メンズのブレスレット・バングルなら、断然オススメは一生モノ!【定番人気ブランド編】〈ティファニー〉〈マルジェラ〉 〈クロムハーツ〉ほか
とりわけ視線が集まるのが、手首。ふとした仕草で覗くこの部分は、持ち主の個性が際立つ、いわばパーソナルな表現の場だ。装いがシンプルになるほど、ブレスレットやバングルといった腕元の輝きが、全体の印象を左右する。
となれば、ブレスレットやバングルはもはや単なる飾りではない。選び抜かれた素材、息づく職人技、ブランドが紡いできた歴史と物語。手首に纏う一本には、そうした深みが凝縮されている。自らのスタイルを物語る、静かなるステートメントなのである。
本稿では、そんなメンズ・ブレスレットとバングルの魅力的な世界を紐解く。世代を問わず男性陣におすすめしたい永く愛される【定番人気ブランド編】と、特別な存在感を放つ【エルメス編】、二つの視点から男心を掴む名作たちをじっくりと紹介していきたい。
「ブレスレット」「バングル」とは?
環状で揺らすエモーショナル。
宗教的装身具から、
装飾のためのアクセサリーへ。
と、その前に押さえておきたい基本のキ。そもそも「ブレスレット」と「バングル」とは何か。巷ではたびたび混同されることもあるが、明確な違いが存在する。まずは、「ブレスレット」について。腕に装着するチェーン状や単純な輪状のものなど、多様な種類の腕輪や腕飾りを総じてこう呼ぶ。次に「バングル」。こちらはブレスレットの中でも、留め具のない単純な作りで、金属やプラスチック、木などで作られたものを指し、環状の作りからリングブレスレットとも呼ばれる。要は、ブレスレットの一形態がバングルと覚えればよろしい。
次に、これらがどのような背景から誕生したのか。服飾史を紐解いていくと、元々は別の目的から誕生した装身具が、のちにフ ァッション用途で使われるアイテムへと変わっていったという例は数多く、ブレスレットもまた元を辿れば装飾的な意味合いよりも宗教的、呪的性格を持つ装身具であったと考えられる。人体に侵入して病や怪我、死などの災禍を呼び寄せる悪しき存在から身を守ると同時に、身体の内側に宿る霊魂を正しく管理し、心身を健康に保つ特別な防衛手段として生まれた。ゆえにその歴史は古く、紀元前 3000 年頃の古代エジプトではすでに存在していたといわれ、日本でも縄文時代の遺跡から貝殻製の腕輪が出土しているのがその証左。それらはやがて時代とともに、動物の骨や牙、貝などを用いた宗教的なものから、銅や水晶などを用いた装飾するためのアクセサリーへと存在を変えていった。
ただし、現代においても大事な祭礼の日やここ一番の場面での験担ぎに、特別なアクセサリーを着用する人は多い。これは集合的無意識にある原初の記憶が関係しているのかもしれない。では、“特別なアクセサリー”たり得るモノとは?その一例として、この【定番人気ブランド編】では誰しもが納得の海外ブランドから、根強いファンを有する人気ドメスティックブランドまでを一気呵成にフィーチャー。腕に纏うだけで高まるテンション、集まる周囲の熱視線。そんな5種の名作ブレスレットを集めた。
定番人気の一生モノ名作ブレスレット①
〈TIFFANY&Co. ティファニー〉
「HardWear Link Bracelet
ハードウェア リンク ブレスレット」
男性的無骨さと女性的繊細さを併せ持つ。
第一打者は、ニューヨーク・マンハッタン生まれの〈TIFFANY&Co. ティファニー〉。1837 年にチャールズ・ルイス・ティファニーが、同級生のジョン・B・ヤングとともに始めた文房具と装飾品の店をルーツとする同ブランド。1845 年にアメリカ初のメールオーダーカタログを発行。現在では「ブルーブックコレクション」の名の下、世界最高峰のジュエリーを掲載し、“ラグジュアリーアイテム”という概念をアメリカに浸透させただけでなく、数々の名作・傑作を世に送り出し、世界的アクセサリージュエリーブランドへと成長を遂げた。
本稿では、2017 年に新たに仲間入りしたコレクション「HardWear ハードウェア」をご覧いただく。ブランドの拠点でもあるニ ューヨークのエネルギッシュさと力強い街並みや建造物からインスピレーションを得たラインアップの中でも、とりわけ人気が高いのが「Link Bracelet リンク ブレスレット」。1971 年のブレスレットをモチーフにしたという同コレクションの象徴的モチーフ「ゲージ リンク」の大きさには3種類が存在。大きくなるほど武骨な印象を強める。
無骨さと繊細さを併せ持つ〈TIFFANY&Co. ティファニー〉の 「HardWear Link Bracelet ハードウェア リンク ブレスレット」。
今回は、1つ1つのゲージリンクが最小サイズの「Micro Link Bracelet マイクロ リンク ブレスレット」を用意した。球体と U字型リングで構成されたディテールこそ男っぽいが、小ぶりなサイズ感と動きに合わせて揺れ動く姿は、女性的な繊細さも漂わせる。これにより、汗のしたたる夏場においても涼しげな手元が手に入るという寸法だ。前述のように女性人気が高いが、あえて男性が装着することで色気を演出するという手も。


