ダサい?いやむしろ渋い!地味だけど実力派なアウトドアブランドの名作【ウェア編】。 エディー・バウアー、ヘリーハンセン、マーモットほか
だから、一枚めくるように目線を少し変えると、ネガティブがポジティブに早着替えする。それは、厳しい自然や競合と渡り合ってきた彼らが、実はすごくできるやつだからだ。冴えない見た目はただの目くらましで、確かな機能性と実用性を備えている。
今回の『knowbrand magazine』では前後編に分け、実力派アウトドアブランドの名作を紹介する。前編は【ウェア編】。ダサい、渋い、地味、味わい深い…。どう感じるかはあなたの目線次第。
“地味だけど実力派”なアウトドアブランド
〈Eddie Bauer エディー・バウアー〉
「Canadian Vest カナディアンベスト」
ダウンジャケットの父が作る
定番ジレ顔ベスト
本稿のトップバッターは〈Eddie Bauer エディー・バウアー〉。袖を通したことがない者でも、その名は知っているだろう。
1920年、アメリカ・シアトルでテニスラケットのガット張りから商いを始めた創業者のエディー・バウアー。1935年の真冬、釣りの帰り道に濡れた体から熱を奪われ、凍死寸前の低体温症に陥った経験から、翌年にキルティングダウンジャケット「Skyliner スカイライナー」を発売。1940年にはアメリカで初めてダウンジャケットで特許を取得。“ダウンジャケットの父”と呼んでも過言ではないブランドだろう。
同ブランドの魅力は、手頃な価格と流行に寄り添わない実直なモノづくり。しかし、その実直さが災いしてか、「おじさんが着てそう」という印象を持たれやすい一面もある。
だが、ここで目線を変えてみよう。そう思われるということは、レトロで渋い空気をスタイルに取り込む格好の素材ともいえる。エディー・バウアーには、それにうってつけの名作が多数ある。紹介するのはその一つ、1953年から発売され続けている「Canadian Vest カナディアンベスト」だ。
クラシックな佇まいが魅⼒。〈EDDIE BAUER エディー・バウアー〉の「Canadian Vest カナディアンベスト」。
このベストを象徴するのが、全面に走るダイヤモンドキルティング。エディー・バウアーのお家芸ともいえる意匠で、ダウンを格子状に区切って偏りを抑え、保温性を均一に保つための構造となっている。ファッションではなく、実用性から生まれたものだが、今ではデザインのアクセントにもなっており、誕生から70年以上、受け継がれている錆びないアイデアである。

フロントジップには、スライダーがやや長く先端が丸い、通称「棒TALON」ジッパーを採用。
本作のもうひとつの見どころが、ジレのようにカッティングされた裾。狩猟やアウトドアの実用着として、上からジャケットを羽織ったり、腰を曲げたり座ったりしても裾がもたつかないよう、V字カットが採用されたそうだ。このドレスウェアのような仕立てのおかげで、アウトドアブランドのダウンベストにしては珍しく、きれいめのシャツにもすんなり馴染む。ボリュームも控えめで、アウターとしてもインナーダウンとしても使いやすい。
特徴的な剣先状の裾デザインはフロントのみ。バックは通常のスクエアシルエット。
歴史が長いブランドの古着をチェックするなら、年代の確認は欠かせない。エディー・バウアーの場合、手がかりとなるのは背裏のタグ。本個体に付くのは、ヴィンテージファンの間で通称「日の出タグ」と呼ばれるもの。日の出タグは1930年代後半から1970年代後半まで使われ、1930年代後半から1960年代初頭の前期、1960年代初頭から後半の中期、1960年代後半から1970年代後半の後期に分かれる。本個体は前期のタグで、「Blizzard Proof」の文字にまだレジスターマークが入っていないのが見分けのポイント。つまり、短く見積もっても60年以上前のアイテムということになる。
カナディアンベストは現行品も販売されているので、ぜひ見比べてみてほしい。ヴィンテージ品は、新人俳優には出せない、まるで舘ひろしのような円熟の色気をまとっているのがわかるはずだ。

