FASHION

映画に学ぶ!メンズファッション名作アイテム図鑑 「ダンク」「エアジョーダン」「インディブーツ」…、足元を彩る傑作シューズ

――“映画とファッション”は、切っても切れない関係にあるーー。

スクリーンの向こう側で俳優たちが身に着ける様々なファッションアイテムは、映画の世界観を表現するための小道具のひとつでありながら、劇中で俳優たちが演じるキャラクター達の趣味嗜好や、彼ら・彼女たちが生きている物語の時代背景までをカタチづくる極めて重要なキーアイテムといえる。そして、さらに重ねるならば、その映画そのものを我々が思い起こすキッカケにすらなり得る…。

ご機嫌いかがですか? Mizu- knowbrand magazine Haruoです。

前回は、映画の中の俳優たちが着こなす小慣れたアメカジファッションに憧れを抱き、服やオシャレに目覚めた…なんてファッションラバーの読者諸氏に向けて、“幾多数多ある名作映画から、メンズファッションにおける名作アイテムを学ぶ”をテーマに、1970年代〜1980年代に公開された名作と誉れ高き4タイトルに注目。劇中に登場する“ミリタリー由来の4アイテム”をピックアップし、劇中のイメージイラストとともに、お届けさせていただきました。

続く2作目の今回は、“足元を彩る傑作シューズ”編です。これまた名作と誉れ高い80年代〜00年代の5本の映画の中から、登場人物たちの足元をフィーチャー。ハリウッド発の大ヒットアドベンチャー作品から、90年代に一世風靡した傑作SF、玄人好みなホラーコメディの佳作、ブラックカルチャーを識る入口的名作、そしてかのキムタク主演、人気法廷ドラマの劇場版まで。
アイテム数が一つ増え、放送時間(文字量)もやや長めになっております。ごゆっくりとお楽しみください。

(→「映画に学ぶ!メンズファッション名作アイテム図鑑」ミリタリー由来の傑作たち)

映画に学ぶ!
メンズファッション名作アイテム図鑑
『イーストウィックの魔女たち』(1987年)と
〈NIKE ナイキ〉
「DUNK LOW ダンク・ロー」
抗えない魅惑の紺黄。
悪魔があくまでテニスでなぜバッシュ?

『イーストウィックの魔女たち』(1987年)
STORYアメリカ・ニューイングランドの郊外にある美しく平和な町、イーストウィック。そこには、男運に恵まれない3人の未亡人の熟女たちが住んでいた。実はこの3人は不思議な能力を持っており、自身も気付いていないが魔女なのである。そんなある日、3人の前に謎の中年男・デイルが現れると、瞬く間に彼女らを虜にし、奇妙な関係が始まる…しかし、その男の正体も人間ではなく、悪魔だったのだ。

5作品一挙放送のトップバッターを飾るのは、『マッドマックス サンダードーム』のジョージ‧ミラーによる、1987年の監督作品『イーストウィックの魔女たち』。先述のように本作の鍵を握るのが、主人公の悪魔デイル。演じるのは。かの名優…いや怪優ジャック‧ニコルソン。そしてタイトルにもある魔女役を務めるのが、シェール、スーザン・サランドン、ミシェル・ファイファーの3人だ。また音楽を、『スター・ウォーズ』シリーズなど数多の名作映画の音楽を生み出し、これまでにアカデミー賞の作曲賞を4度受賞した大御所ジョン・ウィリアムズが手掛けている点にも注目したい。

ここでは、劇中でテニスに興じるジャック・ニコルソンが履いていたスニーカーにフォーカス…なんてワザワザ取り挙げるだけあって、普通のテニスシューズにあらず。あの〈NIKE ナイキ〉の名作バッシュ「DUNK」のローカットモデルというから、何とも意外ではないか。

映画『イーストウィックの魔女たち』(1987年)の劇中で、テニスに興じるジャック・ニコルソン。

ダンクが生まれたのは1985年。当時、プロリーグであるNBAにも負けないほどの人気を誇ったNCAA(全米大学協会)のバスケットボールリーグに向け、カレッジカラープログラムの一環としてリリースされた同モデルは、先行展開されていた「TERMINATOR ターミネーター」「AIR JORDAN 1 エア・ジョーダン 1」といった同世代の名作をリミックスして誕生した。ゆえにわずか6週間という極めて短い期間でデザインから開発、出荷までが行われたとか。そのエピソード、まるで豊臣秀吉の一夜城の如し。