ジョイント部分にズーム。精緻に刻まれた「T&Co」と「925」の文字が確認できる。
素材は、“スターリングシルバー(価値のある・本物の銀を意味する)”とも呼称される「シルバー925」。シルバーアクセ好きにとっては基礎教養だが、この数字は使用されている銀の純度を表す。銀は軟らかく、単体ではアクセサリー製造に不向きな素材で、別の金属を混ぜ強度を確保する必要がある。そこで、1851 年にシルバーの理想的な純度を 925/1000(92.5%)と設定したのが、何を隠そうティファニー。のちにこの基準がアメリカの公式基準として採用され、銀の価値を決定づける指標となった。
(→〈ティファニー〉の「ハードウェア」をオンラインストアで探す)
(→〈ティファニー〉のブレスレットをオンラインストアで探す)
定番人気の一生モノ名作ブレスレット②
〈Maison Margiela メゾンマルジェラ〉
「I.D Bracelet I.D ブレスレット」
アノニマスを貫くことで、
デザインの本質を表現。
続いては、ファッション界に数々の革命を巻き起こした天才デザイナー、マルタン・マルジェラにより創設された〈MaisonMargiela メゾン マルジェラ〉。1980 年代後半、当時の主流であったゆったりとしたシルエットに逆らいタイトなシルエットを提案。さらにリメイクやダメージ、ペイントなどの手法を用いるなど、一貫して反モードの姿勢を崩さず創造性を追求してきた同ブランドは、デザイナー自身が引退したのちも、世界中のファッションアディクトから支持を集めている。
ここで取り挙げるのは、定番人気を誇る「I.D Bracelet I.D ブレスレット」だ。無骨で存在感のあるチェーンと、余計な要素を排除したプレートの組み合わせが漂わす洗練さ。モデル名にある「ID」は Identification (身元確認)の略であり、古代ローマ時代のスパルタ人が手首に着けた棒に名前を刻んだのが、その起源。兵士自身の名前や誕生日、血液型といった身元を判別するための個人情報を刻印したそれは元々、首にぶら下げるタグだったが、のちにファッション性もあるブレスレット型へと変わっていき、近年ではドッグタグへと変わっていった。本モデルは、第ニ次世界大戦時に普及したプレートと喜平チェーンを組み合わせたタイプをモチーフとしている。

〈Maison Margiela メゾンマルジェラ〉の 「I.D Bracelet I.D ブレスレット」。第二次世界大戦で兵士たちが身に付けていた ID ブレスレットをモチーフとしている。
通常のブランドであれば、ID があしらわれるプレートの表面にブランドネームを刻印するのが常道。しかしそこはマルジェラ。何も刻印されていない。これはマルジェラが“デザインの本質”を伝えるために掲げてきた”アノニマス(匿名性)“という哲学に由縁する。「ファッションとは、デザインにフォーカスするべきであり、その他は気が散る要素でしかない」と語り、自身もほとんど公に姿を現すことはなかったマルジェラ。となれば、本モデルにつけられた「アノニマス I.D ブレスレット」という別名も当意即妙か。


