FASHION

ワールドクラス・ジャパン“セカイに誇るニッポンのモノ” 〜〈ポータークラシック〉経年変化と共に受け継がれていく藍と誠【前編】〜

covid-19禍にあって3度目の春。ウクライナを巡る不穏な社会情勢、物価の上昇に円安……。新年度は始まれども、どこか足元がおぼつかない感覚が現在進行形で継続中。儘(まま)にならぬが浮世の常とは分かっちゃいるが、気が晴れることもなく思い悩む24/7四六時中。

そんな時こそ、心躍るプロダクツとの触れ合いが我々には必要だ。それがとびきり素敵で、とびきり洒脱な生粋のメイド・イン・ジャパンならなおのこと。セカイに誇るニッポンのモノを知り、見て、触れ、纏うことで“モノ好き”な諸君は少なからず自信や力が漲ってくるはず……というワケで、世界に誇れるジャパニーズブランドをフィーチャーする好評企画〈ワールドクラス・ジャパン “セカイに誇るニッポンのモノ”〉。今回のテーマは〈PORTER CLASSIC ポータークラシック〉。まさに本企画を体現する同ブランドの魅力を、2回に渡って取り挙げる。

受け継がれる「一針入魂」の精神
テーマは“伝統へのアンチテーゼ”。

この【前編】では、ブランドを代表するウェアを紹介していく。……のだがその前に定石を踏んで、ブランドの歴史からルックバック。まずはそのルーツとなる〈吉田カバン〉について。創業者・吉田吉藏氏が吉田鞄製作所の名で創業したのは1935年。第二次世界大戦終戦後の復興のなか、ファスナーの開閉によりマチ幅を調節可能とした「エレガントバッグ」が大ヒットを記録。1965年に初の自社ブランド〈PORTER ポーター〉が誕生し、その後の繁栄はご存知の通り。この辺りの経緯は、knowbrand magazineの過去記事をご一読あれ。

(→〈PORTER〉に関する特集記事は、こちら

職人である吉蔵のモノ作りの精神(誠心)が凝縮された社是「一針入魂」と、その根底に流れる飽くなき追求心は息子たちにも受け継がれていった。三男・吉田克幸氏とその息子の吉田怜雄氏もまた然り。1981年に日本人として初めて、ニューヨーク・デザイナーズ・コレクティブのメンバーに選出され、長年にわたり数々の名品と呼ばれるバッグを世に送り出し、世界中に熱狂的なファンを持つ父と、写真家/作家として活躍する息子。この2人が2007年に立ち上げたのが、〈PORTER CLASSIC ポータークラシック〉である。

“メイド・イン・ジャパン”にこだわり、コンセプトに“世界基準のスタンダード”を掲げ、ウェアを中心に展開するこのブランドのテーマは“伝統へのアンチテーゼ”。日本の伝統文化や芸術・映画といった変わることのない本質に自分たちのエッセンスを加え、具現化することで、独自の視点や感覚で新しいスタイルを確立し、ファッションシーンにおけるジャパンブームの嚆矢となった。日本の職人たちの確かな技術をもって作られたプロダクトは、流行り廃りもどこ吹く風。耐久性に優れ、時間をかけて着込むほどに味わいを増し、成熟していく。まるで荷物を預かり運ぶ「ポーター」のように、子から孫、そしてその先の未来まで、想いとともに引き継がれていくのである。

ではここからは、実際にアイテムを見ながらその魅力に触れていく。

「KENDO FRENCH JACKET
剣道フレンチジャケット」
伝統への挑戦を象徴する、
和魂洋“裁”の傑作。

アイテムから垣間見えるポータークラシックのアイデンテティ。その象徴が「KENDO」と「SASHIKO」という2つの生地。前者は克幸氏がアメリカの蚤の市でボロボロの剣道着と出会い、そこに使われていた刺し子生地の素晴らしさに感銘を受け、誕生したという。日本に古くからある伝統手芸の一種、刺し子。補強や保温という機能性の向上に加え、人々の願いや祈りを込め、古綿布などを重ね合わせて手で刺し縫いしたのが始まりと伝えられている。ぐし縫い (ランニングステッチ) を用いて表現された多種多様な模様は、キルティングにも似た表情を醸し出し、その丈夫さから消防服や武道着などに用いられてきた。本稿では、そんな日本人に馴染み深い生地で製作される、ブランドのアイコン「KENDO FRENCH JACKET 剣道フレンチジャケット」を、まずはご覧いただこう。

