FASHION

“本気”のウィンターブーツ

冬。早朝が最も美しいと詠んだ『枕草子』の時代から1000年以上も移ろえど、やはり日本には四季折々の歓びがある。装う楽しみも、その重要な一部。お気に入りのダウンジャケットを羽織る、カシミアのニットに袖を通す。そして足元は…。

そう、ウィンターブーツの出番である。暖かいのはもちろん、グリップ力に優れ、悪路をものともしない。なにより存在感のある見た目は、単調に陥りがちな冬のコーディネイトにおいて格別のアクセントを加えてくれる。だからこの季節にこそ、スニーカー以上にブーツが頼れるのだ。

なかでもどんな1足を味方につけるべきか。やはりそこには、“本気”というキーワードが欠かせない。背景やスペックにおいて、我々を惹きつける本物のロマンがあるか。その観点から、代表的な4ブランドのウィンターブーツを紹介しよう。

耐久性と快適性を追求し、
ひとつの“原型”に辿り着く。
〈SOREL ソレル〉

冬季の平均気温は、実にマイナス13度を記録する。極寒の地、カナダ・オンタリオ州で生まれた〈SOREL ソレル〉こそ、ウィンターブーツの生みの親というべき存在だ。1908年の創業からテーマとするのは「耐久性と快適性の両立」。最近ではアウトドアブランドの街着化が顕著だが、彼らがこぞって提唱するような理念を、カナダの名門は100年以上も前から掲げている。

その信念は1962年、画期的アイデアを搭載したブーツで実証される。レザーアッパー&ラバーボトム、そして着脱可能なフェルトライニングという“三種の神器”を備えたモデルを世界で初めてリリースしたのだ。保温性に秀でたレザーと耐水性に優れたラバーの使い分けは、雪や雨の中での安定した歩行を担保。内部の防寒フェルトを取り外し可能にすることで真冬以外にも対応し、衛生面も向上した。この“ウィンターブーツの原型”とされる1足は、まさに「耐久性と快適性の両立」における模範解答である。

そんな名機の系譜を継ぐのが、歴史的名作「CARIBOU カリブー」だ。1972年に登場するやいなや世界中でファンを獲得。前述の“三種の神器”に加えて、武骨さと愛くるしさを併せ持った唯一無二のビジュアルは、40年以上前から変わらないオーセンティックの極みといえよう。

〈SOREL〉の歴史的名作「CARIBOU」

なお現在では、アッパーの縫い目まで止水加工を施したウォータープルーフヌバックを採用し、ストレッチ性のあるインナーブーツがウォッシャブル仕様になるなど絶妙にアップデート。進化する古き良き、その姿勢にもまたロマンを感じる。

王者の慈愛が宿る
“履くダウン”。
〈THE NORTH FACE ザ・ノース・フェイス〉

もはや説明不要であろう。トレンドを席巻する、現代のキング。洒落者は老若男女を問わず、〈THE NORTH FACE ザ・ノース・フェイス〉に首ったけだ。機能素材を纏ったハイスペックなアーバンアウトドア。そんな潮流を作り出したブランドの貫禄は、ウェアだけでなくブーツにも宿る。
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その代表格として挙げられるのが、「NUPTE BOOTIE ヌプシブーティ」だろう。モコモコとしたフォルムが、どこか新鮮でスタイリッシュ。一度見たら忘れられないようなビジュアルだが、その初代モデルは2007年に誕生した。以降さまざまなバリエーションが登場し、圧倒的な保温性と軽さで“依存症”を誘発させている。

〈THE NORTH FACE〉の冬の定番「NUPTE BOOTIE」

もともとは冬山を登るテントブーツとして開発された同モデルは、中綿にダウンや「プリマロフト」と呼ばれる素材を採用。いずれも抜群に暖かく、冬の寒さをものともしない。氷面でも滑りにくいアイスポッドを備えたラバーソールからも、確固としたルーツがうかがえる。

ファン層が広大なザ・ノース・フェイスらしく、アッパーには多くのデザインを用意。モノトーンであったり柄物であったり、実に多彩だ。素材替えも多く、例えば撥水加工を施したナイロン地と独自の防水素材「TEKWPROOF テックプルーフ」を掛け合わせたもの、撥水&圧縮加工がされたウール地などがラインアップ。ロングやショート、別注モデルなどを合わせれば、枚挙にいとまがない。

