CULTURE
Timeless Denim Jacket

オリジナルたるタイムレスな定番デニムジャケットを知る。

咲き誇る花々の香りが街に満ちあふれ、心躍るこの季節。うららかな日差しの一方で、肌寒さも同居するのがこの時期のつねだ。

よって我々にとって必需品となるのが、寒さしのぎに気軽に羽織れ、かつコーディネートの主役ともなるジャケットやブルゾンだ。当然その選択肢はあまたあるわけだが、長きをともにできるという点で『knowbrand magazine』がプッシュしたいのが「Gジャン」こと「デニムジャケット」だ。

ワークウェアからファションへと昇華したジーンズ同様、デニムジャケットの歴史も深く、そのバリエーションは豊富だ。とはいえ何事にもまずは知っておくべき「オリジナル」というものがある。諸兄が自身のワードローブにデニムジャケットを加えるときは、まずはそのオリジナルを抑えておくことをおすすめしたい。なぜならオリジナルこそが「定番」といえるからだ。

「Gジャン」の由来とオリジネーター。

日本ではジーンズのことをしばしば「Gパン」と呼ぶし、デニムジャケットは「Gジャン」という。この「G」とは、官給品を意味する「Government Issue=G.I」に由来するといわれている。官給品の軍装に身を包んでいたからか、おのずと「G.I」は「アメリカ兵」の俗称となったようだ。そして第二次世界大戦後、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の占領下にあった1950年前後の日本で、まずはGパンという呼称は生まれたとされる。諸説はあるが、日本に駐留するG.Iたちが普段着によく穿いていたジーンズが「G.Iパンツ」と呼ばれるようになり、それが略されGパンとなったという説が有力だ。そして同じデニム製のジャケットは「G.Iジャンパー」と呼ばれ、その略称としてGジャンという呼び名が定着したといわれている。

ところでデニムジャケットの原型はいつ誕生したのだろうか。現存する最古のデニムジャケットは1880年代のものとされ、いわずと知れたジーンズの生みの親〈LEVI’S リーバイス〉が製造したもので、「Rivetted Blouse リベティッド ブラウス」と名付けられていた。リーバイスが特許を持つリベット補強の技術が使われた作業用の上着という意味だ。ジーンズも当時の正式呼称は「RIVETED OVERALL リベティッド オーバーオール」であり、デニムジャケットはジーンズとセットアップで着用する前提でほぼ同時期に生まれたワークウェアであったことがわかる。よってデニムジャケットの原型をつくりあげたオリジネーターもおのずとリーバイスとなる訳だ。(→関連する記事は、こちら

同社が生み出したデニムジャケットには代表的な3つのタイプがある。いずれも時代とともに特徴的なアップデートが施されており、この3タイプを知ることでデニムジャケットの定番たるオリジナルを理解できるのだ。

純然たるワークウェア
1st TYPE(1920-1952)。

1880年代に生まれたリベティッド ブラウスを原型として1920年代にリーバイスが開発したデニムジャケットが通称「1st TYPE ファーストタイプ」と呼ばれる「506XX」である。

通称「1st TYPE」こと〈LEVI’S リーバイス〉の「506XX」

短い着丈の前開き5ボタンのボックス型シルエットに機動性を高める前立てのダブルプリーツや左胸にだけ設けられたフラップ付きのポケット、太い袖。背面にはフィット感を調節するための尾錠「シンチバック」が付く。アシンメトリーで武骨なデザインは、現代的なデニムジャケットとは大きく異なっている。

背中の「シンチバック」は1st TYPEの特徴的ディテールのひとつ

また実にユニークなディテールのひとつが、袖口ボタンの合わせの向きだ。一般的なジャケットと向きが真逆なのだ。

袖口の合わせが真逆の袖口

実はその理由ははっきりとしていない。だが当時のデニムジャケットの主なターゲットが炭鉱採掘などのハードワーカーであったことを考慮すると、作業時に袖が道具類にひっかかり事故となるリスクを軽減するために考案された仕様ではないか、と推測する向きもある。逆合わせの袖口ボタンは、着用時に非常にとめにくい。だがそれよりも顧客の安全面を重視したディテールだとするならば、まさに1st TYPEはファッションウェアではなく、実用性を追求した純然たるワークウェアであったといえる。いずれにしろ、そのクラシカルな意匠は、現代ではむしろ異彩を放ち、多くのビンテージラバーの憧れの存在である。

