FASHION

ワールドクラス・ジャパン“セカイに誇るニッポンのモノ” 〜〈オーラリー〉篇〜

前回フォーカスを当てた〈COMOLI コモリ〉に続き、今回もニッポンの注目ブランドを紐解いていく。

グローバル化、ボーダレス化が叫ばれて久しい今、服においては日本産や日本製にいかほどの価値があるだろうか。少々乱暴な言い方だが、”ニッポン“にある程度の信頼感こそあれ、人々に求められる本質はそこにはさほどないように思う。むしろ、国籍ではなくひとりの作り手の想いこそ、受け手に響く強烈なツボではないだろうか。

モノで溢れ、均一化された社会で、いかにパーソナルなモノを作り出せるか。今回取り上げるのも、服というモノに対して極めて私的に向き合うブランドだ。そして、そんなブランドがニッポンに存在することこそが、とても誇らしいのだ。

素材からインスピレーションを得て
生まれる、日の当たる場所。

まさしく新進気鋭である。2015年春夏にデビュー。独立前のデザイナーは大学を卒業後、文化服装学院の夜間部に通いながら〈norikoikeノリコイケ〉に入社し、パターンやデザインの経験を積んでいる。賢明な『knoebrand magazine』読者であれば、すでに具体的な名前が頭に浮かんでいることだろう。デザイナーの名は岩井良太。ブランドの名は〈AURALEE オーラリー〉。その服は、創設時から審美眼の鋭いバイヤーたちを唸らせた。

名前の由来は、エルヴィス・プレスリーの名曲『Love Me Tender』の原曲にもなったアメリカの古い民謡のタイトルだ。当初は音の響きだけで決めたため、デザイナー自身も言葉の意味を後になって知る。オーラリーとはすなわち、日の当たる場所。「朝の光が似合う」と自らのコレクションを分析する岩井にとって、図らずもそのものずばりのネーミングだった。

彼の作る服は、独特なインスピレーション源を持つ。その日の天気や、日々の生活を取り巻く色、旅。そしてなにより、素材や生地そのものから刺激を受けている。もとはウールや綿の生地問屋〈Clip Clapクリップクラップ〉で展開していた経緯もあるが、一流の料理人が素材を、ひいては素材が作られる畑を重視するように、“原点”に立ち返るのはある種自然な流れとも捉えられよう。

いずれにせよオーラリーの旅は、上質な素材への膨大なリサーチから始まる。そして、創作時間の大半を生地作りに費やしていく。

「STAND-UP TEE
スタンドアップティー」
その完成度に、
思わずスタンディングオベーション。

素材を真摯に見つめ、探求する。その結晶たる名品の数々をさっそくご覧いただこう。まず紹介したいのが、「STAND-UP TEE スタンドアップティー」。デイリーユースの代名詞たる白いTシャツも、オーラリーの手にかかれば特別な1着となる。

アイテムの特徴は、ネーミングに凝縮される。厳選した上質なコットンを使い、ハリのある厚手のボディを作成。気が遠くなるほどの試行錯誤の末に、直立(=スタンドアップ)しそうなほど極めて固く度詰めされた生地に辿り着いた。

シルエットはゆったりとしたボックス型。厚手のため当然ながらタフネスを備え、ヘビーユースを促進する。毎日のように着たくなる服。それは袖を通すたび、別の角度からも素材の恩恵を感じることとなる。表面の硬さに反して肌に当たる部分を滑らかに仕上げることで、コンフォータブルな着心地が実感できるのだ。

どんなスタイルにも取り入れやすい「STAND-UP TEE スタンドアップティー」。

その名の通り、スタンドアップ」するほど厚くて丈夫な生地を用いるが、肌触りは滑らか。

脇下のベンチレーションホールや裾のスリットなど、着用感へのこだわりもひとしお。

着用感へのこだわりは、通気のための脇下のベンチレーションホールや身体の動きを助ける裾のスリットからも見て取れる。素材から出発して、合理的なデザインに帰着する。これぞオーラリーのスタンダードだ。

「SUPER HARD TWIST RIB KNIT P/O
スーパーハードツイストリブニット
プルオーバー」
いい大人に相応しい、
強撚が生む佇まい。

続いても、コットンから生まれた1着。極限まで強く撚った糸で編み上げた「SUPER HARD TWIST RIB KNIT P/O スーパーハードツイストリブニットプルオーバー」は、定番にして個性的な佇まいである。

超細番手の糸一本一本を強撚して三本撚りにしつらえ、さらにまた撚糸。そのタフネスは、幾重にも組み合わされた綱引きの縄を思い浮かべてもらえば想像できようか。ともかくそんな強靭な素材を高密度にリブ編みすることで、このクルーネックニットは完成に至る。

強撚に強撚を重ね、独特のルックスと着心地に至った「SUPER HARD TWIST RIB KNIT P/O スーパーハードツイストリブニットプルオーバー」。

首回りや肩の縫い目にも丁寧な処理が。ディテールが全体に与える印象をしっかり認識した仕事が光る。

十二分に詰まった編み地は美しい模様を描き、見た目からして他のニットとは一線を画す。しかし、やはり真骨頂は着用して初めて味わえる。肉厚ながらシャリっとした心地良い肌触りを体感すれば、ますます虜になってしまうのだ。流行のビッグシルエットだが、しっかりと詰まったネックや繊細な肩の継ぎ目の処理もあってか、品の良さをキープ。適度な重みを感じるところも、いい大人に相応しい仕上がりだ。