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ブランドの象徴的アイテムとして知られる「KENDO FRENCH JACKET 剣道フレンチジャケット」 。

生地はインドのスジャータ綿と西インド諸島セントビンセント島の海島綿を交配した最上級のスビンゴールド綿で織り上げたオリジナル。糸の段階からインディゴ染めを施し、時間をかけて丹念に織り上げることで、従来の重く硬いイメージを払拭し、洗うたびにソフトな肌触りと独特な風合いを増してゆく。無論、ブルーワーカーが着ていた労働着を元としているだけあり、動きやすく着心地も申し分ない。和の生地で仕立てられたフレンチ風味のワークジャケット、それはジャポニスムへの時を超えたアンサーか。

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目の詰まった刺し子生地「KENDO」。洗いをかけるたびにソフトな肌触りと独特な風合いを増してゆく。

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下半分は菱形に刺した生地に切り替わっている。袖裏にあしらわれたストライプ生地がフレンチテイストを漂わす。

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懐中時計用に設けられたホールと胸ポケット。“実際に使うかどうか”ではなく、あるだけで楽しいディテールだ。

続いてディテールにも注目されたし。ボディの上下で異なる刺し子生地を使用した上、左身頃と右身頃の生地の合わせをあえてズラす遊び心に、折り返した袖口から顔を覗かせたストライプ生地が、フレンチのエスプリをひと挿し。懐中時計用に設けられたホールと胸ポケットのディテールも実に心憎い。さらには製作を、有段者の中でも限られた剣士のみが着用を許される道着を専門とする日本の職人に依頼しているというのだから、こだわりもここに極まれり。

「SASHIKO LIGHT SUMMER COAT
刺し子ライトサマーコート」
先人たちの生活の知恵を、
デザインとして昇華させた一着。

「KENDO」をポータークラシックの代表的生地と捉えるならば、一方の「SASHIKO」はその進化版といえる。民俗学に造詣の深い克幸氏は、先人たちの生活の中で必然的に生まれた伝統文化であり、芸術的な価値を持った美術館にはない美術“刺し子”を、5年以上もの歳月をかけて試行錯誤の末に工業化に成功。自身にとって“最後のライフワーク”とも述べているように、並々ならぬ情熱を持って生み出された同生地を、さらに春夏用に軽く薄手に仕上げた「SASHIKO LIGHT」を用いたのが、この1着。

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薄手で軽い春夏使仕様の生地を使用した「SASHIKO LIGHT SUMMER COAT 刺し子ライトサマーコート」。

その名は「SASHIKO LIGHT SUMMER COAT 刺し子ライトサマーコート」。2018年、ブランド創立10周年を記念して誕生した同モデルの特徴は、ゆったりとしながらも綺麗なAラインシルエット。そして深みのあるインディゴブルーの生地に精緻かつランダムに浮かび上がる細番手の白の刺し糸が、より刺し子生地らしい表情で見る者の目を楽しませる。もちろんルックスのみならずその着心地も良さも言うに及ばず。軽量でフワリとした生地感は、まるで包まれるようなリラックスムード。

poter_classic_ポータークラシック_SASHIKO LIGHT SUMMER COAT_刺し子ライトサマーコート

インディゴブルーに浮かぶ細やかな刺し糸の白が、生地の凹凸をより立体的な表情に。

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運動性の高いラグランスリーブの袖付けは、生地のアタリもなかなかに良い味わい。

また、どこか知的な印象を与えるスモック風の襟元は、こなれ感を演出すると同時にレイヤードの幅をも拡張してくれるAR的ディテール。さらに袖付けはラグランスリーブでストレスフリーな上、経年変化を表現した縫い目のアタリがデザイン的スパイスをも兼ねる。合わせるボトムスを選ばない絶妙なミドル丈も相まって、幅広いコーディネートを受け止める懐の深さで楽しませてくれるに違いない。

「ROLL UP TRICOLOR
GINGHAM CHECK SHIRT
ロールアップトリコロール
ギンガムチェックシャツ」
袖まくりに漂う“こなれ感”。
これぞ大人のギンガムチェック。

