FASHION

90s名作ギアのオールドデザインが最⾼!〈NIKE ACG〉【ウェア編】 Tシャツ、フィッシングベストほか

“アウトドアMIX”。改めて語る必要のない定番のスタイルだ。2020年代のストリートにおいては、その言葉そのものが不要となるほど、アウトドアとストリートの稜線は溶け落ちている。1990年代に、そのきっかけとなる、両者を結ぶ1本のロープをかけたブランドがある。〈NIKE ACG ナイキ エーシージー〉だ。

90年代に吹き荒れた熱狂的なスニーカーブーム、ナイキブームの追い風を背に受け、ACGは本来のフィールドである大自然から、コンクリートジャングルへと軽やかに飛躍した。スニーカー史にその名を刻む数々のアウトドアシューズを世に送り出し、アイコニックなロゴを掲げたウェアやキャップは、ストリートの猛獣たちをも虜にしたのである。

その後は紆余曲折のルートを辿るが、あの時かけたロープは決して外れていなかった。昨今の90s再燃、テックウェア隆盛も相まって、今また、山頂へと登ろうとしている。

『knowbrand magazine』では今回から全3回に分け、ACGに焦点を当てる。先陣を切るのは90年代の名作ウェア。NIKE ACGの誕生背景から、歴代の名作アパレルまで、その魅力を余すことなくお伝えしよう。

1枚の写真から始まった
ACGの登攀記録

ACGのローンチは1989年。壮大な登攀(とうはん)計画は、その10年以上前に始まる。

1978年、世界第2位の標高にして非情の山と恐れられる「K2」のベースキャンプ。アメリカ人クライマー、リック・リッジウェイとジョン・ロスケリーがリラックスして座る1枚の写真が撮影された。

その足元には、登山靴ではなくナイキの長距離ランニングシューズ「LDV」。ベースキャンプまでのアプローチ用にとナイキが提供したものだったが、当時の重く硬い登山靴より、軽くて柔軟なLDVのほうがK2の過酷な環境に適していると2人は判断。ナイキが想定していた用途を超えて使われたのだ。

そして彼らは帰国後、履き潰したLDVに改良案を添えて送り返す。こうしてナイキはアウトドア領域に足を踏み入れる。

その後、ナイキは「MAGMA マグマ」や「APPROACH アプローチ」などの名作シューズを次々と発表し、アウトドアシーンでもその名がこだまするようになる。

1989年、遂にACGをローンチ。ACGが「All Conditions Gear」の頭文字であることは今さら説明不要だろうが、もともとはナイキのランニング部門が80年代後半に全天候対応アパレルに冠していたワードであり、それが新たなアウトドアラインの旗印として再装填された歴史的背景は、ここに記しておきたい。

迎えた90年代。空前のハイテクブーム、ナイキブームが吹き荒れる。火付け役は「AIR JORDAN エア ジョーダン」であり、「AIR MAX エア マックス」だったが、確実にACGも強烈な追い風を受ける。アウトドア特有の土臭さをはたき落としたような斬新なカラーとデザイン、アイコニックなロゴがシーンに浸透。

スポーツ店やアウトドアショップで比較的手頃に入手できたことも、ACGの浸透を後押しした。当時のストリートをジャックしていた裏原宿系ブランドや激レアスニーカー、ヴィンテージデニムは、おいそれとは挑めない高嶺だったが、ACGは誰もが気軽にアタックできる身近な名峰のような存在だったのだ。こうしてACGは、アウトドアはもとより、ストリートにおけるアウトドア・ミックスの先導者としての地位を確立する。

しかし2000年代に入ると、行く手に雲が立ち込める。アウトドア専業ブランドの台頭、ハイテクブームの終焉により、足取りは重さを増す。北米市場から一時撤退し、デザイン体制はヨーロッパとアジア主導へ。さらに、〈NIKE SB ナイキ エスビー〉が台頭する陰で存在感が薄れ、ナイキのアクションスポーツ部門に吸収される。冬の時代を迎えることになった。

