FASHION
FOCUS on Supreme vol.02

ただの話題づくりではない〈Supreme シュプリーム〉における「コラボレーションの意義」を考察する。

もはや聞き飽きたといわれようと事実としてあえていうならば、世のファッションブランドの中で〈Supreme シュプリーム〉ほど、その動向が注目されるブランドは他にない。

以前『knowbrand magazine』では、Supremeの象徴ともいうべき歴代の「ロゴ」を切り口にその人気を考察してみた。しかし、当然その人気の秘密はロゴだけではない。ストリート発のブランドがその枠を超え、世界中を熱狂させている別の要素。それが「コラボレーション」だ。

今回の『knowbrand magazine』では、Supremeにおける「コラボレーションの意義」を考察してみようと思う。

コラボレーションの根底にあるもの。

〈Supreme シュプリーム〉初のオフィシャルコラボレーションは、ブランド創立から2年後の1996年、〈VANS ヴァンズ〉のスニーカーといわれている。毎シーズン行われるコラボレーションは常に話題を呼び、2017年の〈LOUIS VUITTON ルイ・ヴィトン〉をはじめ、〈COMME des GARÇONS コム・デ・ギャルソン〉〈THE NORTH FACE ノース・フェイス〉など誰もが知る世界的人気ブランドとのコラボレーションは、リリースと同時に即ソールドアウト。直後にプレミアム化するその様は、もはや社会現象だ。

Supremeとて企業である以上、存続のためには売上・利益を生みださねばならない。その為には、ひと目でそれとわかる万人受けするメジャーな存在とのコラボレーションだけを行いそうなもの、だがそうはならないのがSupremeというブランドだ。メジャー、マイナー問わず、いささか通好みで、多くの若者は深くは知らない、そんなコラボレーションも多く存在する。

それはSupremeにとって、コラボレーションがただの話題づくりではなく、そのブランドやアーティスト、作品やプロダクトに対しての純粋なまでの「トリビュート=尊敬・称賛の念」が根底にあるからではないだろうか。

コラボレーションにおける
絶妙さ際立つセレクション。

Supremeのコラボレーションの中でも、人気の高いコレクションがミュージシャンやバンドを起用したものだ。

特にミュージシャン本人のポートレートや、Supremeの代名詞ともいえる「Box Logo Tee」をミュージシャン本人が着用したフォトTシャツは、リリースされる度に大きな話題となる。だが、たとえ世界的なビックネームであっても、世代によっては、その写真やビジュアルを見てもその名を知っても「誰だかピンとこない」ということは当然あることだ。

むしろそのあたりも見越したセレクションの絶妙さがSupremeの真骨頂ともいえよう。

Photo Tee

左 :16SS「Morrissey(モリッシー)」
イギリスのミュージシャンで、バントThe Smiths(ザ・スミス)の元ボーカルMorrissey(モリッシー)を起用。リリース当時、この写真を見ても誰だかわからないとのSupremeファンの声が続出。またSupremeとモリッシーが契約がらみで大揉めし、リリースが危ぶまれたという「いわく」ごと話題となったコレクション。

中左:16AW 「Gucci Mane(グッチ・メイン)」
射殺事件にまで発展した曲をめぐる利権争いや度重なる逮捕歴で世間を騒がす人気ラッパーのGucci Mane(グッチ・メイン)とのコラボレーション。リリースされたのが、本人が刑期を終え出所したばかりの2016年というのも意味深である。なお同年、グッチ・メインはSupremeの広告ムービーにも起用されている。

中右:09SS「Lou reed(ルー・リード)」
右 :15SS「Neil Young(ニール・ヤング)」
ロックの芸術性向上に大きな影響を与え2013年に世を去ったニューヨーク出身のLou reed(ルー・リード)と、1995年に「ロックの殿堂」入りし今なお活躍するカナダ出身のNeil Young(ニール・ヤング)とのコレクション。ともに「ロック詩人」と称される音楽界の巨人達とストリートブランドのSupremeがコラボレーションすることは非常に意義深い。

