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ブレディ、イルビゾンテ、フェリージ……愛すべきヘビーデューティーな傑作バッグ【欧州編】

こんなご時世だからだろうか。無性に旅へ、ここではないどこかへと出かけたくなる読者諸兄姉は少なくないはずだ。その想いは厄介なもので、自由に足を運べなくなってますます募ってしまう。今回は、そんな“ウズウズ”を刺激する傑作バッグにフォーカスを当てる。

優れた耐久性、確かな歴史、色褪せることのない普遍的なルックス。それらを兼ね備えたヘビーデューティーなバッグは、またとない相棒となるだろう。まずは【前編】として、ヨーロッパ生まれの5ブランドから名品をピックアップ。タフネスとエレガンスが程よく融合する様は、トレンドに流されずとも逆らわない、芯のある大人にこそふさわしい。

〈BRADY ブレディ〉
欧州クラシックを代表する、
ユーザーファーストなゲームバッグ。

ひと口にバッグと括っても、そのデザインは多彩だ。使うシーンや目的によって最適解は変わってくる。つまり、特徴的なバッグは専門性の高さを示しており、そういったバッグを持つことは、使用者の趣味・嗜好を端的に表すこととなる。

いわゆる欧州クラシック的な“専門バッグ”として筆頭に挙げられるべきは、〈BRADY ブレディ〉のゲームバッグだろう。ジョンとアルバートのブレディ兄弟が1877年にイギリス・バーミンガムで立ち上げた老舗は当初、銃を入れるレザーバッグで名を馳せる。1930年代に入ると、銃を使った英国紳士の嗜みであるハンティング、そしてフィッシングへとレンジを広げていった。

クラシックなフィッシングバッグの代表格「ARIEL TROUT」。

今作「ARIEL TROUT エアリアルトラウト」は、なかでも代表的なフィッシングバッグだ。独特な丸みを帯びた形状のほか、フラップ式のトップや、同じくフラップが付いたフロントの2ポケットも実にアイコニック。フラップ部分は上質なブライドルレザーで縁取られ、表面に防水加工を施したドリルドロップ素材のボディと優雅なバイカラーを形成する。ブラウン系の色味には、フィッシング中に付着する泥汚れが乾いても目立たないようにとの配慮がなされるなど、あくまでユーザーファーストな設計も魅力だ。

耐久性を高めるため、金具には馬具用の真鍮を用いる。

当然ながら高い耐久性も特筆で、前述の防水生地のほかディテールにさまざまな工夫を凝らしている。金具は全て馬具にも用いられる頑強な真鍮を使用し、ストラップはミリタリー・スペック仕様の100%コットンを採用。

ストラップには、軍用ギアにも使われる強度の高いコットンを採用。

しかもそれぞれのパーツを、職人が丁寧なハンドステッチで仕上げるのだから恐れ入る。現在もバーミンガム州のウォールソールに自社工場を構え、伝統的な製造方法を遵守するのだ。

歴史を感じさせる、奇を衒わない筆記体ロゴ。

近年のブームが物語るように、日進月歩で進化するアウトドアアイテム。その原型ともいうべき今作には、確かな品質と老舗の矜持が宿っている。たとえ釣りに出かけなくとも、肩に掛けるだけで心地良い重みを感じるはずだ。

〈IL BISONTE イル ビゾンテ〉
選び抜かれた革に宿る、
普遍的で可変的な味わい。

普遍的なバッグの醍醐味である、身に付けるうちにまるでその人の分身になるかのような感覚。1970年誕生のイタリアンブランド〈IL BISONTE イル ビゾンテ〉は、まさしく同様の美学を掲げる。

創業者のワニー・ディ・フィリッポは語った。「雨が降ればどちらも濡れ、晴れればどちらも日にあたり、あなたが日焼けすればバッグも日焼けする。あなたのイル ビゾンテは、あなたの一部になるのです」と。だからこそ、偉大な職人たる彼は革にこだわった。時を経るごとに柔らかさと風格を増すヌメ革が、イル ビゾンテの真骨頂である。

