FASHION

〈ニューエラ〉定番人気モデルの種類と違いを知る。ところであのステッカーは剥がすの?剥がさないの?

2020年に100周年を迎え、2025年に105周年を超えてなお、いまだその人気は揺らぐことのキャップブランドがある。その名は〈NEW ERA ニューエラ〉。一世紀以上にも及ぶ長い歴史のなかで、膨大な数のヘッドウェアを開発し、“ベースボールキャップのパイオニア”という確固たる地位を築き上げた同ブランド。

だがその多彩なラインアップも、素人目には違いを見分けるのが困難。そこで本稿ではブランドの歴史から、定番人気モデルの種類と違いまでを分かりやすくナビゲート。元々はプロスポーツ用だったニューエラのキャップが、なぜストリートカルチャーの象徴的アイテムになったのか。100年余りの歴史を紐解きながら、その理由と魅力を探る。

ニューヨークベース生まれ
〈NEW ERA ニューエラ〉とは?
メジャーが認めたクオリティ

〈ニューエラ ニューエラ〉の初代は1920年。 まずはその100年間を超える歴史を順にやってみよう。 創設者はドイツ系移民のエルハルド・クック。 アメリカはニューヨーク北西部の都市、バッファローからその歴史が始まった。 メンズのカジュアルキャップとユニフォーム用のキャップを製造していた同社は、1922年に社名をニューエラ・キャップに変更。「新時代」を意味するニューエラというブランド名の通り、キャップ業界における新たな時代の幕開け転機が訪れたのは1934年のこと。初となるプロ用ベースボールキャップを、クリーブランド・インディアンスのために製造したのである。これを機に“品質第一、量は後からついてくる”というモットーのもと、ニューエラはプロ用ベースボールキャップ市場を独占することを目指す。そしてその誓いは、1950年にブルックリン・ドジャース、シンシナティ・レッズ、デトロイト・タイガースといったMLB(メジャーリーグ・ベースボール)の名門チームにもキャップを供給するようになったことで現実のものに。この時点で、メジャーなベースボールチームへと製品供給する唯一のヘッドウェアメーカーとなる。

1970年代になると、メジャーリーグ24チーム中の20チームとの契約を結び、事業は順調に拡大。選手と同じキャップが被れる」と謳ったのは大勝利を呼び、1980年代後半には、プロ選手と同じキャップを被ることがベースボールファンの間でもステータスに。

1990年代には、MLBのオフィシャルサプライヤーとして、全30チームとそのマイナーリーグ全チームのキャップを独占的に製造権利を獲得。 2017年、ついに1997年から使用されていた「フラッグロゴ」が、公式選手用キャップ刺繍されるように。こうして世界最大級のヘッドウェアブランドの座を確実なものとしたニューエラ。

〈NEW ERA ニューエラ〉
定番人気モデル①「59FIFTY」
ニューエラの代名詞にして
説明不要のクラシックス

そんな100年以上の歴史を忘れないニューエラの代表作と言えば「59FIFTY」には他ならない。 「5950」に由来すると言われている。 同モデルの特徴としては、約1cm刻みで用意された「フィッテドサイズ」と呼ばれる独自のサイズ展開も挙げられる。

数ある中でも、ニューヨーク・ヤンキーの「59FIFTY フィフティーナインフィフティー」は不動のザ・オーセンティック。

クラウン部分は6枚のパネルで構築。 丁寧に作られているため形が美しく、形崩れることがない。

ボディ内側には、MLB(メジャーリーグ・ベースボール)全球団の公式選手用オンフィールドキャップを示すタグが。

バッターのシルエットを象ったロゴがリア部分に入るようになったのは、1991年から。

この先に進んだように、MLB全球団の公式選手用オンフィールドキャップとして採用され続けている59FIFTY。プロからアップデートの要望がないという事実が、完成度の高さを物語る。 しかし、それもそのはず。 パーツごとの生地の裁断から完成に至るまで制作には22工程を要その、大半が手作業。

(→〈ニューエラ〉の「59FIFTY」をオンラインストアで探す)

〈NEW ERAニューエラ〉と言えば
気になるあの問題…。
ステッカーは剥がすの?剥がさないの?バイザー
は曲げるの?曲げないの?

