FASHION

欲しいのは“本モノ”のダウンジャケット ケース・バイ・モンクレール

暦の上での夏はとっくに過ぎ去るも、新型コロナウィルスの蔓延により一変したままの世界。あれ以来、家で過ごす時間も増えたことで、モノに溢れかえった自身のクローゼットと改めて向き合ったという人も多かったのでは?そしてその結果、気付いたはずだ。我々は本当に必要なモノ、略して“本モノ”を手に入れるべきだと。

だが、その魅力を知り、吟味し、決心するには少なからず時間を要する。かといって対策なしに未来に進むのは、あまりにも無謀。冬ならば寒さに身を晒し、風邪をこじらせるのが目に見えている。ゆえにその助走期間である今のうちに、冬の寒さをものともしない“本モノ”の「ダウンジャケット」を作る二大トップブランドを2週に渡ってフィーチャーする! と、いうわけだ。

出発点は、手足の出せる防寒用シェラフ
極地ヒマラヤを経て今やセレブ御用達。

今回はその第1弾。ハイエンドなダウンジャケットとして確固たる地位を築き、世界的人気を誇る〈MONCLER モンクレール〉にフォーカスする。まずは歴史をプレイバック。1952年、レネ・ラミヨンとアンドレ・バンサンの2人が、フランスはグルノーブル郊外のモネステ・ド・クレァモンにて設立。ブランド名は、この土地の名前(Mon)estier de(Cler)montに由来する。

元はテントやシェラフやウェアなど登山家のための装備を手掛けていたが、工場で働くスタッフの防寒用に作製した手足を出せるシェラフが、今へと続くダウンウェアの原型に。

以降、同ブランドは、フランス人初のヒマラヤ登頂を成し遂げた登山家、リオネル・テレイをアドバイザーに向かえ、ダウンウェアの本格的な製造に着手していく。アルピニストだからこその経験を基にしたアドバイスから開発のヒントを得ることによって、品質と機能性にこだわった製品を次々と世に作り出していくことに成功。その後、イタリアのカラコラム登頂隊(1954 年)、アラスカ遠征隊(1964年)にダウンジャケットを提供すると、モンクレールの名は信頼の証に。やがてスキーウェアにも進出。1968年のグルノーブルオリンピックでは、フランスアルペンスキーチームの公式サプライヤーに就任し、世界的にも認知が拡大。

やがて1980年代には、セレクトショップなどでダウンジャケットが置かれるように。その品質の高さから、イタリアを中心にファッションアイテムとしても人気を博してゆく。さらなる飛躍の契機は2006年。〈miumiu ミュウミュウ〉や〈GUCCI グッチ〉でデザインを出掛けてきたアレッサンドラ・ファキネッティのクリエイティブディレクター就任により、ブランドの代名詞であるタイトシルエットが洗練さを増し、さらなる人気を呼ぶことに。こうして一躍世界的なブランドへと成長し、現在に至る。では、ここからは世界中のセレブたちからも愛される、マスターピースの数々を見ていこう。

「EVEREST エベレスト」
アウトドアギアにもたらした高級感
世界最高峰の名に恥じない傑作。

まずは“世界最高峰”の名を冠する傑作「EVEREST エベレスト」。ベースとなったのは、ブランド初期から存在する「VENIS ベニス」。元々の重厚感のあるフォルムを、タイトなショート丈へとアップデート。本モデルにおいて特徴的なのが、表地に使われている「ラッカーナイロン」。艶やかな光沢感から「シャイニーナイロン」とも呼ばれるこの新たな素材は、ギア要素の強いダウンジャケットに高級感という新たな要素をもたらしたのである。

さらにもう1点特筆すべきは、上腕部で誇らしげに主張するロゴワッペン。ブランドの頭文字Mとフランスの国鳥である雄鶏がデザインされ、配色も赤・青・白のトリコロールカラー。一目でフレンチブランドと分かる洗練されたロゴは、先述したグルノーブルオリンピックを機に世界中に知れ渡り、モンクレールの人気を決定付ける1つの要因となった。

世界最高峰の名を冠する「EVEREST エベレスト」。ブランドの代名詞となるタイト&ショート丈の元祖的存在。

腕には大きめのワッペン。フランスの国鳥・雄鶏をトリコカラーで表現したロゴは、まさにフランスブランドならでは。

フロントはジッパーとボタンの2段構造で、風の侵入を防いでくれる。裾のドローコードで裾幅の調節も自由自在。

ちなみに、日本におけるブレイクの火種となったのもこのエベレスト。2005年、某通信会社大手のインターネットサービスのCMで、ファッションアイコンとして人気を博していた木村拓哉が同モデルのパープルを着用したのだ。この出来事により急激にプレミアム化が進み、市場でも枯渇。カリスマたるや恐るべし。だが残念ながら今では廃盤。リユースマーケットで見かけたら、在りし日の隆盛とカリスマの姿に思いを馳せつつ、即捕獲を推奨する。

