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「サンダル」「クロッグ」「シューズ」。3つのタイプにみるビルケンシュトックの歩みと魅力。

人が移動をする際の基本は、歩くことだ。望むと望まざるとにかかわらず、日々の生活を営むためには歩くことは必須であり、 人類はその歴史の中で歩行する際に極めて有効な道具としての靴を生み出した。

靴に求められる基本機能は、地面と接する足裏を守る耐久性と、歩きやすさを向上させるための形状であろう。だが我々は、強欲であり、ただ歩くためだけの靴では飽き足らず、装うためのデザイン性への欲求も当然の如く生まれた。そして長い歴史の中で各々の用途と装飾性を持ち合わせたドレスシューズやブーツ、スニーカーやサンダルといった様々な型が誕生した。

現代の我々は幸運なことに、世界の名だたるブランドの数多の傑作シューズたちと巡り合える時代に生きている。 だが問題がある。選択肢が多いのだ。

例えば休日。自分の足に心地よくフィットし、歩くことが楽しくなる。かつ幅広いコーディネートにも相性がよく、しっかり足元を引き立ててくれる。そんな欲張りな要望に応えうるフットウェアを探すのはなかなか難儀だ。

だが、ひとつの有力な候補がある。〈BIRKENSTOCK ビルケンシュトック〉だ。

今でこそファッションアイテムとしての地位を確立しているビルケンシュトックの出自は、他のブランドと比べていささか特異で、ラインアップもユニークである。今回の『knowbrand magazine』では、ビルケンシュトックの誇る「サンダル」「クロッグ」「シューズ」とよばれる3タイプを切り口に、同ブランドのこれまでの歩みと魅力に迫ってみるとしよう。

その始まりは、類をみない「中敷き」にあり。

いまや日本でもお馴染みのドイツ発の〈BIRKENSTOCK ビルケンシュトック〉。ブランド名は、創業一家のファミリーネームに由来する。そのルーツは古く、創始者は1774年にドイツ・ランゲンにある教会の公文書に「臣民の靴職人」として登録されたヨハン・アダム・ビルケンシュトックだとされている。その後の約120年間の歴史ははっきりしないものの、1896年にヨハンの孫であるコンラッド・ビルケンシュトックがフランクフルトに靴専門店を開業。この時、販売を始めたのが靴の「中敷き」だったようである。

販売に際し開発されたのが、コルクとゴムをつかった世界初となる弾力性のある中敷き「footbed フットベッド」だったといわれている。まさしく「足のベッド」という意味であり、中敷きといえば木製や金属製が一般的だった当時の常識からすれば、同社の中敷きは極めて革新的でインパクトがあったことは想像に難くない。だが実のところ、この時なぜ弾力性のある中敷きの開発・販売にいたったのか、そのいきさつは定かではない。ただいつの世でも、必要は発明の母であり、誕生の裏には当時の靴に対する不満や改善欲求があったことは間違いないであろう。

時代は20世紀に入り、1914年に勃発した第一次世界大戦は、ビルケンシュトックにとって転機となる。足に傷を負った兵士たちの歩行をサポートする靴の開発に着手することとなったのだ。新たな需要を生み、技術が進歩するきっかけとなったのは、くしくもあるまじき戦争であったものの、同社のフットベッドが医療的アプローチから機能性を増すこととなり、人々の足の支えとなって、現代にいたっていることはひとつの救いである。そしてフットベッドは、ビルケンシュトックのいわばアイデンティティそのものとなったのだ。

〈BIRKENSTOCK〉の中敷き「フッドベット」

ビルケンシュトックの始まりともいえるフットベッドは、他に類をみない独特の中敷きである。それゆえ初めて足を通した際は、むしろ違和感が先行するかもしれない。だが足裏の形状に応じて、起伏がほどこされた特徴的な構造は、足指によるホールド感や蹴り出しを支援し、理想的な体重移動を促すことで長時間の歩行ですら疲労は少ない。そして何よりも繰り返し履くことで、オーナーそれぞれの足の形に馴染み、快適性が増してゆくのだ。

よってフットベッドを基礎とするビルケンシュトックの製品ラインアップは、おのずと独自なものとなっている。同ブランドの魅力を比較的容易に知り得る近道は、代表的な3タイプ「サンダル」「クロッグ」「シューズ」のフットウェアを知ることである。

TYPEⅠ:礎を築いた「サンダル」。

ビルケンシュトックのフットベッドを堪能するには、まずは「サンダル」タイプをチョイスしたい。理由はある。なにしろフットベッドを有した同社初の自社製のフットウェアにして礎を築いたモデルこそ、サンダルの「MADRID マドリッド」だったからである。

■ワンスタトップサンダル:「Madrid マドリッド」
1963年、フットベットの生みの親コンラッド・ビルケンシュトックの長男カールにより開発されたワンストラップサンダルが「MADRID マドリッド」。ビルケンシュトックの最古参モデルである。ストラップが一本だけに足のホールド性がゆるい分、蹴り出し時にフットベッドからかかとが離れ、伸びた足の指はおのずと地面をつかもうとする。こうした自然の動きが、足のトレーニングとなる。コーディネートを邪魔しない淡泊なデザインではあるが、フットベッドの機能性を最も濃密に実感できるビルケンシュトックの礎を築いたモデルなのだ。