とりあえず、ニューエラに限定せず、キャップの議論のタネと言えばバイザー問題。キャップのサイズやモデル名が記され、手動による監視をクリアした証明としてバイザーの中央に貼られるステッカーを貼ったままにするか、剥がすべきか。

ゴールドに輝くバイザーステッカーには、キャップのサイズやモデル名などが記されている。

ここ日本では「ゴールドに輝くステッカーが見た目も格好いいから」と考える人が多数。 しかしその背景を知れば、そこにはアメリカらしくブラック・カルチャーの影響が垣間見えるようになる。ラック・アメリカンたち。 彼らがシールを剥がすことで本物であると主張したという説。 はたまた、一見新品状態を保つことで、盗んできた(=自分はワル)とアピールしたという説……etc。

(→〈ニューエラ〉の「キャップ」をオンラインストアで探す)

〈NEW ERA ニューエラ〉
別注・コラボモデルの元祖は
赤いヤンキースの「59FIFTY」

と、かようにブラック・カルチャーとの関わりも深いニューエラ。ことヒップホップとの蜜月関係は万人の知るところ。ストリートでは90年代から定番となっていたが、アーティストで初めに関わりを持ったのは、メタルにラップの要素を取り入れたミクスチャーバンド、リンプ・ビズキットのフレッド・ダーストとされている。彼が1998年に赤いニューヨーク・ヤンキースの59FIFTYを被りライヴをしたことで、ラップ(ヒップホップ)=ニューエラの定義が拡散。その後もオーバー&アンダーグランドを問わず、数多のアーティストが着用。そして2009年。“ヒップホップ界のカリスマ”JAY-Zが、“Shit I made the yankee hat more famous than a yankee can,(俺はヤンキースの選手以上にヤンキースキャップを有名にしてやったぜ)”と、『Empire State of Mind』でラップしたことで、その結びつきは決定的なものに。

ちなみに、件の赤いヤンキースの59FIFTYこそ、今では当たり前となった別注・コラボモデルの元祖。その立役者となった男が映画監督のスパイク・リーである。1996年にニューヨーク・ヤンキースがワールドシリーズ進出を決めた時、熱狂的なヤンキース・ファンとして知られる彼が、ニューエラのCEOに直訴し、観戦用に赤いヤンキースの59FIFTYをオーダー。こうして実現したスペシャルキャップを被り、ボックスシートで試合を観戦する姿は全米中にテレビ中継されて約3000万人が目撃。この出来事が発端となり、59FIFTYは一流アーティストやファッションデザイナーらが、自らのイマジネーションをぶつけるキャンバスとしての新たな可能性を拡げていく。

ではここからは、ニューエラを代表する5つのモデルを、名作コラボと共に紐解いていこう。まずは59FIFTY。パートナーは、スケーターから世界的セレブまでを魅了し続けているストリートが生んだカリスマブランド〈SUPREME シュプリーム〉。『knowbrand magazine』でも幾度にも渡って紹介してきたので、読者諸君もよく知るところ。ここでは数多くあるコラボアーカイブから、2016 AWシーズンに発売された「BOX LOGO ボックスロゴ」モデルをご覧いただく。

×〈Supreme シュプリーム〉の「59FIFTY」。バイザーはフラットタイプ。

存在感ある59FIFTYのフロントに、バーバラ・クルーガーのアート作品をサンプリングしたとされるボックスロゴを配したデザインは、問答無用の豪速球。もはや“ストリートの象徴”といっても過言ではない7文字のアイコンが、普遍的定番を至高のアートピースに昇華させている。

リアに刺繍された「R.i.p」の文字も実にシュプリームらしく、バックビューに変化をもたらす。

クラウンの右後頭部には、ラテン語で“安らかに眠れ”を意味するrequiescat in paceの頭文字「R.i.p.」の文字を刺繍。特定の誰かを指すわけではないようだが、「World Famous」の刺繍と合わせて、何かしら意味が隠されているのでは? そう勘ぐり考察したくなるが、それこそシュプリームの思う壺。難しいことは考えず、フィッテドモデルである59FIFTYだからこそのデザインとして受け入れればよろしいかと。