風向きが変わったのは2014年。テックウェアブランド〈ACRONYM アクロニウム〉のエロルソン・ヒューをデザイナーに招聘し、〈NikeLab ACG ナイキラボ エーシージー〉として再起動を果たす。発表されたコレクションは、シルエットを絞ったモノトーンカラーの都市型テクニカルウェア。皆が知るACGの面影は微塵もなかったが、再びシーンに食い込むには、これぐらい思い切った装備変更が必要だったのだろう。

2018年にエロルソン体制が契約満了を迎えると、ACGは初期のアウトドアテイストへと回帰していく。奇しくも時代は、ニューヴィンテージとして90sスタイルが再評価され始めたタイミング。古着屋でのディグ、名作の復刻、そしてアップデートされた新作。ACGへと辿り着くいくつもの絶景ルートが築かれていたことも功を奏し、ACGは再びスポットライトを浴びるようになった。

そして2026年。ACGは体制の刷新を発表。これまで独立して展開されてきた〈NIKE TRAIL ナイキ トレイル〉をACGに統合し、トレイルラン、ハイキング、エクスプロレーションをコアとするアウトドアパフォーマンスブランドへと再定義された。誕生から間もなく40年。幾多の困難なルートを踏破してきたACGはまた一つ、新たな頂を目指して力強い一歩を踏み出した。

(→〈ナイキ〉に関する他の特集記事は、こちら)
(→〈ナイキ〉の「エア ジョーダン」に関する特集記事は、こちら)
(→〈ナイキ〉の「エア マックス」に関する特集記事は、こちら)

〈NIKE ACG〉オールドデザインの名作
三つ目”ロゴの「ロゴTシャツ」
ただのロゴTではない、
グラフィックの連峰

ここからは、ACGのアーカイブを振り返っていこう。先陣を切るのは「ロゴTシャツ」だ。

ACGには、ローンチから1997年頃まで使われた初期の”三つ目”ロゴと、1997年頃から登場した”Lungs”(肺)ロゴという2つの象徴的なエンブレムが存在する。今回紹介するのは、”三つ目”ロゴを背負った1着。

山頂から見える星の数ほど存在する、アウトドアブランドのロゴTシャツ。しかしACGは、一見なんてことはないシンプルなロゴTシャツにも明確なメッセージとブランドの矜持を込め、自分たちにしか作れないアイテムにしている。

その証拠がバックプリントだ。シンボルを囲むようにグラフィックが描かれている。左上は火と山、右上は空と風、左下は水と波、右下は砂漠を駆ける人間だろうか。地球上のあらゆる環境(All Conditions)を表している。

なんてことはないロゴTシャツと侮るなかれ。

正三角形の中に「a」「c」「g」の文字が配された通称”三つ目”ロゴ。近年は、このロゴを使用した復刻アイテムも多い。

シンプルなフロントと大胆なバックプリント。前後で異なるロゴデザインが落とし込まれている。

ポケットTシャツであることにも理由がある。サングラスを差したり、小物を一時的に収めたり。ポケットはアウトドアシーンで使う小物のベースキャンプになる。

ACGのTシャツとショーツに身を包んで野外フェスへ繰り出せば、胸ポケットが実用的なベースキャンプとなり、背中で主張する”三つ目”ロゴは、熱狂する人混みの中で仲間と落ち合うための格好の目印となる。

90年代のフェスではこの光景が日常だったのかもしれない。むろん、その機能性と魅力は、30年の時を経た現代においても有効である。

首元のタグはシンプルなNIKEタグ。当時はナイキのレギュラーラインと同じボディを使用していたと推察される。

現行モデルや、後ほど紹介するアウター類にはACG独自のデザインタグが備わっているが、90年代のTシャツやスウェット類には、このように通常のナイキタグが付く個体が多い。自社で大量生産していたブランクボディを、ACGラインにも流用していたのだろう。

この個体に付いているのは、1990年代後半から2000年代に使われていた白タグである。”三つ目”ロゴ期で白タグという条件から、1990年代後半の”三つ目”ロゴ期の終盤に製造された個体だと考えられる。

こうしたタグから読み解く年代判別も、ヴィンテージACGの醍醐味の一つだ。

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〈NIKE ACG〉オールドデザインの名作
モルゲンロートよりも赤い
「フィッシングベスト」
踏破してスタイリングを組めれば一人前

