FASHION

フィルソン、エル・エル・ビーン、ブリーフィング…… 愛すべきヘビーデューティーな傑作バッグ【米国編】

先の【欧州編】に続き、今回はアメリカにちなむ5ブランドからヘビーデューティーなバッグの魅力をお届けしたい。タフで普遍的。ヘビーデューティーをそう定義するなら、合理主義的なアメリカ製、しかも服以上に実用面が求められるバッグというアイテムは、またとないモデルケースとなるはずだ。

そんな、旅の相棒にもなりうるバッグは、【欧州編】で触れたようにジャストナウな“ウズウズ感”を増幅させる。そして今、時代はあらためてタフネスを求めている。それこそ肉体的にも、精神的にも。アメリカで生まれ、揉まれ、愛され続けるヘビーデューティーなバッグのスタンスは、だからこそ我々に何かを気づかせてくれるのではないか。

〈FILSON フィルソン〉
ゴールドラッシュを陰で支えた
誇るべき信頼の証し。

信頼とはなにか。過酷で山っ気に満ちたゴールドラッシュ期のアメリカで、それを具現化した1つのブランドがある。1897年にワシントン州・シアトルで創業した〈FILSON フィルソン〉。素材の厳選をはじめタフで真面目なアイテム作りを追求し、一攫千金を狙う労働者を劣悪な環境から防護した。

そんなブランドが手掛けた代表的なアウター「MACKINAW WOOL CRUISER JACKET マッキノーウールクルーザージャケット」は、以前の記事で言及したのでそちらをご覧いただきたい。今回は、同様の哲学を宿すバッグの話。「RUGGED TWILL TOTE BAG ラギッドツイルトートバッグ」を掘り下げていこう。
(→〈FILSON〉の「MACKINAW WOOL CRUISER JACKET」に関連する特集記事はこちら

シンプルなオープントートの名作「RUGGED TWILL TOTE BAG」。

土の香りが漂いそうな武骨なビジュアルを纏う、シンプルで使い勝手の良いオープントート。フィルソンのバッグにおける代名詞と呼ばれる傑作は、なるほど一見してヘビーデューティーだ。ミニマルデザインのなかに大小4つのサイドポケットを備える点も、真に実用的。ブライドルレザーを使ったストラップは、使い込むほどに風格を増すはずだ。そして、アイテム名にも採用された「ラギッドツイル」が、タフネスを雄弁に物語る。

独自の織り方で強度を高めたコットン生地に軽くワックスを入れることで、汚れや水への優れた耐久性を担保。フィルソンが一からデザインした高機能素材が、過酷な現場に身を置く労働者の信頼を一身に集めたのは想像に難くない。

タフなコットン生地にワックスを入れ、耐久性をさらに高めている。

ただし、いかに頑強なラギッドツイルと言えどラフに扱えば少なからず疲弊していく。反面、その使用者の“履歴”とも捉えられるべき多少の擦り傷が味わいとなり、一層の安心感と充実感を与えてくれる。フィルソン=信頼。やはり、そういうことなのだろう。

〈L.L.Bean エル・エル・ビーン〉
ライフスタイルに寄り添う
トートバッグの元祖。

ブランドの生い立ちではフィルソンの後塵を拝する形だが、トートバッグのマスターピースと言えば、こちらが頭をよぎる方も多いではないだろうか。1912年に生まれ、創業者レオン・レオンウッド・ビーンの名前を冠したブランド、その大定番。〈L.L.Bean エル・エル・ビーン〉の「Boat and Tote Bag ボート・アンド・トート・バッグ」が放つ存在感は、1944年の誕生から三四半世紀以上の時を経ても絶大だ。

トートバッグの元祖と言われる「Boat and Tote Bag」は、氷や木材を運ぶバッグを基とする。1980年代製のヴィーテージモデルは現行モデルと比べて持ち手が短い。

そもそもは、氷や木材の運搬用として作られた「Bean’s Ice Carrier ビーンズ・アイス・キャリア」を原型とする今作。実は創業者が没する前々年にあたる1965年に復活し、今に至る。24オンスという厚手のキャンバス地を採用し、溶ける氷が漏れないように底布を二重に貼り合わせ。プロダクトありきではなく、あくまで使用する人のライフスタイルに合わせた考え方は、実にアメリカらしい。

