FASHION
History of Down Jacket.

時代やテクノロジーとともに変化し続ける、ダウンジャケットの歴史。

真冬の肌を突き刺すような寒さから身を守ってくれる、ダウンジャケット。暖かいのはもちろん、独特のシルエットがコーディネートの幅を広げてくれるこのアイテム、洋服好きなら冬のワードローブとして1着は手に入れているのではないだろうか。

アウターとしてのダウンジャケットから、動きやすくアウトドアシーンで活躍するダウンベスト、そしてその薄さからコートのインナーや室内着としても活躍するインナーダウンまで、今日ではさまざまなタイプが存在。

冬の定番として親しまれているが、実はこのダウンジャケット、日本に定着してからまだ20年程度であるということをご存知だろうか。

そこで今回、knowbrand magazineでは時代のニーズに応じて変化してきたダウンジャケットの歴史を紐解きながら、その機能性やデザインの魅力などを見ていこうと思う。読者のライフスタイルにマッチした1着を探すための一助となれば幸いである。

世界初のダウンジャケットは、
Eddie Bauerの手により生まれた。

そもそもダウンジャケットは、どのようにして誕生したのだろうか。

その誕生はおよそ80年前。きっかけは、ある男の危険な体験からだった。アメリカの老舗ブランド、Eddie Bauerの創始者であり、当時スポーツ用品店を営んでいたエディーは、真冬のある日趣味の釣りに出かけた。だが道に迷ったあげく低体温症となり、凍死寸前にまで陥ってしまったのだ。なんとか一命を取り留めた彼は、防寒機能に優れたフィッシングのウェアの開発に動き出す。彼はロシアの人々が寒さをしのぐために用いていた羽毛という素材に着目。アウターの内側に羽毛を封じ込めた上で、ダウンが偏らないようキルトステッチを施すという製法を生み出し、特許を取得した。

こうして1936年に生まれたのがダイヤモンド型のキルトを施した「Skyliner スカイライナー」。これが世界初のダウンジャケットとなったのである。独特の雰囲気を醸し出すステッチや、ハンドウォーマーとしても機能する大きめのポケット、そして風の侵入を防ぎ、体温を逃さない首元や袖口のリブなど、プロトタイプとは思えないほど高い完成度の一着。バウアーダウンならではの「日の出タグ」と呼ばれる大きめの織りタグも注目してほしい。

登山や釣りの際に着用する
「アウトドアギア」として定着。

Eddie Bauerの手により、冬のフィッシング用に開発されたダウンジャケット。その軽さと防寒性の高さから登山愛好家からも重宝され、1970年ごろには「ギア」として定着。他のアパレルブランドも類似アイテムを開発することで、普遍的かつ完成されたデザインのマスターピースが多く登場することになる。

米国最古のブランドであり、アメリカンカジュアルの象徴ともいえるバッファローチェックの生みの親であるWOOLRICHが1972年に世に送り出したダウンジャケット「Arctic Parka アークティックパーカー」もそのひとつだ。原型はアラスカでパイプライン建設に従事するハードワーカー達の為の耐寒ウエア。マイナス数十℃という極寒地での作業に耐え得る保温性と悪天候に備えた撥水性に加え、透湿性と軽量化をも実現した1着であった。そのDNAは現代まで受け継がれ、まさに同ブランドのアイコンとなっている。

しかしながら、当時の製品は防寒性を追求するがゆえにボリュームのあるフォルムで、表生地も綿素材やナイロンといったタフな素材が一般的。あくまでアウトドアズマンやワーカー達が防寒のために愛用するもので、トレンドとは無縁のアイテムであった。

ヨーロッパにおいて、ダウンウェアが
ファッションとして認知され始める。

1980年代半ば頃になり、デザイン性の高いダウンジャケットが作られ始めると、フランスやイタリアを中心にファッションアイテムとして認知され始める。

その同時期、バブル景気に沸いていた日本はデザイン性重視のDCブランドブーム。ヘビーアウターの定番は、もっぱらウールコートやスタジャンなどであった。一部のブランドやメーカーがダウンジャケットを発売するとともに、色鮮やかなラインや切り替えなどが施されたスキーウェアとしてのダウンジャケットも展開されていたようだが、街着として浸透するまでには至らなかった。

ストリートウェアの流行とともに
日本でも定番アウターとして浸透。

日本においてダウンジャケットが真冬のアイテムとして浸透し始めたのは1990年代。80年代のDCブランドブームの反動なのか、シンプルでベーシックなアイテムを使ったストリート系ファッションへと世のトレンドは移ってゆく。

ダウンジャケットが日本に普及するきっかけとなった伝説的傑作が、1992年にリリースされたこのTHE NORTH FACEの「Nuptse Jacket ヌプシジャケット」。ネパールの山岳からその名をつけられたことでもわかるように、登山向けに開発されたこのモデルは、優れた保温性とシンプルで洗練されたシルエット、そして何より軽量な点が人気を呼び、四半世紀にわたり人気を保ち続けている。

