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英国靴の正統〈チャーチ〉質実剛健なる名作選。コンサル、シャノンほか|ちょっとイイ⾰靴のハナシ

イギリス中東部にある町、ノーサンプトン。ロンドンから約100km離れた、ほとんどの日本人にとっては馴染みの薄い田舎町だ。だが、紳士靴愛好家であれば、その地名を聞いた瞬間に反応を示すだろう。ノーサンプトンは、牛(皮革)、オークの樹皮、そして皮なめし(タンニング)に使う川の水といった靴作りに不可欠な原料が揃い、中世より革靴の製造が盛んに行われてきた。19世紀からはシューファクトリーが続々と誕生し、いつしか英国靴の聖地と呼ばれるようになる。

今回の主人公〈Church’s チャーチ〉もノーサンプトンで生を受け、伝統的な製法と技術で、正統派英国靴として不動の地位を確立した。ブランドが歩んできた歴史や名作を振り返りながら、紳士靴の魅力に陶酔する時間を始めることにしよう。

〈Church’s チャーチ〉とは?
誠実なモノづくりと革新的な発想で

革靴の聖地から
世界的シューズメーカーへ

まずは、聖地・ノーサンプトンの歴史を紐解いていく。

1642年、イングランドで清教徒革命が勃発する。この際、議会派を率いたオリバー・クロムウェルが軍用ブーツの大量製造をノーサンプトンの職人たちに依頼したことが、革靴産業の礎となったと言われている。その後のアメリカ独立戦争(1775年〜1783年)やナポレオン戦争(1793年〜1815年)などでもブーツの製造が行われ、産業はさらに発展。1841年にはノーサンプトンに1821人もの靴職人がいたという資料も残されている。

そして、1850年代になるとミシン導入など機械化が進んで以前よりも大量生産が可能となり、革靴づくりが個人から事業へと移り変わり、シューファクトリーが続々と誕生する。

現存するノーサンプトンのシューズメーカーとして最も古いのは1829年創業の〈Tricker’s トリッカーズ〉だ。以降も続々とシューズメーカーができ、1873年にトーマス・チャーチとその家族によって〈Church’s チャーチ〉が誕生。日本は明治6年にあたる年で、この年に千葉県や、第一国立銀行(渋沢栄一らが設立した日本最古の銀行)が誕生している。紙幣の顔になる偉人が活躍していた時代にチャーチはシューズメーカーとしての歩みを始めたわけだが、実はチャーチ家の靴づくりの歴史はさらに古い。1617年には創業者の祖先にあたるアンソニー・チャーチがこの町で靴作りを行っていたという話もあるから驚きだ。

さて、チャーチ設立後の歩みを見ていこう。正統派、伝統的というイメージが強いチャーチだが、創業初期は革新的だった。当時の靴は左右の区別がないまっすぐな形状が主流。だが、創業者の息子であるウィリアムは、この型通りの靴作りに捉われない発想で、足の構造に合わせて右足・左足用の型を作り、ハーフサイズやワイズ展開を導入した。この「アダプテッドブーツ」は商標登録され、1881年の万国博覧会で金賞を受賞。チャーチは国内外へその名を轟かせることとなった。


革靴の常識を覆して名声をあげたチャーチだが、靴作りに対しては誠実だ。英国靴のスタンダードであるグッドイヤーウエルト製法に強くこだわり、伝統的な技術を守り抜き、1足1足を丁寧に作り上げてきた。この製法や技術は今日に至るまでほとんど変わらず、今も1足あたり250にもおよぶ工程を経て、約8週間の時間をかけて作られている。

そんなチャーチの歴史で大きな転機となったのは、1999年に起こった〈PRADA プラダ〉による買収だ。当時のチャーチは経営難に陥っており、ビジネス戦略を見直す必要があった。その時に手を差し出したのがプラダで、「伝統を尊重すること」を前提に傘下に入ることとなった。1873年の創業以来、いや、アンソニー・チャーチが靴作りをしていた頃から続いていた一族経営は、この買収をもって幕を下ろすことになる。