ヴィンテージファンの間でも知られる通称「日の出タグ」。復刻モデルにも採用されるなど、今も人気が高い。
表面にキルティングステッチを出さず、街着にも馴染むデザインで人気を集めた「All Purpose オールパーパス」、1953年のアメリカのK2遠征隊のために作られた極地用ダウンパーカ「Karakoram Parka カラコラムパーカ」など、エディー・バウアーの名作はほかにもある。どれも見た目の派手さはない。だが、堅実に人々の体を温め続けてきた。それこそが、このブランドが100年以上続いてきた理由なのだろう。
実は、21世紀に入ってからアメリカでは運営会社の経営破綻が3度起きている。それでも、凍死寸前の寒さから生まれたブランドは、何度冷え込みに見舞われてもしぶとく生き延びてきた。倒産くらいでは倒れない。さすがはダウンジャケットの父。父さんは強い。
(→〈エディー・バウアー〉の「ベスト」をオンラインストアで探す)
“地味だけど実力派”な
アウトドアブランド
〈Penfield ペンフィールド〉
「Outback Vest アウトバックベスト」
80〜90年代に一世を風靡
同業の老舗が保証する確かな実用性
ダウンベストからもう一着。1975年、アメリカ・マサチューセッツ州で創業した〈Penfield ペンフィールド〉の「Outback Vest アウトバックベスト」だ。
1970年代末には日本でも販売が始まり、80〜90年代には百貨店などでも扱われるように。機能性と街着としてのデザイン性を両立した“ファッションアウトドアブランド”として、ダウンやフリースを中心に一世を風靡した。オアシスのノエル・ギャラガーも着用するなど、音楽カルチャーの文脈でも名の知れたブランド。ここで紹介するアウトバックベストは、ペンフィールドでブランド初期から続く定番品だ。
アウトドア然としすぎない、端正な佇まい。〈Penfield ペンフィールド〉の「Outback Vest アウトバックベスト」。
原型は、1978年にリリースされたダウンベスト「Denver デンバー」。そこから改良を重ねてアウトバックベストが誕生した。通称「60/40クロス」(コットン60%・ナイロン40%)の表地に、オリジナルのプレミアムグースダウン(ダウン80%・フェザー20%)を詰めた王道仕様。「軽くて暖かい」。実用的なアウターにとって最高の褒め言葉を、きっと何万回と浴びてきただろう。

“P”に熊を配したシンボルマークは、ダウン製品の暖かさと自然への優しさを表している。
シンプルな一着だからこそ、デザインでの勝負どころは配色。とくに見てほしいのが表と裏の2トーンだ。本個体は表がベージュ、裏がネイビー。この裏地の色を、コーディネートとどう合わせるかが大事。裏地はほとんど見えないからといって「関係ないね」と思ってはいけない。前を開けたとき、腕を上げたとき、裏地は意外と顔を出す。その一瞬で、ダサくもなればカッコ良くもなる。分かれ目は、案外こういう細部にある。

お馴染みのロゴデザインは左胸、そしてボタンにも。ブランドの意匠が細部にまで息づいている。
では、肝心の中身はどうか。その実力は、同業の老舗が証明してくれている。ペンフィールドは70年代から80年代にかけて、〈L.L.Bean エル・エル・ビーン〉や〈Eastern Mountain Sports イースタン マウンテン スポーツ〉といった老舗アウトドアブランドの生産も請け負っていた。新興ブランドが、老舗から生産を任される。これ以上ない評価の証だろう。
また、1981年にモルデンミルズ社が〈Patagonia パタゴニア〉と共同開発した「ポーラフリース」(現在のポーラテック)を使ったフリースも、80年代前半にはいち早く販売している。今でこそ地味に見えても、当時は新しい挑戦を重ねる新進気鋭のブランドだったのだ。