機能美と呼ぶにふさわしいシンプルで飽きのこないデザインと、それを支える揺るぎない品質により、若者を中心に爆発的な人気となった。発売当初である1990年代には、その独特のファットなシルエットがヒップホップのシーンで人気となり、アーティストやダンサーがこぞって着用。近年ではSupremeが定番的にコラボレーションし続けているモデルとしても知られている。

2000年代、
ダウンジャケットは多様化してゆく。

2000年代を迎え、完全に市民権を得たダウンジャケットは、アウトドアブランドだけではなく、様々なアパレルブランドからもリリースされるようになり、デザインの多様化が一気に進んだ。その結果、幅広いニーズやスタイルに対応できるアイテムが増え、ダウンジャケットは様々な年齢層に着用されるようになる。

ダウンジャケットの多様化のひとつといえるのが、ラグジュアリー化だ。その立役者といえばMONCLER。かつてはテントやシュラフなどの登山用品を扱っていたブランドながら、miumiuやGUCCIでデザインを手がけてきたアレッサンドラ・ファキネッティが2006年にクリエイティブディレクターに就任したことにより、一躍世界的なブランドへと成長。高額ながらも上品な光沢が特徴のシャイニーナイロンや洗練されたデザインが人気となり、日本においてもラグジュアリーダウンジャケットの代表的ブランドとしての地位を確立することとなる。写真の「Montgenevre モンジュネーヴル」はシェルにウール生地を採用することにより、スーツやクラシックスタイルにも対応できる人気モデルである。

ダウンジャケット=アウトドアというイメージも、もはや過去の話となりつつある。イタリアを代表するアウターブランド、HERNOがリリースしているのは、ドレッシーに着こなせるテーラードタイプのダウンジャケット。カシミアコートなどを中心に製造していたブランドらしく、アウトドア系のジャケットとは一線を画すエレガントなデザインで高い人気を誇っている。ダウンパックを使わず羽毛を直接生地の間に注入することで、薄手・軽量でありながらダウンジャケットとしての機能性は保っているという点にも注目。テーラードタイプのダウンは、メンズにおける新定番のスタイルではないだろうか。

近年のダウンジャケットの多様化の中で生まれた傑作で外せないアイテムがある。それまでアウターという立ち位置であったダウンジャケットを中間着として活用することを一般化したインナーダウンだ。生み出したのは日本のアウトドア総合メーカーmont-bell。mont-bellは、アウターではなく、中間着としての用途を念頭に薄手で軽量なモデルを開発。重ね着した時の襟の干渉までも考慮されたノーカラーのミニマルなデザインが誕生した。まさに秋冬のコーディネートの幅を格段に広げた傑作といえよう。

一方で、かつてのモデルをアップデートするという手法もみられる。日本にダウンジャケットを浸透させたTHE NORTH FACEで、近年特に高い人気を誇るのが「Baltro Light Jacket バルトロライトジャケット」。元々このモデルは1990年代より極地探検で用いられていた本格仕様のジャケットだったのだが、2012年以降リリースされるモデルには遠赤外線効果のある特殊セラミックを練りこんだ光電子ダウンを採用、表生地もウインドストッパーに変更するなど、素材や仕様を時代に合わせ進化させたのだ。その機能性の高さが人気を呼び、新しいモデルがリリースされる度にプレミア価格となるほどの人気を誇っている。

またハイスペック化を実現し、ダウンジャケットのさらなる可能性を追求し続けている日本のスポーツウェアブランドがDESCENTEだ。2008年、DESCENTはバンクーバー冬季オリンピックの日本選手団のために開発した「水沢ダウン」を発表。初期より展開されている「MOUNTAINEER マウンテニア」は、熱圧着やシームテープなどを用いたシームレス仕様を採用することにより、キルティング部分や縫い目からの水分の侵入を防ぐつくりとなっている。



この高い機能性によりダウンジャケットにおける人気ブランドとなり、2012年には機能性とデザインを融合させた「DESCENTE ALLTERRAIN デサント オルテライン」シリーズも誕生している。

ライフスタイルにマッチした
ダウンジャケットを探す楽しみ。

元々は寒さから命を守るために生まれたダウンジャケット。

いまやアウトドアギアとしての機能性だけではなく、冬の装いを彩るファッションアイテムとしての魅力も兼ね備えた、冬のマストアイテムとなっている。

仕事も生き方も多様化した現在、我々には様々な選択肢がある。ダウンジャケットもまたしかり。

ハイスペックな洗練されたデザインの、最新モデルに袖を通すも良し。歴史に思いを馳せながら、味わい深いヴィンテージの逸品を探すも良し。

決して安くはないアイテムであるがゆえに、そこにはじっくりと自分なりの1着を探す楽しみがある。あなたのライフスタイルや趣向に合った、生涯をともにしたいと思えるダウンジャケットを見つけて欲しい。

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