FASHION

愛すべき“ヘビーデューティー”な傑作アウター【英国編】

この世には数多の名品・傑作が存在するが、その全てを知るのは非常に困難。ゆえにこの『knowbrand magazine 』では、モードからストリートまで様々な視点から“今”知っておくべき名品・傑作をピックしているというのは周知の通り。そんな中で、今回のテーマ。寒さが増すこれからのシーズンにおける命題、アウター選びについて。

ファッション業界における絶対的主眼であるトレンド。しかし大人になるに従い、ただ漫然とその流れに乗ることを良しとしない自分に気付く。ではどう選べばいいのかといえば至極簡単で、“流行り廃りに左右されず、時代を超えて愛用できる”という基準を設けるだけ。こうして導き出されたキーワードが“ヘビー デューティー”。頑丈や丈夫を意味するこの言葉を冠し、揺るぎない信念と優れた実用性を備えたタフなリアルクローズこそ、大人の男が選ぶべき選択肢なのである。

ということで、次に湧き上がる「リアルクローズとはなにか?」という疑問に答えるべく、メンズファッションの基本である英国と米国にクローズアップ。 2 回に分けて、それぞれの国で愛されてきたヘビーデューティー・ウェアの代表的ブランドと、その名作アウターを紹介。まずは伝統と格式を誇る【英国編】からスタート。

ゴム引きコートの元祖にして、
英国におけるレインコートの総称。
〈MACKINTOSH マッキントッシュ〉

そもそも英国人にとってのリアルクローズとは、フィッシングや乗馬にハンティングなど、元々は上流階級の間で楽しまれたカントリースポーツで着用するウェアから派生したものが多い。ゆえに同じヘビーデューティーではあっても、米国モノに見られるハードさとは異なり、品の良さと洗練さが感じられるという。

そういった点を鑑みた上で、本稿のトップバッターを飾るのが〈MACKINTOSH マッキントッシュ〉。まずはその歴史を紐解くところから。

その誕生は1823 年。科学者のチャールズ・マッキントッシュが、2枚の生地の間に溶かした天然ゴムを塗り、圧着して熱を加えた防水布の製造法を発明。これが雨風をしのぐのに苦労していた当時の英国の人々に歓迎され、その革新的生地を使用したゴム引きコートは、乗馬用や雨天用のコートとして瞬く間に普及。その後、改良が重ねられ、防水素材をコットン生地で挟んだ「マッキントッシュ・クロス」が誕生。これがのちにブランド名の由来となる。

同ブランドは、そのシンプルにして優れた防水機能に目をつけた英国陸軍や英国国鉄のコートを手掛けたことで、さらなる知名度を獲得。今ではその名が、英国におけるレインコートの総称として呼び習わされている。

誕生からおおよそ200年の時を経た今も伝統を守り続けると同時に、常に時代性のあるコレクションを展開し、進化を続ける同ブランド。エルメスなどのハイブランドにも生地を提供している事実が、その揺るぎないクラフツマンシップの証明。近年では〈HYKE ハイク〉や〈VETEMENTS ヴェトモン〉などとのコラボレーションも積極的に行われているが、その真髄は定番のステンカラーコートにこそある。

シンプルな佇まいの裏には、
職人の手による伝統技術が息づく。

〈MACKINTOSH マッキントッシュ〉のゴム引きステンカラーコート「DUNKELD ダンケルド」

ご覧の通り、見た目は極めてシンプル。生地自体の配色は豊富に揃うが、仕様は基本的にボタンフライ、箱ポケットでセンターベントのAライン。そこにゴム引きという伝統技術を受け継ぎながら、素材や製法の進化を受け入れて随時アップデートが施されている。

すべてのステッチ部分には共地の止水テープが貼られて、浸水をシャットアウト。これらは職人が手作業で接着剤を塗り、テープを重ねた後にローラーで貼り付ける工程を行なっているという。また、脇下に施された5つのベンチレーションホール(通気口)は、同ブランドのゴム引きコートの象徴。通気性の確保とデザイン的アクセントを兼ね、まさに英国らしい“用の美”を体現するディテール。

特徴的な5つのベンチレーションホール(通気口)

さらにマッキントッシュ・クロスの特長として、防水性以外にもシワが寄りにくく、シャープなシルエットを保ってくれるという点も挙げられる。ラフに扱っても崩れることがないジェントルな佇まい。ビズシーンで愛用する者が多いというのも頷けよう。

英国アウトドアウェアの象徴として、
今も愛され続けるオイルドジャケット。
〈Barbour バブアー〉

冒頭でも述べたように、ヘビーデューティーの条件のひとつである優れた実用性。その恩恵が最も肌で感じられるのがアウトドアフィールドであり、そこで真価を発揮する英国アウトドアウェアの象徴が〈Barbour バブアー〉。

重たく硬いブランケットにオイルを染み込ませた防水素材が主流だった19世紀末の英国。創業者ジョン・バブアーが、北海の厳しい天候のもとで働く漁師や港湾労働者のための防水素材「ワックスドクロス」を1894年に開発したのが、同ブランドの出発点。

