FASHION

エル・エル・ビーン、エーグル、ハンターetc. 今こそ頼りたい“雨ニモマケズ”なフットウェア

だんだん暑くなってきた。長かった自粛期間もひとまず終わり、いよいよマインドはアクティブに……。と景気良くいきたいところだが、日本の気候は厄介だ。この時期は蒸し暑く、雨量も多い。うっとうしい梅雨が終われば、近年恒例のゲリラ豪雨が襲ってくるかもしれない。そんな憂鬱な日々を足元から晴れやかにするべく、優れた防水機能を持つフットウェアに注目してみよう。

今回は、ヘビーデューテイーにも通ずるタフネスを宿した、いわば“雨ニモマケズ”なアイテムをピックアップする。機能性だけでなく高いデザイン性を備えた選りすぐりだ。そんな傑作に、今こそ頼ろう。どれだけお気に入りの1足でも、“雨デハハケズ”となってしまっては力不足なのだから。

〈L.L.Bean エル・エル・ビーン〉
傑作ハンティングブーツに宿る
ブランドそのものとも言うべきハイスペック。

前回の「ヘビーデューティーな傑作バッグ【米国編】」でも登場した、“いなたい”アメカジの代名詞ともいうべき〈L.L.Bean エル・エル・ビーン〉。1912年にアメリカ・メイン州でレオン・レオンウッド・ビーンによって立ち上げられたブランドの歴史は、そのまま画期的大傑作の足跡でもある。
(→「ヘビーデューティーな傑作バッグ【米国編】」はコチラ

アウトドアマンだった創業者が、自身の経験を基に作った1足のハンティングブーツ。「メイン・ハンティング・シュー」、別名「Bean Boots ビーンブーツ」とも呼ばれる文字通りのアイコンだ。

ブランドのアイコンというべきビーンブーツのなかでも、とりわけ代表的な「Bean Boots 8inビーンブーツ8インチ」。

水に強い作業用のラバーシューズをベースに、雨や雪を弾く高品質のフルグレインレザー製アッパーを装着。異素材を大胆に縫い合わせたビジュアルはとかく斬新だったが、独自の機能性はさらに話題を呼んだ。ハンティング由来のため、たとえ湿潤な森の悪路を長時間歩いても濡れることがなく、安定性と快適なフィット感を実現。そう謳った夢のブーツは当初100足が作られ、飛ぶように売れた。

創業当時の失敗を踏まえ、頑強な作りを追求。特に負荷のかかるフィンガーループは逆V字にしっかりと縫い付けられ、アッパーとボトムの縫い合わせはトリプル・ステッチに。

しかし、彼のプロジェクトは一度頓挫する。ゴム製のボトムとレザー製のアッパーが分離し、90足もが返品されるという憂き目にあうのだ。ブランドの門出を襲った不測の事態、それでも当時40歳の創業者は逃げ出さなかった。返品分の代金を速やかに返却し、さらには借金をして製品の向上を追求。縫い合わせ部を頑丈なトリプル・ステッチで補強し、自らテストを重ねることで納得のいくブーツを作り上げた。そしてこの経験は、今もブランドに根付く「100%満足保証」、すなわち返品受付システムに繋がっている。

シンプルなビジュアルで使い勝手の良い「Gumshoes ガムシューズ」。

さてこのビーンブーツ、現在も1912年当時とほぼ変わらぬデザインを貫き、メイン州の自社工場にて1足ずつ手作業で作られているが、丈や仕様の違いで数種が存在する。なかでも定番といえば、高さ約20cmの「Bean Boots 8inビーンブーツ8インチ」になるだろう。ハイカットが足首まで万全に保護し、デザイン的なバランスにも優れる。ブランド創設100周年を祝う2012年には「ブーツモービル」という宣伝活動用の特別車両も作られたが、ここでも8インチのビーンブーツがベースとなっていることからも、その特別感が見て取れる。

一方で、タウンユースを重視するのであればミドルカット版の「Gumshoes ガムシューズ」を押さえておきたい。特徴的なフルグレインレザーアッパーの存在感はそのままに、使い勝手のいい3ホールの丈にアレンジ。よりシンプルな見た目ながら、ゴム製のボトムの強いグリップ力など優れた機能性は余さず享受できる。

アッパーの丈に違いはあれど、防水性能などの基本的なスペックは変わらず。

ここでひとつ、ビーンブーツを選ぶ際の注意点を。丈の長さを問わず厚手のソックスを履くことが想定されているため、通常のブーツよりも1サイズ下のものを選ぶと吉。言い換えればこの“本気”設計からも、質実剛健なブランドらしい醍醐味が味わえるだろう。

〈AIGLE エーグル〉
まるで“黒船”のような衝撃を与えた
フランスの“革命児”的存在。

日本では江戸末期。ペリーが浦賀へ来航した年でもある1853年に生まれたのが、フランスの誇るアウトドアブランド〈AIGLE エーグル〉だ。実業家のヒラム・ハッチソンがモンタルジの地にラバー工場を建設し、地元の優れた職人を集めて天然ゴム素材のブーツを生産。その背景には、ゴムの製法を知り尽くしたチャールズ・グッドイヤーと親交が深かったという実業家ならではのエピソードも潜んでいる。