経年変化を存分に楽しめるレザートート。

フィレンツェの小さなレザーショップで、妻のナディアとの二人三脚によるオーダーメイドアイテムの製造をスタート。そのレパートリーは多種多様で、今ではベルトや手帳といった小物のクオリティでも名高い。しかし、やはり最高品質のレザーを贅沢に使ったバッグこそが、ブランドの看板と見るべきだろう。

ブランド名の「ビゾンテ=(野牛)」をかたどった、お馴染みの型押しロゴ。

いずれにせよ、使い方によってそれぞれに異なる経年変化は、使用者だけに許された美しき特権だ。どう育てるかは、あなた次第。ヌメ革の場合は、あえて日に当てることも“育成”の常套手段になる。日焼けさせることによって革の内部に含まれたオイルが表出し、保護膜となるからだ。

ちなみにブランド名の「ビゾンテ」とは、「野牛」を意味するイタリア語。創業者を魅了した野牛の力強さや誇り高きイメージは、ブランドのアイコンに凝縮され、日々を支えるシンプルなレザーバッグに説得力を与えている。

〈Felisi フェリージ〉
革新性と、
ヒステリックなまでのこだわりを
秘めて。

イル ビゾンテの誕生とほぼ同じ時期に、イタリアでもうひとつ革製品の名門が産声をあげた。フィレンツェからおよそ120km離れた芸術の街フェラーラにて、若きイタリア人女性アンナリサ・フェローニが〈Felisi フェリージ〉を創業したのは1973年のことだ。

中世からこの地に伝わるフェリージ家の紋章を模したロゴを冠し、「親から子に受け継がれるようなもの作り」をモットーに掲げる。と同時に、趣味からブランドが始まったとされるような奔放なアイデアで、他に代え難い印象を抱かせるのだ。

ナイロンとレザーを組み合わせたブリーフケース「8637/2/DS」。

伝統的で革新的。その絶妙な塩梅は、ブランドを代表するブリーフケース「8637/2/DS」に顕著だ。なんといっても特徴的なのが、上品な光沢のあるナイロンと高級感漂うナチュラルレザーの異素材ミックス。見目麗しい斬新なコンビネーションは1990年代初頭のファッション界に衝撃を与え、軽量かつ耐久性に秀でる点で今なお白眉である。

ナイロン、レザーともに選りすぐりの生地を用いるが、特に有名なのがイタリアのリモンタ社が手掛けるナイロンだろう。高密度に織り上げられたそれは美しい発色と実用的なタフネスを備え、数多くのトップメゾンを魅了。フェリージにおいても欠かせぬ、高品質でグッドルッキングな名パートナーだ。

ステッチやシームワークからも、手作業ゆえの美しさがにじむ。

また、ブランド発足以来変わらぬ信念として「自分たちが本当に使いたいものだけを作る」ことを掲げるだけに、ディテールにも一切の妥協がない。堅牢な革を使用した底部がしっかりと全体を支え、コットンロープ芯を入れて断面を丸くしたハンドルは強度と極上の手触りを保証する。立体的に仕上げられたタブ、金属の種類によって細かく磨き分けられたファスナーなど、その作り込みは狂気的ともいえよう。

随所に散りばめられた、ヒステリックなまでのこだわり。手間のかかる作業をまったく厭わない姿勢には、畏敬の念を抱かずにいられない。

〈Herve Chapelier エルベシャプリエ〉
欧州的でアメリカ的な、
気分を上げる機能派バッグ。

頑丈であるとともに、使用者のテンションを上げてくれること。旅先での相棒と呼ぶからには、そんな“精神的機能”にも目を向けたい。そこで選択肢の最上位に挙がるのが、〈Herve Chapelier エルベシャプリエ〉のバッグだ。