アウターが2着続いたので、ここからはトップスに歩を進める。オールシーズンで活躍する名作「ROLL UP TRICOLOR GINGHAM CHECK SHIRT ロールアップトリコロールギンガムチェックシャツ」をピック。“名は体を表す”なんて言葉はよく聞くが、本作もまたご多分に漏れず、袖をロールアップした際のバランスと着心地が売りとそのものズバリ。肩幅と身幅にゆとりをもたせたリラックスシルエットに少し短めの着丈も、羽織ればピンとくる絶妙な塩梅。縫製の細かさもドレスシャツ同様と手抜かり無し。

poter_classic_ポータークラシック_ROLL UP TRICOLOR GINGHAM CHECK SHIRT ロールアップトリコロールギンガムチェックシャツ

大人にこそ着てもらいたい「ROLL UP TRICOLOR GINGHAM CHECK SHIRT ロールアップトリコロールギンガムチェックシャツ」。

poter_classic_ポータークラシック_ROLL UP TRICOLOR GINGHAM CHECK SHIRT ロールアップトリコロールギンガムチェックシャツ

これからの季節は腕元も軽やかに。袖のざっくりロールアップがよく似合う。

着てみて気付かされる本作の魅力が、大人が着てもだらしなくないように調節されたシルエット。とはいえ、それのみと思うのは尚早。細番手のコットン糸を高密度に織り上げた生地は軽く、サラッとした肌触りで着心地良好。着用と洗濯を繰り返すことで柔らかさや風合いが増して、より愛着が湧いてくるのは自明の理。インナーを調整すればオールシーズンでの着用も約束される。Tシャツ1枚で着るのは、まだ少々心許ない晩春の夜、フロントボタンを閉めずに羽織るだけでも十分絵になる。

poter_classic_ポータークラシック_ROLL UP TRICOLOR GINGHAM CHECK SHIRT ロールアップトリコロールギンガムチェックシャツ

バックヨーク部分にたっぷり取られたギャザーが、後ろ姿にアクセントを添える。

poter_classic_ポータークラシック_ROLL UP TRICOLOR GINGHAM CHECK SHIRT ロールアップトリコロールギンガムチェックシャツ

デザイン面だけではなく、十分な収納力をもって実用性もアピールする胸ポケット。

poter_classic_ポータークラシック_ROLL UP TRICOLOR GINGHAM CHECK SHIRT ロールアップトリコロールギンガムチェックシャツ

首元のインサイドには「Roll Up」の文字をハンドプリント。見えない部分へのこだわりも粋。

駆け足となるが、もう少し細部にも目を向けておこう。後ろ姿はバックヨークにたっぷり取られたギャザーがアクセント。両胸のポケットはフラップ&マチ付きの大きめ仕様。スマホにサングラスはもちろん、旅先で手に入れたペーパーバックも難なくすっぽり収まる。お襟元の内側には「Roll Up」の文字を職人によるハンドプリントでさりげなく。細部へのこだわり「一針入魂」はシャツにおいても健在だ。

「BLONDES PREFER
PC ALOHA SHIRT
ブロンズプレファー
ピーシーアロハシャツ」
“真面目に不真面目”に生きる
大人のためのアロハシャツ。

肩の力を抜いて着られるアロハシャツもまた、ポータークラシックには欠かせない存在といえる。古き良き昭和の時代から、スジ者や道楽者など世間の枠組みから外れた、いわばアウトローたちに愛されてきた同アイテム。真面目に着るのではなく、いかに自分らしくスーダラなノリで羽織れるか。簡単そうで難しいこのお題に対し、ポータークラシックは柄に込められたユーモアをもって回答した。

