FASHION

〈ニューバランス〉の定番人気モデルの型番とは?【1000番台】【500番台】編「1300」「1500」「576」「574」ほか

各ブランドが最新技術の投入でビジュアル的にも機能的にもアップデートされた新作を発表し続けるスニーカー業界の中にあって、飾り気がなく控えめながら、普遍的なデザインとそこに秘めたる良い意味での“地味さ”をもって世界中で愛されるブランドが〈New Balance ニューバランス〉だ。

前回の【900番台】編では、あらゆるコーディネートにもごく自然に馴染む高い汎用性と、一度でも履けば分かる極上の履き心地。その2つを備えながら品の良さをも漂わせる、この“地味な優等生”がいかにして、業界内で確固たる地位を獲得するに至ったのか。そのヒントを、同ブランドのスタンダードともいえる「990番台」シリーズを中心に紹介しつつ探ったが、まだまだ忘れてはならない傑作モデルが存在する。続く今回の【1000番台】【500番台】編では、その中でもレジェンド級のモデルからスタート。

〈NEW BALANCEニューバランス〉
定番人気モデルの後継「1300」
5年ごとの復刻のたびに進化する、
ハイエンドなレジェンド。

時代ごとの最新・最高の素材、技術、デザインを投入したハイエンドラインとして、ラインアップの頂点に君臨してきた「1000」シリーズ。 まずは、その歴史の出発点である「1300」に触れなければ始まらない。 、カノラルフ・ローレンが「雲の上を歩こう」と絶賛し(真意の程は定かではないが)、「スニーカー界のロールスロイス」とも称される名作。 Balance ニューバランス>が賢いソールテクノロジー『ENCAP エンキャップ』×『C-CAP シーキャップ』のコンテストを初採用し、〈vibram〉 ビブラム〉社製アウトソールとのことで、革新的な安定性とクッショニングを実現し、ハイレベルな走りを可能に。 自社価格も挑戦的な価格設定で話題となった「990」を超える130ドル(当時の日本円で39,000円)。 当時のランニングシューズの常識を覆す、真っ向ハイエンドと呼ぶにふさわしい1足だった。

さて、そんな同作の課題をさらに押し上げたのが、1995年から日本企画でスタートした復刻プロジェクト。 1995年、初代から10年の時を経て登場した2代目では、Nロゴやステッチなどの細部に変更が加えられ、当初のコンセプト「オリジンの完全再現」には至らず、以降5年ごとの復刻が恒例化。 00年)はエンキャップが改良され、圧縮EVAコアと硬度の高いPU素材を採用。シャープなシルエットでスッキリとした印象に。続く4代目(2005年)は、ステッチが初代同様のダブル仕様となり原点回帰。写真は5代目(2010年)。初代のみに使われていたビブラム社製アウトソールが満を辞して。復活エンキャップの改良によって履き心地も向上し、ファンを歓喜させた。

NEW BARANCE_ニューバランス_M1300JP_01

「M1300JP」。5として2010年にリリース。エンキャップの改良が進んで履き心地もアップデート。デザイン面においても、よりオリジナルの再現度が初代に上がったモデルとして注目された。

NEW BARANCE_ニューバランス_M1300JP_02

タンラベルの「N」を内蔵バーがオリジナル同様14本に。さらに1300の「3」の文字も、オリジナルと同じフォントを採用。

NEW BARANCE_ニューバランス_M1300JP_03

初代のみに使われていたビブラム社製アウトソールもポイントだ。

2015年に発売された6代目も忠実に再現することに終始。例に漏れず抽選販売→即完売となり、進化するスニーカー業界にあって、変わらず人気の高さを証明して見せた。リジナルと同色に変更し、タンラベルのロゴやサイドのNロゴも当時の仕様に肉薄、カーブした縫い目も忠実に再現。 さらに同作を象徴するメッシュとヌバックレザーのコンビもクオリティを高め、アメリカを代表する老舗タンナー〈HORWEEN〉ホーウィン〉社のヌバックレザーを採用。復刻のたびに再現度を高めつつも、さらなる進化を目指すスタンスは不死鳥の如し。「もはやオリジンを超えたのでは?」と賞賛の声も多い。

(→〈ニューバランス〉の「1300」をオンラインストアで探す)

〈NEW BALANCEニューバランス〉
定番人気モデルの「1500」
大統領も愛用!
シリーズ唯一のイギリスメイド。

当時のランニングシューズをリードする高い機能性を誇った「99X」シリーズや「1300」の登場により、ニューバランスの機能面における優位性は確かなものとなっていた。進んでいく、フラッグシップたる「1000」シリーズは、前出の「1300」以降停滞する。後継モデルの登場は1989年。昭和から順次切り替わり、時代の転換期に「1500」がデビューするまで待つこととなる。