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写真は近年、復刻された際の〈NIKE〉「DUNK LOW MICHIGAN」。その佇まいはやはり名作のそれ。

『イーストウィック〜』は1987年作品であるということで、当然ジャック・ニコルソンが履いているのも当時のオリジナル。また、先述の誕生背景もあって様々なカレッジカラーが存在する中から選ばれたのは、通称「MICHIGAN ミシガン」。カレッジバスケット界では名門として知られる「UNIVERSITY OF MICHIGAN ミシガン大学」のスクールカラーで、スニーカーマニアは「紺黄(こんき)」の愛称で呼ぶ。

美しくビビットなカラーコントラストは唯一無二の存在感を放つ。

ネイビー×イエローが織りなす美しくもビビッドな色の対比は、劇中の下品で無礼ながら強烈な存在感を放つ悪魔的男性の足元に相応しく、3人の女性を虜にするデイルの魅力を際立たせている。だが、テニスのシーンでなぜ、この配色のバッシュを履いているのか?

ジャック自身が、NBAの「Los Angeles LAKERS ロサンゼルス・レイカーズ」の熱狂的ファンということで、そのチームカラーのイエロー×パープルに似た配色のミシガンを着用した…のかもしれないし、もっと単純に、ノンエアで安価、しかもローカットで動きやすくグリップが効くという理由から履かせたのかもしれない。

事実、ダンクのハイカットモデルは、門外漢のスケーターたちにも人気だった。特に紺黄のハイカットは、ストリートの神様“HF”こと藤原ヒロシ氏もスケボー時に着用し、ボロボロになるまで愛用したことで有名。1990年代のヴィンテージスニーカー・ブーム時には、コレクターたちの間でまさにカリスマ的人気を誇っていた…なんて話は、また別の機会にゆっくりと…。

(→〈ナイキ〉に関する特集記事はこちら)
(→〈ナイキ〉の「ダンク」をオンラインストアで探す)

映画に学ぶ!
メンズファッション名作アイテム図鑑②
『ドゥ
ライトシング』
(1989年)と
〈NIKE ナイキ〉の
「AIR JORDAN IV
エア・ジョーダン4」
踏まれてもなお、
バスケの神様のシグネチャーは白く輝く

「ドゥライトシング」(1989年)
STORY貧困層の人々やさまざまな民族が、小さな諍いはありながらも何とか上手くやりつつ、各々のスタイルで暮らしているニューヨークはブルックリンの黒人街。そこで一癖も二癖もある人々に囲まれながら、イタリア人家族の営むピザ店で楽しく働いていた黒人の若者・ムーキー。だがある暑い夏の日に起きた小さなトラブルをきっかけに人々の不満は噴き出し、ついには人種間の暴動にまで発展してしまう。

監督を務めたのはアフリカ系アメリカ人のスパイク・リー。自身を主人公に据え、アメリカ社会が抱える人種差別という問題を正面から取り上げた本作は、アカデミー賞でも激賞され、脚本賞にこそノミネートされるも作品賞には選出されなかったことが、それこそ人種差別ではないかと論争の的にもなった。かようにセンセーショナルな作品でもっとも印象的なシーンといえばアレだろう。

ムーキーの仲間、バギンアウト役を演じるジャンカルロ・エスポジートが履いていた白のスニーカーが、通りすがりの白人男性に踏まれて汚れの跡がつき、怒りを露わにする。この罪深きスニーカーこそが、ナイキの「AIR JORDAN IV エア・ジョーダン4」だ。

映画『ドゥ・ザ・ライト・シング』(1989年)で、主人公の友人を演じたジャンカルロ・エスポジート。

劇中のように足跡がクッキリ残るホワイトをベースに、グレーのセメントカラーをひと挿し。アウトソールには、ナイキのバスケットシューズとしては初のスピードプレイヤー向けモデル「AIR FLIGHT 89 エア・フライト89」のソールユニットが採用され、シュータンにはその証である“FLIGHT”のロゴと、AJを象徴するジャンプマンマークが誇らしげに並ぶ。

メッシュパネルやシューレースを通すプラスチック製アイレット、ヒールの補助を目的としたプロテクターパーツなど、当時のバッシュとしては画期的な素材使いとディテールが散りばめられた本作は、言わずと知れた“バスケの神様”マイケル・ジョーダンの4代目シグネチャーモデルである。

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ナンバリングのシリーズ中、唯一“Flight”の文字がシュータンに入る〈NIKE〉の「AIR JORDAN IV」。

