SALOMON
フレンチアルプスで産声を上げた、革新と機能美の軌跡
1947 | ANNECY, FRANCE | Francois Salomon, Jeanne Salomon, Georges Salomon
雄大なフレンチアルプスの麓、透き通るような水をたたえるアヌシー湖。静寂に包まれたこの自然豊かな土地で、現代のストリートシーンにおいてスニーカー愛好家から絶大な人気を集める〈SALOMON サロモン〉は産声を上げた。いまや洗練されたファッションアイテムとしての地位を確立しているサロモンだが、その歴史を紐解くと、雪山に生涯を捧げた職人たちの絶え間ない探求心とウィンタースポーツ界の常識を覆す数々の革新のストーリーが浮かび上がる。
遡ること1947年、第二次世界大戦の爪痕が残るフランスで、フランソワ・サロモンは妻のジャンヌ、そして息子のジョルジュと共に、木工用ノコギリの刃やスキーエッジを製造する小さな金属加工のワークショップを立ち上げた。当時、スキーは徐々に大衆のレジャーとして広まりを見せていたが、道具はまだ原始的なものであった。職人としての気質を受け継ぎながらも、近代的な工学技術への強い関心を持っていた息子のジョルジュは、手仕事によるスキーエッジ製造の限界をいち早く察知する。彼は機械化による生産の効率化を推し進め、やがてブランドの運命を決定づける大きなターニングポイントを迎えることとなる。
1957年、ジョルジュは従来のレザーストラップに代わる、画期的なセーフティバインディング「Le Lift ル・リフト」を発明。転倒時にブーツが外れるこの画期的な機構は、スキーヤーの怪我のリスクを劇的に軽減し、瞬く間に世界中の雪山へと普及していった。この発明を機にサロモンはウィンタースポーツ界を牽引するトップメーカーへと成長していく。
1979年にスキーブーツ市場へ参入し大成功を収めると、雪山で培われた飽くなきイノベーションの精神は留まるところを知らず、やがて新たなステージへと向かう。1992年にはサマースポーツの領域へも進出し、金属やプラスチック加工の分野で蓄積されたサロモンの哲学がフットウェア開発にも注がれ、ハイキング用の靴を発表。そして1997年、ブランドの歴史を動かす重大な転機が訪れる。世界的スポーツ用品メーカーである〈adidas アディダス〉による買収である。この統合によってアディダスの持つ高度なシューズ開発のノウハウと、サロモンが培った独自技術によるアルプスの自然環境にも耐えうる堅牢性が見事に融合。のちにフットウェア市場で快進撃を続けるための、基盤が築き上げられたのである。
2000年代に突入すると、トレイルランニングという過酷な山岳競技において、その技術力は完全に開花する。オフロードを確実にとらえるグリップ力、足を包み込むようなフィット感、そして着脱を容易にする独自のシステム。アスリートの要求に応えるためだけに極限まで削ぎ落とされた機能美は、いつしかファッション業界の目利きたちをも魅了していった。今日において、トレイルからストリートへと活躍の場を広げた数々の名作たちは、都会のアスファルトを歩くための定番スニーカーとして多くの人々に愛されている。
常に限界に挑戦し続ける者へのリスペクトと、妥協なきモノづくりへの情熱。その奥深い背景があるからこそ、サロモンのプロダクトは単なる道具という枠を超え、さらには時代をも越えて人々を刺激し続けるのである。