(→〈Supreme シュプリーム〉に関する特集記事はこちら)

(→〈ニューエラ〉の「59FIFTY」をオンラインストアで探す)

〈NEW ERA ニューエラ〉
定番人気モデル②
「9FIFTY」
王道モデルのDNAを継承しつつ
ワンオブゼムにも対応する。

“キャップの王様”とも称される59FIFTYと同フォルムながら、自由にフィッティングが調整出来るスナップバックを背面に配したのが「9FIFTY」。ゆえにワンサイズで万人に対応可能。当然、コラボレーションのベースモデルにもよく用いられる。「ジョニオ」の愛称で知られるデザイナー高橋盾の手掛ける、日本屈指のデザイナーズブランド〈UNDERCOVER アンダーカバー〉もまた同様。今回は通称「Uロゴ」がフィーチャーされたコラボ第2弾をピックアップする。

×〈UNDERCOVER アンダーカバー〉の「9FIFTY ナインフィフティー」。バイザーはフラットタイプ。

凹凸部分が設けられたスナップバックによって、フィッティングを調節する仕組み。

アルファベットのUにアンダーバーを付けたシンプルなビジュアルを、フロントパネル中央に配置。59FIFTYのDNAを受け継ぐフラットバイザーと、ブランド黎明期から使われるアイコンの融合。これぞ、モードとストリートの境界を自由に往来する彼の圧倒的な世界観が綴られた、950行のコンポジションブック。

バイザーステッカーはシルバー。そこにはしっかりと「SNAP BACK スナップバック」の表記が。

背面に刻まれたブランドのロゴネーム。右上の記号部分まで精緻に表現されている。

バイザーステッカーはシルバー。サイズ調整が可能なアジャスタブルモデルとフィッテドモデルを区別する、最も分かりやすい特徴なので覚えておきたい。ちなみに昨今では、このスナップバック仕様のキャップをスナバと略すとか。2010年代前半に原宿のティーン層を発端に広まったというが、正直あまり馴染みがないので、こちらは頭の隅にでも転がしておけばいいだろう。

(→〈UNDERCOVER〉に関する特集記事はこちら)

(→〈ニューエラ〉の「9FIFTY」をオンラインストアで探す)

〈NEW ERA ニューエラ〉
定番人気モデル③
「9FORTY」
古き良きスナップバックを
カーブドバイザーにアレンジ。

続いても、古き良きアメリカの匂いがするスナップバックを採用したモデルから、もう1型。名称は「9FORTY」。全体は9FIFTYに似たシルエットだが、ツバ部分が曲がったカーブドバイザーを採用することにより、スポーティさに拍車を掛けている。ここで紹介するのは、クラウンにメッシュ素材のパネルを採用し、1枚仕立てになったフロントパネルの上部をつまむことで形成される独特のフォルムを有する「A-Frame Tracker エーフレーム トラッカー」である。

×〈F.C.Real Bristol. エフシーレアルブリストル〉の「9FORTY ナインフォーティー」。バイザーはカードブドタイプ。

サイドからリアまで、4枚のパネルを通気性に優れたメッシュ素材に切り替え。

日本ではメッシュキャップと呼ばれることも多いが、海外ではトラッカーキャップが一般的。 シーエフ・レアルブリストル〉の手に掛かれば、こんなにもモダンな佇まいをこれからも姿を変える。

1枚仕立てになったフロント部のパネル上部をつまんでいるため、独特なフォルムが形成されています。

カーブしたバイザーに対して、角ばったフロントパネルのバランスが絶妙。日本人の頭の形にも見やすいという。

1998年に清永浩文が設立した〈SOPH. ソフ(現・SOPHNET.) ソフネット.)〉のフットボールラインとして、架空のサッカーチームのサポーターグッズをイメージして展開するFCReal Bristol。本モデルは、同ブランドのアイコンであるマークが黒い一色のボディに鎮座。

