FASHION

魅惑のユーロヴィンテージの世界。 いまが狙い目、フレンチワークの魅力とは?定番人気【ボトム】篇

本物の魅力は時代を経てなお色褪せないばかりか、さらなる付加価値まで備える。人はそれをヴィンテージと呼び、減ることはあっても増えない必然的事実が、プレミアムな高揚を呼び込むーー。

…なんて吐露から端を発した前回の【ジャケット】編から繋いだ“フレンチワーク”というお題のバトン。これを受け、本稿では名作揃いのジャケットたちに勝るとも劣らない、6つのアイテムを取り挙げて【ボトム】篇とする。

憧れの彼の地・フランスで、ハタラクヒトたちに愛された個性豊かなワークパンツを旗印に起こす七月ならぬ三月革命。インクブルーが、モールスキンが、コーデュロイが、さらなるユーロヴィンテージの深みへ貴君を誘う。

フレンチワークの魅力①
「フレンチワークパンツ」
よく見るワークな中にも、
しっかりと感じるフランスみ

フレンチワークと聞いた時、誰しもが脳裏に“ある色”を思い浮かべることだろう。

紺よりも明るく、インクの色にも似た深く豊かな青=インクブルー。この色に染め上げられたのがモールスキン生地の「フレンチワークパンツ」だ。ジャケット篇で取り挙げた「フレンチワークジャケット」とともに炭鉱作業者に愛された1本から、本稿を掘り進めていくとしよう。

当時の炭鉱では、共布の「フレンチワークジャケット」とセットアップで着用されていた。

ブランドは1913年、フランスのブルターニュで創業した〈LE MONT ST MICHEL ル・モン・サン=ミシェル〉である。黒×黄の配色が印象的なタグには、フランス西海岸のサン・マロ湾に浮かぶ修道院「モン・サン=ミシェル」が描かれ、三大フレンチワークブランドの一角として認知されている。

フランスを代表する世界遺産「モン・サン=ミシェル」が描かれた内タグ。ただし、ブランド創業当時はまだ世界遺産に認定されていなかった。

先述のように、過酷な炭鉱内で働く男たちをサポートするディテールが随所に散りばめられている点が特徴だ。順に見ていこう。まずはフロントの腰回りから。

ウエストラインに沿って点在するメタルボタンは、サスペンダーを引っ掛けるためのもの。パンツを肩から吊り上げることで、作業中のズレ落ちを防ぐ役割を担う。そこから視線を落としてフロントを見れば、古式ゆかしいボタンフライ仕様。ただし最上段はメタルフックでひとヒネり。実はこれ、フレンチワークパンツの代表的意匠。脱ぎ履きをスムーズにするのと同時に、開閉の際に最も負担がかかる箇所を強化する効果をエンチャント。

フレンチワークパンツ_LE MONT ST MICHEL_ル-モン-サン-ミシェル_04

メタル素材のウエストボタンとボタンフライのフック。どちらも強度を高めるために採用された意匠。

ベルトループの方が便利に思えるが、これにもちゃんと理と利がある。腹部を無駄に締め付けることがないため着用者の体型を問わず、もし炭鉱内で崩落などの事故が起きた際にもサスベンダーを引っ張れば救出もしやすい。…後者はあくまで想像だが、そんな理由があったのではないだろうか。いや、単純に創業当時はまだベルトが一般的ではなかったからかもしれない。どちらにしろ、クラシカルな雰囲気作りの一翼を担っていることは間違いない。

ちなみに本モデルのウエストサイズはM/58表記。通常ならばフランスの58はXXXLに相当する。誤表記ではなく、最初からこのサイズ設計であったとすれば、様々な体型の労働者をカバーするためだった可能性もある。正解は…分からない。けどそこを読み解くのもまた、情報の少ないユーロヴィンテージの面白さよ。

他にも見どころは尽きない。サイドは脇部分のステッチに沿うように、ストレートかつ斜めに設計されたポケットが。一般的なデニムパンツの湾曲したスクープポケットとはひと味違い、自然と腕を下した際に手を入れやすく、炭鉱作業で多く発生する起居による屈伸動作の際にポケットの内容物を落とす心配もない。

フレンチワークパンツ_LE MONT ST MICHEL_ル-モン-サン-ミシェル_05

写真では判断し難しいが、実は座った際にポケット口が開かないよう、わずかに斜めに設計されている。

そしてサスペンダーボタンと同じくウエストサイズ問題の解決策として設置された「シンチバッグ」という名のアジャスターストラップ。ストラップを固定する針のように尖った金具を生地に刺して使用するため、生地をも痛めてしまう諸刃の剣。されどクラシカルなワークウェアに欠かせない景色の一つなので、憤ることなく、そこはひとつよしなに。