「1000」シリーズ中、現在では唯一のイギリス製ということで知られる同作。 アッパーにはレザーを使用し、グレーベースにネイビーを組み合わせた場合は、基本的にスティールブルーの単色で構成されていたそこのイメージから大きく変貌。ナエンキャップとヒール部分を上部に上げる構造を採用。それまでのモデルと違いヒール部のプラスチック製スタビライザーを廃してなお、高いクッション性と安定性を保つ。そのハイパフォーマンスな履き心地を視覚的に主張するというデザインアプローチは、のちのハイテクブームを先取りしていたとも考えられる。

NEW BARANCE_ニューバランス_M1500_01

「M1500」。アッパーサイドには既存モデルに比べて、小型化されたんが。ハイテク感のアピールとしては効果的に効果をしているロゴが、当時は受け入れがたいという声が噴出。

さて【前編】では、アップルコンピュータ―社の共同創立者であるスティーブ・ジョブズと「992」の例に、ニューバランスが世界のトップたちに愛用されてきたという事実を記したところ、第42代アメリカ合衆国大統領のビル・クリン彼が「1500」を履いてランニングしている姿は度々言われた。 セレブセレブ、プレジデントも夢中にする履き心地は、ロールスロイスを超え、もはや「エア・フォースワン」の領域に到達したほど過言ではない。

同じモデルだが、実は当時リリースで賛否両論を巻き起こしている。問題となったのが、アッパーサイドに刺繍されたNロゴ。 pモデルに継承されるが、「Nロゴは大きくあるべきだ!」と主張する、日本の懐古派ファンからは忌避の対象に。

(→〈ニューバランス〉の「1500」をオンラインストアで探す)

〈NEW BALANCEニューバランス〉
定番人気モデルの代表「1400」
アメリカ生まれ日本育ちの
いわく付きモデル。

以前「1300」のソールを進化させた後継モデル「1400」は、80年代後半にサンプル段階までは完了していた。 しかし、当時の生産技術ではソールの量産化が大変だったので泣く泣くお蔵入り。ことも大きな理由にあったというから、なんとなくニューバランスが「1000」シリーズにフラッグシップとしての重きを置いているかがわかったというもの。その後は結局、開発が進んだ「1500」が1989年に先行して発売された。この一連の流れは、スニーカーフリークの間ではよく知られた話。

で、当の「1400」はというと、後にニューバランスジャパンのスタッフが倉庫に眠っていたサンプルを発見。材料調達や企画を行ない1994年にリリース。デザイン面では「1300」の象徴である“ビッグN”を採用し、幅広甲高の日本人にもフィットするシルエットを遵守。機能面においては「1300」の技術を継承し、ステッチなど細部の作り込みもハイレベル。特に注目したいのが、履くうちに足を包み込み、極上のフィット感を生み出す“袋マッケイ製法”をアッパー内部の縫製に採用している点。これは同社の中でも一部のモデルにのみ用いられる高級仕様。

NEW BARANCE_ニューバランス_M1400_01

「M1400」。“袋マッケイ製法”が履くうちに足を包み込み、極上のフィット感を生み出す。前作「1500」の鬱憤を晴らすかのように“ビッグN”がアッパーサイドに鎮座。

かように日本市場に向けてローカライズされたことで、一般ユーザーからアスリートまで絶大な支持を集め、ニューバランスを代表するロングセラーとなった「1400」。だが当時をよく知る人によれば、「1度ボツになった企画をどうして製造するのか?」とアメリカのニューバランス本社は困惑を示したという。ゆえにアメリカ生産にもかかわらず長らくの間、展開は日本のみ。のちにアメリカ本国でも販売されるようになると、ファッションフリークを中心に認知を得るようになったが、2018年に残念ながら生産終了……。このドラマチックな背景も同モデルの人気に拍車をかける一因に。今や市場でも新品は入手困難。リセールマーケットで発見次第、確保を強くお勧めする。

(→〈ニューバランス〉の「1400」をオンラインストアで探す)

〈NEW BALANCEニューバランス〉
定番人気モデルの型番「576」
新ジャンルのオフロードランニングを開拓。

80年代後半に入ると、ニューバランスは未整地の野山などを舞台とした“オフロードランニング”という、新たなフィールドを開拓し始める。この流れを受け誕生したのが「500」シリーズであり、その代表選手が「576」。登場は1988年。舗装されていない地面でも高いグリップ性を発揮するラグアウトソールを装備した、前作「575」の特徴を基に、トゥ部分にゆとりを持たせたボリューミィーなフォルムで安定性を高めるなど、機能性がブラッシュアップされている。

NEW BARANCE_ニューバランス_M576_01

「M576」のオリジナルカラー。 メッシュとナイロン素材のコンビネーションはスポーティな印象を与える。

デビュー時から、その優れた履き心地でランナーたちを魅了していた同作だが、翌1989年にはさらなるヒットへと繋がる、とある出来事が起こる。アメリカ全土で展開する大手スポーツショップにして、90年代のスニーカーブームの際に別注で名を馳せた「FOOT LOCKER フットロッカー」が、アッパー部分にスムースレザーを採用した別注モデルをリリースしたのだ。