劇中における本作の起用理由は、NBAとナイキのファンであればご存じであろう、スパイクとジョーダンの蜜月関係にある。〈AIR JORDAN3 エア・ジョーダン3〉のプロモーションをスパイクが手掛け、まるでバスケットボールのように、彼の頭を掴んで軽々と持ち上げたジョーダンの写真を使用した「THE BEST ON EARTH THE BEST ON MARS」のビジュアルは、当時大きな話題に。

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シュータン裏にある“AIR JORDAN”の逆さ表記は、当時ストリートで流行っていた“シュータンを折って裏返す履き方”を意識したものだとか。

その後も、二人は数々のTVCMや雑誌広告などで共演を果たすようになり、本モデルのCMに登場した「It’s gotta be the shoes!(このシューズじゃなきゃダメなんだよ!)」のフレーズは流行語に。こういった当時の空気感を踏まえると、自慢のAJ4を踏まれて激昂するバギンアウトの心情も理解できなくはないが、決して賛同はできない。右手にLOVE、左手にHATEのリングを着けたラジオ・ラヒームは、劇中でこんな言葉を残している。

「右と左はいつも戦っている。左が原因で、人はいつも殺しあうが、右が人の魂にふれ、やがてKO勝ちする」。

踏まれて汚れたキックスは磨けばいい。(バスケの)神様は常に、アナタがDo The Right Thing(正しい行いをする)なのか見ているのだ。

(→〈ナイキ〉の「エア・ジョーダン4」に関する特集記事はこちら)
(→〈ナイキ〉の「エア・ジョーダン4」をオンラインストアで探す)

映画に学ぶ!
メンズファッション名作アイテム図鑑③
『ターミネーター2』(1991年)と
誕生35周年の〈NIKE ナイキ〉
「AIR JORDAN V
エア・ジョーダン5」
殺人サイボーグから逃げ回る、
オンコートでプレーする。
どちらもイケる。

『ターミネーター2』(1991年)
STORYAIの反乱で人類が絶滅の危機に瀕する未来から、時間を遡り、人類の指導者へと成長する赤ん坊・ジョン抹殺のためにやってきた殺人サイボーグ「ターミネーター」と人間たちとの戦いを描いた人気SFの続編。前作から10年が経ち、非行少年となったジョンの元に、再び抹殺の使命を帯びた新ターミネーターが姿を現す。あわや絶体絶命の危機にジョンを救ったのは、前作の敵T-800型と同じ姿をしたもう一体のターミネーターだった。

ナイキ&ジョーダン繋がりで、後に『タイタニック』や『アバター』を手掛けるヒットメーカー、ジェームズ・キャメロンの1991年監督作品をピックアップ。主役であるT-800型ターミネーター役は、前作に続きアーノルド・シュワルツェネッガー。さらに未来世界において人類の指導者となるジョン・コナー役にエドワード・ファーロング、新たに未来からやってくる敵、T-1000型ターミネーター役としてロバート‧パトリックが参戦。当時の日本円にして約140億円という、前作の10倍もの制作費をかけただけあって、大ヒットを記録した。

作品自体は非常に有名だが、劇中でT-1000型ターミネーターから逃げ回るジョン・コナーの足元に、ナイキの「AIR JORDAN V エア・ジョーダン5」が履かれていたことは案外知られていない。

映画『ターミネーター2』(1991年)で、シュワちゃんと2ケツするエドワード・ファーロング。

映画公開の前年の1990年に発売され、2025年で誕生から35周年となるエア・ジョーダン5。試合を重ねる中で才能が開花し、驚異的なスコアを生むようになった天才、マイケル・ジョーダンを第二次世界大戦中のアメリカ空軍の戦闘機「P-51」通称“ムスタング”になぞらえてデザインされたとか。これは同機がロールス・ロイス社製のエンジンを搭載したことを機に、アメリカ軍のエース機になったという経緯とも重なる。機体に描かれるノーズアートを彷彿とさせるミッドソールの意匠が、まさにその証左である。

日本におけるエア・ジョーダンブームの火付け役は、間違いなくこの〈NIKE〉「AIR JORDAN V」。1990年の誕生から2025年で35周年となる。

同世代機を凌駕する速力と運動性を有した万能型戦闘機・ムスタングを思わせる、ジョーダンのスピード感溢れるプレースタイルを活かすため、くるぶしの高さはハイカットとローカットの中間である3/4カットを採用。この独自のカットはジョーダンカットとも呼ばれる。加えて、先述のAJ4から継承されたメッシュパネルやジャンプマンロゴを配したクリアソールなど、進化の軌跡もデザインから見て取れる。