フレンチワークパンツ_LE MONT ST MICHEL_ル-モン-サン-ミシェル_06

注目すべきはシンチバックだけではない。ウエスト中央にあるVカットも面白い。これにより、座ったり前屈みになった際に掛かる負荷を分散する効果が見込める。

かようにどのディテールを見ても、実にシンプルそのもの。だからこそワークウェアに備えられた意味を持つものばかり。とはいえ無骨一辺倒ではないのがフレンチワーク。シンチバックに刻印された“PARIS”の文字に、パリジャンの洒脱なセンスを垣間見る。

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フレンチワークの魅力②
履き込むほどに…魅せるエイジング

近年、古着業界で頻繁に耳にするようになった“フェード”というワード。経年変化による褪色を指し、要は色落ち。これを“古着ならでは”の売り文句とするショップが増えているのだ。そんな世の流れにもアジャストするのがこちら。芸術的なまでのフェードで魅了する「フレンチワークパンツ」のお目見え。

自然の造形ならぬ、炭鉱が生んだ“労働の美”。意図して作れるものではない偶然性も魅力だ。

色落ちと風合いも相まって一見デニムのようにも見えるが、やっぱり生地はモールスキン。ウエストに入ったタックにより生まれた立体感のある濃淡。モモ部分の付け根辺りに浮かび上がる穿きジワ、通称“ヒゲ”。そしてヒザ裏に出来た蜂の巣状の色落ち、通称“ハチノス”。経年変化によるこれら現象を一枚のキャンバスに塗り重ねることで、質実剛健な労働着が美しい芸術作品へと変化を遂げる。

フレンチワークパンツ_LE MONT ST MICHEL_ル-モン-サン-ミシェル_08

その色落ち具合と質感は、一見ヴィンテージデニムにも見える。

作者(ブランド)は〈LE COPAIN DU CENTRE ル・コパン・デュ・サントル〉。どこでいつ生まれたかのか謎多きブランドだが「LE COPAIN」は“友達・仲間”、「DU CENTRE」は“中心・中央”を意味するフランス語。「正直なんのこっちゃ」と頭を捻らせたながらも意訳するならば…“仲間の輪の中心”といったところか。日々、労働に明け暮れる炭鉱夫にとって、“ツルハシやスコップと同じく大切なパートナーである”という意が、このブランド名には込められている…と考えるのも、またロマン。

またこの作品には妙なディテールが見受けられる。それがウエスト周りに点在するメタルボタンの跡。サスペンダーを装着する際に用いられるのだが、先述のル・モン・サン=ミシェル製ワークパンツと違って、こちらにはベルトループがしっかり存在しているのだからミステリー。

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ウエストライン内側に縫い付けられたブランドタグ。往時の様子を想像させるサビたボタン跡も味わい深い。

しかも現存するメタルボタンの位置は、まさにベルトループの裏。ベルトとサスペンダーを両方使うなんてトンチキな輩はそうそういないだろうから、どちらか一方で対応したに違いない。実用性を求めながらも結果的には不条理。こういった説明しがたいディテールが存在するのもヴィンテージワークウェアならではで、そこを楽しむのもマニアの嗜み。

もっとも印象深いのが、モモからヒザにかけてのパッチワーク。本体と合わせる意思を感じさせない色合いの当て布と、同じく馴染ませる気がない黒糸のステッチ。その素人臭くぎこちない仕上がりからは“破れを塞ぐ”という目的のみが浮かび上がる…なのにえも言われぬ魅力を感じるのだから、ヴィンテージ愛好家という人種は、数寄者以外の何者でもない。

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正直、パッチワークの技術的には稚拙と言わざるをえない。だが、そのリアルさもまた魅力となる。

過酷な労働で流した汗が染み込み、経年変化と補修によって唯一無二の雰囲気を備えた本モデルもまた、元を辿れば、美しいインクブルーだったはずだが、今の姿も美しいことには変わりない。

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「それぞれに、それぞれのストーリーがある」なんて言葉も浮かぶくらい異なる佇まい。みんな違ってみんなイイ。

真っさらな状態から穿き込んで、自分らしくアジ出ししていく過程も楽しいが、すでにアジが出た1本を手に入れて、“どこかの誰かの”ストーリーをともに歩むなんてのも悪くない。結局は、みんな違ってみんなイイ。

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フレンチワークの魅力③
デッドストックから作り上げる
新たなアジわい