続いて紹介するのは「フィッシングベスト」。スタイリングの幅が広がるファッションアイテムとしてベストは人気だが、こと“フィッシング”となるといささか趣が異なる。

他のベストと違い、安易に手は出せない。初心者が手に取ろうものなら、高確率で大火傷する。だが、逆に言えば、これを完璧に手懐けることができれば、巧みに着こなしていた90年代のアメリカのB-BOYたちのように、ストリートの最前線へと躍り出ることができる。
そんな手強い1着の中から、90年代にリリースされた真紅のモデルを紹介する。

鮮烈なカラーが目を惹く「フィッシングベスト」。左胸のロゴや引き手のナイロンテープでデザイン性を加味している。

本来はファッションアイテムではなく、あくまでアングラー(釣り人)のための実用服。それ故、フロント全面に並ぶ多数のポケットをはじめ、ギアとしての機能美に一点の曇りもない。そこに、フィールドで異彩を放つ赤をぶつけてくるのがACG流。

アングラーでこれほど赤いのは、マッド・アングラー隊指揮官機「MSM-07S シャア専用ズゴック」か、このベストの着用者ぐらいだろう。

“三つ目”ロゴと生産国が入ったシンプルなタグ。90年代前半から中頃と推測される。

90年代にアメリカのB-BOYたちがこうした多機能フィッシングベストをストリートで愛用したことで、その主戦場は水辺からコンクリートジャングルへと拡張された。彼らがフィッシングベストを着用した理由はシンプルだ。キャッシュ、タバコなどの必需品から、ここでは語れないヤンチャな持ち物までを持ち歩くにあたり、多ポケット構造が実用的だったのだ。

かつての持ち主は、このベストに何を忍ばせていたのだろう。そんなロマンに浸りながら手持ちの小物を突っ込んでみると、スマートフォンやワイヤレスイヤホンが、まるであつらえたかのように各ポケットへジャストサイズで収まっていった。

スマートフォン、イヤホン、財布、サングラス、メモ。多ポケット構造は今のストリートでも実用的だ。

さて、大きな課題がひとつ残る。このフィッシングベストをいかに着こなすかだ。

ネイビーのポケットTシャツとコーディネートを組んでみた。深いネイビーにこの赤は強烈に映える。ネイビーのTシャツが山を包む静寂の闇夜だとすれば、ベストは山肌を赤く染め上げ、朝を告げるモルゲンロートといったところか。

フィッシングベストの主流カラーはベージュ、カーキ、ブラックだが、年輪を重ねた大人がそのままアースカラーを羽織ると、どうしても“ガチの釣り人”に見えてしまいがち。本気のアウトドアならそれで正解なのだが、ストリートの文脈で着こなすのであれば、これくらい攻めたカラーでコーディネートするほうがファッションとしての説得力が増すかもしれない。

このベストを主役に据え、ボリュームのあるショーツに、足元はACGのシューズで重めに固める。それこそが、レッド・アングラーの最適解。隠密作戦など不可能なほど、ストリートで存在感を放つはずだ。

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〈NIKE ACG〉オールドデザインの名作
90sの名ライトアウター
「アノラックパーカ」
急な天候変化から人と物を守る、
小さな山小屋

シンプルで実用的な「アノラックパーカ」も紹介しておこう。

90年代は、〈Columbia コロンビア〉などのアウトドアブランドから、〈Gap ギャップ〉のようなアメカジブランドに至るまで、多くのブランドがアノラックパーカをリリースした時代。エッジの効いた派手なカラーリングのアイテムも多かった。そんな中で本作は、イエローとブラックの潔い配色がたまらない。

⼤胆な切り替え配⾊が映える機能的な「アノラックパーカ」。

アノラックパーカのウリは、サッと羽織り、不要になればサッと収納できる機動力の高さにある。街中でもフィールドでも、急な気温や天候の変化に瞬時に応える頼もしき相棒だ。このようなアウターをバッグに1着忍ばせておくべき重要性は、90年代も現代も変わらない。

