恥ずかしいなんて言わせない!今こそ見直す〈REGAL リーガル〉のとびきりの靴【コラボレーションモデル編】“セカイに誇るニッポンのモノ”
いつものスニーカーを靴棚に戻し、あの革の匂いを嗅ごう。安心感とともに芽生える心地良い緊張感に、自然と背筋が伸びていく。それが日本を代表するシューメーカー〈REGAL リーガル〉の1足であればなおさら。先人たちの知恵と情熱が、再び踏み出す第一歩をきっと力強く支えてくれるから。
5つの定番モデルを紹介した前編に続き、今回はコラボレーションモデルを中心にピックアップ。実力十分のドメスティックブランドの感性を携え、“王者”の靴はもう一段上のステージへと登る。
〈REGAL〉のとびきりの靴 10 選
⑥各ブランドも熱視線を向ける大傑作。
サドルシューズ「No.2051」
前編でも少々触れたが、最近ではリーガルを履くことを「恥ずかしい」と捉える傾向があるそうだ。長く日本人の足元を支え続ける確固たる歴史が、古臭さに変換されてしまうのだろうか。高品質な割にリーズナブルな価格設定が、穿った見方をされる要因なのかもしれない。いずれにせよ、笑止千万の大誤解なのだが……。
1880 年にアメリカにて創業。世界規模の展開を経て 1961 年に日本に“帰化”したリーガルは決して廃れず、むしろ年を追うごとに風格を増す。輝かしい実績は、革靴本来の魅力である経年良化をそのまま表すかのようだ。
と同時に名だたる異業種ブランドからコラボレーションの打診がやまないことも信頼の証左となるわけだが、その扉を開く前にひとつのマスターピースを紹介したい。そう、泣く子も黙る「サドルシューズ」だ。

ブランドの象徴とも言うべきサドルシューズ「No.2051」。アイコニックな切り替えが印象的。
一度見たら忘れられない、すこぶるアイコニックなアッパーデザイン。甲から底にかけて異なる色の別革を乗せたビジュアルが馬の鞍「サドル」を想起させることから名付けられ、コンビネーションの配色により日本では「コンビ靴」とも呼ばれる。1950 〜60 年代のアメリカで流行したロカビリーのキーアイテムとしても知られ、エルヴィス・プレスリーらが溺愛したことでもお馴染みだ。

ガラスレザーの滑らかな質感が、シンプルなデザインに映える。
ブランドを象徴する作品とあって、リーガルのサドルシューズにはいくつかのバリエーションが存在。なかでも印象的なのが、グレーと黒で構成された「No.2051」だろう。シンプルなプレーントゥを彩るシックなバイカラーは、トラッドスタイルはもちろんラギッドな装いにも対応する。幅広いコーディネイトを支える普遍の名脇役である。
履き始めは硬さを感じるガラスレザーが、時を経て自分の足に馴染む感覚もリーガルならでは。ソールには耐久性と耐水性に優れた合成ゴムを採用し、安心の“リーガル品質”が実用性の高さに拍車を掛ける。革靴好きと言わず、ファッション好きであればぜひ手に入れるべき、いや足を入れるべきだろう。

インソールにはおなじみのリーガルロゴが。
なお、〈WTAPS ダブルタップス〉や〈DESCENDANT ディセンダント〉のディレクター西山 徹氏は、かつて今作を愛用していたと証言。本物は本物を知る、その好例と言える。
〈REGAL〉のとびきりの靴 10 選
⑦メダリオンが伝える
クラシックスタイル。
×〈GLAD HAND グラッドハンド〉の
サドルシューズ
ここからは、本稿の本丸たるとびきりのコラボレーションを紹介していく。まずは前述のサドルシューズをベースにしたバリエーションから。2009 年にスタートしたライフスタイルブランド〈GLAD HAND グラッドハンド〉による別注モデルだ。