いずれにせよ、上質なゴム素材を優れた製法で加工したブーツは履き心地に優れ、防水性能の高さでも評判に。ブランドはこのレインブーツの誕生とともに歴史的一歩を踏み出すわけだが、当時はぬかるんだ場所でも木靴を履いて作業するファーマーが少なくなく、彼らの足元を一変させたエーグルはまさに“革命児”であったのだ。

ちなみに、同様のラバーブーツは日本で「ウェリントンブーツ」とも呼ばれる。これは19世紀に、初代ウェリントン公爵が乗馬用に作成を依頼した膝下丈のブーツに由来。オリジナルは革製だったが、それをデザインソースとしたラバーブーツが人気を博したため、その名がつけられた。

クラシカルなロングカットブーツ「BENYL ベニル」。

それはともかく、エーグルは押しも押されもせぬラバーブーツ界の大御所。今ではアパレルラインも充実するが、やはりレインブーツこそが看板だ。特に本物志向の強い読者諸兄氏に推薦したいモデルが、クラシカルな面持ちのロングブーツ「BENYL ベニル」。フランス西部の街シャテルローにて、160年以上前から変わらない伝統的な製法でハンドメイドされ、雨の日の足元を支え続ける。

ブランドロゴには、名前の由来となったワシが舞う姿が取り入れられる。

理にかなった実用性のほか、削ぎ落とされたミニマルなルックスも見どころのひとつ。トップストラップの上部に配された上品なタグからも、フランスらしいエスプリが香る。なお、タグ内のブランドロゴにはワシのアイコンが舞う。ワシはフランス語でずばり「AIGLE」。つまりはブランド名の由来となっているのだが、これはアメリカ人である創業者が、同じくアメリカの国鳥「ハクトウワシ」に敬意を評したデザインでもあるようだ。

〈HUNTER ハンター〉
強く、美しく、最高品質。
3拍子揃った魅惑のレインブーツ。

アメリカ人実業家によるブランドの立ち上げ。エーグルの誕生から遅れること3年後の1856年、ところ変わってスコットランド・エジンバラでも同様の形でレインブーツブランドが産声をあげる。ヘンリー・リー・ノリスが創業した「ノースブリティッシュ・ラバーカンパニー」。看板に偽りなくタフなゴム製ブーツを手掛けた会社をルーツに持つのが、2006年に社名を変えて新生したセレブ御用達ブランド〈HUNTER ハンター〉である。

ブーツ本体を丸ごと液体天然ゴムで形成する継ぎ目のない作りは極めて防水性が高く、脚の形に沿ったシルエットは抜群のフィット感を提供。しかし、その精巧な作り込みの反面、創立当初は需要不足に悩んだという。そんな状況が、第一次世界大戦をきっかけに好転する。英国軍からブーツの開発を依頼され、確固たる信頼を獲得。第二次世界大戦においても防水ラバーブーツの発注が数多く寄せられた。

「Original Tall Rain Boots オリジナルトールレインブーツ」は、ハンター製品のなかで最も歴史の長いアイテムのひとつ。

代表的な名品としては、1956年に登場した「Original Tall Rain Boots オリジナルトールレインブーツ」を挙げよう。ブランド創設からちょうど100年後にリリースされた今作は、天然ゴムで作られた28のパーツを3日間かけて丁寧に組み立て。さらには脚の健康まで考慮した靴型に基づいて製造される。大雨や雪が激しい日でも足元をしっかり保護するのはもちろん、ファッション性を損なわないユーティリティなスタイルでも評価が高い。

ショート丈にすることで着脱の快適性を高めた「Original Short Rain Boots オリジナルショートレインブーツ」。

もうひとつの傑作として、「Original Short Rain Boots オリジナルショートレインブーツ」も紹介する。こちらは高い機能性に加え、ショート丈を採用することで利便性も向上。悪天候の煩わしさだけでなく着脱の煩わしさまでカバーする、モダンデザインのフットウェアだ。

表面に加硫加工を施すことで、上質なゴム素材がより強固なマテリアルに生まれ変わる。

ミリタリー的タフネスを持ち、ファッション性においても優秀。そんなハンターのレインブーツだが、ブランドにさらなる“箔”をもたらすのが最高品質の証、「ロイヤル・ワラント(英国王室御用達)」の称号だ。1977年にはエジンバラ公より、1986年にはエリザベス女王によりそれぞれ授与。ゆえにブーツメイカーの枠にとらわれない英国を代表するブランドとして、今なお抜群の影響力を誇っている。