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前作AJ4のデザインラインを受け継いだサイドのメッシュパネル。アイレットはボディに埋め込まれた。

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クリアのラバーソール越しに見えるジャンプマンロコゴもたまらない。

さらには、クリア素材が目を惹くシューレースストッパー、インパクト抜群なリフレクター素材のシュータンなど、当時のバスケットシューズの常識を覆す斬新なディティールワークを武器に、オフコートでも絶大な人気を博した。

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シュータンに配されたリフレクター素材もAJ5を彩る特徴の1つ。

ついでに、劇中のジョン・コナーのファッションについても触れておく。タイガーカモ柄のジャケットにパブリック・エネミーのTシャツ、そして細身のブルーデニムの足元には、シュータンが大きくボリューミーなAJ5。少年らしさと武骨さを携えた彼のスタイルは、マンガ『ドラゴンボール』に登場する、未来からの戦士・トランクスの面影となったとも。ただし明確な根拠はないので、あくまでウワサの範疇。

当時、アメリカではAJ5欲しさに殺人事件まで起きた…なんて言われていたが、事件の発生時期から正確にはAJ4だったと考えられるという説も…。

そんなAJ5も今年35周年のアニバーサリーを迎える。これにちなみOGカラー屈指の人気を誇る“Black Metallic”が来たる2月1日にI’ll be back。ヒールにあしらわれた”NIKE”のスウッシュロゴをオリジナルの質感に近づけた贅沢なリマスター仕様となるということで期待値も高まっている。

近頃のマーケット動向を鑑みるに入手は難しくなさそうだが、とはいえ“NO FATE(決まった運命などない)”。買えるか買えないか、審判の日は近い。Hasta la vista, baby!

(→〈ナイキ〉の「エア・ジョーダン5」に関する特集記事はこちら)
(→〈ナイキ〉の「エア・ジョーダン5」をオンラインストアで探す)

映画に学ぶ!
メンズファッション名作アイテム図鑑④
『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』(1981年)と
〈Alden オールデン〉の
「405 Indy Boot 405
インディブーツ」
冒険家でトレジャーハンターにして
考古学者。
そんなタフガイの相棒。

『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』(1981年)
STORY1936年、プリンストン大学で教鞭を執る高名な考古学者、インディアナ・ジョーンズ教授。インディの愛称で呼ばれる彼は、愛用のハットと鞭を手にして秘境や遺跡を探検する冒険家であり、世界中の宝物を探して発見するという凄腕のトレジャーハンターでもあった。ある日、そんな彼のもとにアメリカ陸軍情報部より、ナチス・ドイツが神秘の力を宿すと伝わる聖櫃の発掘に着手している。という情報が届く。

『ターミネーター2』も間違いなく名作だが、同じくシリーズ作品で絶対に外せないのが、『スター・ウォーズ』のジョージ・ルーカスと『未知との遭遇』のスティーブン・スピルバーグがコンビを組み、1981年より始まったアドベンチャー映画の金字塔『インディ・ジョーンズ』シリーズだろう。主人公のインディアナ・ジョーンズを演じたのは、『スター・ウォーズ』のハン・ソロ役でもお馴染みのハリソン・フォード。

特徴的なその姿は、チャールトン・ヘストンが『インカ王国の秘宝』で演じたハリー・スティールを参考にしたという。キーアイテムは、牛追いムチ、フェドーラハット、レザージャケット。そんな1930年代のアクション・ヒーローへのオマージュが込められた冒険者的装いに軽快さをもたらすのが、〈Alden オールデン〉の「405 Indy Boot 405 インディブーツ」だ。

映画『レイダース/失われた《聖櫃》』(1981年)でタフな考古学教授を演じたハリソン・フォード。

1884年に創業し、140年以上の歴史を誇るアメリカを代表するシューズメーカー、オールデンといえば、馬革の希少部位であるコードバンを用いたVチップなどが世界的にも著名。アメリカントラッドを語る上で不可欠な存在といえる。元々のプランでは、別メーカーのブーツが衣装として用意されていたそうだが、これに納得がいかなったハリソン自身がオールデンに特注して生まれたのが、このブーツである。