両サイドには、斜めに切り替えられた大きなフラップ付きポケット。さりげなく配された脇のピスネームもポイント。
本個体はアウトバックベストの基本形ともいえるデザインだが、「やっぱ地味かも」と思うなら、レザー切り替えやウールツイードなどのモデルをおすすめしたい。さらに、ペンフィールドは、〈JOURNAL STANDARD ジャーナルスタンダード〉のようなセレクトショップから、〈STUSSY ステューシー〉〈X-LARGE エクストララージ〉といったストリートブランド、〈Rag & Bone ラグ アンド ボーン〉のようなデザイナーズブランドまで、コラボ実績が豊富。この錚々たるメンツを見れば、もう地味なんて言わせない。相手のフィールドに合わせて華麗に“PEN身”してきたのだ。
(→〈ペンフィールド〉の「ベスト」をオンラインストアで探す)
“地味だけど実力派”な
アウトドアブランド
〈HELLY HANSEN ヘリーハンセン〉
「EQUIPE エキップ」シリーズ
派手顔の裏に隠れた、
海・雪山仕込みのハイスペック
続いては、1877年にノルウェーで創業し、海や雪山でも活躍するウェアを作り続けてきた〈HELLY HANSEN ヘリーハンセン〉。創業者のヘリー・ユール・ハンセンは、14歳から海に出ていた叩き上げの船乗りで、北欧の荒れた海でずぶ濡れになる冷たさを、誰よりも知っていた男。その冷たさから船乗りを守るべく、粗い麻布に亜麻仁油を染み込ませた防水ウェア「オイルスキン」を作ると、これが評判を呼び、創業翌年の1878年にはパリ万博で表彰され、その後、海や雪山の第一線で活躍するブランドとして地位を築くことになった。
そのヘリーハンセンの代表作は、セーリングをルーツに持つ「Formula Jacket フォーミュラジャケット」だが、今回は、90年代に展開されていた高機能ギアライン「EQUIPE エキップ」のアウターを紹介する。
〈HELLY HANSEN ヘリーハンセン〉の「EQUIPE エキップ」シリーズのアウター。山でも街でも断然主役の配色。
地味とは対極となるド派手なカラー。ターコイズ×パープルしか記憶に残らないほど、あまりに鮮烈だ。数十年の時を経て多少ボディは色褪せてはいても、圧倒的なインパクトは損なわれていない。脇下や首裏にさりげなく差された赤も、いい仕事をしている。
ただ、この配色は80〜90年代のスキーウェアそのもの。当時はおしゃれでも、令和の目で見ればダサいと思われかねない。地味な服だけでなく、派手な服にもおしゃれとダサいの境目は潜んでいるのだ。

首裏のタグには、ブランドを象徴する「HH」ロゴ。1989年から使われ続けている、お馴染みのロゴだ。
だが、エキップは高機能ライン。見た目だけで判断できるウェアではない。フロント左右のフラップ付きジップポケットの脇には縦方向のジップがあり、開けば内部のメッシュが現れてベンチレーションになる。背面中央にも同じ構造を備え、ウェア内の通気に気を配った作りだ。

前・後・脇。随所に設けられたベンチレーション。通気性が重要な環境での使用に適したディテールはお手のもの。
裏地には通気性の良いメッシュ生地。そして、裏ポケットの下に「Helly-Tech by Helly Hansen」のタグが付いている。これは、同社が1984年に開発した独自の防水透湿素材「Helly-Tech ヘリーテック」を使っている証。雨や風を遮り、内側の湿気は外へ逃がす。海で培った防水の技術は、ここにも生きている。
ヘリーテックは今日まで進化を続け、現行のウェアにも受け継がれている。

裏地はメッシュ。「The waterproof breathable」(防水透湿)と記載された「Helly-Tech」のタグが付く。
機能だけではない。遊び心も隠れている。襟の後ろ側に設けられた三角形のパーツには「equipe」の刺繍。襟を寝かせれば隠れ、立てると姿を現す。この部分に「HH」ロゴが刺繍された個体も確認されているので、何が刻まれているかは、見つけて襟を立ててのお楽しみ。徹底的に合理化された現代のウェアではなかなか出会えない、心憎い仕掛けである。