〈Blundstone ブランドストーン〉
高品質がゆえに“防水&元祖”と噂される
タスマニア生まれのサイドゴアブーツ。

厳密に言えば、ラバーブーツのような完全防水を掲げているわけではない。それでもなお、雨に強い靴として愛される1足がある。それが〈Blundstone ブランドストーン〉のレザーブーツに他ならない。

ジョンとイライザのブランドストーン夫妻がブランドをスタートさせたのは、1870年のこと。イギリスから移住し、オーストラリア南東部のタスマニア島へと渡った彼らは、手始めにシューズの輸入ビジネスを手掛けている。その後に、タスマニア製レザーを用いたオリジナルアイテムの製作を開始。ある種の未開の地で、新しい可能性を開拓していった。

オイルを含ませたレザーアッパーで水を弾く「ORIGINALS #500 オリジナルズ#500」。

1930年代に入ると、創業者の兄弟が創設した同じくタスマニアのシューメイカーとM&Aを実施。順調に事業を拡大し、第二次世界大戦下ではオーストラリア陸軍にブーツを供給するにいたった。1960年代には、オーストラリアンフットボールのレジェンドで、タスマニア島出身者でもあったダリル・バルドックの名を冠したフットボールブーツを開発。その結果、国民的ブランドとして認知された。

そしてこの頃には、ブランドの代表作たるモデルが誕生。たっぷりのオイルを含ませたレザーアッパーが水を弾く、“雨ニモマケズ”な「ORIGINALS #500 オリジナルズ#500」である。

正確には完全防水ではないようだが、インジェクション製法やサーモウレタン製のアウトソールからも“雨ニモマケズ”な強みが覗く。

雨に強い理由は、撥水性のあるオイリーなアッパーだけにあらず。加熱した素材を金型に流すインジェクション製法でアッパーとソールを取り付けるため、結合部には縫い目がなく一体化。よって靴底から水が侵入する危険性を回避できる。そのうえで、オリジナルパターンを採用したアウトソールには、水や油などによる劣化に強いサーモウレタン素材を使う。雨に負けないどころか、140度の高熱にも耐えるという強靭さに驚かされる。

なお、巷では今作が“サイドゴアブーツの元祖”とも噂されるが、真偽のほどは定かではない。というのも、ブランドがそもそもそう謳ってはおらず、サイドゴアブーツの発祥は1830年代にまで遡るというのが有力だ。当時に即位したヴィクトリア女王のために献上されたとされているが、詳しくはこちらの記事も参照されたし。
(→「イギリス生まれの風変わりなゴム底シューズが、若者から支持された理由」)。

〈HOKA ONE ONE ホカオネオネ〉
雨の日も悪路も厭わず、
厚底と防水で“さあ、飛ぼう!”

ラストはやや趣向を変えて、ランニングシューズにスポットを当てる。とはいえ、快適な走りだけでなくタフネスにも直結する本格スペックを備え、ファッションアイテムとして街履きとしても大流行。活躍の場を選ばない〈HOKA ONE ONE ホカオネオネ〉のシューズは、時代の寵児のごとく鮮やかに疾走する。

誕生は2009年と、新興の部類に入る同ブランド。ジャン・リュック・ディアードとニコラ・マーモッドによってフランスのアネシーで設立され、現在はアメリカに本拠地を移している。耳障りの良い独特なブランド名は、ニュージーランドのマオリ族の言葉で“Time to Fly(さぁ、飛ぼう!)”を意味。その名にそぐわぬユニークさで、ランニングシューズの常識を覆している。

WP=防水の名を冠する「TOR ULTRA LOW WP トゥ ウルトラ ロー WP」。

名前以上にユニークでアイコニックなのが、インパクト十分の分厚いソールだ。これが極めて柔らかいクッション性を生み、着時の際の衝撃を吸収。必然的に快適な履き心地も実現した。ほかに、前足部に硬さを持たせて推進力を獲得する独自テクノロジー「プロフライ」など機能面のディテールは枚挙にいとまがなく、それらのなかには防水性能にまつわるものも含まれる。そこで今回は、「TOR ULTRA LOW WP トゥ ウルトラ ロー WP」を取り上げたい。

特徴的な厚底と、ワントーンのカラーリングがセンスフル。

WPとはウォータープルーフの略で、今作はトレッキングシューズのような耐久性の高いアッパーを採用する。そのキモとなるのが、透湿&防水性能に優れた「eVent」。ゴアテックスの2~3倍とも言われる高い透湿性を持つ素材をラミネートすることで、どんな状況でも足元を快適に保ってくれるのだ。

サイドのタブには、しっかりと「waterproof=防水」の文字が。

雨の日でも、オフロードでも、“さあ、飛ぼう”と言わんばかりにハイパフォーマンスを約束するホカオネオネ。気分を上げるデザイン性も、頼もしい限りだ。

以上、“雨ニモマケズ”な5足を紹介した。雨の日の憂鬱が、少しは晴れただろうか。これらを味方につけて、できるだけポジティブに街歩きを、ファションを楽しみたい。少なくとも、そんなふうに“ワタシハナリタイ”。

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