その革新的なワックスドクロスを使用した防水ジャケットは、英国軍の防水衣料にもなり、第二次世界大戦時には“無敵”と謳われた潜水艦ウルスラ号の公式搭乗服に採用されたことで、爆発的な人気を博すことに。戦後はバイクレース、ハンティング、フィッシング、乗馬といった英国のアクティビティと密接にリンクすることで、英国紳士の定番服としての地位を確立。その真摯なものづくりと優れた品質が認められ、1974年にエディンバラ公、1982年にエリザベス女王、1987年にウェールズ皇太子から、イギリス王室御用達を示すロイヤル・ワラントを獲得。誇らしげにタグに刻まれた3つの紋章は、信頼性の高さを雄弁に物語っている。

タグには英国王室御用達の証「ロイヤル・ ワラント」が三つ並ぶ

人気の理由は、
オイルド特有の重厚感を放ちながらも
高い汎用性。

さて、そんなバブアーだけに名作を挙げるとキリがないので考え方を変える。「では、最初に手に入れるべきモデルとは?」。そこで名乗りを挙げるのが、1980年に誕生した「BEDALE ビデイル」だ。

〈Barbour バブアー〉の代表モデル「BEDALE ビデイル」

現在最も人気が高いショート丈のオイルドジャケットで、乗馬用ならではのディテールが特徴。乗馬時に裾の干渉を防ぐサイドベンツにはじまり、防寒性と首元の保護を兼任するコーデュロイ衿や可動域の広いラグランスリーブ、加えて大きめのリングジッパーは手袋をしたままの開閉が可能。ショート丈といっても適度な丈感でスタイル不問。独特な光沢と防水性に保温性、それらが醸し出す重厚な存在感は、本物を求める大人の男に相応しい。

ワックスドクロスの独特な素材感。袖口には防寒性を高めるリブ付き。

この他に「Beaufort ビューフォート」と「Border ボーダー」の2型も覚えておきたい。前者はハンティング用として1982年に登場。やや丈長で袖のリブをなくし、ハンティングで得た獲物を入れる大きなゲームポケットを備える。後者はロング丈のフィールドジャケット。1983年に誕生した野外散策用で、内側にある着脱可能なポーチャーズポケットが特徴となっている。とりあえずはコレでよし。

ちなみにすべてのモデルに共通するスチュワート・タータンチェックの裏地。こちらは12種類のバリエーションが存在する。その全てがクラシックと呼ばれるバブアー家伝来のオリジナルパターンから派生しており、リユース・マーケットで自分好みの柄を探すのもまた楽しい。

ついでに、オイルドジャケットを楽しむためのマナーについて。防水オイルによる表面処理を施してあるという特性上、電車や自動車などの乗り物に乗る場合は着用を避けるのがベター。もし乗る際にはジャケットを脱いで裏返し、丸めて持てばOK。また最近は、ニオイを抑えたオイルを使用したタイプもあるので、そちらを選ぶという選択肢も視野に入れておくべし。

時代の変化に合わせて進化し続ける、
英国ライダースジャケットの原点。
〈Belstaff ベルスタッフ〉

英国の伝統的カントリースポーツの代表といえば乗馬。その発展系であるバイクレースと密接にリンクするのが〈Belstaff ベルスタッフ〉。第一次世界大戦のさなか、防水素材を用いた軍用ケープ、テント、グラウンドシートを製造していた創業者のイーライ・ベロヴィッチが、戦時中に培った専門技術を活かして、義理の息子であるハリス・グロスバーグとともに1924年に設立。

創業時はライダーたちをターゲットに防水衣料を製造していた同ブランド。エジプト産ワックスドコットンを素材に採用し、通気性と防水性に優れた衣料を開発したことで、その機能性は広く知られることとなり、多くのバイカーやパイロットたちから支持を獲得。その後は英国の陸軍・海軍・空軍にも軍用衣料を納品するメーカーとして規模を拡大。これによりアドベンチャー、スポーツウェアの民間向け衣料ブランドとしても確固たる地位を築き上げることに成功する。さらに1970年代に入ると、まだ開発されたばかりだったナイロン素材を使用して、これまでにない高い撥水性・耐久性を実現させた「XL-500」を発表し、世界的ヒットを記録する。

かように常に技術革新に挑み続け、進化を続けてきたベルスタッフのモーターサイクルジャケット。その優れた機能性と耐久性に惚れ込み、愛用するライダーたちはあとを絶たず、その中には、キューバの伝説的革命家であるチェ・ゲバラや、米国を代表するタフな男の象徴にして稀代の名優、スティーブン・マックイーンなど、歴史上のヒーローたちも名を連ねている。

伝説的レーサーから
ハリウッドスターまで、
世界中のヒーローが愛用。

と、ここでベルスタッフがここまで大きく成長する契機となったモデルについて触れたい。それが、1948年に発表された「TRIALMASTER トライアルマスター」。同ブランドの象徴的ファブリックにして、当時最先端の機能素材だった「ワックスドコットン」を用いたモーターサイクルジャケットである。