PORTER CLASSIC_ポータークラシック_BLONDES PREFER PC ALOHA SHIRT ブロンズプレファーピーシーアロハシャツ

大人の遊び心満点な「BLONDES PREFER PC ALOHA SHIRT ブロンズプレファーピーシーアロハシャツ」。

ここでは人気の映画アロハシリーズ”から「BLONDES PREFER PC ALOHA SHIRT  ブロンズプレファーピーシーアロハシャツ」をロードショー。クラシカルなシルエットに50年代のアメリカ映画を彷彿とさせる華やかな銀幕の世界を、味わいのある手描きイラストに。滑らかな肌触りとトロみのあるレーヨン生地がリラックス感とともに身体を包み込むのだから、着心地の良さも堪らない。封切り初日から満員御礼だったことが容易に想像つく納得の仕上がりだ。

poter_classic_ポータークラシック_BLONDES PREFER PC ALOHA SHIRT ブロンズプレファーピーシーアロハシャツ

手描きイラストも味わい深い。ブランド創設者の吉田克幸氏・怜雄氏と思わしき人物もいるような……。

遊びにも、いや遊びだからこそ一切手を抜かないのが“真面目に不真面目”な大人の流儀。事実、生地に描かれたイラストには“肉体派二大スタァ世紀の共演!”の宣伝文句とともに、克幸氏と怜雄氏と思わしき人物が描かれ、茶目っ気たっぷり。軽快して軽薄。だが、そこには夏空に浮かぶ白い雲のような自由さが感じられる。思わず日本の夏、ポータークラシックの夏なんて言葉も脳裏に浮かぶ、そんな名作である。

「SATCHMO CHINOS
サッチモチノズ」
あの“ジャズの巨人”が愛用していた
スラックスをイメージ。

ラストを飾るのは、スタイリングの要となるボトムス……なのだが、モデル名の由来が気になると思うので、まずはそこから。勘の鋭い読者諸氏ならお分かりかと思うが「サッチモ」とは“キング・オブ・ジャズ”とも呼ばれたアメリカのジャズトランペット奏者、ルイ・アームストロングの愛称「サッチモ」から。なぜそう呼ばれるようになったのかは諸説あるようだが、白い歯が印象的なその大きな口から「satchel mouth」(がま口のような大きな口)を略して、「Satchmo サッチモ」と呼ばれるようになったというのが有力。そんな彼が穿いていたスラックスをイメージして制作されたのが本モデルだ。

“ジャズの巨人”の愛称をモデル名に冠した「SATCHMO CHINOS サッチモチノズ」。

ベースとなったフランス軍のチノパン「M-52」を9分丈にアレンジ。腰周りはフロントに3タック、バックに2タック。これによって生まれるヒップとワタリの立体的なゆとりと、アウトシームを湾曲させながら裾にかけて描かれる極端なテーパードフォルムがヒップな顔立ち。見た目のインパクトこそあるものの、程良くコシのあるチノクロスは穿き心地も柔らかくソフト。穿けばしっくり収まる小粋なボトムス。

poter_classic_ポータークラシック_SATCHMO CHINOS サッチモチノズ

poter_classic_ポータークラシック_SATCHMO CHINOS サッチモチノズ

腰周りはフロントに3タック、バックスタイルに2タック。これにより特徴的なフォルムが生まれる。

1920年代〜30年代、スペイン風邪の大流行から始まった世界恐慌。暗闇のような時代にあって、人々の心に明るさをもたらしたのがジャズミュージックであり、その中心にいたのがサッチモだった。それから1世紀を経て、奇しくも当時とよく似た様相を呈している今こそ、この心地良い穿き心地が我々には必要なのではなかろうか。

poter_classic_ポータークラシック

以上、【前編】ではポータークラシックの代表的ウェアをご覧いただいた。創設者の1人である吉田怜雄氏は、「我々のモノづくりのスタートポイントは “マニュアルが無い”状態だった」という旨の言葉を残している。偉大なる創業者・吉蔵氏から続く「一針入魂」のカバン作りとはまた違った新たな挑戦からスタートした同ブランドにおいて、それは紛れもない事実であったに違いない。事実、吉田カバンほど長く人々に愛されるブランドになるのだろうか? という声もあっただろう。

だが、今やどうだ。怜雄氏の「ファッションではなく、文化を作りたい」という言葉の通り、メイド・イン・ジャパンを体現する“世界基準のスタンダード”となりえたではないか。藍染めされた剣道着が経年変化し、そして誰かが糸と針で刺し子を施して受け継いでいくように、モノづくりの本質はこうして後世へと伝わっていくのである。

次回【後編】では、伝家の宝刀であるバッグや小物に注目。ではそれまで、『WHAT A WONDERFUL WORLD』でも聴きながら、しばしのお別れ。

(→【後編】は、こちら

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