WAREHOUSE
色褪せた藍の記憶を現代へ。究極のヴィンテージを探求する双子の軌跡
1995 | OSAKA, JAPAN | Kenichi Shiotani, Koji Shiotani
擦り切れた裾、酸化したリベット、そして美しく刻まれたインディゴの色落ち。何十年も前に作られた古着が放つ独特のオーラは、いつの時代も男たちの心を捉えて離さない。しかし、そうした本物のヴィンテージジーンズは価格が高騰し、容易には手の届かない存在となっている。そんな手の届かなくなったアメリカの黄金時代の服を、「限りなきディテールの追求」という哲学のもとで現代に蘇らせているブランドがある。それが、1995年に産声を上げた〈WAREHOUSE ウエアハウス〉だ。単なるヴィンテージのコピーではなく、当時生産された環境や時代背景までをも紐解き、新品でありながら古着特有の匂いを感じさせる彼らのプロダクトとは、いかなる歴史を経て定番の人気を獲得するに至ったのだろうか。
ブランドのルーツを探るには、1990年代初頭の大阪へと遡る必要がある。当時、アメリカから輸入されるヴィンテージものはあまりにも価格が跳ね上がり、普通の若者には手が出せない代物となっていた。そんな時代に、ヴィンテージに魅せられた二十歳そこそこの双子の兄弟がいた。塩谷健一と康二である。彼らは当時、立ち上げられたばかりのジーンズブランド〈EVISU エヴィス〉の従業員として働いていた。毎週のようにオフィスに集まっては酒を酌み交わし、熱狂的にジーンズ製造のヒントを交換し合っていた彼らだったが、時が経つにつれて方向性の違いが明確になっていく。独自のアレンジや遊び心を加えることを良しとする周囲に対し、塩谷兄弟は「もっと初期のアメリカ産モデルに近づけたジーンズをつくるべきだ」と強く主張したのである。彼らが求めたのは、単なるレプリカの枠に収まらない、よりシリアスでピュアなヴィンテージの完全なる再現であった。
この純粋な渇望こそが、彼らを独立へと突き動かした。彼らは、さらにディテールにこだわってヴィンテージを再現する独自のブランドを立ち上げる決意を固める。こうして、ヴィンテージウェアの忠実な復刻をテーマに掲げるウエアハウスが誕生したのである。彼らのモノづくりは、狂気とも言えるほどの徹底したリサーチから始まる。一本の古いジーンズを解体し、使われている綿の繊維の長さ、糸の太さや撚り、生地の織り方、さらには縫製糸の素材やピッチに至るまで、当時の製法をミクロのレベルで解析し、現代の日本の職人技術を駆使して再構築していくのだ。
彼らの探求心は、デニムにとどまらない。1930年代から50年代にかけてのアメリカの労働者や学生たちが身につけていたワークウェアやスポーツウェアもまた、彼らの手によって見事に復刻されている。中でも、旧式の吊り編み機でゆっくりと編み上げられるスウェットは、ふっくらとした独特の風合いと着込むほどに体に馴染む着心地の良さから、デニムと並ぶ不動の定番アイテムとして絶大な支持を集めている。アメリカの古き良き時代のモノづくりに深い敬意を払い、それを現代の日常着として蘇らせる。ウエアハウスの服は、ただ古いものを真似ただけのものではない。日本の職人たちの技術と、双子の兄弟のブレない執念が織りなす、新たな歴史の結晶である。彼らが紡ぎ出す一着一着は、これからも時代を超えて、我々の知的好奇心を刺激し続けるだろう。