〈Belstaff ベルスタッフ〉の傑作「TRIALMASTER トライアルマスター」

表情豊かな生地の光沢感に大人の風格を備えた金スナップボタン、スタイリッシュなマンダリンカラーの裏襟から覗くコーデュロイの切り替えなど、ディテールのひとつひとつが男心をくすぐる。もちろん耐久性と着心地は言わずもがな。トライアルレースで通算1,300勝以上をあげ“トライアルの神様”と言われたサミー・ミラーをはじめ、多くのライダー達が愛用していたのが、何よりの証左であろう。また、近年ではデヴィッド・ベッカム、トム・クルーズ、ウィル・スミス、ブラッド・ピットなど錚々たる面々が着用していることでも知られている。

ライダースジャケットの原点を作ったブランドとも称され、グロスバーグ氏の“常に最先端技術を取り入れる”という理念とともに成長してきたベルスタッフ。創設以来、使用され続けている羽根を広げたフェニックスをイメージしたブランドロゴに込められた、“いかなる時代も困難を乗り越えて永遠に続いて行くように”という強い思いは、今も、そしてこれからも変わることはない。

フェニックスをイメージしたというブランドロゴ

ブランド誕生のきっかけは、
エリザベス女王のための
ホース・ブランケット。
〈LAVENHAM ラベンハム〉

英国生まれのブランドの魅力に“伝統に裏付けされた格式あるモノづくり”がある。それでいえば、英国王室でエリザベス女王に仕える女官だったミセス・エリオットを創業者とする〈LAVENHAM ラベンハム〉は、本稿のトリを飾るのにこれ以上なくうってつけ。

その誕生は、今回取り上げた他ブランドに比べれば、比較的に新しめの1969年。当時、エリザベス女王が乗馬時に使用していたホース・ブランケットはジュート麻で作られており、保温性が悪く濡れやすいという問題があった。その解決策を思案していた彼女は、キルティング加工したナイロン生地を使ったホース・ブランケットを考案。これを商品化するために、ロンドン北東部のサフォーク州にあるラベンハム村で〈LAVENHAM ラベンハム〉を設立する。この革新的なホース・ブランケットは、発売されるや瞬く間に英国中に広まり、ラベンハムは乗馬用具業界での地位を確立するのである。

その後、同じ素材を使ったアウターの要望が高まり、1972年に人々のニーズに応えてナイロンキルティングのジャケットを発表。この製品が乗馬愛好家の間で人気を博し、愛馬とお揃いのジャケットを着ることがステイタスになるほどのトレンドを生む。

シンプルで無駄のない実用性と、
上品で洗練されたファッション性。

そしてこれらの成功を受けて、同年には、今ではブランドの象徴ともなっているダイヤモンド・パターンのキルトを採用した名作「ダイヤモンドキルティングジャケット」が誕生。ダイヤモンド型の角を交差させ、伸縮性のあるナイロン上糸と毛羽立たせたポリエステル下糸を使用することでほつれを防ぎ、耐久性が劇的に向上。乗馬用のトレーニングウェアに、シンプルで無駄のない実用性と上品で洗練されたファッション性、そして高品質というこれまでにない概念を取り入れたことで、同製品は高く評価された。確かにデザインと機能を両立させつつも見た目はあくまでクラシカル。まさに伝統を重んじ、実直を尊ぶ英国らしいアイテムだ。

〈LAVENHAM ラベンハム〉の「キルティング ジャケット」

保温性と耐久性を兼ね備えたダイヤモンド型のキルト

ちなみに1990年年代には、このジャケットをスーツの上に着るスタイルが、イタリアを中心にヨーロッパのファッション上級者の間で広まったという。軽くて脱いでもシワになりにくいというナイロンキルティングの特性を理解し、ドレスとカジュアルの両方に対応するこの着こなしは、今日においても十分通用するもの。読者諸氏にも是非一度、チャレンジしてもらいたい。

1993年に日本初上陸を果たし、セレクトショップから絶大な支持を受けたことで“キルティングジャケットの代名詞”という地位を確立したラベンハム。コスト面を考慮した結果、生産背景をアジアに移すブランドが多いなかで、一貫してサフォーク州サドバリーの自社工場にて製造し、世界中に発信しているという点も本物を知る人々に愛される理由といえよう。

本稿では、ヘビーデューティー・ウェアとは“流行り廃りに左右されず、時代を超えて愛用できる”モノであり、“揺るぎない信念と優れた実用性を備えたタフなリアルクローズ”であると定義した。ゆえにこの【英国編】では、彼の地におけるリアルクローズの祖、カントリースポーツ・ウェアに端を発する4つのブランドとアイテムをレコメンド。

当然そこには伝統と格式を重んじる英国らしさがつぶさに感じられたのだが、果たして海を渡ったアメリカにおけるヘビーデューティーとは?その答えを求めて本稿は【米国編】へと続く。

【米国編】はこちら

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