17SS「Michael Jackson(マイケル・ジャクソン)」

驚異的な完成度の楽曲、圧倒的な歌唱力、類まれなるダンスパフィーマンス、キャッチーなファッション。世界中に計り知れない影響を与え、「キング・オブ・ポップ」として知られる故Michael Jackson(マイケル・ジャクソン)に捧げたコレクション。

ショービズ界の頂点とのコラボレーションでは、プリントに使用されたポートレートに注目したい。その衣装から1982年発表の史上最も売れたアルバム「Thriller スリラー」に収録された「Billie Jean ビリー・ジーン」のミュージックビデオ撮影時のものとわかる。「Billie Jean」は、マイケルがコンサートで「ムーンウォーク」を初披露し、世界中に衝撃を与えた作品として知られ、このパフォーマンスを機にムーンウォークがダンスシーンに浸透したといわれている。

16SS「Black Sabbath(ブラック・サバス)」

Black Sabbath(ブラック・サバス)は、ロック界のカリスマとして伝説的エピソードに尽きないOzzy Osbourne(オジー・オズボーン)が中心となり1967年イギリスで結成されたロックバンド。その重く悪魔的なサウンドやビジュアルからヘヴィメタルの始祖とされる。

メンバー交代を繰り返しながらも約50年に渡って活動してきたが、2016年に最後のワールドツアー「THE END」をスタート。同年Supremeがこのコレクションを発表したあたりに、強いトリビュートを感じずにはいられない。ブラックサバスは、翌2017年にその活動に終止符を打った。

コラボレーションが
アートを日常にする。

アートに触れることが日常というライフスタイルの持ち主はどれほどいるだろうか。2000年代に入り、国内外のメジャーなファッションブランドによるアート作品の展示や保存、新進アーティストのサポートといった動きが活発化した。

強い力を秘めたアート作品やアーティストとの深い関係性の構築は、アート界とブランド側の双方にとって大きな刺激となり、更なるクリエイションを生むきっかけとなるからであろう。Supremeもアートとの関りは深く、大胆にプリントを施し、アート作品やアーティストをトリビュートしたアイテムを多くリリース。アートと距離がある者にとっても様々な作品をファッションとして日常に取り入れることで、アートは一機に身近な存在となる。

17SS「Maurits Cornelis Escher(マウリッツ・コルネリス・エッシャー)」

「視覚の魔術師」との異名を持つオランダの画家・版画家。トロンプルイユ(騙し絵)を巧みに操り、幾何学的かつ幻想的な世界観を表現する作風で知られる。

緻密なタッチの不可思議で美しい作品は、眺め始めると目が離せくなる程に人々を魅了し、今なお後進のアーティスト、クリエイターたちに大きな影響を与えている。このコレクション以降、特にUSA古着において、ブート系も含めたエッシャー作品のプリントTシャツは高騰しており、Supremeの影響力の大きさがわかる。

16SS「Alessandro Mendini(アレッサンドロ・メンディーニ)」

これまでに〈HERMÈS エルメス〉や〈Cartier カルティエ〉など一流メゾンからも作品をリリースするイタリアの建築家でもあり、デザインアートの巨匠Alessandro Mendini(アレッサンドロ・メンディーニ)とのコラボレーション。

18AW「Mike Kelley(マイク・ケリー)」

2012年に他界したアメリカの現代芸術家Mike Kelley(マイク・ケリー)に捧げたコレクション。ドローイングやペインティング、ビデオ映像、編み人形や中古のぬいぐるみ、玩具を使用したユニークな彼の作風を見事にファッションに落とし込んでいる。

コラボレーションにおける
サブとメインのフラットな関係。

サブカルチャーの代名詞としての漫画やアニメーションの立ち位置も時代とともに変わりつつある。当然メイン(主流)に対してのサブ(副次的な)カルチャーであるはずが、あらゆるコンテンツやプロダクトが様々なツールやチャネルを通して手に入る現代、様々なカルチャーは混沌としながらもフラットに存在し、メインとサブの境界線はますます曖昧になりつつある。

それゆえ先述したアート界の巨匠達とのコラボレーションと変わらぬフラットな姿勢でSupremeが取り組む漫画やアニメーションとのコラボレーションは、極めて自然なこととして受け入れられるのではないだろうか。