新たな一歩を踏み出したチャーチはその後、ミラノ、パリ、ニューヨークといった主要都市へ出店するなど、グローバルな展開を強化。2013年には日本に表参道旗艦店をオープンする(現在は閉店)。こうしてチャーチは、今も見せるファッションブランドとしての艶気を新たに纏うことになったのである。
歴史の深掘りはこの辺りにしておこう。ノーサンプトンの靴作りやチャーチの歩みには長い歴史があるが故、ここでは語り尽くせないほど興味深いエピソードが数多く存在する。さらなる探求はまた別の機会に譲るとして、本稿ではチャーチの歴史を彩ってきた名作モデルたちを堪能してもらうこととする。

〈チャーチ〉の定番⼈気モデル
「CONSUL コンサル」
飾らなくとも品格が滲む
チャーチの象徴

「正統派ドレスシューズの頂点はどれか?」という議論がなされた時、「CONSUL コンサル」の名が挙がるのは必然だ。

コンサルは、チャーチの中で、最もフォーマルな⽂脈を担ってきた象徴的なモデル。つま先に真一文字のダブルステッチを配したストレートチップ(キャップトゥ)、甲と靴紐を通す部分が一体化した内羽根式の構造。

虚飾がないシンプルなフォルムは流行に左右されることなく、時代を超えて愛され続けてきた。

1945 年デビューの「CONSUL コンサル」。名称は「領事」を意味し、英国の大使や政治家たちが愛用してきた。

現在発売されているコンサルは「173」というラスト(木型)が採用されている。実は歴代のコンサルには「73」「100」「173」という3つの系譜が存在する。

チャーチの伝統的なラストは「73」だ。1940年から用いられ、名称はブランドの創業年である1873年に由来。その数字だけで、チャーチにおける特別な存在であることが伝わってくる。

転機が訪れたのは、プラダの傘下に入ってから。「73」は廃盤となり、新たに「100」のラストを用いたコンサルが展開されることになる。しかし、新作の評判は芳しくなく、「73」の復活を求める声が高まった。「73」はトゥは少し丸みを帯びているスクエアトゥで、つま先の余裕(捨て寸)を最小限に抑えた少しぼってりとした形が特徴だった。ラストが「100」に変わると、つま先は「73」よりもやや長く、やや丸みを強めたラウンドトゥへと変化。「73」よりもモダンに生まれ変わり、スーツなどに合わせやすいスタイルになったはずだったが、ファンには刺さらなかったのだ。

そこで2003年に誕生したのが「173」。「100」と「73」を融合させた、再構築とでも言うべきラストで、「73」譲りの角ばりすぎず丸すぎない絶妙なトゥが復活し、程よく長めのロングノーズシルエット、そして現代人の足型に合わせて微調整されたワイズを採用。以来、現行モデルまで受け継がれている。

「伝統を尊重することを前提とした買収」だっただけに「73」を廃盤としてしまったのは、早計だったのかもしれない。それほどまでに、ファンにとって「73」は特別なラストだったのだ。

ダブルステッチを施したエレガントなストレートチップ。高品質なカーフのアッパーが、気品を滲ませる。

革靴にデザインを重んじる者の目には、コンサルはシンプルすぎると映るかもしれない。だが、余計な装飾を一切持たないルックスは、オックスフォードシューズのお手本そのものだ。

そう言えるのは、内羽根式×装飾なしのストレートチップというフォーマルの方程式は、日々のビジネスシーンから格式あるパーティまで、どのような場に赴いても格式とマナーのある男を演出してくれるからでもある。質実剛健なルックスは、履くだけで自然と背筋が伸びるような矜持を宿している。

余談だが、内羽根式がフォーマルな場にふさわしいとされる起源には、19世紀にヴィクトリア女王の夫・アルバート公が考案したという故事がある。英国王室の晩餐会に招かれた際は、コンサルを履いて行けば、足元のドレスコードは問題ないだろう。その可能性がある者が読者の中にいるかはわからないが、備えあれば憂いなし、頭の片隅の捨て寸くらいのスペースに入れておいてほしい。

(→「ストレートチップ」に関する特集記事はこちら)

(→〈チャーチ〉の「ストレートチップ」をオンラインストアで探す)
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〈チャーチ〉の定番⼈気モデル
「DIPLOMAT ディプロマット」
ジェームズ・ボンドも履いた
ハーフブローグの傑作

続いては「DIPLOMAT ディプロマット」を紹介する。コンサルがフォーマルの代表格であるなら、こちらはビジネスから休日のカジュアルまで相性の良いオールラウンダー。切り替え部分の穴飾りやつま先のメダリオンが施されたハーフブローグ(セミブローグ)の傑作として高い評価を得ている。