遊び心が詰まった襟裏。「EQUIPE」のアイコンとブランドロゴも入る。
エキップシリーズは本モデル以外にも複数のアイテムが存在し、言わずもがな、いずれも高機能。カラーリングも多彩で、派手顔から地味顔まで色とりどり。共通するのは、80〜90年代の空気をまとったパネル構成と、その裏に仕込まれた本気の性能だ。
船乗りを濡らさないために生まれたブランドは、どれだけ派手な衣装をまとっても本分を忘れない。そんなブレないところがエキップシリーズのカッコ良さだ。
(→〈ヘリーハンセン〉の「アウター」をオンラインストアで探す)
“地味だけど実力派”な
アウトドアブランド
〈Marmot マーモット〉
「Mountain Parka マウンテンパーカ」
“生きて帰る”ための赤
ゴアテックスを山に持ち込んだ先駆者
先ほどとは毛色の異なる派手顔を。〈Marmot マーモット〉から90年代にリリースされた「Mountain Parka マウンテンパーカ」を紹介しよう。
1974年、アメリカ・コロラド州で設立されたマーモット。大学の登山サークル「マーモット・マウンテン・クラブ」をルーツに持つ、根っからの本格派だ。創業早々、クリント・イーストウッド主演の山岳映画『アイガー・サンクション』(1975年公開)の撮影のために108着ものジャケットを依頼され、わずか1週間で「Golden Mantle ゴールデンマントル」を設計して無茶ぶりに応えたという逸話もある。
眩しいほどの赤にも負けない機能美が映える、〈Marmot マーモット〉の「Mountain Parka マウンテンパーカ」。
このマウンテンパーカは、ブランドカラーでもある赤がとにかく眩しい一着。派手なファッションカラーに見えるかもしれないが、マーモットの赤は街で目立つための色ではない。ウェアは極限の雪山や厳しい山岳環境に挑むアルピニストにも愛用され、ブランドは長年「FOR LIFE」という言葉を核に掲げてきた。白一色の雪山や、ガスに包まれた稜線でも、赤は遠くからよく目立つ。命を預ける装備だと考えれば、この赤は派手さではなく、“生きて帰るための色”に見えてくる。

90年代の旧タグに⾒られる、赤枠のデザインと「TM」マーク。これ以前のブランド初期は、動物が描かれたまったく異なるタグだった。
本作は、表地にゴアテックスメンブレンを貼り合わせた2層構造「2 Ply GORE-TEX」のシェル。雨や風を防ぎながら、ウェア内部の湿気を外へ逃がす、防水・防風・透湿性を備えている。ここまで読むと、「よくあるもの」と思うかもしれない。現在はもちろん、本作が発売された90年代もゴアテックスのマウンテンパーカは多数存在した。だが1976年、この素材をいち早くアウトドアギアに取り入れたのが、ほかならぬマーモットだった。今の当たり前は、この先駆者の上に成り立っている。
内側に「2 Ply GORE-TEX」のタグ。素材構成まで詳しく記されているのは、機能素材が今ほど浸透していなかった時代ならでは。
デザインも見ていこう。両胸は大きなフラップ仕様。ボタンとジップを開けると、内部にはベンチレーションと収納に使える隠しポケットが現れる。前肩のブランドネーム入りの切り替えも、マウンテンパーカではあまり見かけない意匠。割と似たデザインが多い90年代のマウンテンパーカの中で、本作は独自性が光る。
また、付属のフードを取り付ければ印象がガラッと変わる。街での実用的な出番は少なそうだが、スタイルに強いアクを加える武器になる。
左胸のロゴ刺繍は90年代限定のデザイン。胸元の隠しポケットには、人に見られたくないものも忍ばせられそうだ。
着脱式のフードは、首元まですっぽり覆うハイネック仕様。まさに本気の山仕様だ。
ところで、ここまで〈MAMMUT マムート〉と勘違いしながら読んでいないだろうか? 今回は大丈夫でも、過去に一度は間違えたことがある者はいるはずだ。
1974年にアメリカで生まれたマーモットと、1862年にスイスで生まれたマムート。まったくの別ブランドだが、名前も色使いもなんだか似ていて、両者を取り違えている人を時々見かける。
見分け方は動物だ。マーモットは山岳地帯に暮らすリスの仲間、マムートはドイツ語でマンモス。リスとマンモス。並べてみれば、大きさも時代もまるで違う。
だが、本稿の執筆に使用した文章作成ソフトで「マーモット」と入力したら、赤の波線が付き、「マムート」への修正を促してきた。コンピュータですら取り違えるのだから、人間が間違えるのも無理はないだろう。
(→〈マーモット〉の「マウンテンパーカ」をオンラインストアで探す)
“地味だけど実力派”な
アウトドアブランド
〈MOONSTONE ムーンストーン〉
「Down Jacket ダウンジャケット」
自ら光らず渋さ100%
レスキュー用の寝袋が起源
ラストスパート、残りは2着。ここからは、とってもヘビーなアウターをお届けする。まずは、1977年にアメリカ・カリフォルニア州アーケータでフレッド・ウィリアムズが創業した〈MOONSTONE ムーンストーン〉の「Down Jacket ダウンジャケット」から。
ムーンストーンは、クライマーとしてマウンテンレスキューにも携わっていたフレッドが、レスキューチームのために立体裁断を取り入れたポーラーガード綿のスリーピングバッグ(寝袋)を開発したことから始まったブランド。その後、1980年代にはアパレル分野へ進出し、本格的なアウトドアウェアを手がけるブランドへと成長した。
スタイルも着る者も選ばないシンプルさ。〈MOONSTONE ムーンストーン〉の「Down Jacket ダウンジャケット」。
ムーンストーンには、ゴアテックス製ハードシェルとして絶大な人気を誇った「Advantage Parka アドバンテージパーカ」や、暖かく機能的なフリースなどの人気作もあったが、ここではダウンジャケットを紹介する。
なにせ、寝袋から始まったブランドである。体を包み込み、熱を逃がさないためのノウハウはお手のもの。
画像を1枚見ただけでも伝わってくる、このボリューム感。グースダウン100%が、極寒の地でも確かな暖かさをもたらしてくれる。

