GREGORY MOUNTAIN PRODUCTS

グレゴリー・マウンテン・プロダクツ
HISTORY

背負うのではなく、“着る”という革命。
1977 | San Diego,USA | Wayne Gregory

「バックパック界のロールスロイス」。この最上級の賛辞を贈られるブランドがある。砂漠の熱風と海からの湿った風が交差する地、カリフォルニア州サンディエゴで産声を上げた〈GREGORY MOUNTAIN PRODUCTS グレゴリー・マウンテン・プロダクツ〉である。単なるバッグブランドとしてではなく、その革新的な思想と、使い手に寄り添う真摯な姿勢で、アウトドア愛好家からファッション好きまでを魅了し続ける存在だ。その揺るぎない評価は、一人の男の情熱から始まった。

ブランドの創業者の名は、ウェイン・グレゴリー。彼が初めてバックパックを自らの手で作り上げたのは、わずか14歳の時であった。ボーイスカウトのプロジェクトの一環で制作したその木製フレームパックは、彼の才能の萌芽を物語る。1970年には自身のブランド〈SUNBIRD サンバード〉を立ち上げるも、当時の技術的な限界に直面。しかし、彼の探求心が尽きることはなかった。フリーランスのデザイナーとしてテントや寝袋など様々なアウトドアギアの設計に携わりながら、知識と技術を蓄積。そして1977年、機は熟し、妻のスージーと共にグレゴリー・マウンテン・プロダクツを設立。サンディエゴの小さなバックヤードで、伝説が幕を開けた。

グレゴリーを語る上で欠かせないのが、「Don’t carry it, Wear it 背負うではなく、着る」という哲学。これは、単なるキャッチフレーズではない。ブランドの根幹をなす設計思想そのものである。当時のバックパックが荷物を運ぶための「袋」であったのに対し、グレゴリーは人体へのフィット感を徹底的に追求。まるで衣服のように身体と一体化する快適な背負い心地を目指した。これを実現するために、人間工学に基づき、性別や体格差に合わせてショルダーハーネスやウエストベルトのサイズを選べるという、当時としては画期的なシステムを開発。この「サイズフィッティング」の概念こそ、グレゴリーが他のブランドと一線を画す所以である。

その思想は、製品の細部にまで宿る。ブランドのアイコンとも言える「DAY PACK デイパック」や「DAY AND HALF デイアンドハーフ」。元々はクライマーやハイカーのために生まれたこれらのモデルは、その卓越した機能性と完成されたデザインで、瞬く間にストリートへと浸透した。例えば、デイパックの斜めに大きく切れ込んだフロントポケットは、パックを背負ったままでも中身を取り出しやすいように計算されたデザイン。ゴツゴツとしたレザージッパープルは、冬山でグローブをはめたままでも掴みやすいようにという、実用性から生まれた必然の形。こうした一つひとつのディテールが、機能美として製品に溶け込み、時代を超えて愛される理由となっている。

創業から40年以上、グレゴリーは常に進化を止めない。米軍特殊部隊のための製品開発を担った経験は、その堅牢性と信頼性の証左でもある。ロゴタグの変遷は、ヴィンテージ市場でコレクター心をくすぐる要素となり、ブランドの歴史を物語る。山で生まれ、街で育まれたグレゴリーのバックパック。創業者ウェイン・グレゴリーが抱いた「最高のパックを作りたい」という純粋な情熱は、今もなお、すべての製品に宿り、背負う者の冒険心と日常を支え続けている。

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