「DIPLOMAT ディプロマット」はコンサルと同じく 1945 年デビュー。モデル名は「外交官」の意を持つ。

現行モデルは「173」ラスト。旧作には「100」や「73」ラストのモデルも存在する。コンサルとともに、チャーチの歴史のど真ん中を長年歩んできたモデルだ。

象徴的なつま先のメダリオンは、数ある革靴の中でも非常にスタンダードで完成されたパターンと言えるだろう。さらに存在感を高めているのが、革の切り替え部分にあるピンキング(ギザギザの装飾)だ。次に紹介する写真をじっくりと見て欲しいのだが、部位によって装飾の強弱がついていることがわかる。こうした細かな作りに技術力の高さが垣間見える。

つま先には迫力と気品がある羊のツノ(シープホーン)を象ったメダリオン。

アッパーには上質なカーフレザーを採用。履きこんでいくうちに革本来の艶感が表れ、経年変化を楽しめる。チャーチに限った話ではないが、良い革靴は、履きながら革を育てていくことができる。オーナーとなって自分だけの1足へと仕上がっていく様子を年月かけて見守るのも、大人の嗜みだ。

なお、ディプロマットはスエード素材も展開されている。カーフレザーにはない毛足の変化を楽しむのも乙だろう。

左:「コンサル」、右:「ディプロマット」。チャーチを代表する 2大ビジネスシューズ。

2足を並べると同じラストであることが一目瞭然。美しいフォルムと革の表情についうっとりしてしまう。同時にディプロマットは華やかさがあるものの、決してうるさくならない絶妙なバランスであることにも気が付かされる。

最後に、本モデルと縁がある人物を紹介しよう。ジェームズ・ボンドだ。1995年公開の映画『007 ゴールデンアイ』で、ピアース・ブロスナン演じる5代目ボンドがディプロマットを着用していたことは有名な話。英国が世界に誇るスパイは、足元もチャーチで整えていたのだ。

(→〈チャーチ〉の「ハーフブローグ」をオンラインストアで探す)
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〈チャーチ〉の定番⼈気モデル
「SHANNON シャノン」
ポリッシュドバインダーカーフの
光沢が引き立つプレーントゥ

ドレス色の強い2足から少し目先を変え、1枚革(ホールカット)で仕立てられた外羽根式(ダービー)のプレーントゥ「SHANNON シャノン」を紹介しよう。1974年に誕生し、2024年に50周年を迎えた、こちらもまた名作だ。

適度な丸みと艶が特徴の「SHANNON シャノン」。50 周年の際は記念モデルも発売された。

外羽根式は内羽根式に比べてカジュアルな立ち位置にあるが、ビジネススーツから休日のデニムスタイルまで、すんなりとハマる懐の広さがシャノンの魅力。

そして、シャノンを語る上で外せないのが、アッパーの質感と機能性。ロンドンは雨が多い。革靴にとって雨はシミ、カビ、型崩れを引き起こす大敵。しかしシャノンは、天候を気にすることなく気軽に履くことができる。その理由は、カーフレザーの表面に特殊な樹脂加工を施した「ポリッシュドバインダーカーフ」を使ったアッパーだ。妖艶な光沢感を放ちつつ、高い撥水性と耐久性を誇り、見た目の艶やかさと実用性を両立させている。

ポリッシュドバインダーカーフもエイジングが楽しめる。通常のカーフとは異なる変化が魅力。

シャノンのラストは「103」。「73」や「173」よりもやや丸みとボリュームがある。インステップがやや高く、ワイズが広めの設計で、つま先は細すぎず野暮ったくもない、絶妙なシェイプだ。

左:「コンサル」、右:「シャノン」。シンプルさが共通する両者だが、並べると印象は大きく異なる。

本作が定番として支持されてきた理由をもうひとつ。シャノンはメンズのみならずウィメンズラインでも絶大な支持を誇る。実は、今回紹介しているシャノンもウィメンズ。ファッショナブルな女性が足元にボリューミーなシャノンを効かせている姿は、想像するだけで粋だ。

(→「プレーントゥ」に関する特集記事はこちら)

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〈チャーチ〉の定番⼈気モデル
「GRAFTON グラフトン」&
「BURWOOD MET
バーウッド メット」