アウトドアブランドのアノラックパーカであれば、防水・防風といった機能性の高さも折り紙つきで、本作も例外ではない。左袖には「CLIMA-FIT(クライマフィット)」のタグ。耐風性・耐水性・透湿性を兼ね備えた、90年代のナイキのナイロンウェアを象徴するマテリアルで、軽量でありながら衣服内の気候を快適に保ってくれる。

フロントのカンガルーポケット。両サイドからアクセスでき、使い勝⼿も良好。

ブラックへと切り替わる腹部には、大きなカンガルーポケットを装備。急な雨に見舞われ、絶対に濡らしたくない小物があれば、真っ先にここへ退避させるのが正解。完璧ではないにしても、衣服内でもっとも雨風から守られる安全地帯として機能する。

さらに本作はパッカブル仕様になっており、このカンガルーポケットの内部に本体を折り畳んでコンパクトに収納することが可能だ。

ロゴ下にサイズと製造国表記、首元のタグは1990年代中頃のアイテムでよく⾒られるデザイン。

イエロー×ブラックに⾚ベストを重ねた⼤胆で視認性の⾼いレイヤード。

先ほどのフィッシングベストをレイヤードしてみたところ、圧倒的な視認性を誇るスタイリングが完成した。ざっくりとしたツートーン配色であることに加え、アノラックの下半分がブラックで引き締められているからだろうか。想像以上にまとまりのあるコーディネートになった。

ストリートでも雄大な自然の中でも、こうした原色を畳みかけるコーディネートも一興だ。アノラックのカンガルーポケットとベストの多機能ポケット。これだけの収納力があれば、キャンプサイトなどではバッグいらずで、手ぶらのまま身軽に行動できることは間違いない。

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〈NIKE ACG〉オールドデザインの名作
名山シリーズの「フリースジャケット」
セントヘレンズ山噴火の衝撃を
背タグに刻む

90年代のACGを振り返るうえで、「フリースジャケット」にも触れないわけにはいかない。

ベーシックなものから幾何学模様まで、多種多彩なフリースを世に送り出してきたACG。その中でも知る人ぞ知る名作として評価されているのが、世界各国の名山をモチーフとし、特別なタグやグラフィックへ落とし込んだ「名山シリーズ」のフリースだ。

アウトドアウェアを代表する防寒具「フリースジャケット」。90年代を象徴する大胆なカラーブロックが目を惹く。

名山シリーズには複数のモデルが存在するが、本作はアメリカ・ワシントン州の活火山「セントヘレンズ山」モデル。セントヘレンズ山といえば、1980年に山頂が吹き飛ぶほどの大規模な火山噴火が発生し、噴火の前後で姿を大きく変えてしまった山として知られている。

このフリースは、その衝撃的な噴火からおよそ10年のタイミングで発売された。

1980年代頃に使用されていた通称「紺タグ」。その下に名⼭シリーズ特有の⼤きなタグが配置されている。

名山シリーズは、通常の背タグにプラスして大きな専用タグが付けられているのが特徴。本作のタグにはセントヘレンズ山の噴火前と噴火後の姿が描かれており、同シリーズの中でも特に象徴的なデザイン。自然の猛威に対する衝撃、その記憶、そして大地の永久なる営みを、この一枚のタグで表現しているそうだ。

ウェア自体の作り込みにも抜かりはない。肉厚なフリース素材を採用しており、メインアウターからミドルレイヤーまで対応。袖先のリブが配され、冷風の侵入もしっかりシャットアウトしてくれる。

90年代半ばまでのACGのフリースは、〈Patagonia パタゴニア〉のデザイナーからの意見も取り入れて開発されていたという情報もあり、このような高い実用性は、現在のフリースの原型を作ったと言われている先達からのアドバイスが反映された結果なのかもしれない。

左胸には刺繍の三つ⽬ロゴを配置。その下には⼩ぶりなジップポケットを装備する。

機能と物語を併せ持つこともあり、名山シリーズのアイテムは90年代ACGのアウターの中でも高い人気を誇る。フリースジャケット以外ではアノラックパーカ、マウンテンパーカなどもリリースしており、正確な数は定かではないが12種類ほどあるという話だ。セントヘレンズ山モデルに関しては、このカラーだけでなく、ネイビー×レッドの個体が確認されている。