お馴染みのブランドロゴ。名は、生産拠点となった北カリフォルニアのムーンストーンビーチに由来する。
本作は、80〜90年代にアウトドアブランドがこぞってリリースしたボックス型のオーソドックスなシルエット。それをロゴ以外オールブラックでまとめている。奇抜な配色のアウターも多かった80〜90年代にあって、その流れにはあまり乗らなかった。機能にこだわり、余計な装飾を抑える。その姿勢がムーンストーンらしさなのかもしれない。
左胸にブランドロゴをワンポイントで。暗闇のなかで月だけが光っているデザインは偶然か狙い通りか。
ただ、アウトドアブランドがひしめき合った80〜90年代、確かな機能性で一定の支持を得ながらも、どちらかと言えば目立たない存在だった。控えめな配色が災いしたのだろうか。あるいは、名前そのものが原因か。月は自ら光を放たない。ブランド名を付けたときから、その運命は決まっていたのかもしれない。
そしてムーンストーンは、1995年に創業者がブランドを売却したのち、幾度かの買収を経て、2006年に〈Columbia Sportswear Company コロンビアスポーツウェアカンパニー〉に買収され、ブランドとしての歴史に幕を下ろした。日本ではライセンスを持つ企業がその後数年間、独自に企画・製造・販売を続けていたが、そちらもすでに終了している。
今、手に入れるならリユース市場一択。店頭やネットで掘って掘って見つけ出し、あなたが太陽となって輝かせてほしい。
(→〈ムーンストーン〉の「ダウンジャケット」をオンラインストアで探す)
“地味だけど実力派”な
アウトドアブランド
〈REI アール・イー・アイ〉
「EXPEDITION エクスペディション」
シリーズ
「Cascade Parka カスケードパーカ」
日本では手に入れること自体が冒険だった、
米国“生協”の本気ダウン
ウェア編のトリは〈REI アール・イー・アイ〉より、「EXPEDITION エクスペディション」シリーズの「Cascade Parka カスケードパーカ」だ。アウトドア通ならご存知かもしれない。ただし、日本では直営の流通がほとんどなかったため、ここまで紹介してきたブランドの中では、日本での知名度はやや劣るだろう。
REIは、1938年にシアトルで創業したアウトドア用品専門チェーン「Recreational Equipment, Inc. レクリエーショナル・イクイップメント・インコーポレイテッド」のオリジナルブランド。買い物をする客が会員として店を支え、利益の一部が会員に還元される、いわば“アウトドアの生協”という仕組みを採っている。
現在も米国最大級の規模を誇るアウトドアの老舗として君臨し、店頭には自社商品だけでなく、〈THE NORTH FACE ザ・ノース・フェイス〉や〈Patagonia パタゴニア〉をはじめとする名だたるブランドが並ぶ。
圧倒的なボリューム感と本格的なギア感を備えた、〈REI アール・イー・アイ〉の「Cascade Parka カスケードパーカ」。
エクスペディションシリーズは、REIが1970年代〜80年代初頭に展開した、過酷な冒険・探検を想定した本格ギアライン。カスケードパーカはザ・ノース・フェイスの名作「Sierra Parka シエラパーカ」を参考にしたと言われ、見比べると確かに似ている。店頭で扱う商品をサンプリングして、プライベートブランドで売る。令和なら大問題になりかねないが、当時はREIに限らず、よくあることだったのだろう。