〈BIRKENSTOCK〉の礎を築いたワンストラップサンダル「Madrid マドリッド」

■ツーストラップサンダル:「Arizona アリゾナ」
「Arizona アリゾナ」は1973年に誕生したモデル。ツーストラップのため、マドリッドよりもホールド感は増す。大ぶりな2本のストラップは程よい印象を残しつつもクセはなく、エントリーモデルとして最適だろう。当然、素足で履くのがオーソドックスだが、主張が強めのソックスと合わせるのもコーディネートのポイントとなりおすすめである。

ツーストラップサンダル「Arizona アリゾナ」

エントリーモデルには最適な一足

■トングサンダル:「RAMSES ラムゼス」
足の親指と人差し指の間にいわゆる鼻緒(=トング)を挟むことでホールド感をえるトングサンダル。古代ギリシャのサンダルから着想を得たともいわれる「RAMSES ラムゼス」はその代表だ。フィット感を調整するためサイドにつくバックルベルトが、ヨーロピアンな佇まいにスマートさを加えるデザインアクセントとなっている。

トングサンダル「RAMSES ラムゼス」。甲とサイドのベルトが細い「GIZEH ギゼ」という別モデルもある。

TYPEⅡ:看板ともいえる「クロッグ」。

つま先から足の甲までを覆う丸みを帯びたフォルムのサンダル。ビルケンシュトックといえば、そんな印象が強い方も多いだろう。同ブランドでは「クロッグ」と呼ばれる看板シリーズだ。クロッグサンダルとは、もともとは木をくり抜いて作る木靴をさしていたようだ。ビルケンシュトックのクロッグの場合、つま先は覆いつつも開放的な空間がしっかり確保されており、窮屈さは微塵もない。サンダルの気楽な履き心地のまま、つま先が保護されている分、安全性も高まり着用できるシチュエーションの幅がぐっと広がるのもうれしいポイントだ。

■クロッグ:「Boston ボストン」
クロッグサンダルの傑作が「Boston ボストン」である。その個性的でどこか愛嬌のあるフォルムは、カジュアルなスタイルと相性もよくシーズンを問わず活躍する一足だが、もともとは作業靴としてデザインされたというユニークな来歴をもつ。

クロッグサンダルの代表格「Boston ボストン」

スエード素材が上品さを醸す

■クロッグ:「Tokio トキオ」
上記ボストンにアンクルストラップを装着したモデルが「Tokio トキオ」だ。甲とアンクルともに調節が可能で、足がよりホールドされ、歩き心地は盤石だ。

アンクルストラップが特徴の「Tokio トキオ」

■クロッグ:「Amsterdam アムステルダム」
厚みのあるフェルト地と装飾のない素朴なデザインが実に優しい印象を与える「Amsterdam アムステルダム」。このモデルは屋内用のフットウェアとして誕生したモデルだ。上履きがビルケンシュトックとはなんとも贅沢ではあるが、上質な履き心地を自宅でも、そして旅のお供として携帯し宿でも。投資するだけの価値はある実に豊かなライフスタイルではないだろうか。

インドアシーンでも上質な履き心地を約束する「Amsterdam アムステルダム」

TYPEⅢ:抜群の安定感の「シューズ」。

ビルケンシュトックのフットベットの主戦場は、サンダルだけではない。シューズタイプにもしっかりいかされている。かかとが覆われたことで履き物として抜群の安定感が担保されている。

■シューズ:「London ロンドン」
クロッグサンダルの定番ボストンのかかとをすっぽりと覆ったモデルが「London ロンドン」だ。ボストン同様の愛くるしくもシンプルなルックスはそのままに、シューズタイプとなることで足元に引き締まった雰囲気も醸し出せる。

歩行性もルックスも安定感のある「London ロンドン」

■シューズ:「Montana モンタナ」
特徴的な通し方のシューレース、かかとの切り替えなど、他のモデルに比べデコラティブだといえる。妙に幅広に通されたシューレースが足元に程よい抜け感を演出できる。

レースアップタイプの「Montana モンタナ」

シューレース、カカトの切り替えが特徴

■シューズ:「Pasadena パサデナ」
1990年代の空気感がデザインソースとなっているといわれているモデルが「Pasadena パサデナ」だ。ビルケンシュトックの中では珍しくモカシントゥが採用されている。それゆえのクラシカルな佇まいが魅力の名作である。

モカシントゥがクラシカルな「Pasadena パサデナ」

ビルケンシュトックの各モデルには世界の都市名が付けられている。性差・年齢・国・人種という枠を超え、世界中のすべての人々に履いてもらいたいという願いが込められているという。だが1960年代初頭にビルケンシュトックが世に送り出した初のサンダル「マドリッド」は、驚くべきことに一般的には受け入れられなかったという。ドレッシーな靴のデザインが人気を博していた当時の美意識からすれば、医療的アプローチから生まれたビルケンシュトックのデザインは受け入れ難かったのだろう。

では現代ではどうか。ファッションという視点からすれば、それこそ多種多様なスタイルが存在し、アイテムごとの組み合わせの振り幅は大きい。よってフットウェアのデザインに対する寛容さも高く、ビルケンシュトックのデザインはすっかり受け入れられている。

ところで我々はデザインの良し悪しだけでは、もはや満たされなくなってはいまいか。デザインの裏に何かしらの機能や効果を期待し、それをわが身で実感したいという欲求はないだろうか。

人の欲の深さは計り知れず、恐ろしくもなるが、だとしても案ずることなかれ。

何も考えず、日々を履いて過ごすだけで、最高の機能と効果を己の足で実感できる、少なくとも我々の期待を裏切らないビルケンシュトックが、そこにある。

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