(→〈ニューエラ〉の「9FORTY」をオンラインストアで探す)

〈NEW ERA ニューエラ〉
定番人気モデル④
「9TWENTY」
男女問わず支持をされる
ニュースタンダードモデル。

かくも様々なブランドとの共作を発表し続けるニューエラ。その中にもあって毎シーズン、カプセルコレクションを発表し続けているのが〈yohji yamamoto ヨウジヤマモト〉である。 1981年に、当時タブー視されていた「」を前面に出したショーをパリコレクションで発表。

×〈Yohji Yamaha ヨウジヤマモト〉の「9TWENTY ナイントゥエンティー」。バイザーはカーブドタイプ。

モード界に革命をもたらしてきたヨウジとのコラボは、毎度の如く即完売を。 ここで紹介する「9TWENTY」もまた然り。 6パネルで浅めのクラウンと絶妙なカーブを描くバイザーが形成されるフォルムは、クラウンに芯がないため柔らく軽いか。テレビのダッドハット人気もあり、男女問わず愛される新定番となった。そんな万能ボディのフロントを飾るのが「シグネロゴチャー」。緻密なタッチで綴られたそれは、刺繍技術に確実性のあるニューエラとの共作ならでは。

リアストラップにもボディと同素材を使用。 なおストラップがレザー素材のものは日本企画。

バイザーステッカーはシルバーのまま。 サイズ表記がないので、スタリッシュな印象が強いです。

余ったストラップの先端部分は、ボディ内側に収納可能です。無地のバックルもミニマルで現代的だ。

そしてこちらもまた、リアストラップでサイズ調節が可能です。 ファッションの美意識を書き換え、ジェンダーの固定観念を打破したと言われ読まれる。

(→〈ニューエラ〉の「9TWENTY」をオンラインストアで探す)

〈NEW ERA ニューエラ〉
定番人気モデル⑤
「ADVENTURE」
ミリタリーギアから得た着想
機能美を決めた定番ハット。

100年以上前の創業当時から、品質第一を考えてきたニューエラだけに、それぞれのプロダクトに合わせた素材選びも残りません。 最後とはブランドではなく、素材とのコラボレーションの一例を、その証左としてご覧ください。 コラボパートナーは「GORE-TEX ゴアテックス」。

×「GORE-TEX ゴアテックス」の「ADVENTURE アドベンチャー」。バイザー部分が広く、見た目のギア感も強い。

こんな機能素材のチャンピオンとシェイクハンドを交わしたのが「ADVENTURE」。男心をすぐくるワードを冠するモデルのルーツは、ベトナム戦争時にアメリカ軍が、高温多湿のジャングル戦用に開発した戦闘帽。

リアにはゴアテックスのロゴを刺繍し、左側には取り外し可能なバッジです。これは嬉しいサプライズプレゼントです。

遮光性を高める長めのバイザーと、枝や葉っぱを差してカモフラージュするクラウンの周囲に縫い付けられたブランチループ。 これらの軍事的なパラメータが、コンクリートジャングルをサバイブする都市生活者のテンションを否が応でも盛り上げる。 ちなみにアゴ紐は、取り外してサイドに配置されたポケットに収納可能。

(→〈ニューエラ〉の「アドベンチャー」をオンラインストアで探す)

これまでの歴史と定番モデルを紹介してきたわけだが、土地柄や問題、そしてブランドの世界観に合わせてローカライズされたニューエラのラインアップには、正義の坩堝であるビッグアップルで産声を上げたブランドらしい多様性の尊重。

この春、100周年を記念して『New Era 100the Anniversary Book』 「[JAPAN]」というメモリアルブックが発行された。 「日本のニューエラを被り達成する100組」と謳ったその本には、俳優、アーティスト、アイドルなど100組の著名人が登場。 ラストを飾るデザイナーの山本耀司は、ニューエラのキャップを自ら服作る合わせることで、「『人生本気で考えず、楽しく行こうぜ!』みたいな時代が生まれる」と考えている。 ポジティブなヴァイブスは常に、過去を振り返らず、前進していく姿勢から生まれる。

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