タグにはブランド名とともに、アイテム名の「Boat and Tote」もしっかりと記される。

同時に、独特な“いなたい”見た目も古き佳きアメリカを象徴する。堅牢なコットンの質感に加え、必要最低限のパーツ構成と、どこか牧歌的なオートミールカラー(現在はカラバリも豊富だが)が絶妙にマッチ。アメリカはメイン州の自社工場で今なおハンドメイドされる点も、世界中で愛用される要因だ。

ボトムは布を二重にはり合わせた堅牢なつくり。バッグサイドにはヴィンテージモデル特有の「セルビッチ」が。

トートバッグの元祖とも謳われるだけに、現行品だけでなくヴィンテージモデルにも相応の魅力が宿る。大枠のデザインこそ変わらないがディテールは少なからず変化しており、その見極めもまた楽しい作業となるに違いない。例えば、かつてバッグサイドにあしらわれていた「セルビッジ」もそのひとつだ。

また派生モデルも登場し、ハンドル部分に革素材を用いた「Leather Handle Katahdin Boat and Tote Bag レザー・ハンドル・カタディン・ボート・アンド・トート・バッグ」も異彩を放っている。レザーによってクラシカルで上品な印象がプラスされ、プレミアム感を演出。1987年誕生の「カタディンロゴ」を備えた、味わい深いヘリテージテイストにも注目したい。

レザー製のハンドルを備えた1990年代製「Leather Handle Katahdin Boat and Tote Bag」。

米国メイン州のカタディン山脈と、その麓にあるカタディン湖をデザインした「カタディンロゴ」も見どころのひとつ。

ハンティングを趣味とした創業者が生んだ革命的ブーツをきっかけに、アメリカを代表するブランドに上り詰めたエル・エル・ビーン。バッグやブーツをはじめとする彼らのプロダクトは、まさに「必要は発明の母」を体現するのだ。

〈Manhattan Portage
マンハッタンポーテージ〉
NYから世界へ羽ばたく
モダン&スタイリッシュ。

東西はもちろん、南北にも広大なアメリカ。それだけに多面性があり、当然“いなたい”だけが米国的テイストなわけではない。1983年には“New York Tough”というコンセプトの下、〈Manhattan Portage マンハッタンポーテージ〉がスタイリッシュな、まさしくNY的バッグを作り出す。多彩なラインアップを誇る彼らのプロダクトは、“Downtown Smart”として、そして“a bag for everyone”として世界中で認知されていった。

ブランドを代表するモデルとしては、「Vintage Messenger Bag ヴィンテージメッセンジャーバッグ」を挙げておこう。

削ぎ落とされたシンプルデザインが特徴の「Vintage Messenger Bag」。

スタイルを選ばず取り入れやすいシンプルで力強いルックスと、多くの荷物を気軽に持ち運べる利便性。間口が広く物を取り出しやすいメインコンパートメント、強力なベルクロ・ファスナー、頑強なメタルバックルを備えたショルダーベルトなど、ディテール一つひとつに無駄がなく、不足もない。

都会に生きるさまざまな人のニーズ。その答えをNYのストリートに見出したブランドは、削ぎ落とされたモダンデザインで面目躍如を果たした。コーデュラナイロンをはじめとした厳選素材や、マンハッタンの摩天楼が描かれた“赤タグ”からも、無二の矜持が読み取れる。

お馴染みの“赤タグ”には、NYの摩天楼が描かれる。長さ調節のためのバックルもタフなメタル製。

ところが、無二のはずのブランドは類似品でも話題になった。タグや名前を真似た日本のバッグブランドとの間には、訴訟が起きたこともある。そんな裏側もひとえに、マンハッタンポーテージのグローバルな人気ゆえ。なお、当該の類似ブランドは現在、タグを変更しているので安心されたし。

〈BRIEFING ブリーフィング〉
全方位的にミリタリズムを追求する
米国的で日本的なモノづくり。

アメリカ的タフネスとくれば、こちらのブランドも見逃し厳禁である。米軍のお墨付きたるミルスペック、そんな概念を広く伝えたラゲージブランド〈BRIEFING ブリーフィング〉。メイド・イン・USAをルーツとする当ブランドだが、意外にも日本で企画・販売されるジャパンブランドでもある。