第二次世界大戦時には、ポケットフラップの省略やフロントボタンの減少など物資統制の影響を受けた506XX。戦後、ほぼ元のデザインに戻り製造がつづいたが、1952年いよいよ後継モデルへとバトンを渡すこととなる。

ファッション化のはじまり
2nd TYPE(1952-1962)。

1930年代末には、西部のカウボーイたちにも愛用されていたジーンズとデニムジャケット。事実リーバイスもカウボーイをイメージしたプロモーションを実施していた。また同時期、ハリウッドが大量製作した西部劇の中の俳優たちはみなスタイリッシュにジーンズを穿きこなし、その姿は多くの観客たちに強く印象付けられてゆく。そうジーンズが、ワークウェアとしてだけでなく、ファッションとしても認知されはじめたのだ。

1950年代に入りジーンズのファション化は決定的なものとなる。『ザ・ワイルド・ワン』のマーロン・ブランドや『理由なき反抗』でのジェームズ・ディーンといったカリスマ的ムービースターがクールに穿きこなすジーンズが、当時の若者たちを虜にしたのだ。

そうした時流の中、1952年にリーバイスが送り出したデニムジャケットが「507XX」、通称「2nd TYPE セカンドタイプ」である。

「2st TYPE」と呼ばれる「507XX」

デザインベースは、1st TYPEを踏襲しながらも、胸のポケットはふたつに増やされ印象は大きく変わった。また背面のシンチバックはなくなり、ウエストサイドにボタン調節によるアジャスターが配置される。アームホールも細くなり、袖口の合わせも1st TYPEとは逆向きに変更された。つまり2nd TYPEで、ファッション化がはじまったともいえるのだ。

2nd TYPEから採用のウエストサイド

一般的な向きに修正された袖口の合わせ

そのファッション性を証明するかのごとく1957年のアメリカ映画『Loving You(さまよう青春)』で、この2nd TYPEを501XXとセットアップでみごとに着こなした男がいた。世紀のロックスターにしてムービースター、エルヴィス・プレスリーである。

ファッションウェアへの完全なる昇華
3rd TYPE(1962-1966)。

ますます強まるデニムウェアのファション化の流れは、各メーカーにとって大きなビジネスチャンスであった。そこでリーバイスもデニムジャケットをフルモデルチェンジする。1962年に誕生した「3rd TYPE サードタイプ」こと「557」だ。

「3rd TYPE」である「557」でフルモデルチェンジを果した

前立てのプリーツは撤廃され、高く配された両胸のポケットからは特徴的なV型のステッチワークが伸びる。着丈は短いままだがフロントボタンは6個に増え、身体に沿うタイトなシルエットとなったことはバックスタイルからも一目瞭然だ。

タイトなバックシルエット

そのデザインは現代の我々が真っ先に思い浮かべるGジャンそのものではなかろうか。つまりリーバイスが生み出したこの3rd TYPEの誕生によりデニムジャケットは、スタイリッシュなファションウェアへと完全に昇華したといえるのだ。

デニムジャケットの完成形
4th TYPE(1967-)。

1967年、ファッション化を果たした557は品番を「70505」に変更しマイナーチェンジを行う。着丈が長くなり、より美しいシルエットとなったこのモデルをもって、デニムジャケットは完成形を迎えたといわれている。

「557」をマイナーチェンジした「70505」

「70505」、右「557」 着丈の違いがわかる

かつてコレクターの間ではビンテージは3rd TYPEまでとされることも多かった。だが近年、70505は「4th TYPE」とも呼ばれ、ビンテージとしての価値が上昇中であるということも付け加えておこう。

着やすさが魅力の
モディファイドモデル。

リーバイスが生み出したデニムジャケットのオリジナルたち。ビンテージはもちろん魅力的だが、年々その希少性は増し、気軽に手に入れヘビーローテションするという訳にもいかない。〈LEVI’S VINTAGE CLOTHING〉をはじめ、オリジナルの忠実な復刻を目指したリプロダクトは、ヴィンテージテイストを手軽に長く楽しめるという点で大きなメリットがある。一方、忠実すぎるクラシックなフォルムゆえ、コーディネートが難しく、デニムジャケットビギナーにとっては、いささかハードルが高いのもたしか。