正統と革新。
180度異なる2足のウィングチップ

ここからは少しペースを上げよう。2足続けて紹介する。

まずはシャノンと並び、外⽻根シューズの名作と言われる「GRAFTON グラフトン」だ。プレーンなシャノンに対し、グラフトンは外羽根式のフルブローグ。カントリーテイストな魅力を放つ。

「GRAFTON グラフトン」の誕生は 1973 年。由来は不明だが、英国内に複数ある同名の地名ではないかという説がある。

外羽根式のためフォーマルには適さないが、ビジネスからカジュアルまで幅広く重宝する。ウィングチップの分、シャノンよりも足元に存在感を演出できるだろう。

そのウィングチップは、革靴のデザインとして今ではすっかり定着しているが、本来はハンティングブーツに由来する実用的なディテールだった。⽻根のように広がるパーフォレーションは、狩猟時の傷を⽬⽴たなくし、⽔はけを良くするためのもの。足元を華やかに見せつつ、実は悪天候から守ってくれる、なんともニクい存在である。

本作は凹凸のあるグレインレザーとのコンビ。ポリッシュドバインダーカーフが主流だが、過去にはスエードやコードバンも発売。

ラストは「173」。カントリー調のデザインとダブルソールが放つ重厚感を持ちながらも、「173」の上品さと組み合わさることで野暮ったくならず、都会的でエレガントなバランスに。「173」なので当然、旧作には「73」と「100」も存在する。

また、グラフトンは英国靴のフルブローグの基本であるウィングが土踏まずに落ちるデザインでありながら、羽根部分のパーフォレーションがカカトへと延びて一周している。この意匠が米国靴のロングウィングチップに通ずる雰囲気があることから、アメカジスタイルとの相性も抜群。赤耳デニムをロールアップしてグラフトンを合わせる。それだけで説得力のあるスタイリングが完成するだろう。

右がグラフトン。約 1cm の厚みを持つダブルソールが放つ重厚感がチャンキーで男らしい。

グラフトンの紹介はここまで。フルブローグの括りでもう1足紹介しよう。内羽根式の「BURWOOD バーウッド」をベースに、スタッズを打ち込むというアバンギャルドな発想の一足「BURWOOD MET バーウッド メット」 だ。

ベースとなる「BURWOOD バーウッド」は〈Off-White オフホワイト〉とのコラボでも採用されたウィングチップシューズ。

チャーチのクラシックなスタイルに、プラダが持つモダンで革新的なエッセンスが注入された「MET」シリーズ。その1足としてリリースされた本作は、従来のブローグの穴飾りをスタッズに置き換え、繊細なピンキングとの鮮烈なコントラストを描き出している。伝統を守るだけでは決して生まれなかったであろう、プラダの傘下に入ったからこそ誕生した、老舗の殻を破るアイテムだ。

スタッズはシュータンまでしっかり打ち込まれている。モードからパンクまで、ハマるスタイルは意外と幅広い。

見た目は軟派だが中身は硬派。丸みがあってぽってりとしたエッグトゥで全体へと広がる柔らかなフォルムを持つ「81」ラストを採用し、アッパーには水に強く光沢感のあるポリッシュドバインダーカーフ、ソールには滑りにくいラバーを合わせている。コワモテな見た目とは裏腹に実に実用的。

左:「グラフトン」と右:「バーウッドメット」。堅実な兄と自由を追い求めた弟、といったところだろうか。

同じフルブローグでも、外⽻根と内⽻根の違い、スタッズの有無でこれほどまでに表情が変わる。バーウッドメットは、チャーチに長らく秘められていた可能性を引き出したモデルとして高い人気を博し、新たなファン層を開拓することに成功した。

(→「ウィングチップ」に関する特集記事はこちら)

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(→〈チャーチ〉の「グラフトン」をオンラインストアで探す)
(→〈チャーチ〉の「バーウッド」をオンラインストアで探す)

〈チャーチ〉の定番⼈気モデル
「Ryder ライダー」
端正で起毛感が美しい
王道チャッカブーツ

本稿の最後を飾るのは「RYDER ライダー」だ。ドレスシューズの名⾨であるチャーチだが、このライダーに代表されるブーツも非常に評判が高い。

2008年公開の映画『007 慰めの報酬』では、ダニエル・クレイグ演じる6代目ジェームズ・ボンドが「RYDER 3ライダー3」を着用したことでも知られている。

「RYDER ライダー」はチャーチのカジュアルシューズの代表作。正確な登場年は不明だが、1950 年〜1970 年代だと言われている。

ライダーはバーウッドと同じ「81」ラスト。つま先の余白が短めで、全体的にポッテリとした丸みとボリューム感。ポッテリ感はバーウッドよりもライダーのほうがわかりやすいかもしれない。トゥから甲に向かってなだらかに傾斜しており、⾜に沿う快適なフィッティングも魅力。

