FASHION

「ホンモノの風格」漂うバックパックの傑作たち。

普段の生活の中で、必要不可欠な道具は数多く存在する。とりわけ交通網が発達し、移動することが容易となった現代に生きる我々にとって優先順位が高い必需品となるのが、荷物をひとまとめにして運びやすくするという機能を有した「バッグ」である。

バッグといっても、様々なタイプのものがある訳だが、使い勝手の良さやデザインの豊富さなどから支持者が多いのが「リュックサック」「バックパック」と呼ばれる背負うタイプだ。

アウトドアシーンはもちろん、昨今ではオフィスカジュアルの広まりも手伝いビジネスシーンにも浸透、その機能性の高さでますます愛用者が増えている。

当然多くのメーカー、ブランドから多種多様なモデルが誕生しているわけだが、『knowbrand magazine』では、あくまでタウンユースしやすいサイズ感を前提とし、その中でも傑作と名高い5つのモデルを通じ、リュックサック・バックパックの魅力の一端に迫ろうと思う。

リュックサックなのか、バックパックなのか。

傑作の数々に触れる前に、まずは「リュックサック」「バックパック」という呼称そのものに触れねばなるまい。

リュックサックの語源はドイツ語の「Rucksack ルックザック」だ。「背中」という意味の「Rücken リュッケン」と「袋」を意味する「Sack ザック」、つまり「背中の袋」ということだ。一方「Back Pack バックパック」という呼称は、ドイツ語の意味をなぞり翻訳されたものであり、アメリカ英語の圏内ではこちらが一般的だ。

ちなみに日本では、リュックサックは小型のもの、バックパックは大型のもの、というニュアンスを含む場合もあるようだが、基本的にはリュックサックとバックパックは同義である。

起源は山岳地帯の猟師達がしとめた獲物を背負って運ぶために考案したのではないかともいわれているが、定かではない。初期の頃は、おそらく一方の肩にのみ掛けるショルダーバックのような仕様だったと思われるも、運搬時の安定性の向上と肩への負担の分散を可能にするために両肩で背負うスタイルが考案・構築されたのではないだろうか。

デイパックの祖。

さてリュックサック・バックパックといっても目的、用途によって様々なサイズ、デザインのモデルが存在する。先にも述べたとおり、今回はあくまでタウンユースを前提としたモデルの傑作をピックアップしたいと思う。

その筆頭となるのが〈KELTY ケルティ〉の「DAYPACK デイパック」だ。

〈KELTY〉の「DAYPACK」

創設者のディック・ケルティ氏は「バックパックの生みの親」といわれている。彼により1952年にアルミフレームとナイロン生地の組み合わせによりハンドメイドされた大型のフレームパックこそが現代に通じる本格派バックパックの元祖だとされる。

その後、1970年代初頭に日帰り登山向けのバックパックとして開発されたのがデイパックだ。大型のものが主 流だったバックパック界においてフレームレスで18Lとずいぶん小ぶりなサイズ感は革新的であった。だが日帰り登山家にとっては、山頂でのひとときを満喫するための最低限の食料や衣類を収納するのにかえって最適であったため人気を博したようだ。

誕生から50年近くが経ったケルティのデイパック。下部に向けてマチ幅が広くなり横から見ると三角形に見える独自のフォルムや、俗に「ブタ鼻」呼ばれる登山用のピッケルホルダーなど趣あるシンプルでレトロなデザインが再評価され、復刻モデルは定番化した。一方で内部にはキーチェーン付きのオーガナイザーが装備され使い勝手はしっかりと向上されている点も注目である。

上部と下部のマチ幅に極端な差がある独特なフォルム

そもそもクライマー向けに開発されたものだったが、当時のバックパッカーカルチャーやヒッピーといった旅と密接なムーブメントも手伝ったのだろうか、すんなりとタウンユース化してゆく。特にその使い勝手の良いサイズ感は、教科書などを持ち運ぶのにはもってこいだったようでアメリカの学生たちに人気を博し定番化したのだ。