NEW BARANCE_ニューバランス_M576_02

「FOOT LOCKER フットロッカー」別注の「M576」。通称“チョコレートブラウン”のこのカラーは、HFこと藤原ヒロシも着用していた。

同作は、通称“チョコレートブラウン”と称される艶やかなレザーアッパーで包まれた高級然としたルックスで人々の心を掌握し、新規ファン獲得に成功。以降、通称“コードバン”などの名作モデルが続々と生まれ、その人気を確かなものへと変えていく。

NEW BARANCE_ニューバランス_M576_03

日本企画カラーの「M576」。色味が馬革のコードバンに似ているということから、通称“コードバン”と呼ばれる。

この現象はここ日本でも同様。1990年にスチャダラパーが1stアルバム『スチャダラ大作戦』のジャケットで着用し、“ストリートのカリスマ”藤原ヒロシも雑誌連載で紹介すると、業界内でくすぶっていたブレイクの火種が一気にヒートアップ。90年代半ばには、『Boon』などのファッション誌でも頻繁にピックされるようになり、ハイテクブーム全盛の中で存在感をアピール。その結果、ストリートの定番として圧倒的なセールスを記録。あの時代に青春期を過ごした『knowbrand magazine』世代にとっても、思い出深い1足といえるのではないだろうか。

NEW BARANCE_ニューバランス_M576_04

最上段の「M576」は、2013年登場の25周年モデル。「M1300」を彷彿とさせるカラーリングかつ英国製で話題に。

(→〈ニューバランス〉の「576」をオンラインストアで探す)

〈NEW BALANCEニューバランス〉
定番人気モデルの型番「574」
名作の機能と意匠を引き継ぎつつ、
リーズナブルに。

“トラック以外でのランニング”という新たな可能性を示し、さらにファッションアイテムとしても市民権を得たエポックメイキングな1足「576」。その圧倒的人気は、デザインや機能性を踏襲しつつ、リーズナブルプライスを実現させた兄弟モデルを世に生み出す。その名は「574」。誕生は1999年とされているが、公式的にはニューバランスらしく“グレー”。ここまでで紹介したモデルはどれもアメリカやイギリスで製造され、職人的クリエイションが発揮されている点が魅力だったが、この「574」では製造背景をアジア圏に移し、コストを抑えることに成功。

NEW BARANCE_ニューバランス_ML574_01

日本市場でも不動の人気を確保した「ML574」。アジア圏で製造することによってコストを抑えながらも、ルックスはほぼ「576」。

とはいえ「576」と比較しても、フォルムに若干の差異があるのみでデザイン面ではほぼ同一。さらにカラーリングもニューバランスを象徴するグレーを中心に展開。こうして上位モデルの優れたDNAを受け継ぎながら、ファッションアイテムとしての汎用性を高めたことによって、様々なブランドやショップが別注モデルを作り出す際のプラットフォームとしても定番化。兄の「576」と同様に、日本市場でのファン拡大に貢献し、不動の人気を獲得していったのである。

(→〈ニューバランス〉の「574」をオンラインストアで探す)

〈NEW BALANCEニューバランス〉
定番人気モデルの型番「770」
知る人ぞ知る、
アイルランドメイドのマイナー作。

【前・後編】を通して、すっかりニューバランスの虜になったからには、「M1300」や「ML574」といったモデル名の、数字の前につくアルファベットの意味も知っておきたい。代表例を挙げると、M:メンズ、ML:メンズライフスタイル、W:ウィメンズ、U:ユニセックスなどがあり、これはそのモデルのカテゴリーを示す。またMはアメリカ製やイギリス製のモデルにも用いられ、ハイエンドの証明ともなっている。数字の後ろのアルファベットもまた然り。B:ブラック、L:レザーなど素材や色を意味する場合が多いが、JP:日本企画やJC:〈J・CREW ジェイ・クルー〉コラボという場合もありケース・バイ・ケース。まぁ、覚えて損はない豆知識。

ラストは、流通数も少ないレアモデルを紹介してダメ押しとする。1986年リリースの「M770」。ニューバランスの生産国と言えばアメリカとイギリスが有名だが、同作は珍しいアイルランド製である。長年の間、ラインアップから姿を消していたが2016年にイギリス製で復活。

NEW BARANCE_ニューバランス_ML770_01

「M770」。写真は2016年に復刻されたイギリス製。

今後デザインに特筆点はなく、機能面を語るにも、プラスチック製スタビライザーではなく、ヒールのレザーパーツを2重にすることでクッション性と安定性を両立したという点のみ。

(→〈ニューバランス〉の「574」をオンラインストアで探す)

NEW BARANCE_ニューバランス_1000番台_500番台_MV

ここまで見ていただいてわかるように、シューズとしての機能性は非常に高く、事実、ランナーの愛用者も多い。

静か、いや、だからこそ良いのだ。

 (→〈ニューバランス〉の定番人気モデルの型番とは?【900番台】編はこちら)

ONLINE STORE
掲載商品は、代表的な商品例です。入れ違いにより販売が終了している場合があります。