「K2 ケーツー」
1954年生まれの名作「カラコルム」に
タウンユースでの汎用性をプラス。

ベースとなったのは1954年、イタリアのカラコルム登頂隊のスポンサーとなった際に作られた「KARAKORUM カラコルム」。元々のプロユースな風貌をスリム&ショートにアレンジすることで、タウンユースでの汎用性を獲得。さらにブランドアイコンでもある特大ロゴワッペンが胸ポケットで主張する。2列に配置されたフロントのスナップボタンは、インナーの厚みに合わせて調整可能。意図したデザインなのかは別として、なかなかに気の利いたギミックだ。

街着としても合わせやすいショート&スリムが特徴の「K2 ケーツー」。左胸には大型のロゴワッペンがアピール。

フロントのスナップボタンは2列になっているので、インナーの厚みに合わせて2通りの身幅で着こなせる。

ちなみに「K2 ケーツー」とは、Karakorum No.2=カラコルム山脈測量番号2号の意。エベレストをも凌ぐ登頂難易度を誇るこの世界第2の高峰から、その名が付けられた。モンクレールの人気が日本でも高まり始めた2006年頃には、前出のエベレストと同様に完売続出。だが残念ながらこちらも現在は廃盤。今ではプレミアムダウンの栄枯盛衰を象徴する1着として、アーカイブに収まっている。

「MAYA マヤ」
ラッカーナイロンの光沢と深みが
リュクスな雰囲気をさらに際立たせる。

続いて取り挙げる「MAYA マヤ」は、1980年代のアウターをイメージソースに、カラコルムに並ぶ定番「HIMARAYA ヒマラヤ」を現代風アプローチで再構築したもの。現行の定番メンズコレクションの中では、ラッカーナイロンの使用が唯一明示されているモデルでもある。スキーの分野で培った最先端技術に、街でも着やすい着丈短めのコンパクトなシルエット。そこに素材が放つ強い光沢と深みが加わることで、リュクスな雰囲気もより際立っている。

「MAYA マヤ」。こちらのベースモデルになっているのが定番「HIMARAYA ヒマラヤ」。

左袖にはフラップ付きのポケットが。小銭やちょっとした小物の収納に役立つ、気の利いた意匠。

さて、ここまではデザインを中心に紹介してきたが、ダウンジャケットで最も重要なのが、封入されたダウンであることは今さら言うまでもない。一般的にダウン=羽毛と解されているが、羽毛にもフェザー(羽根)とダウン(羽根と羽根の間に生える綿毛)の2種類が存在し、このうちダウンウェアに用いられる羽毛は、水鳥から採られるのが一般的。とりわけグース(鵞鳥)とダック(家鴨)が主となる。ではハイエンドダウンジャケットの代名詞のお眼鏡に叶うダウンとは、どういったモノか。

モンクレールで使用されるのは、フランスはペリゴール地方の綺麗な水で豊かに育ったホワイトグースの羽毛。プレミアムダウンとも称されるソレは、一般のダウンと比べて体積辺りの密度が高いため保温力に優れ、それでいて非常に軽量。しかも品質は最高級。タグに刻まれた「キャトルフロンコ」はその証明である。

キャトルフロンコ……それはフランスダウンフェザー協会が、空気の包含力や断熱力など幾重にも及ぶ認定基準をクリアした最高品質のダウンにのみ贈る4つのマーク。これを獲得するために、専用扇風機で一定量の空気を送り込み、遠くに飛んだ羽毛のみを採用するという非常に厳しい管理下で素材の選別を行うため、生産量が限定されてしまうというデメリットも。にも関わらず一貫してこの生産体制とクオリティを保ち続けてきたのだから、世の人々が魅了されるのも頷ける。しかも2017 AWシーズンからは、さらに産地などの保証性の高い「DIST」表記に。品質の追求、それこそがモンクレールの至上命題なのである。
(→「ダウン」に関する別の特集記事はこちら

製品タグの左下にある綿のような4つのマークが「キャトルフロンコ」。 意味は“4つの羽根”。

2017 AWシーズンから、これまでのキャトルフロコン表記が「DIST」表記に。「DIST」とは、DOWN INTEGRITY SYSTEM TRACEABILITYの略。原材料詳細や産地、生産ルートが明確で徹底された品質管理をしている機関の名称である。

さらに、その圧倒的なまでのこだわりは製造にも及ぶ。一般的に過度なボリューム感が気になることも多いダウンジャケット。同ブランドでは、各部位に使用する羽毛の量をグラム単位で厳密に計測し、一着ずつ職人が手ずから仕上げるのが流儀。しかも、袖に切り替えを入れてダウンの膨らみを保つことで、肩のラインをしっかりと出し保温性能を高めるといった、美しいタイトシルエットと他を圧倒する暖かさ生み出すための工夫が、そこかしこに隠されている。

「MONTGENEVRE モンジュネーブル」
生地に上質なウールフランネルを採用
ノーブルなモンクレールの代表格。

数あるラインアップの中から、そんな“美しいタイトシルエット”という恩恵を存分に味わうことの出来るモデルとしては、「MONTGENEVRE モンジュネーブル」の名が挙がる。先述のマヤとデザインは酷似するものの、最大の違いは薄手の上質なウールフランネルが使われている点。

