響下に生まれたグランジで不変のファッションとなっていく。このカルチャーの火付け役は、ロックバンド・ニルヴァーナのヴォーカリスト兼ギタリスト、カート・コバーンだ。1991年9月、シングル曲『スメルズ・ライク・ティーン・スピリット』と同曲を収録したセカンドアルバム『ネヴァーマインド』がスマッシュヒット、カートは一気にスターダムにのし上がる。そして普段着のままふらりとステージに上がる彼の、古着を寄せ集めたようなだらしない服装は、グランジスタイルとして若者の中に浸透していくのだ。

グランジの最大の特徴は、重ね着と着崩しである。着古して擦り切れたネルシャツやTシャツ、毛玉だらけのカーディガンといった服を無造作にレイヤードし、ボトムスは古着のボロボロのダメージジーンズを穿く。グランジ(grungy)というのはもともと、「薄汚く、醜い」という意味を持つスラング。カートのようになるべくだらしなく、薄汚く着ることがクールだったので、ジーンズのダメージ化もどんどん過激になっていった。

ダメージカスタムしたレギュラー古着の「501」

Photo by Michel Linssen/Redferns
グランジスタイルの象徴 故カート・コバーン

さらに1999年には、これまでになかった斬新なスタイルが登場する。リーバイスヨーロッパのプレミアムラインとして〈Levi’s RED リーバイス レッド〉が登場したのだ。

立体裁断が斬新な〈リーバイス レッド〉

リーバイス・レッドは、複雑な製造工程によって立体裁断が施されたシルエットのジーンズを提案。このデザインが大ブームとなり、近年のリーバイスの歴史の中では、もっともファッショニスタたちの支持を集めることになった。コレクションは不定期に発表され、2007年以降発表がなかったが、2014年に7年ぶりとなる新作がリリースされている。

一方、2000年代中頃から2010年代に登場したヒップスター、ノームコアといったストリートスタイルでは、ファッションの原点回帰とシンプル化が進行。リーバイスの過去のアーカイブからは、「501」や「505」のような定番タイプが選ばれるようになった。

リーバイス社は現在、そうした要望に応えてヴィンテージのジーンズを忠実に復興した〈LEVI’S VINTAGE CLOTHING(LVC)リーバイス ヴィンテージ クロージング〉シリーズを展開している。サンフランシスコのリーバイス本社に保管されている2万点を超えるアーカイブをデザイナーが詳細に分析、微調整を加えながら現代の衣服として復刻。同シリーズのジーンズは、防縮加工を施さないあの「Shrink-to-Fit」の生デニムが使われているため、洗うとサイズが縮んでいくので、購入の際にはサイズをよく考えて選ばなければならない。そういった難しさも含めて楽しむ、通好みのシリーズである。

過去のアーカイブを忠実に復刻する〈LEVI’S VINTAGE CLOTHING(LVC)〉

リーバイスはさまざまなカルチャーに影響を与えてきた、唯一無二のワークウエアだ。どんな人でもクローゼットの中を探せば必ず一本は持っている。あまりにもユージュアリーなブランドなので忘れがちだが、160年以上の歴史があり、世界各国に愛用者を持つ。

今回は主にUSAストリートスタイルに絞ってその歴史を追ったが、視点を変えれば語るべき事実がまだまだあるだろう。その奥の深さが、リーバイスの最大の魅力である。

Text by Seijiro Sato

(→USAストリートスタイルに関する記事は、こちら

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