当時の雰囲気を伝えるノスタルジックなロゴ

独自の哲学が息づく定番。

デイパックと呼ばれるカテゴリに―にはいくつもの名品があるが、なかでも大傑作と誉れ高い存在が〈GREGORY グレゴリー〉のそれである。

「DAY PACK デイパック」は、1977年設立のグレゴリーの原点のひとつにして、アイコンといえるロングセラーモデルだ。斜めに開閉できるフロントポケット、スエード製の大ぶりなジッパープル、ティアドロップ型と呼ばれるフォルムなど基本的なつくりは誕生以来ほぼ変わっていない。いやむしろ、変える必要がない程の完成されたデザインであったという方が正確だろう。

〈GREGORY〉の顔ともいえる「DAYPACK」

ウェイン・グレゴリー氏によってアメリカ・サンディエゴで設立されたバックメーカー「グレゴリー・マウンテン・プロダクツ」には、独自の哲学が息づいている。

「Don’t carry it, wear it. 背負うのではなく、着るのだ」というものだ。

人間工学に基づいたデザインとユーザーごとに最適なフィッティングを調節可能にしたことで、いわば身体に着るようなフィット感を生み出すことこそがグレゴリー製バックパックの最大の特徴なのだ。

その哲学はハイエンドモデルに限ったことではなく、デイパックをはじめとしたライトユーザー向けのモデルにもしっかりと息づいている。

背面パッドはセンターで折れ曲がるように設計されており、腰回りも包み込むようなパターンを採用。最も負荷のかかるショルダーハーネスは肉厚なクッションを内包しており、驚きのフィット感を実現する。

ショルダーハーネスは、それだけでも〈GREGORY〉とわかる堅牢なつくり

細部や内部もアップデートされている

グレゴリーのデイパックが、日本に上陸したのは1986年頃。1990年代には、俗にいう空前のアメカジ・ビンテージブームも手伝い、タウンユースに最適なサイズ、非の打ちどころのない機能性と堅牢性が支持され、ブレイク。そして誕生以来40余年を経た今もなお、グレゴリーのデイパックの定番としての確固たる地位は微塵も揺らいでいない。

2015年に生まれ変わったロゴ。ブランドロゴは過去7回も変遷している

機能性から導き出されたスタイリッシュさ。

あくまで荷物を背負い運ぶための道具であるバックパックにスタイリッシュという概念を融合することに成功したブランドが〈ARC’TERYX アークテリクス〉だ。

山を愛するふたりのクライマーが、自分たちが使うためのクライミング用ハーネスの製作を目的として立ち上げたブランドが起点となり、1989年に誕生したアークテリクス。

可能な限り最高の製品をつくる。同ブランドの目指していることは実にシンプルだ。

その姿勢のもとで生み出されたウェアやアクセサリーの数々は、おのずと機能重視でありながら、時代を超越したデザインとなっている。なかでも同ブランドを象徴するアイテムが、1999年に誕生した「Arro 22 アロー22」でる。

〈ARC’TERYX〉代表するプロダクツ「Arro 22」

センターのカンガルーポケットに加え、立体的なフォルムデザインは、誕生からすでに20年が経過しているにもかかわらず、先進的な印象を与えるから不思議だ。もちろん奇をてらってのデザインではない。たとえば、荷物がバック内の上部にくるように斜めに切り上がっている底部分。これはバックパックに荷物を詰める際は、重たいものは上部に入れ、重心を高い位置に持ってきた方が重さを感じにくいというセオリーに則ったあえての設計といえるだろう。

そしてもうひとつの注目は、カンガルーポケットに採用された通称「止水ファスナー」だ。水の侵入に対し高い効果を発揮し、今ではアウトドアジャケットを中心に広く装着されているパーツだが、これはアークテリクスと日本のYKKの共同開発によるものだ。

「止水ファスナー」を有したカンガルーポケットは、実用性もさることながらデザインアクセントにもなっている

多くの機能性を追求し導き出されたマテリアルとディテールの集合体でありながら、ひとつの製品として美しくまとめられたデザイン性の高さには感服せざるを得ない。機能性から導き出されたスタイリッシュさといえようか。

印象的なロゴマークと奇妙なブランド名は、かつて爬虫類で初めて飛ぶための翼を得た「始祖鳥 ARCHAEOPTERYX(アーケオプテリクス)」に由来している

実はこのアロー22だが、意外にもクライミング用ではなく、もともとはサイクリング時の使用を目的に開発されたバックパックだった、というユニークな事実を最後に付け加えておこう。

