あなたのソレは何を意味する? 思わず“意味を”語りたくなる名作アクセ6選 コインネックレス、クロシェット、カレッジリングほか
我々が普段、ファッションの一部として身に着けているアクセサリー。その起源を辿れば約10万〜15万年前の旧石器時代にまで遡るという。獣の牙や骨、貝殻などに穴を開けて紐を通したそれらは、狩りの獲物の一部を身につけることで自然災害や病気、猛獣などの脅威から身を守る呪的防衛手段と、強者の証明を兼ねた装身具として生まれた。
そんな時代から幾星霜。現代では“自分自身を装う”ための装飾具と意義を変えたが、素材やモチーフに込められた“意味をその身に宿す”ための依代という本質は変わらない。また、一見シンプルに思えるデザインであっても、生まれた時代や文化といったバックグラウンドを識ることで魅力はさらに増し、そのモチーフが長く愛され続ける理由も垣間見えてくる。
今回の『knowBrand magazine』では、思わず誰かに語りたくなるストーリーを秘めたる6つの名作アクセサリーを厳選。そこに込められた人々の想いと意味を紐解いていく。
“意味”を語りたくなる名作アクセ
幸運を呼び込む
「Coin Necklace コインネックレス」
序文でも述べたように、アクセサリーの中でも最も古い歴史を持つとされるのが、獣の牙や骨、貝殻などに穴を開けて紐を通したモノ。そう、「ネックレス」である。ここで取り挙げるモチーフは、古くから“富”“繁栄”“守護”の象徴とされる「コイン」。古代ギリシャやローマでは、神々や王の姿が刻まれたコインを持つことで“神聖な加護を得る”と信じられ、中世ヨーロッパでは、旅立つ家族や恋人の“無事の帰還”を願い、コインを贈る習慣もあったといわれる。
今回選んだコインは、1551年から1967年まで400年以上にわたり発行・流通したイギリスのシックスペンスコイン。表面にその時々の国王・女王、裏面には王冠や植物など英国を象徴する意匠が刻まれ、俗に“幸運を呼ぶコイン”とも称される。
定番「Coin Necklace コインネックレス」。モチーフはイギリスのシックスペンスコイン、その意味とは…。
これは同地に古くから伝わる結婚式の風習「Something Four サムシング・フォー」に由来する。花嫁が、“何か古いもの・何か新しいもの・何か借りたもの・何か青いもの”という4つの“Something〜〜”を身に着けると幸せになれるというアレだ。
その出典元となるマザー・グースの詩には、“And a silver sixpence in her shoe(そして靴の中には銀のシックスペンスを)”というフレーズが添えられている。花嫁の靴の中にシックスペンスを忍ばせておけば、経済的な安定に恵まれた豊かで幸せな生活が送れるというのだ。そこで日本のアクセサリーブランド〈JAM HOME MADE ジャムホームメイド〉が、本物のヴィンテージシックスペンスコインを使用して作ったのがこちら。
表面にはエリザベス2世の肖像と“JAM HOME MADE”の刻印。裏面には王冠を中心に、バラ・アザミ・シャムロック・リーキなど、英国各地を象徴する植物を配した伝統意匠が刻まれる。
意味を身に着けるという点でわかりやすく、デザインのシンプルさゆえ、どんなスタイルにも自然と馴染む。「Coin Necklace コインネックレス」の魅力はそこにある。街や人々がバイタリティに溢れていた1980年代・バブル期にも流行したという歴史的背景を踏まえつつ、コインだけに裏表ある…もとい、“状況に応じて適切な対応ができる多面性”を意味付けてみるのも一興か。
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“意味”を語りたくなる名作アクセ
あのカリスマも愛用。
「Clochette Long Necklace
クロシェット ロング ネックレス」
またもネックレスが続くのだが、ゴールドやシルバーを用いた一般的なソレとは一線を画す逸品を。ハイブランドは世に数あれど、トップメゾンの称号に最も相応しき〈HERMÈS エルメス〉からリリースされている 「Clochette Long Necklace クロシェット ロング ネックレス」である。クロシェットはフランス語で“小さな鐘”を意味し、ベルを彷彿とさせる独創的なフォルムこそが、その名の由来。
フラップ内部に、鍵取り付け用リングを備えた「Clochette Long Necklace クロシェット ロング ネックレス」。