17AW「AKIRA(アキラ)」

日本の漫画家・映画監督の大友克洋氏の代表作『AKIRA』とのコラボレーション。1982年、新型爆弾により「東京」が崩壊し、第三次世界大戦が勃発。その数十年後、復興の最中にありオリンピックを翌年に控えた2019年の架空都市「ネオ東京」が舞台のSF作品。

原作・劇場版アニメともに、多方面に大きなインパクトを与え、かのKanye West(カニエ・ウェスト)も『AKIRA』へのトリビュートを公言しており、ミュージックビデオでその世界観を再現しているほど。時代は作品の舞台となった2019年に追いついてしまったが、まったく色褪せることなく、その予言性も含め、再び注目を集めている。

海外アニメ

左 :16AW「Tom&Jerry(トムとジェリー)」
ネズミを追いかけることを生きがいにするドジなネコのトムといたずら好きで頭の切れるネズミのトムが繰り広げるドタバタ劇。1940年の誕生以来、幾度もアカデミー賞を受賞しており、世界中で愛される名作アニメーション。

中・右:16AW「 Betty Boop(ベティー・ブープ)」
1930年に登場して以降、キュートでセクシーなルックスで多くの作品に登場するアニメ界のスター女優。日本でも「ベティーちゃん」の名で親しまれている。

「カルト」なチョイスに「らしさ」が光る
映画とのコラボレーション。

娯楽産業の代表格である映画は、当然「観るもの」であるが、時としてそのビジュアルイメージやキャラクターは、ファッションに取り入れられ、新たなトレンドを生み出すトリガーとなる。Supremeも映画をトリビュートしたコレクションを幾度もリリースしてきた。

創立間もない頃に製作された「TAXI DRIVER タクシードライバー」のトリビュートTシャツしかり、そのチョイスは、崇拝するほどの愛好家、いわば信者のような熱狂的ファンを生み出す「カルト」作品が多いあたりにSupreme「らしさ」が光る。

18SS「HELLRAISER(ヘルレイザー)」

斬新なストーリーと独特の世界観、劇中に登場するセノバイト(魔道士)のヴィジュアルなど、30年以上が経った今なおカルト的な人気を博す1987年のダークファンタジーともいえるイギリスのホラー映画。

17AW「SCARFACE(スカー・フェイス)」

Brian De Palma(ブライアン・デ・パルマ)監督による1983年公開のアメリカ映画。ギャング映画の金字塔といわれ、Al Pacino(アル・パチーノ)演じる主人公トニー・モンタナは架空の人物ながら、その成り上がっていく姿は、現実の貧困層のギャングスタ・ラッパーにとってのカリスマとなっており、ヒップホップカルチャーに大きな影響を与えている。

ラグジュアリーブランドから文房具といった日用品までSupremeがこれまでコラボレートしてきたパートナーは、多岐に渡り、ブランドやジャンルといった枠組みなどは、もはや意味をなさず、その並びは支離滅裂ともいえる。だが不思議とSupremeというフィルターを通過して、具現化されたコラボレーションアイテムは、どれも実に魅力的で美しく、人々の心に刺さり、何かしらの共通性すら感じてしまう。

様々なカルチャーを形成する相手とあくまでニュートラルに、純粋な「トリビュート(敬意の念)」を抱き、真摯にコラボレーションに臨む姿勢。そして多種多様なカルチャーの断片をミックスし、再編集を施し、新たな価値を持ったプロダクトへと昇華させる創造性。それらを持ち合わせ、飄々と存在している懐の深さこそがSupremeの強みであり、アイデンティティーなのではなかろうか。

創立から商業的に成功し強大となった今もなお、Supremeはコラボレーションを通じてストリートとカルチャーが繋がり、共存できる「場」のような存在であり続けている。そこで縁のなかった多くのカルチャーに触れ、各々の背景に興味を抱き掘り下げ、その価値を見出してゆく。

多くの人にとってその「場」は、いわば異文化と交流する「入口」や「きっかけ」であり、そうなることこそが、Supremeにおける「コラボレーションの意義」といえるのかもしれない。

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