「SUPER MILLED SWEAT
P/O PARKA
スーパーミイルドスウェット
プルオーバーパーカー」
適材適所の素材と加工が
ブランドの深みを示唆。

コットンなどの天然素材だけに囚われず、いわゆる化繊も積極的に取り入れる姿勢がブランドの広い懐を表す。もちろん、化繊を使うことに理由があるからなのだが。オーラリーのプロダクトのなかでもトップクラスの人気を得る「SUPER MILLED SWEAT P/O PARKA スーパーミイルドスウェットプルオーバーパーカー」の生地を見れば、その狙いは明らかだろう。

毛糸のような膨らみのあるハイバルキー糸(アクリル糸)とコットンを紡績した表糸、柔らかな無撚糸の裏糸。両者を編み上げた裏毛生地だが、編地と製品の段階で“ならでは”の魔法をかけている。それぞれの工程で高熱を加えることにより、ハイバルキー糸が嵩高に変化。全体を縮絨(しゅくじゅう)させることで、驚くほどのハリを手にした。

「SUPER MILLED SWEAT P/O PARKA スーパーミイルドスウェットプルオーバーパーカー」は、数あるアイテムのなかでも支持者の多い人気アイテムだ。

ボディ脇にはサイドリブパネルを配し、着やすさと動きやすさに考慮。

ゆったりした全体のシルエットに合わせ、フードもやや大型に。とはいえ生地の固さゆえ、潰れにくい仕様に。

ユニークな手法とは異なり、見た目はオーソドックス。オーラリーらしいビッグシルエットで身幅は広く、アームホールは太く設計されている。編み地を横にした“リバースウィーブ”の意匠、フラットシーマで縫製されたボディ脇のリブパネルは、かの〈Champion チャンピオン〉のようなタイムレスな風格を放つ。一方、やや大きめのフードは固い生地の恩恵で存在感がアップ。いかにオーソドックスとはいえ、細部まで目が離せない。

(→〈Champion〉に関する特集記事はこちら

「SUPER LIGHT WOOL
CHECK SHIRTS
スーパーライトウールチェックシャツ」
スーツに負けない質感と光沢を、
カジュアルに。

こちらの「SUPER LIGHT WOOL CHECK SHIRTS スーパーライトウールチェックシャツ」は、まさしくウール100%のアイテム。とはいえ、そのウールがやはりタダモノではない。主にスーツで使われるような超極細繊維を原料とするSUPER130’sを紡績。極上の梳毛糸(そもういと)を高密度で織ることで、滑らかな質感と美しい光沢が現出する。

しかも、仕上げにウォッシャブル加工を施すのだから恐れ入る。そのため日々のイージーケアだけでなく、シルエットの独特の落ち感とハリの良さを両立。シワになりにくいのも嬉しい相乗効果だ。

ウール100%で作られる「SUPER LIGHT WOOL CHECK SHIRTS スーパーライトウールチェックシャツ」。超極細繊維で構成されたSUPER130’sを使用。

光沢の美しさとハリ感はウールとは思えないほど。しかも家で洗濯できるという心強さ。

袖口はシングルカフス仕様。袖先にはタックを入れ、丸みをアピールする。

高価な原料を使い、加工に手間をかける。ある種、非効率な生地の生産を経たからこそ、このシャツには説得力が宿る。レギュラーカラーの襟、サブボタン付きのシングルカフスの袖。バックヨークにはセンターボックスプリーツ、裾のサイドにはスリットが設けられ、動きやすさを担保する。てらいのないディテールも、素材への信頼と自信の証だ。

「HARD MELTON DUFFLE COAT
ハードメルトンダッフルコート」
英国が誇る羊毛をブレンドして
新境地へ。

最後に、真冬の相棒として理想的なコートを。英国の羊毛を使用した「HARD MELTON DUFFLE COAT ハードメルトンダッフルコート」。あらためて眺めれば、そのずっしりとした面構えは相棒を超えた主役の迫力である。

ゆったりとしたモダンな膝丈のコートは、これまたオーラリーのオーソドックスでありベーシックな雰囲気。そう、より注目すべきは素材だ。前述の通り英国の羊毛を使うが、チェビオット、シロップシャー、シェットランドという三種類をブレンドした。質感の異なる3つの長所を活かし、しっかりと打ち込んで織り上げることで、まるでヴィンテージのような野性味とドレッシーな光沢が同居する。

三種の英国羊毛をブレンドして作られた「HARD MELTON DUFFLE COAT ハードメルトンダッフルコート」。

オリジナルのトグルボタンや調整アジャスター付きのフード、絶妙なバランスで配置されたパッチ式ポケットなど、見れば見るほど芸が細かい。

トグルも特製で、ボディと同色に染め上げ。全体のトーンを統一することで、洗練さを増している。フードはボタンアジャスターで、袖口もボタンで調整が可能だ。ウエスト部のパッチ式ポケットはサイズや配置が計算され、クリーンなビジュアルを後押ししている。

言わずもがな、服は素材があってこそ成り立っている。当然でありながら、この消費社会でややもすると忘れられがちな原点を、オーラリーはしかと見据えて新しい価値を生み出す。服そのものの可能性を、そして服を着る我々の可能性すらも広げてくれるかのように。

コモリ、オーラリーを例に挙げた「ワールドクラス・ジャパン“セカイに誇るニッポンのモノ”」。しかしニッポンには他にもまだ、刺激的なブランドが存在する。

それはまた、別の機会に。

(→ “セカイに誇るニッポンのモノ” 〜〈コモリ〉篇はこちら

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