そんな時のおすすめが、オリジナルのデザインを踏襲しつつ、より着やすくアレンジされたモディファイドモデルだ。

巧みなリファイン光る
1st TYPE。

アンティ―クミシンを使用し13.5オンスの自社製のデニムで仕立てられた「PLEATED FRONT BLOUSE」は、ビンテージと見まがうその出来栄えからデニムフリークをも唸らせる一着である。

〈orSlow〉の「PLEATED FRONT BLOUSE」

つくりあげたのはデザイナーの仲津一郎氏により2005年に誕生した関西発の〈orSlow オアスロウ〉だ。

ブランドネームは、過去のオリジナリティ(originality=or)あるクラッシックなワークウェアやミリタリーウェアといった定番服を自分たちのフィルターを通し、現代の日常着としてじっくり(=slow)つくりあげてゆくという姿勢に由来するという。

色落ち具合も秀逸なオリジナルデニム

1st TYPEの雰囲気はそのままにシルエットは巧みにリファインされている。デニムの色落も素晴らしく、表情豊かなインディゴブルーはコーディネートに彩を添えてくれるはずだ。

引き算の美学感じる
2nd TYPE。

チュニジア出身のジャン・トゥイトゥ氏が1987年に設立したフレンチブランド〈A.P.C アー・ペー・セー〉。A.P.Cとは「Atelier de Production et de Creation 生産と創造の工房」の頭文字。プロダクト品質を重視し、デザイナー名とクリエーションがあえて結び付かないようにする意図が込められているという。

A.P.Cのプロダクトは、きわめてシンプルなものが多いが、デニムジャケットもしかり。2nd TYPEをベースとしながらも、シルエットはもちろん、フロントポケットのボタンを省略するなど絶妙なアレンジにより、実に上品な仕上がりとなっている。A.P.Cならではの引き算の美学を感じる一着だ。

〈A.P.C〉の「VESTE JEAN WORK」

左:旧型、右:現行型

上質に織られた日本製デニムは、着るほどに見事なエイジングをみせる。その風合いに魅せられリピートするファンも非常に多く、誕生以来マイナーチェンジをしながら長く愛されている傑作である。

機能性に満ちた美しき
3rd TYPE。

古い裁断書にあった「袖ぐり」を表すテーラー用語をブランド名としている〈Scye サイ〉。2000年、デザイナーの日高久代氏とパターンカッターの宮原秀晃氏によってスタートし、20世紀初頭の英国服をベースに現代要素と機能性を加えたリアルクローズを提案しているブランドだ。

ベーシックアイテムを展開するライン〈SCYE BASIC サイベーシック〉からリリースされているデニムジャケットは、一見すると3rd TYPEそのままだ。

〈SCYE BASIC〉の「SELVEDGE DENIM DETACHABLE COLLAR JACKET」

だが袖付けは、脇下に縫製がこない手間のかかる独自のパターンを採用しており腕の機動性がとても高い。

独自のカッティングパターンの袖付け

また襟のギミックにも注目。ジッパーにより取り外しが可能で、二通りの表情を楽しむことができる。

襟元はジッパーで取りはずせる仕様。

襟の有無で印象は別物となる

オーセンティックな佇まいの中に、独自のアレンジと機能性が満ちた美しきジャケットである。

デニムウェアは、実に不思議で魅力的なアイテムだ。馴染むほどにシワは固着し、擦り切れ、穴があく。色落ちもすれば、汚れもする。本来ならただヤレて汚い衣類だが、ことデニムウェアに限っては着込まれた具合がかえって「いい味」とさえ称され、エイジングは「デニムを育てる」とすら表現される。

つまり、ともに過ごした時間だけが生み出せる味わいがあるというわけだ。

時代の流れにも揺るぐことのないタイムレスなアイテムを人は「定番」と呼ぶ。
したがって長い歴史を経てもなおファッションに取り入られているオリジナル由来のデニムジャケットもまた、定番といえるのだろう。

出会いとはじまりの季節。デニムジャケットを着るにはうってつけの頃合いだ。濃紺の一着にエイジングという味付けをはじめるのもよいだろう。
はたまた自分好みの味のあるビンテージに出会うやも知れない。いずれにしろタイムレスな定番を手に入れるには良い季節に違いないのだ。

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