約190年もの歴史を紡いできた同社だけに古参のアイテムと思いきや、実は1998年生まれといまだアラサーのニューフェイス。とはいえルーツはさらに63年遡った1935年。本来は、名作バッグと名高き「ケリーバッグ」に備えられた南京錠「カデナ」の鍵を収納し、バッグのハンドルに巻きつけて使う実用的な付属品だった。
これにレザーのロングストラップを装着し、ネックレスとして仕上げたのが、後に〈Maison Margiela メゾン・マルジェラ〉を創設するマルタン・マルジェラその人。彼が1997年〜2003年にかけてクリエイションに手掛けた、通称“マルジェラ期”を象徴するプロダクトのひとつとして、今も高評価を得ている。
クロシェットの裏面にはブランドロゴと「MADE IN FRANCE」の刻印がさりげなく施されている。エルメスらしい美しき機能美を有し、オレンジボックスに映える名作だ。
ここ日本では、ストリートのカリスマ“HF”こと藤原ヒロシ氏がこのアイテムを愛用品として雑誌で紹介。ハイブランドのアイテムは全身をドレスライクに固めるのが一般的だった当時、最高級メゾンのレザーアイテムを、あえて着古したヴィンテージやストリートウェアと合わせる“ハイ&ロー”なミックススタイルは、ストリートに衝撃を与え、真似する者も続出した。
その後も同モチーフはメゾン・マルジェラにおいても受け継がれ、定番のクラシックに。ミニマルな佇まいで日々の生活に自然と溶け込み、さりげない品格と個性を添えるクロシェット ロング ネックレス。その鐘の音は今もストリートに鳴り響き続けている。
(→〈エルメス〉の「アクセサリー」に関する特集記事はこちら)
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“意味”を語りたくなる名作アクセ
数字の羅列がブランドを象徴。
「Numeric Cuff Bracelet
ヌメリック カフ ブレスレット」
言葉や顔の表情と同じくらい雄弁に語るのが、身振り手振りのアクション。というワケでお次は、首元から離れ、腕周りを飾る「ブレスレット」でモノ語る。前項でも名前が挙がった稀代のデザイナー、マルタン・マルジェラ。その思想を貫くブランド〈Maison Margiela メゾン マルジェラ〉を代表するアクセサリーのひとつとして多くのファンを擁する「Numeric Cuff Bracelet ヌメリック カフ ブレスレット」を例に挙げてみよう。
〈Maison Margiela メゾン マルジェラ〉の名作「Numeric Cuff Bracelet ヌメリック カフ ブレスレット」。
デザインは簡素にしてミステリアス。シルバーを素材に、手首をグルリと囲む細身のブレス表面には、5から15まで数字の羅列が刻印されているのみ。だがよく見ると「11」のみ○で囲まれている。では、そこにどんな意味があるのか?
……なんてフリも熱心な読者諸氏には言わずもがな、釈迦に説法。ご存じマルジェラの代表的ディテール、通称「カレンダータグ」からの引用。○で囲われた数字がその服のラインを表しており、「11」は女性と男性のためのアクセサリーコレクションを示している(これ以外にもナンバリングは存在する。詳細については、マルジェラをフィーチャーしたこちらの過去記事をぜひチェックしてほしい)。かようにナンバリングの意味が分かったところで、あえてブランド名ではなく数字だけでコレクションを表現する、その理由にも触れておかねばなるまい。
5〜15まで数字が並ぶ中、唯一○で囲まれた「11」。そこに込められた意味とは…!? 内側にひっそり刻まれた、シルバー925の素材表記とITALY刻印も、実にさりげない。
その背景にあるのは、ブランドが創設当初から掲げてきた“匿名性”。そしてその象徴ともいえるのが、ブランド名を記すことなく四本の白いステッチのみで留められたタグと、数字だけでコレクションを示すナンバリングデザイン。そこからは、ブランドネームやデザイナー個人ではなく、服のデザインそのものに価値を見出してほしいというデザイナーのファッション哲学が読み取れる。
意味を知ることで、ただの数字の羅列がブランドの哲学を雄弁に語るデザインへと見え方が変わる。これぞ“意味あるアクセサリー”と呼ぶに相応しい存在といえるだろう。
(→〈メゾン マルジェラ〉の「アクセサリー」に関する特集記事はこちら)
(→ミステリアスなデザイナー、マルタン・マルジェラに関する特集記事はこちら)