1998年に株式会社セルツリミテッドによって立ち上げられ、同社の小雀新秀がデザインを担当。日本発でありながらアメリカの軍需工場で生産を行うなど、斬新なアイデアで真のミリタリズムを追い求める。ちなみに、本格展開前は〈UNITED ARROWS ユナイテッドアローズ〉で試験販売されており、当初からタウンユースとの高い親和性でも評判を集めた。

ミリタリー由来の機能美が凝縮する「NEO B4 LINER」。アイコニックなサブポケットは利便性も高い。

ミリタリズムの追求は広義の機能美の追求とも重なり、今ではファッション好きのみならずビジネスパーソンからも絶大な支持を獲得。特に「NEO B4 LINER」も、オン・オフ問わず活躍する名機だ。

耐久性と耐摩耗性が極めて高い「バリスティックナイロン」が、日々のヘビーユースを支える。

素材には、言わずと知れた「バリスティックナイロン」を採用。耐久性と耐摩耗性に優れた強靭なヘヴィマテリアルは、デイリーユースにはオーバースペックとも言えるほどの安心感を与える。複数取り付けられたサブポケットは極めてアイコニック。と同時に、一瞬の判断が生死を分ける戦地で実証された、考え抜かれた利便性の高い配置でもあるのだ。

強靭なバリスティックナイロンを視認性の高いレッドレーベルが彩る。ジッパープルは手袋をしても扱いやすく、交換しやすい紐タイプ。

他にも、機能性に満ちた全体のフォルムから補強用のウェビンテープ、視認性の高いレッドレーベルにいたるまで、繊細かつ全方位的にミリタリズムをカバーする。どこからも一分の隙すら見せない、タフなブランドビジョン。ただのフィジカル的タフネスに収束しない、米国的で日本的なモノづくりが、ブリーフィングをブリーフィングたらしめている。

〈COACH コーチ〉
質実剛健な歴史を持つ
“古き佳き”を訪ねて。

ヘビーデューティーなアメリカンバッグ。そのトリを飾るブランドは〈COACH コーチ〉だ。“C”のモノグラムキャンバスで著名な「シグネチャー・コレクション」に見られるように、今では日本でも女性を中心に高い人気をキープする。

ややもするとフェミニンな薫り漂うラグジュアリーブランドが、なぜヘビーデューティーの座席に割り込んでくるのか。それは、男性用の革製品を製造していたという揺るぎなきバックボーンがあるからだ。現在から少し時代を下ることで、それこそ1941年の創業当時を偲ばせる武骨な顔の傑作に出会えるのだから。

独特なバケツ型の名作ショルダーバッグ「DUFFLE SACK」。

マイルズとリリアンのカーン夫妻が1941年に創業したコーチは、大手メーカーの革製品の生産を請負う工房からスタートした。当時は腕利きの6人の職人がいて、彼らが手掛ける革製品の品質が評判を呼んだ。そんな、いわゆる“オールドコーチ”と呼ばれる傑作の中でも、1973年にリリースされた「DUFFLE SACK ダッフルサック」は象徴的存在だ。なお、オールドコーチは堅牢性とリーズナブルな価格が相まって、リユースマーケットでも特に人気が高いことを付け加えておきたい。

今作は、耐久性と軽さを両立するユースフルなバケツ型ショルダーバッグ。ブランド表記すら主張しないシンプルビジュアルのキモは、ブランドが独自に開発した「グラブタンレザー」にある。野球のグローブをヒントにした美しさとしなやかさを両立したレザーは、古き佳きコーチを代弁するヒットマテリアル。素材自体は1958年に生まれたものだが、この素材で作られた12のバッグは今も伝説とされ、時を同じくしてブランド名を改めていることからも、並々ならぬ決意を感じる(創業当時の「ゲイル」から「コーチ」へと名称変更)。

ブランドタグがない代わりに、バッグ内部に高品質を証明する型押しがされる。

なお、コーチとは英語で馬車を意味。信頼感のある馬具製造を連想させるとともに、馬車という大切な物を運ぶ道具といったイメージが秘められているようだ。

さて、今回は前後編に分け、欧米合わせて10ブランドのヘビーデューティーなバッグコレクションをご覧いただいた。それらはみな、あなたの相棒となるに十分だと主張する。その賴もしき宣言は、これから先も決して解除されることはないはずだ。

【欧州編】はこちら

ONLINE STORE
掲載商品は、代表的な商品例です。入れ違いにより販売が終了している場合があります。
SHARE

RELATED

関連ブランド