ブランド名と山岳を意識したデザインが印象的な、1970年代の背タグ。
カスケードパーカは、基本的に単色デザインで、ここで紹介しているオレンジ以外に、緑や青などがあったことも確認できている。素材もリップストップナイロン、ナイロンタフタ、60/40クロスなど複数あったとされる。月日を経た生地には良い風合いが出ており、リペアが施された個体も少なくない。本個体も、肘のあたりにリペア跡が残る。これもヴィンテージならではの味である。
大容量のフラップポケット。袖口はボタンでフィット感を調整でき、風の侵入もシャットアウトする。
シルエットはゆったりとしており、フロントはジップとボタン留めのフラップの二重構造。グースダウンがボディにもフードにもたっぷり入っていて、フードのドローコードを絞れば首まわりまで包み込む。これらのディテールを見れば一目瞭然だが、ファッションとしてのダウンというより、寒さから身を守るためのギアだ。
街中では明らかなオーバースペック。だが、そのやりすぎ感こそが、ガチなアウトドアブランドの魅力でもある。
迫力あるボリュームのフードは一体型。シエラパーカは着脱式だが、この違いは街向けか山向けかにあるようだ。
当時、日本には販路がなく、カスケードパーカを手に入れるのは困難だった。それでも一部のマニアは現地からカタログを取り寄せ、英語のオーダーフォームを書き、郵便為替で購入していたという。ネットショップどころか、メール注文すらない時代。一着を手に入れるために、今では味わえない冒険をしていたのだ。
そんなREIだが、実は一度、日本に上陸している。2000年、東京・町田に直営店をオープンさせたのだ。結果は、わずか14ヶ月で閉店。そのまま日本から撤退となる。鳴り物入りで日本にやってきた米国アウトドア界のメジャーリーガーは、全くホームランを打てず、早々にサヨナラしてしまった。
(→〈アール・イー・アイ〉の「アウター」をオンラインストアで探す)
「ダサい」「地味」という先入観を持って見ていたブランドもあったはずだ。だが、今回紹介したブランドには、ダウンジャケットやゴアテックスのアウターなど、今では当たり前になったものを早くから形にしてきた実績があった。地味に見えるのは、その功績があまりに自然に世の中へ溶け込んでしまったからなのかもしれない。
知ってから手に取れば、同じ一着がまるで違って見える。それはきっと、ネガティブからポジティブへの早着替えが完了したからだ。そして袖を通せば、今も色褪せない暖かさや機能に、使い込まれた見た目以上の説得力を感じるだろう。
同じことは、バッグ、シューズ、ヘッドギアなどにも当てはまるはず。その答えは、後編の【ギア編】で紐解いていく。アウトドアの王道とは少し異なる、「あった、あった」と声が出そうなブランドを揃えているので、こちらもお見逃しなく。
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