重鎮が送り出す抜かりなき安心感。

ウェアからギアまで、アウトドア界の重鎮〈THE NORTHFACE ザ・ノース・フェイス〉。当然のごとくバックパックでも数々の傑作を生み出してきた。 中でもタウンユース用において説明不要なほど定番化しているモデルが「Hot Shot ホットショット」だ。 アウトドアでのアクティビティはもちろんのこと、パックの内外に配置された多くのポケットは、日常生活でも実に頼もしく、安心感を与えてくれる。

〈THE NORTHFACE〉容量26Lのバックパック「Hot Shot」

ショルダーハーネスもユニークな構造である。抜群のクッション性もさることながら、抜群の通気性を確保した独自の構造。密着し、汗をかきやすいポイントに対してしっかりと対処したつくりだ。細かな点にも抜からない姿勢こそがノースフェイスをビックメーカーたらしめているのだろう。

長時間の使用でも蒸れにくく、疲れにくいショルダーハーネス

威風堂々のロゴがあるだけで、品質への安心感が違う

実用性と独創性が生んだインパクト。

孤高のバックパックメーカー〈MYSTERYRANCH ミステリーランチ〉がつくり出すタウンユース向けパック「SWEET PEAスイートピー」は、初めて見る者にとっては衝撃的かもしれない。 意図的に狙ったわけではなく、目指した最高の実用性と斬新な独創性とが高い次元で融合した結果として生まれたデザインのインパクト、とでも表現できようか。

〈MYSTERYRANCH〉の「SWEET PEA」

ミステリーランチのシンボルともいえるY字型をした独自の「3ジップデザイン」は、まさしくこのスイートピーで初めて採用された。

メインの収納部分へアクセスするジップは、バックパックのトップ部分または側面に沿って開口するタイプが採用されることが一般的である。だがスタンダードな使い心地は今なお健在であるものの、メインコンパートメント下部に収納されたアイテムは取り出しにくいというウィークポイントもある。

一方で、ミステリーランチの開発した3ジップデザインでは、各ジップを3方向へと同時に開くことができ、開口部が非常に広く確保できる。こうすることで、下部に収納したギアにも容易にアクセスできる。

3方向に開けることで広い開口部を確保できる3ジップデザイン

Y字型のジップデザインは決して、ただの奇抜なデザインではないのだ。

これ以外にも、使用者ひとりひとりの体格・背面長に合わせてショルダーパッドの位置を無段階に調節し、背負い心地を調節できる「フューチュラヨークシステム」と呼ばれるフィッティング構造も非常に評価が高い。

ミステリーランチは、デザイナーであるデイナ・グリーソン氏により2000年に創設された。当初は一般ユーザーではなく、ミリタリーや消防士、森林局員といった極めて過酷なシチュエーションで使用されるプロフェッショナルのためのバックパックを開発してきたという。

通常のナイロンの7倍の強度を持つコーデュラナイロンを使用

プロユース向けの製品開発では、実用性とタフネスの極みを目指し、実現するために微塵の妥協も許されない。そこで培われたアイディアと技術力は、スウィートピーをはじめとしたタウンユース用のプロダクトにもしっかりと息づいているのだ。

バッグを毎日取り換えるという人は少ないだろう。いいかえれば、バッグは毎日の生活をともにする相棒ともいえる。ある程度の期間は使い続ける訳であるから、選ぶ上では、デザインはもちろんだが、使い勝手の良さや容量、ヘビーユースに耐えうるタフネスが重要な条件となってくる。

バックパックは、そもそも荷物を運ぶという行為そのものをいかに効率的に、どれだけ快適にできるかを追求して誕生・進化してきだけにその条件を十分に満たしている。当然、堅牢さは基本スペックとして担保されており、あらゆるシチュエーションでの汎用性も高い。そして特に今回紹介したアイテムにはどれも傑作と称えられるだけの「ホンモノの風格」が漂っている。

通勤や通学といった日々の生活においても、休日の屋外でのアクティビティや国内外への旅でも、強い日差しの日も、激しい雨の日も、背中にはつくり手のこだわりが詰まった本物の道具たるバックパックがある。実に頼もしいではないか。

背負うという持ち運び方ゆえ、使い込めば込むほど一心同体と化していくかの如く、きっと離れられない相棒となることだろう。

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