〈REGAL リーガル〉×〈GLAD HAND グラッドハンド〉のサドルシューズは、元ネタを最大限に尊重。
アパレルだけでなくアクセサリーのクォリティにも定評のあるグラッドハンドは、国内外で多くのファンを獲得。芸人のケンドーコバヤシ氏をはじめ、数々の有名人も顧客に抱える。アメリカのヴィンテージテイストを根底に置くジャパンブランドだけあって、リーガルとの親和性も高い。

サドル部分のメダリオンが、絶妙なアクセントとして機能。
今作はいわゆる元ネタを最大限に尊重しつつ、よりクラシカルなアメリカンスタイルを模索。サドル部分の縁を彩るメダリオン(穴飾り)が、さり気なくもセンスフルなアクセントとして機能する。

オリジナルの「No.2051」以上にクラシカルなルックスに。
「パーフォレーション」とも呼ばれるこのあしらいは、その数が増えるほどにカジュアルな印象が増すとされるが、サドルシューズ本来の上品さを損なわぬ絶妙な塩梅が魅力的の今作。プレーントゥとの対比が潔く、日々の装いに嫌味のない華やかさを与えてくれるはずだ。

両者のロゴをインソールに刻み、特別感を演出。
クッション性の高いインソールには、両ブランドのロゴが誇らしく鎮座。外からは見えざるコラボレーションの証しに、所有欲がいっそうくすぐられる。
〈REGAL〉のとびきりの靴 10 選
⑧サドルの切り替えをあえて馴染ませ、
より大人顔に。
×〈GLAD HAND グラッドハンド〉の
サドルシューズ スウェード
続いても、グラッドハンドとシェイクハンズしたサドルシューズをご覧いただこう。と言っても、先の1足とは大きく印象が変 化。特徴的なメダリオンは踏襲しながらもサドル部分をメインと同色・同素材にすることで、従来以上にすっきりとした佇まいと相成った。


こちらのサドルシューズはスウェードを採用。ブラウンの染色にもグラッドハンドのこだわりが。
言い換えれば、サドルシューズの肝となる切り替えをあえて溶け込ませることで、メダリオンの持つ存在感が強く浮き上がる結果に。19 世紀のイギリスで誕生したとされるサドルシューズの元祖はサドル部分と本体が同色だったという一説も踏まえれば、この格式高いルックスにもさらなる説得力が生まれる。

サドルと他を同色・同素材で揃えることで、メダリオンがいっそう際立つデザインに。
リーガル定番のガラスレザーから置き換えた、味わい深いスウェード素材も見どころとなる。オリジナルで染め上げた風合い は、あえて不均一な自然の美を追求。履き続けることによって高まる経年良化への期待値は言うまでもなく、まさしく一生物の相棒に相応しい。

素材が異なるだけで、同じコラボレーションサドルシューズでもこれだけの違いが。
人気作ゆえにカラーバリエーションも豊富で、ブラック単色やグレー×ブラック、グレー× ブラウンのコンビネーションも存 在するが、なかでもこちらのブラウンカラーは色目にこだわった自信作とのこと。当然、メイド・イン・ジャパン。根気強く何度も染め直すことで、理想を追求した。
〈REGAL〉のとびきりの靴 10 選
⑨4つのタッセルで
既成概念を打ち破る。
×〈UNUSED アンユーズド〉の
キルトタッセルローファー
柔らかく情緒豊かなスウェードシューズをお探しなら、こちらのコラボレーションも必見。お相手は、2004 年に創業した 〈UNUSED アンユーズド〉。メンズ・ウィメンズの垣根を超えてユニセックスに展開する、国内屈指の人気ブランドである。


〈UNUSED アンユーズド〉とのコラボレーションでは、挑戦的タッセルローファーを実現。
デザイナーは非公開という匿名性もファッションアディクトの好奇心をくすぐる一方で、「観念的な枠を取り去り、解体し、存在の新たな形の追及提案」とのコンセプトも実に刺激的。リーガルとともに作り上げた「Quilttasselloafer キルトタッセルローファー」にも、持ち前の挑戦的マインドが如実に反映されている。