1976年にパリで創業。弱冠26歳のデザイナーが自身の名を冠してスタートしたブランドは、その初期からカラフルなダッフルバッグなど軽快なデザインの傑作をいくつもリリースする。サーフィンが盛んなビアリッツァ生まれの彼らしい自由な気風に満ちた佇まいで、女性層を中心に支持を獲得した。

とはいえ、代表作である「舟形ナイロントート」からはジェンダーレスな魅力、むしろシンプルでタフな男性的なメソッドが見て取れる。使い勝手の良い独特な舟形のボディに、丈夫なナイロンハンドルをセッティング。まごう事なきフランス製でありながらどこかアメリカ的な武骨さを宿すのは、デザイナー自身のアメリカ留学経験によるところも大きい。

「舟形」の中でもひと際丈夫な「コーデュラナイロン・舟型トート」。

傑作だけにさまざまなバリエーションが展開され、写真のような迷彩柄も人気を博す。しかもこちらは、よりヘビーデューティーなコーデュラナイロンを纏った逸品だ。言わずと知れた屈強なマテリアルは、磨耗や擦り切れに高い強度を誇るうえ、極めて軽量。アメリカのインビスタ社が誇る生地を使った、メイド・イン・フランスのバッグ。そう考えると、ブランドの代名詞たる存在とも捉えられよう。

金具にはブランド名を刻印。

タグにはブランド名とともに、メイド・イン・フランスの文字が。

なお、エルベシャプリエはバックパックでも人気を博すが、そのモチーフとなったのはLAでデザイナーが見た学生バッグだ。結果、バックパックだけはメイド・イン・アメリカだったという。実際にそれを製造したのは、名門〈OUTDOOR PRODUCTSアウトドアプロダクツ〉だったとか。こんな、旅に紐づくエピソードも歴史あるバッグブランドならでの面白みと言えるのではないだろうか。

〈FREITAGフライターグ〉
ユニークな視点から生まれた、
新たなヘビーデューティー。

長く使えること。それはなにも耐久性に限った話ではない。現代的な視点で見るならば、サスティナブル(=持続可能)なアイテムもまた、ヘビーデューティーの条件として挙げられるべきではないか。その点、1993年生まれの〈FREITAGフライターグ〉はいち早く時流を見極めていた。

マーカス・フライターグと、ダニエル・フライターグ。ともにグラフィックデザイナーとして活躍した兄弟は、デザインの下書きを持ち運ぶための撥水性に優れたバッグを探し求めていたという。そこで目をつけたのが、スイス・チューリッヒの自宅前を通るトラックの群れ。その使い古された幌やシートベルトを用い、新たな理想を実現したのだ。

タフでユニーク、使い勝手抜群と、3拍子揃った「F14 DEXTER」。

丈夫なリサイクル素材を使った作品群の中でも、ブランドの顔は「MESSENGER BAG メッセンジャーバッグ」だろう。サイクリストのためのバッグは、ブランド創業のきっかけにもなったアイデアだったからだ。なかでも普段使いを考慮するならば、A4サイズの「F14 DEXTER」が最適か。無論、自転車に乗らずとも機能性の高さをすぐに実感する。

使い古されたトラック用の幌を再利用。自然な汚れもまた味わい深い。

ユニークな発想によって生まれた、頑丈でエコロジカルなバッグ。それは必然的に、どれもが一点ものというビジュアルの唯一性まで手にしている。使う瞬間から、世界にふたつと存在しない自分だけのオリジナル。生まれながらにして、“相棒”の素質たっぷりではないか。

相棒候補の声がする。外に出ようと。きっともう少しで、その誘いに応えられるはずだ。次回の【後編】はアメリカのバッグにフィーチャー。それこそ欧州だって欧米だって行ける。それまでまずは、想像を膨らませよう。未来は僕らの手の中、いつだって周囲の影響に左右されないヘビーデューティーなバッグの中にあるから。

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