背中のタグを見れば、それが名山シリーズであるかどうかは一目瞭然だ。古着屋のラックでACGのアウターを見つけた際は、その背中の内側に物語が秘められていないかチェックしてみてほしい。

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〈NIKE ACG〉オールドデザインの名作
90s前期型&中期型
「マウンテンパーカ」
素材に映る機能美の進化

続いては、90年代の名作「マウンテンパーカ」を2着続けて縦走していこう。アウトドアウェアを語るうえで絶対に欠かせない、定番中の定番アウターだ。

まず紹介するのは、ディテールからACG最初期のリリースと推測される、落ち着いた配色の1着である。

クラシックな「マウンテンパーカ」。左胸はACGではなくナイキのロゴ。

本個体の特徴は、胸のロゴがACGではなくナイキであること。また、背タグには“三つ目”ロゴが配されているものの、その直下に「BY NIKE」と表記されている。

今でこそ「ACG=ナイキのアウトドアライン」という認識は広く浸透しているが、本個体はACGの最初期モデルで、名がまだ世に知られていなかった。それ故、ナイキの製品であることを強調するようなロゴ使いになっていると考えられる。

ブラックをベースに、ショルダー周りはブラウン、ライニングはパープル。90s感のある配色だが、ACGとしてはいささか地味だ。まだブランドとしての方向性が定まりきらず、手探りであった時期ならではの配色なのかもしれない。

推測の域を出ることはないが、このような妄想を膨らませながら登頂していくのも、古着の山を漁る醍醐味である。

“三つ目”ロゴと「BY NIKE」の文字が並ぶ、黎明期の空気感を色濃く残す背タグ。

フロント両胸には、アクセスしやすい大きなスラッシュジップポケット。インナーにはパープルのフリース素材を採用し、左胸や袖口のロゴと見事にカラーをリンクさせている。

また、胸のロゴの下には「F.I.T.」の文字が添えられている。これは「Functional Innovative Technologies」(機能的革新技術)の略。後に「CLIMA-FIT」、「Storm-FIT」、「Therma-FIT」などへと枝分かれしていく機能素材群の、いわば源流だ。

ひとつひとつの主張は控えめ。左胸はナイキロゴに譲り、ACGのロゴは右袖にひっそりと施されている。

続いて紹介するのは、先ほどの個体よりは年代が下り、90年代中頃のマウンテンパーカ。

グレーをベースに、フード、肩、袖をブラックで切り替え。トレンドという急流に流されることなく、長く付き合えそうなシックなデザインに仕上がっている。

グレー×ブラックの「マウンテンパーカ」。派手色が苦手な大人には、このぐらいがちょうど良い。

フードは雨風の侵入を軽減しつつ視界を確保できるツバ付き仕様。インナーには保温力に優れたフリース素材。さらに前身頃には斜めに大きく走るスラッシュジップポケットに加え、その下にもさりげなくサイドポケットが配されている。

ACGのアパレルはデザインに目が行きがちだが、アウトドアウェアとしての機能性も実に高い。飾らないデザインだからこそ、純粋な物の良さが引き立つ。

内側は統⼀感のあるグレーでまとめられている。まるで年輪を思わせる背タグにも惹かれる。

本作は前述のアノラックパーカと同じ「CLIMA-FIT」が採用されている。耐風性、耐水性、透湿性を兼ね備えて軽量。マウンテンパーカとして申し分のない快適な着心地を提供してくれる。

こうしてディテールや素材を深掘りしていくと、前述のマウンテンパーカから幾年かの時を経て、進化の年輪を感じ取ることができる。
もちろん、現代の最新テックウェアには及ばないかもしれない。それでも、街という低山域で着こなすのであれば、今でも十分頼もしいスペックだ。

主張を抑えたシックな配⾊に馴染む、左胸の”三つ目”ロゴ。

今回は奇しくも落ち着いた色味のマウンテンパーカ2着の紹介となったが、1990年代のACGのマウンテンパーカは、デザイン・カラーリングともに実に多彩。同時代の〈THE NORTH FACE ザ・ノース・フェイス〉のマウンテンパーカにも通じる、大胆な配色や切り替えも巧みに取り入れている。