キルト上には、通常の倍量となる4つのタッセルをあしらう。
モカシン部分を丁寧な手縫いで、ソールをマッケイ製法で仕上げるなど伝統的モカシンシューズの製法を踏まえつつ、キルト上には4つものタッセルを配置。大胆かつ贅沢に、タッセルローファーの概念を打ち破っていく。

インソールのダブルネーム。伝統と革新の同居を物語る。
とはいえ、上質なスウェードの質感を損なわないようあくまで上品にまとめ、かたやローファーの気軽さをも損なわないコンテンポラリーデザインに仕立てた。この硬軟織り交ぜたバランス感覚が白眉だ。インソールに記されたダブルロゴが物語るように、リーガル特有の履きやすさが土台となる点もデイリーユースを促進するだろう。
〈REGAL〉のとびきりの靴 10 選
⑩エレガンスとタフネスが見事に共存。
×〈nonnative ノンネイティブ〉の
ドゥエラーシューウィングチップ
トリを飾るのは、「属さない、固有されない」という意味の名前を持つ超人気ブランドとの合作だ。1999 年の立ち上げ以降、実に 20 年以上にわたって日本のファッションシーンを牽引する〈nonnative ノンネイティブ〉。創設者であるサーフェン智氏(一色紗英さんの夫)からバトンを受け継いだ現デザイナー藤井隆行氏もまた、リーガルのモノづくりに魅了されるひとりなのだ。


「DWELLER SHOE WING TIP ドゥエラーシューウィンングチップ」は、〈nonnative ノンネイティブ〉らしい味付けが見どころに。
ゆえに、リーガルとノンネイティブはこれまで幾度となくコラボレーションモデルを発表。多彩な顔が出揃うなか、こちらの 「DWELLER SHOE WING TIP ドゥエラーシューウィンングチップ」は 2016 年に発表され、今なおリユースマーケットで抜群の存在感を放っている。

エレガントなウイングチップとワイルドなビブラムソールを巧みに組み合わせ、GORE-TEX のライニングでダメ押し。
丸みを帯びたトゥの形状はリーガルの持つアーカイブデザインから掘り起こされたもので、いわゆるミリタリーラストに該当。 やや幅広の設計は足馴染みが良く、低めの重心によりトレンドのワイドパンツとのバランスも取りやすい。ヒールカウンターまで伸びるウィングチップの造形は美しく、ドレッシーなムードを増長。半面、ソールには武骨な「vibram ビブラム」社製タンクソールを抜擢するというアレンジが、地に足のついた大人カジュアルを体現する。

両ブランドのロゴは、グレーのインソールに刻印。
さらには、ライニングの素材には両ブランドのコラボレーションに欠かせない機能素材「GORE-TEX®」を採用。防水と透湿を兼ね備え、多少の雨を気にすることなく履ける革靴。スニーカー派も納得の心地良き出来栄えに、感嘆せずにはいられない。

リーガルを見直す。質実剛健、不朽不滅の名ブランドにとって、それは少なからずお節介とも捉えられるテーマだったかもしれない。ただし、不安定な円相場や揺らぐ治安が取りざたされる今の日本でこそ、その魅力は再認識されるべきだとも感じる。
“セカイに誇るニッポンのモノ”は、残念ながらその数を減らしているようだ。だからこそ我々は、本物を正しく理解しなければいけない。最後に、ご存知ストリートのゴッドファーザー藤原ヒロシ氏によるリーガルのデザートブーツ評を記しておく。
「デザートブーツといえば、やっぱりリーガルでしょう。クラークスが一番という人もいるが、僕はソールの大きさといい、スウェードのラフさといい、リーガルのが一番好きです」
ここから先は、それぞれの判断に委ねたい。願わくばその歩みに、本質が伴わんことを。