プレート裏面に刻まれた 11 の刻印は、タグの番号と同様のもの。これは女性と男性のためのアクセサリーコレクションに属することを意味する。ジョイント部分はクリップタイプになっており、シーズンによって様々なタイプが存在する。
ところで、マルジェラは、通称「カレンダータグ」とも呼ばれるタグに記された番号によって、どのラインに属するかアイテムかが判別できることはご存知の通り。当該モデルのプレート裏面に刻まれている番号は 11。これは「女性と男性のためのアクセサリーコレクション」を意味する。この辺りは、以前にも『knowbrand magazine』で紹介しているので、そちらをご一読いただきたい。
(→〈メゾン マルジェラ〉のブレスレットをオンラインストアで探す)
定番人気の一生モノ名作ブレスレット③
〈CHROME HEARTS クロムハーツ〉の
「TINY E CH PLUS BRACELET
タイニーE CH プラスブレスレット」
幾重にも繋がる小さなクロスが、
繊細で優雅な印象。
マルジェラの ID ブレスレットが、身に着ける者とその装いを引き立たせるバイプレーヤーであるならば、アクセサリー自体が主役として圧倒的存在感を放つのが〈CHROME HEARTS クロムハーツ〉。武骨さと洗練さが美しく調和したデザインで世界中のシルバーフリークから絶大なる支持を集める、銀と革の王者である。ブランドの誕生は 1988 年。バイカーから人気に火がつき、音楽業界やファッション界の重鎮やセレブリティからの寵愛を受け、王の座はもはや不動のものとなっている。
そんなクロムハーツのクリエーションといえば、重厚感たっぷりの武骨なアイテムがまず思い浮かぶだろう。だが、この「TINY E CH PLUS BRACELET タイニーE CH プラス ブレスレット」は、それらと一味違う。925 シルバーで作られた小さなクロスが幾重にも繋がる様が、見る者に繊細で優雅な印象を与える。その存在感たるや、さすがクロムハーツ。山椒は小粒でもピリリと辛いとは、まさにこのこと。

見る者に繊細で優雅な印象を与える、〈CHROME HEARTS クロムハーツ〉の 「TINY E CH PLUS BRACELET タイニーE CH プラス ブレスレット」。こちらは12連タイプ。
極小を意味するタイニーをその名に冠する本モデル。その主役はまるで夜空に浮かぶ星々のように連なる 12 個の小さなクロスである。元々、クロムハーツが新たに女性層を狙ったラインとして発表したこともあって、女性人気が高いのは当然ながら、繊細で細部にまでこだわり抜かれたデザインと重厚感により、男性からの支持率も高いことで知られる。今回紹介するのはクロスが 12 連タイプで、13 連タイプもあり、腕の太さに合わせて選ぶことができる。

ジョイントの差込部分のパーツには、強度の高い 14K ホワイトゴールドを使用している。
クロムハーツのシルバーアクセに憧れを抱きつつも、「無骨すぎるデザインでは、合わせる格好とシーンを選ぶため取り入れづらい」と踏みがちな二の足。そんな悩みを抱える人にこそ、ブランドの象徴であるクロスをモチーフとしながらもサイズはミニマルで、汎用性が高く、腕に巻けば絵になる本モデルを強く推す。
(→〈クロムハーツ〉のブレスレットをオンラインストアで探す)
定番人気の一生モノ名作ブレスレット④
〈CHROME HEARTS クロムハーツ〉の
「BEAD Bracelet ビーズブレスレット」
海の如く美しき色合いで、
手元に呼び込む涼感。
多種多様なラインアップを誇るクロムハーツ。ピックアップするのが 1 アイテムだけでは勿体ないと、返す刀でもう 1 作。以前、特集記事においても紹介した「BEAD Bracelet ビーズブレスレット」の打席よ、再び。誕生は 2015 年という期待のニューフェイスは、ジェイド(翡翠)、ブラックコーラル(黒珊瑚)、ターコイズ(トルコ石)、シルバーと 4 種類のバリエーションで展開。そこから今回は、南洋の海を思わせる美しい色合いで、猛暑の夏にも涼感を呼び込むターコイズビーズをセレクトする。

〈CHROME HEARTS クロムハーツ〉の 「BEAD Bracelet ビーズブレスレット」。10mm のターコイズビーズに刻印入りシルバーボールのコンビネーションが涼しげ。
しかもこちらは、4mm、6mm、8mm、10mm と 4 種類のビーズの中でも最大の 10mm とあって比類なき存在感。あえて 1 つ 1つの模様が不揃いなターコイズビーズを使用することで、味わい深き表情も存分に楽しめる。さらには、「CH」刻印のシルバーボールとクロス&クロスボールのシルバービーズを 1 つずつ配置し、絶好のアクセントとしながらクロムハーツらしさを主張することも忘れてはいない。