スウェードと深みのあるブラウン。スウェードのチャッカブーツと言えば、このカラーが王道。

アイレットを2つに抑えており、脱ぎ履きのストレスが少ない設計も特徴。アッパーは⽑⾜のある上質なスエードで、履き込むほどに⾜に馴染み、⾵合いが増していく。

チャッカブーツといえばクレープソールのイメージが強いが、ライダーも例外なく、ラテックスと呼ばれるゴムの木の樹液を主原料としたクレープソールを採用している。

話のついでに、チャッカブーツにクレープソールが定番となったルーツについても補足しておこう。第二次世界大戦中、アフリカに駐留していた英国軍の将校が、軽くて柔らかく、砂漠の砂に足をとられにくいクレープソール仕様のスエードブーツを現地で履いていたことに由来するそうだ。

厚みのあるクレープソールもライダーの特徴。独特の反発力を備え、長時間履いていても疲れにくい。

ライダーには、通常のライダーとライダー3が存在することも知っておいてほしい。主な違いはソールだ。ライダーは今回紹介している個体のようにクレープソールを採用している。一方で、ライダー3はダイナイトソール仕様であり、より耐久性とグリップ力に優れている。アクションシーンの多いジェームズ・ボンドがライダー3を選んだのは、間違いのないセレクトだ。

なお、ライダー2というモデルは存在しない。チャーチから公式な発表がないため理由は定かではないが、かつて販売していた「ジョッキー」というチャッカブーツがライダー2の立ち位置だという説もある。

インソールの刻印は、製造年代の判別ができるとともに、チャーチの歴史と奥深さを感じることができるディテールだ。

最後に、リユース市場をパトロールする上で絶対に知っておきたいウンチクもひとつ。インソールに入る「都市刻印」の変遷だ。現行モデルは「MILAN」「TOKYO」「LONDON」「NEW YORK」「PARIS」の5都市刻印が入るが、上記写真のインソールを覗いてみてほしい。「LONDON」「NEW YORK」「PARIS」の3都市の刻印が入っている。これはプラダ買収前に発売されたチャーチの証で、マニアの間では「旧チャーチ」と呼ばれている。さらに古い1〜2都市の刻印は旧旧チャーチ(1960年代後半から1970年代)、都市名がないものを旧旧旧チャーチ(1960年代後半より前)と呼ぶ。

プラダによる買収以降、ブランド戦略の変更、ユーロ高、原油価格の高騰、原皮の仕入れ価格の変動など、さまざまな要素が影響し、チャーチの価格は高騰している。以前は老舗英国靴の中では良心的な価格で販売されていたが、現在では主要モデルが15万円〜20万円程度に達している。こうした価格高騰とヴィンテージ市場の盛り上がりも相まって、「オールドチャーチ」と総称される旧作を選ぶファンも増えている。

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ノーサンプトンでは多くのシューズメーカーが誕生し、そして消えていった。チャーチが150年以上も紳士靴のトップに君臨しながら成長してきたのは、グッドイヤーウエルト製法を頑なに守り抜くブレない軸と、新たなエッセンスも飲み込む柔軟性の両翼を常に持ち続けていたからなのかもしれない。

コンサルやディプロマットで背筋を伸ばすもよし。シャノンやライダーを休日の相棒として履き倒すもよし。新品から自分色に育てていくのも、オールドチャーチをリユース市場で掘り当て、名も知らぬ先人がともに歩んできた歴史を継承するのも、歴史あるチャーチだからこそできる楽しみだ。

良質な革靴は本物の男の証。紳士の足元には、いつの時代も正統なチャーチを。

(→「仏国の至宝〈J.M.ウエストン〉。機能と美の名作選。 シグニチャーローファー、ゴルフほか|ちょっとイイ革靴のハナシ」)はこちら

(→「米国靴の最高峰〈オールデン〉無骨と色気の名作選。 990、Vチップ、コードバンほか|ちょっとイイ革靴のハナシ」)はこちら

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