映画公開時、このブーツがオールデン謹製であると公表されていなかったため、アメリカのみで展開され、同作のヒットに呼応するように2011年から日本での発売もスタート。

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ハリソン・フォード自身が特注して誕生したというエピソードも、またお強い〈Alden〉「405 Indy Boot」。

ご覧のように、モカシントゥとグッドイヤー製法の証たるコバのステッチをホワイトカラーが引き締め、無骨な中にもさりげない上品さが感じられる。高名な考古学者にして冒険家、そして世界中の宝物を探す凄腕のトレジャーハンター。そんな男の夢を全載せしたようなチートなキャラクター像を象徴するかのように、タフでありながらもインテリジェンスの香りが同居する一足となっている。

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アッパーにはブラウンカウハイドを使用。上から4つ目まではブーツを着脱しやすいようにシューホールではなく、フック式になっている。

シューズの顔たるアッパーは当初、米国ホーウィン社のオースティンカーフを採用していたが、現在は適度な艶と耐久性に富んだブラウンカウハイドレザーへとマイナーチェンジ。重要な木型には、同社の中でも幅が広めでボリュームがあり、男らしい印象を与えるトゥールバランスが選ばれた。これには長時間歩いても疲れにくいという利点がある。その上、オイルをしっかり含んでいて柔らかく足に馴染み、悪天候でも心強い。

当然、履き込むほどに味わい深く変わっていく。その様は、2023年公開のシリーズ5作目『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』で見せた、年齢を重ねてなお変わらぬ魅力を放つ、ヤング・インディ・ジョーンズならぬオールド・インディ・ジョーンズの勇姿とも似たり。

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グリップ力に優れたコルクソールと、足内側のヒールが長いトーマスヒールを採用することで足の疲れを軽減する。

履き心地に関していえば、その要たるアウトソールにコルクチップを練り込んでグリップ力を強化。着用を繰り返しソールがすり減ることにより、散りばめられたコルクが表出し防滑性をさらに高める効果も期待できる。過酷な冒険を日常とし、密林の秘境から謎の古代遺跡までを踏破する者にとって、これ以上なく打ってつけのブーツであることは間違いない。

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旧ロゴと称される約1980年〜1990年代の横印字。現行モデルでは、ロゴデザインと書体が変更され縦積みで印字。

ところで、着用するアイテムにもこだわりを持つことで知られる彼だが、なぜオールデンを選んだのか。実はデビュー当時、俳優として芽が出ず大工仕事で生計を立てていたハリソン。その頃、動きやすく足元をタフ支えてくれる相棒として愛用していたのが、同社のシューズだったというワケだ。要は、実体験を元に導き出された最適解。不遇の時代があったからこそ、名作インディブーツは誕生したといえる。

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もしあの時、ハリソンの判断が違っていたら…この名作インディブーツは誕生していなかったかもしれない。

では、最後に小ネタを1つ。2018年に公開された『スター・ウォーズ』のスピンオフ作品、『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』において、ハン・ソロ役の後任を務めた役者の名は…“オールデン”・エアエンライク。何かしら因縁めいたものを感じるが、まぁ偶然だろう。インディだって「私は科学者だ。驚いたりなどしない」と答えるに違いない。

(→〈オールデン〉の「405 インディブーツ」をオンラインストアで探す)

映画に学ぶ!
メンズファッション名作アイテム図鑑⑤
『HERO』(2007年)と
〈REDWING レッドウィング〉の
「6-inch Classic Round 9111
6インチ クラシックラウンド 9111」
型破り検事とともに、
フットワーク軽く現場を駆け回る赤き翼

『HERO』(2007年)
STORY破天荒だが人一倍強い正義感を持つ検事・久利生公平は、真面目だがどこかトボけた同僚の雨宮舞子とコンビを組み、日々事件解決に奔走していた。そんな折、関わることとなった大物代議士の事件。既に犯行を認めていた容疑者が初公判で一転、無罪を主張し、刑事事件無罪獲得数日本一の弁護士による、さまざまな戦術で窮地に追い込まれる久利生。そして韓国・釜山へと舞台を移し、物語は思わぬ方向に。

本稿のラストを飾るのは邦画。それもフジの月9ドラマ発というから、これまでの流れからしてもイレギュラー。とはいえタイトル名を聞けば思わず納得。その名は、泣く子も吠える『HERO』。2001年のテレビ放送で高視聴率を記録。その人気は放送終了後も根強く残り、2006年に特別版が放送されるとさらに加熱。そこで満を時して翌2007年に公開されたのが、こちらの劇場版である。