防水性と 透湿性、さらに結露防止機能まで備えた〈THE NORTH FACE〉独自の「TEKWPROOF 」。

中身と見た目を追求し、ファッションを愛するすべての冬の足元を本気で快適にする。王者が放つ“履くダウン”からは、そんな慈愛すら見受けられるのだ。

進取の姿勢と
クラフツマンシップの融合。
〈Danner ダナー〉

ことメンズファッションを語るうえで外せない、ワーク、アウトドア、ミリタリーといった要素。それらをすべて持ち合わせるのが、アメリカの老舗〈DANNER ダナー〉のブーツだ。ブランドの誕生は1932年。創業者のチャールズ・ダナーが最初に手がけたのは労働者のための靴、当時で4ドルという低価格の手縫いワークシューズだった。

1936年にはオレゴン州へ拠点を移し、戦時中は“造船所の靴”と呼ばれた靴底に鋲のついたシューズをメインに製造。1952年にアメリカで初めてイタリアの〈vibram ビブラム〉のソールを用いたブーツを開発したが、屈強で滑りにくいそれは特にバックパッカーから支持を得た。その流れを受け、徐々にハイキングブーツを強化。1961年発表の名作、「MOUNTAIN TRAILマウンテントレイル」へと繋がっていく。

そんな、時代を読んで先取りするダナーらしさは不世出の傑作に結実した。それが1979年に発表された、「GORE-TEX® ゴアテックス®」を使った世界初のブーツ「Danner Light ダナーライト」である。
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〈Danner〉が生み出した傑作ブーツ「Danner Light」

防水、透湿性に優れた当時の最先端素材ゴアテックスをブーツに採用した先見の明、アウトソールとインソールの間にスペースを作ってムレを抑える昔ながらのステッチダウン製法など、進取の気質とクラフツマンシップの融合ともいうべき1足だ。

今なおポートランドの工場でハンドメイドされるその品質は極上で、2000年には米軍への支給もスタート。アウトソールなどを変更した“弟版”に当たる「Danner Light Millitary ダナーライトミリタリー」も、熱心なファンを獲得している。

いずれにせよ、そのヘビーデューティな魅力に我々は抗えない。あたかもすべてを内包する大自然のように、男の本能を刺激する。

サーファーが本気で追求した、
冬ならではの快楽。
〈UGG アグ〉

サーフィン。そう聞くと冬、ましてや靴とは相容れないと思われるかもしれない。しかし、いい波を求めるサーファーは本来、年中無休で海へと足を運ぶ。そして真冬の海辺の寒さは、平地に比べても一層厳しい。事実、1978年にはアメリカ西海岸のビーチで、ひとりのオーストラリア人サーファーがシープスキン製の保温性に優れたブーツを販売する。その男の名は、ブライアン・スミス。〈UGG Australia アグオーストラリア〉、現〈UGG アグ〉の創設者である。

リリースから40年以上が経過した今、アグのシープスキンブーツ、とりわけ有名な「CLASSIC SHORT クラシックショート」は、サーファー以外からも重宝される。長靴のようなキュートなルックスに、羊毛の温かみと通気性をプラス。世界各国のセレブにも愛用され、冬のファッションアイテムとしての地位を確立した。

〈UGG〉の代表的モデル「CLASSIC SHORT」

その抜群の知名度にまつわるトリビアをひとつ紹介しよう。ブランド創業者の母国であり、羊毛大国でもあるオーストラリア。彼の地では、シープスキンで作られたムートンブーツを総じて「アグ」と呼ぶのだそうだ。同様の靴は1900年頃から存在したにも関わらず、わずか数十年で歴史を変えたアグの偉大さを感じられるだろう。

シープスキンの極上の毛並みは、包み込むような 柔らかさと温もりを約束 。

アグならではの、フワフワ&モコモコの快感。それは、ある種の快楽主義者でもあるサーファーが、本気で考え抜いた結晶だ。真冬でも、素足でのアフターサーフを心地よく。そんな快適さへの情熱は、陸にとどまる人々にもしっかり伝播したようだ。

コタツで丸くなるのは猫に任せて、真冬に向けた準備を始めよう。早速、ブーツを手に、いや足にとろう。頼れる1足なら、街はおろかアウトドアフィールドへも活動の幅が広がり、“早朝”以外にも“をかし”な物事が見つけられるはずだから。

装う楽しみと、動く楽しみ。来るべき季節においてその両方を叶えてくれるのは、“本気”のウィンターブーツだけかもしれない。

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