(→〈メゾン マルジェラ〉の「ブレスレット(バングル)」をオンラインストアで探す)
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“意味”を語りたくなる名作アクセ
本来ならばパンクと無縁。
「Leather Wrist Strap
レザー リスト ストラップ」
ブレスに続き、同じく腕周りを飾るアイテムをもう一点。モダンで洗練された印象を与えるシルバーブレスレットとは対照的に、無骨な存在感を放つレザー素材に“No Future”…ではなくフィーチャー。ロックやパンクカルチャーを嗜んだ読者諸氏ならば、一度は憧れた覚えもあろうバックル付きの幅広レザーブレスレットをステージに挙げる。
パンクを象徴するデザイン。〈PEEL&LIFT ピール&リフト〉の「Leather Wrist Strap レザー リスト ストラップ」。
今では、単純にデザイン性の高いレザーアクセサリーとして認知されているが、本来はウエイトリフティングの際に手首を固定して支えるためのリストサポーターというファッションと交わることなき存在。これをセックス・ピストルズのジョニー・ロットンが持ち上げた(取り入れた)ことにより、パンクカルチャーを象徴するファッションアイテムへと階級アップ。その後、日本でも若き日の藤原ヒロシ氏が、通称“ロットンブレス”と呼ばれるようになった同モチーフのブレスレットを着用し、ファッション好きの間でも知られるように。
今回ピックアップしたのは、そんな歴史あるデザインのルーツを忠実に再現した〈PEEL&LIFT ピール&リフト〉の「Leather Wrist Strap レザー リスト ストラップ」である。“ジョニーが着けていたそのもの”を目指し、あえての縮みを表現した各部のサイズ感や、使い込むことで端部が丸まった革のエイジングを加工により再現するなど、「勝手に仕上がれ」なんて他人任せにすることなく、マニアならではの拘りを徹底的に追求した逸品だ。
手首を支えるリストサポーターがルーツ。当時の雰囲気を再現したボックス側面の説明書きにも、遊びゴコロが光る。
クラシックな佇まいの箱と、本体の外側と内側に刻まれた特別仕様の証。
しかも本個体は、同ブランドが不定期でリリースしているソレのエクスクルーシブモデル。東京・原宿にある〈SEQUEL シークエル〉の週末限定旗艦店「WEEKEND ウィークエンド」のみで販売され、通常モデルにはない“W”の型押しを施した特別仕様。
ちなみにHF氏とピール&リフトのディレクター・細谷武史氏はパンクで繋がる友人であり、シークエルのディレクター・宮﨑泰成氏はHF氏のフォロワー。腕の力だけでなく、強靭な脚力と体幹、背筋の完璧なタイミングでの爆発的な出力といった全身の連動性を必要とするウエイトリフティングのように、背景にあるストーリーの繋がりも楽しめる一本だ。
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“意味”を語りたくなる名作アクセ
青春時代の記録を指先に。
「College Ring カレッジリング」
腕周りを飾るアクセサリーのターンも終わったところで、忘れてはいけないのが手元を彩る「リング」。数多あるバリエーションの中から、古くより定番のひとつに数えられる「College Ring カレッジリング」に注目。卒業・在学の記念として製作される同アイテムには、学校名や卒業年度、校章などが刻まれ、学生生活の記憶や誇りを具現化したアクセサリーとして親しまれてきた。
バーモントカレーの名前の由来としても知られる、アメリカ・バーモント州にあるベニントン大学のカレッジリング。
……と、ココまでは巷に溢れるカレッジリングの説明だが、本場アメリカではカレッジリングと呼ばれず、通常は「Class Ring クラスリング」や「School Ring スクールリング」と呼称されることは意外と知られていない事実。諸説あるが、その起源は1835年、アメリ陸軍士官学校「ウェストポイント」で製作されたリングにあるとされる。士官候補生たちの結束や誇りを視覚的に表現するための記念品として誕生し、その文化はやがて一般の大学や高校へと波及していった。
片側に“KNOWLEDGE(知識)”と“19”の文字、開かれた本とペン。もう片側には“TRUTH(真実)”と“83”の文字、ランプなどのモチーフ。両方を組みわせると卒業年度を表す1983が浮かび上がる。