「MONTGENEVRE モンジュネーブル」は、ビズスタイルともマッチしやすい1着。

薄手の上質なウールフランネルを表地に使用。ナイロンよりも品良く、シックなイメージに。

滑らかなナイロン素材とは趣きの異なるテクスチャー感が、タイトシルエットに奥行きをもたらし、上品で落ち着いた雰囲気を演出する。ゆえにカジュアルシーンのみならずスーツとも好相性。とはいえそこはモンクレール。生地に撥水性を添加されており、突然の雨や雪などの場面にも対応する高機能ウェアである点は変わらない。ビズスタイルの新たな一手を探しているならば、ぜひ選択肢の1つに加えて。
(→「MONTGENEVRE」に関連する記事はこちら

「RYAN ライアン」
クールなワントーンカラーに
異素材コンビでコントラストを。

ナイロン以外の異素材を用いることでデザインの可能性を広げたのは、モンジュネーブルだけではない。この「RYAN ライアン」もまた、光沢を抑えたマットナイロンとシルクのような微光沢を持ったウールが描き出す質感のコントラストが印象深い一作。通常よりもさらに細身のシルエットを、黒一色でまとめ上げて洗練さに拍車をかける。

現代的な細身のシルエットで他と差を付けるなら「RYAN ライアン」が打ってつけ。

マットと微光沢、真逆の質感を持った素材の切り替えが、デザインに奥行きをもたらす。

お馴染みのロゴワッペンも、ボディと同色のブラック一色となると実に新鮮。

スタンドカラーの襟は他モデルに比べて低く、フーディーなどとのレイヤリングも容易。これからの時期に嬉しい仕様だ。ついでに黒く塗り替えられた、左上腕部のロゴワッペンにも注目を。スポーティなコンセプトデザインに基いて設計されたモデルに用いられるというこのクールなアイコン。機会があれば、他のモデルでも探してみると面白い。

「CLUNY クリュニー」
武骨さとラグジュアリー感をブレンド
腰まで覆うロング丈も新鮮。

-30℃から-10℃という極寒の大空で戦うパイロットたち。最後は、彼らの身を冷気から守るべく着用されたフライトジャケットの傑作「N-3B」を彷彿とさせる「CLUNY クリュニー」をご覧いただく。腰までしっかりと覆う着丈の長さに由来する保温性、そしてボタンとダブルジップの2重構造も防寒性を高めるグッドディテール。
(→「N-3B」に関連する記事はこちら

腰まで覆うロング丈が新鮮な「CLUNY クリュニー」。コート感覚で着用できるので、真冬の着こなしにも重宝する。

フード部分にあしわれたコヨーテファーは取り外し自在。防風性に優れ、極地で暮らす人々の防寒着にも使用される。

以上に加え、生地に施された撥水加工やグローブを装着したままでも扱いやすい大型のポケットもまた、ミリタリーライクな佇まいに寄与。さらにフード部分には着脱可能なコヨーテファーが。粗めの毛質は防風性にも優れ、極地に住む人々の生活に欠かせない同素材。こちらを用いることで、武骨さとラグジュアリー感の絶妙なブレンドを実現してみせた。

一般的なダウンジャケットブランドが、アウトドアという限定されたフィールドでの機能性に重きを置く中で、ハイエンドダウンジャケットとして揺るぎない地位を確保しながらも、ファッションブランドとしての深化を続けるモンクレール。その根底にあるのは、“冒険”を人生のキーワードに、常にチャレンジを続けた登山家リオネル・テレイのアティテュード。

その姿勢は、他ブランドのデザイナーと行われるコラボレーションにおいても如実に表れている。ここ日本では〈sacai サカイ〉の阿部千登勢、〈MAISON MIHARA YASUHIRO メゾン ミハラヤスヒロ〉の三原康裕、〈White Mountaineering ホワイトマウンテニアリング〉の相澤陽介、〈visvim ビズビム〉の中村ヒロキ、海外では〈OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー〉と錚々たるメンツとともにコレクションを発表。
(→〈sacai〉に関する記事はこちら

かようにして、アウトドア業界のみならず世界中のファッションアディクトをも虜にしてきた同ブランドは、2018年から「MONCLER GENIUS モンクレールジーニアス」と称し、“独創性と多様性を探求すること”を目的としたプロジェクトを進行中だ。パートナーとなる8人の世界的クリエイターの中には、日本代表としてあの藤原ヒロシも名を連ねている。伝統を守り受け継ぎながらも、多様性が求められる現代に合わせて独創的に進化していく“ダウンジャケットの最高峰”モンクレール。彼らの目指す頂は、我々が見据えているその遥か彼方にある。

→「ケース・バイ・カナダグース」はこちら

ONLINE STORE
掲載商品は、代表的な商品例です。入れ違いにより販売が終了している場合があります。
SHARE