Wrangler

ラングラー
HISTORY

カウボーイの魂を纏う。西部の猛者とジョン・レノンやスティーブ・マックイーンが愛した機能美の極致。
1947 | USA | Rodeo Ben

アメリカ西部の巻き上がる砂塵の中、荒ぶる牛の群れを追い、手綱を強く握りしめて広大な荒野を馬と共に駆け抜ける猛者たち。彼らカウボーイの鍛え抜かれた肉体を包み、過酷な砂塵の中で輝きを放つブランドがある。〈LEVI’S リーバイス〉、〈Lee リー〉と並び、アメリカ3大デニムブランドの一角を成す〈Wrangler ラングラー〉だ。

先行する2社がゴールドラッシュに沸く鉱夫のためのワークウェアをルーツに持つのに対し、ラングラーの起源は明確に「ウエスタン」にある。それは作業着としてのデニムではなく、カウボーイのための「ギア」であり、同時に彼らを英雄たらしめるための「晴れ着」でもあった。

ブランドの母体となったのは、1904年にノースカロライナ州で設立された「ハドソン・オーバーオール・カンパニー」、後の「ブルーベル社」である。質実剛健なワークウェア作りで定評があった同社だが、1940年代、競合との差別化を図るべく未開拓のウエスタン市場への参入を決意。その足掛かりとして買収したのが〈Wrangler(牧童)〉という商標を持つ「ケーシー・ジョーンズ社」であった。

1947年、ブランド始動にあたり彼らは画期的な決断を下す。ハリウッドの西部劇衣装を手掛けていた伝説的デザイナー、ロデオ・ベン(本名ベンジャミン・リヒテンシュタイン)の起用である。彼は機能一辺倒だったデニムにテーラリングの技術を持ち込み、カウボーイの体にフィットする立体的なシルエットと洗練されたデザインを融合させた。さらに開発段階において、当時のトップロデオ・カウボーイたちによる徹底的なフィールドテストを実施。「11MW」と名付けられたプロトタイプは、彼らのフィードバックを元に改良が重ねられ、1948年に完成形となるジッパーフライモデル「11MWZ」へと結実する。これこそが、現代まで続くラングラーの魂の原点である。ちなみに品番の「11」は試作ナンバー、「M」がメンズ、「W」はウエスタンウェアを表している。

ここには実戦データに基づく独自のディテールが凝縮されている。鞍(サドル)を傷つけないよう突起をなくしたフラットリベットや、激しいライディング中でも懐中時計などの小物が落ちないようベルトラインぎりぎりの高い位置に配置されたウォッチポケット。そしてラングラー最大の発明「ブロークンデニム」だ。従来の綾織りデニムは履き込むとねじれが生じる宿命にあったが、綾目を一定間隔で反対方向に並べることでこの問題を解消。激しい動きでも足にまとわりつかない快適性は本物の男たちの信頼を勝ち取り、1975年には全米プロ・ロデオ・カウボーイ協会(PRCA)の公認ジーンズに認定された。品番を「ラングラー 13MWZ」と改めたその一本は、カウボーイの公式ユニフォームとして絶対的な地位を築いている。

革新性はジャケットにおいても遺憾なく発揮された。初期の傑作「111MJ」は、フロントプリーツと丸いカンヌキ止めが特徴。このモデルをこよなく愛したのがビートルズのジョン・レノンであり、彼の着用によってブランドはウエスタンの枠を超え、ロックやアートの文脈でも語られるファッションアイコンとなった。

さらに機能性を突き詰めた先に生まれたのが「24MJZ」である。ボタンではなくジッパーフロントを採用し、背中には腕の可動域を広げるアクションプリーツ、ウエスト内側にはゴムアジャスターを装備。運動性能を極限まで高めたその機能美は、現代のモードファッションにも通じる洗練さを湛えている。

また、“キング・オブ・クール”と称された名優スティーブ・マックイーンも、ラングラーに魅せられた一人である。彼が愛用したのは、デニムウエスタンシャツの傑作「27MW」。スクリーンの中やプライベートで見せるその野性味あふれる着こなしは、機能美を追求したラングラーの哲学と共鳴し、男のダンディズムを体現するスタイルとして語り継がれている。

カウボーイの正装から、ロックスターやムービースターの相棒へ。ラングラーの歴史は、常に「着る人のパフォーマンスを最大限に引き出す」ことへの挑戦であった。デザイナーの美意識とフィールドのリアリティが交差して生まれた唯一無二のデニム。背後に流れるストーリーや、機能から生まれた必然のデザインに惹かれるのなら、選ぶべきはラングラーだ。そのタフな生地に袖を通した瞬間、読者諸氏の中に眠るフロンティア・スピリットが目を覚ますに違いない。

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