その文化は今も受け継がれ、多くの学校では卒業を前にカレッジリングを授与する“リングセレモニー”が行われている。厳格な伝統であるがゆえ、その身に着け方も適当ではいけない。在学中は校章などの刻印を自身に向けて着用し、卒業後は外側へ向けるのがお作法。これには、学生時代は母校への誇りを胸に刻み、卒業後はその誇りを社会へ示すという意味が込められている。
カレッジリングでは、内側に持ち主の名前やイニシャルを刻むことが多い。
そのストーリー性や多彩なデザインが評価され、ファッション的視点の装飾品としてヴィンテージ市場でも人気を誇るカレッジリング。意匠の一つひとつに人生の節目や青春時代の想い出が刻まれた、いわば他人の卒業アルバムを身に着けることに抵抗を感じる者もいるだろう。だが、そこが良いのではないか。時代も国も超えて、見知らぬ誰かの人生のタイムラインをロムる。そんな楽しみ方が出来るのも、カレッジリングならではの魅力なのだから。
“意味”を語りたくなる名作アクセ
持ち主だけの証を刻む。
「Signet Ring シグネットリング」
目と目が合ったらMiracle、指先と指先で繋がるE.T。なんて戯言は置いといてラストも指輪。“印台リング”とも呼ばれる「Signet Ring シグネットリング」で〆る。聞き慣れないネーミングに「シグネットなんて知らねえ」と思ったアナタも、どこか見覚えのあるクラシカルな佇まい。その実、単なるアクセサリーにあらず。古くから重要な役割を担ってきた深い意味を持つリングである。
気品漂う「Signet Ring シグネットリング」。その名には長い歴史が秘められている。
台座部分に所有者のイニシャルや、家紋・紋章などが刻まれたこのリングの意味を紐解くヒントとなるのが、その名に冠する“シグネット(Signet)”という言葉。認印や印鑑を意味し、自らが認めた証、また身分を証明する“印”として、重要な書類や手紙を封蝋する際に用いられていたのである。
そのルーツは古く、紀元前3500年頃の古代メソポタミアまで遡るとされる。当時はまだリングではなく筒状で、表面に絵柄を彫り、粘土の上で転がしてスタンプのように使っていた。これが古代エジプト時代にリング状に変化したことにより“自らが認めた印である”という意味合いが強まり、権威の象徴に。その後の中世ヨーロッパで、王族をはじめ、貴族や司教などの上流階級にも広まり、“証明”という役割から地位や身分を表すジュエリーへと変貌。当時の紳士は実用性のあるモノのみ身に着けるのが習慣となっていたため、唯一許されたジュエリーとしてシグネットリングは人気を博した。
持ち主だけの証を刻む印台。まさにシグネットリングを象徴する意匠だ。
…と、ここまでシグネットリングの意味と歴史を紐解いたところで、触れておきたいのが、前項のカレッジリングとの関係性だ。シグネットリングは、カレッジリングのルーツとも語られることがある。「初期のカレッジリングはシグネットリングをモデルに制作された」とする説がその理由。これを証明するように、現存する1837年卒業生のカレッジリングもまた、印台型のシグネットリングを想起させるデザインがゆえ、そのように語られているのかもしれない。
左:カレッジリング、右:シグネットリング。偶然か、はたまた必然か。ふたつのリングが物語る、歴史の接点。
真偽はさておき、こうした歴史や背景に思いを馳せる行為も、シグネットリングの楽しみ方のひとつ。小さな台座には、数千年にわたり受け継がれてきた歴史や文化、そして持ち主の誇りが、今もなお息づいている。
ちなみに、中世の紳士達は決まってシグネットリングを左手の小指に着用していた。その理由は諸説あるが、小指には宗教的意味がなかったためと言われており、利き手の反対の手に着ける風習からそうなったとか。意味あるアクセサリーを、意味を持たない指に装着することで“新たな価値観”という意味を持たせてみる、なんてのもアリかもしれない。
10万年以上前の旧石器時代から現代まで、形を変えながらも脈々と受け継がれてきた“意味を宿す”というアクセサリーの本質は、これから先の未来も変わらない。
名作と呼ばれるプロダクトの背景にある、歴史やカルチャーといった時代を超えて紡がれたストーリーを知り、そこに自分なりの新たな意味を重ねて身に着けた瞬間、そのアクセサリーは単なる装飾品の枠を超えて、あなた自身の物語を雄弁に“モノ語り”、かけがえのない人生の一部となるーー。
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