そして、単体で見ると奇抜な配色でも、いざ袖を通すと想像以上にスタイリングしやすいから不思議だ。アウトドアの懐は、思っているよりもずっと深い。

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〈NIKE ACG〉オールドデザインの名作
好発色の「ダウンベスト」
90sレトロを彩った主役アウター

最後を飾るのは「ダウンベスト」。

80年代から90年代にかけては、〈L.L.BEAN エルエルビーン〉や〈SIERRA DESIGNS シエラデザインズ〉といった名門を筆頭に、多くのアウトドアブランドがダウンベストをリリース。ダウンベスト戦国時代、そう呼んでも差し支えない時代だった。

今回ピックアップしたのは、そんな時代にリリースされた、発色の良いブルーが冴え渡るモデルだ。

ACGの「ダウンベスト」。約30年前のアイテムだが、へたることなく今もダウンがパンパン。

中綿にはダックダウンを使用し、表地はナイロン100%、裏地はポリエステル100%。デザインに目を向けてみると、ボディの鮮やかなブルーと対照的に、ライニングは渋いグレー。左胸には”三つ目”ロゴ。アームホールや首元にあしらわれたブラックのパイピングが、全体をピリッと引き締めている。

機能面では、両サイドにジップポケット、裾にはドローコードを備え、フィット調整はもちろん、隙間風の侵入も許さない。

背タグは前述のマウンテンパーカと同じ。表地と裏地の対照的なカラーが目に留まる。

そして特筆すべきは、このボリューム感でありながら本体を収納できるパッカブル仕様である点だ。内側に収納用ポケットを備え、本体をコンパクトに圧縮して携行することが可能。見た目のファッション性だけでなく、実用性と機能性を兼ね備えた設計となっている。

秋のアウトドアシーンで寒くなってきた夕暮れ時に、発色の良いダウンベストをサッと取り出して羽織る。そんな使い方が、ごく自然に似合う1着だ。

⼀⾒ミスマッチにも思えるヘビーなレイヤードも、ACGなら不思議と馴染む。

80年代から90年代のアウトドア系ダウンベストは、今も古着市場で根強い人気を誇る。その中でストリートファッションに合わせる1着をセレクトするなら、最適解はACGだ。

他社のアイテムは土っぽさやレトロな雰囲気を醸すものが多い中、ACGのダウンベストは良い意味で古着感がない。それはきっと、他社にはないスポーツブランド譲りのパキッとしたカラーリングの妙だろう。

そして、スポーティな印象もさることながら、適度にゆとりのあるシルエットが合わせやすく、写真のようにマウンテンパーカの上に重ねても、無理なく成立してしまう。このようにファッショナブルに着こなせば、どの時代・どのストリートへタイムスリップしても、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のマーティのように沿岸警備隊の救命胴衣と間違えられてしまう心配はないはずだ。

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NIKE ACGが90年代にリリースしたウェアの峰々を縦走してきた。
今回は初期の”三つ目”ロゴ時代のアイテムに絞って紹介したが、機会があれば1997年以降の”Lungs”ロゴ時代のコレクションもチェックしてほしい。ナイキの中でのデザイン性の地殻変動を感じ取ることができるはずだ。

昨今の90sブームに伴って古着市場ではあらゆるアイテムが高騰を続けている。しかし、ACGのアイテムは今も比較的リーズナブルなものが多い(むろん、一部の人気モデルは高峰の領域に入っているが)。これは当時の手頃な価格帯や流通量の多さが影響していると考えられる。

限られた予算で90年代の古着を掘り下げたい、コレクションとして手元に揃えたい。そう考えるなら、ACGほどアタックしやすく、登り甲斐のあるブランドはないかもしれない。
さて、ACGを巡る冒険は、まだまだ終わらない。
空前のハイテクブームとはまた異なるアプローチで90年代のシーンを席巻した、名作アウトドアスニーカーたちが麓まで降りてきたようだ。

(→ 90s名作ギアのオールドデザインが最⾼!〈NIKE ACG〉【フットウェア前編】はこちら)

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