主人公・久利生公平役を演じるのは、元SMAPの“キムタク”こと木村拓哉。ドラマ版で〈A BATHING APE ア・ベイシング・エイプ〉のレザーダウンジャケットやネルシャツといった裏原ブランドのアイテムを着こなし、ストリートで圧倒的支持を獲得していたキムタクだけに、当然この映画でもトレンドを凝縮したアメカジスタイルを披露。自ずとその格好を真似た自称キムタク似も増加の一途。

映画『HERO』(2007年)で、検事と思えないこなれたアメカジスタイルを披露した木村拓哉。

結果、着用アイテムは軒並み高額転売のターゲットに。〈REDWING レッドウィング〉の「6-inch Classic Round 9111 6インチ クラシックラウンド 9111」もまた同様…といっても読者諸氏には釈迦に説法。「レッドウィングとは?」なんてお約束の流れもブッチャケ不要と思われるので、最低限の文字数でサラリと記す。同ブランドは1905年、アメリカ・ミネソタ州レッドウィングで創業した世界的ワークブーツメーカーで、この2025年に目出たく創業120年を迎える。以上。

次いで主役の「6インチ クラシックラウンド 9111」に話を移す。あの頃はプレーントゥと呼ばれていたが、今ドキの通称は“6インチラウンドトゥ”。6インチの冠はハイト(丈)を指し、武骨さも備えながらも程よくカジュアル。創業間もない時代に誕生し、今も現役を貫くタイムレスな1足とはヤツのこと。

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クレープソールから進化したトラクショントレッド・ソールを搭載した〈REDWING〉「6-inch Classic Round 9111」。

革の表面をわずかに擦って加工し、オイルとワックスを染み込ませたカッパー・ラフアンドタフ・レザーのアッパーを受け止めるのが、クッション性に富んだフラットで肉厚な白ソール「トラクショントレッド・ソール」だ。アーチサポートに優れるだけでなく、軽く履きやすく、一体成形ゆえに堅牢。型破りなアクティブ派検事・久利生が劇中で見せるフットワークの軽さは、このソールに拠るところも大きいかと。

そしてレアという言葉に滅法弱い読者諸氏のチェックポイントであるタグ。裏原宿ブーム全盛期の1990年代中頃~2003年頃は、プリントではなく刺繍で記された通称“刺繍羽根タグ”だったが、写真のモデルには、2003年から使用されている縦長の現行タグが。特別な価値があるかと問われればそうではないが、20年以上の歳月を経た今、改めてニュー・ヴィンテージと成る。

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2003年から使用されている縦長の現行タグ。作品公開時の現行品に付いていたのもコチラ。

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いつの時代も変わらず「あるよ」な、ジャパニーズ・アメカジスタイル不朽のアイコン。

キムタクは1990年代の段階ですでに私生活においてもレッドウィングを愛用していたそうだが、前述のダンクよろしく、“ストリートのカリスマ”藤原ヒロシが雑誌で紹介したことで、大いに高まった認知と人気。さらにドラマと映画の大ヒットも後押しし、いわゆるクレープソールのレッドウィングの名声はストリートの隅々まで知れ渡るところに。二十数年前なら入手困難だったが、今は労せず「あるよ」と見つかるジャパニーズ・アメカジスタイル不朽のアイコンだ。

(→〈レッドウィング〉に関する別の特集記事はこちら)
(→〈レッドウィング〉の「9111 6インチ クラシックラウンド」をオンラインストアで探す)


アクション、SF、アドベンチャー、ファンタジー、ホラー、サスペンス、ミステリー、コメディ、恋愛、ヒューマンドラマetc.…。時に興奮と熱狂、または疑惑と魅惑、さらには笑いと感動を提供し、観る者を心震わせる名作映画と、その記憶を呼び起こす“あの映画のアレ“の話。
今回は80年代〜00年代の5本の映画に登場する、5つの逸足をノンストップでロードショーしたが、さて、どうでしょう? 今後も続いていく予定のムービー・ナレッジ。ぜひとも次回掲載にご期待いただきたい。ということで、最後に再び“あのフレーズ“で締めさせていただく。

いやぁ、“映画とファッション”って本当にいいもんですね!
それではまた、knowbrand magazineでご一緒に楽しみましょう。

(→「映画に学ぶ!メンズファッション名作アイテム図鑑」ミリタリー由来の傑作たち)

Illustration: Hisayuki Hiranuma

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