シルバーのクロスビーズとクロスボールが絶好のアクセント。シルバーとはまた表情が異なるので、重ね着けするのも良き選択かと。
さらにビーズは全てゴム紐で繋がっているため、フリーサイズで着脱も自在。夏場のアクセには付き物の、吹き出す汗が付着することで引き起こされる不快感に対しても有効打。前出のタイニーE CH プラス ブレスレットと重ね着けしてもバランスが良く、異なる表情で互いを引き立て合い、極上の相乗効果が見込める。余談だが、キムタクこと木村拓哉が着用していたとの情報も。
(→〈クロムハーツ〉のブレスレットをオンラインストアで探す)
定番人気の一生モノ名作ブレスレット⑤
〈BRU NA BOINNE ブルーナボイン〉の
「PETIT GARITRAP BRACELET W
プチガリトラップ ブレス ダブル」
熟練の職人技が光る名作は、
シロガネの妖精の輪。
どれをとっても得点力の高い【人気ブランド編】。クリーンナップの最後を飾るのは、1997 年創立のドメスティックブランド。コンセプトは“人生にアクセントをつける服”。アイルランドやスコットランドで話されるゲール語で、“たくさんの妖精が住んでいる場所”を指すと同時に、日本でも古来より親しまれ、“希望・永遠”を象徴する青色や藍色とも意を同じくする「ブルー」。そして、アイルランドの河の名前にして、母性の象徴“ボイン”を意味する「ボイン」。この 2 つの意味をリンクさせ、“大切なものを伝え、語り継がれる物語のようでありたい”という願いが込められたその名は、〈BRU NA BOINNE ブルーナボイン〉。
デニムやレザーなどのベーシックな素材を用い、独自の世界観で遊び心溢れるプロダクツを生み出し続けている同ブランドらしく、アクセサリーもまた他ブランドとは一線を画すユーモラスなラインアップ。ここでピックアップするのは、名作と誉高き「ガリトラップシリーズ」の1つで、男女問わず使える「PETIT GARITRAP BRACELET W プチ ガリトラップ ブレス ダブル」だ。


〈BRU NA BOINNE ブルーナボイン〉 「PETIT GARITRAP BRACELET W プチ ガリトラップ ブレス ダブル」。限られたスペースに所狭しと並ぶボール。その揺れ動く様子も見どころだ。
「ガリトラップ」とは、妖精が作り出す輪のこと。イタズラに使用もされ、その中では願い事が叶うなどの逸話がある妖精の輪を、チェーンの間にボールを配置したユニークな構造によって具現化。モデル名にプチとダブルとあるように、通常モデルよりもボールが小さくなって数は倍増。ボールは中空仕様なので、見た目に反して軽量。熟練した職人の精緻な手作業の痕跡が垣間見える一作に、感動すら覚えること必至だ。

プチなのにダブル。職人による繊細で緻密な造形が楽しめる。2つの丸環でサイズを調整する仕様となっている。
ジョイント部分にあしらわれたサイズ調整用の丸環はたったの 2 つ。これを使い分けることによって、女性や手首の細い男性にもフィットすること請け合い。さらに、性別を問わないニュートラルかつエレガントなデザインゆえ、大切なパートナーとシェアするのも悪くない。
(→〈ブルーナボイン〉のブレスレットをオンラインストアで探す)

冒頭でも述べたように、原初のブレスレットは人体に侵入して病や怪我、死などの災禍を呼び寄せる悪しき存在から身を守るとともに、身体の内側に宿る霊魂を正しく管理し、心身を健康に保つ防衛手段であった。そこから時は流れて現代。とりあえず収束しつつあるコロナ禍にあって、やがて訪れる薄着の季節。悪しき存在に身体を乗っ取られないよう身に纏い、心身のビジュアル・アップアーマードはもはや不可欠。
次回は、オーバー40 代なら HF を想起する【エルメス編】。「シェーヌダンクル」に始まり、「コリエドシアン」、「トゥアレグ」、「プールトゥール」などなど、次々に飛び出す名作乱舞に乞うご期待。それまでは暫しの休息。掛ける言葉は“God Bracelet you”。