フレンチワークの代名詞的素材であるモールスキンの魅力は、濃色のインクブルーであろうと、穿き込まれたフェードであろうと揺らぐことはない。ならばそれ以外の色ならどうだろう? 3本目の「フレンチワークパンツ」はシックな表情のブラックカラー。希少とされているブラックカラーはジャケットのみならず、パンツにも存在するのだ。

イチから育てる楽しさを教えてくれるのが、こんなデッドストックの1本。

タグに記されたブランド名は〈Adolphe Lafont アドルフ・ラフォン〉。1844年、フランスのリヨンで創業した同社は、三大フレンチワークブランドの一つにも数えられる老舗。ゆったりと作られた腰回りから裾にかけて徐々に細くなるテーパードシルエットが描き出す美しい脚線も魅力だが、それ以上に特筆すべきは、状態の良さだろう。

パリッとしたハリ感があるモールスキン生地を裏返すと、破れやヨゴレなども無く、まるで新品のように真っ白な付属タグとステッチの糸抜けもない内タグが。モールスキン続きに「ブルータス、お前もか」と言いかけるも、これさえあれば百人力の値千金。Like a ポパイのホウレンソウってなもんで。

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内タグと付属のタグにも破れやヨゴレ、ステッチ抜けなどが無く状態良好。

さらにお伝えすべき報連相事項は続く。極め付けはウエスト付近に輝くフラッシャーの紙ラベル。当時の流行であろうヘアスタイルでキメたパリジェンヌの横には、フランス語のテキストがレイアウトされており、これが中々に洒落ているから侮れぬ。

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ヴィンテージ市場において、商品価値を左右するのがフラッシャーの有無。

噂によれば、この「Largeot ラルジョ」と名付けられたワークパンツはブランド発足のキッカケのひとつなのだとか。創業者のラフォン氏が、大工だった義理の兄弟のために制作したという。それから180年以上の時を経て、大工のための実用服が令和の世ではファッションになるなんて。当時は思いもよらなかったであろうが、それもまた運命か。

フレンチワークパンツ_Adolphe-Lafont_アドルフ-ラフォン_05

どれも違った良さがある。選びきれないのであれば、計画的にすべて手に入れるのもひとつの手。

先にご覧いただいた2着のインクブルーのモールスキンパンツと並べると、まったく異なる表情を持つブラックカラー。「どれから手に入れようか」と悩むのも分かるが、“どれも手に入れる”という選択肢もアリでは? え、先立つものがない? ご安心を。そんな時は1本目を穿いてしっかり働けばよい。

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フレンチワークの魅力④
「ストライプ ワークパンツ」
違いの秘密は素材。
ストライプが醸し出す上品さ

3本連続、怒涛のモールスキン攻勢でフレンチワークの魅力について触れてきたが、何もモールスキンだけがフレンチワークではなく、それ以外にも“ユーロヴィンテージならでは”の魅力に溢れたボトムスがあることを知っておきたい。それが「ストライプ ワークパンツ」。

素材には主に3種類。コットン、コットンとウールの混紡、ウールが用いられており、素材の質感のみならず醸し出す雰囲気さえも、件のモールスキンとは一線を画す。もちろんそちらに比べれば認知度こそ低いが、れっきとしたフレンチワークパンツの一流派。

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一見するとワークパンツらしからぬ出立ちのストライプ ワークパンツ。しかしその随所に…。

さぞや名のあるブランドと思いきや、タグ欠損でブランドは不明。とはいえ問題はない。名よりも実を取ってこそのワークウェア。働く男たちを支える特徴的ディテールがそこかしこに。生地の柄は当然その筆頭。グレーのベースカラーにスッと引かれたのはブラックのストライプ。太さの異なる線が混合したこれは、俗に“ユーロストライプ”とも称される。

フレンチワークパンツ_ストライプ_03

落ち着いた色味とさりげなく主張するストライプが、アダルトな印象を与える。

ウエスト部分は、サスペンダー用ボタンとベルトループの二段構え。フロントのボタンフライを開けると、内側はポケットのスレキのみというシンプルな一枚仕立て。汗と埃にまみれて働く労働者にとっては、洗ってもすぐ乾くというのは十分アドバンテージ。生地に表裏がないため、誰に対しても柄色を変えることなき正直モノでもある。

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内側のポケット裏。穿き心地よりも乾きやすさに期待したい。

と、ここまでの説明を読んで、「ワークパンツらしからぬ」と思われた貴君らに、しっかりと“らしさ”を感じるディテールも紹介しておかねばならない。それがヒップポケット。

通常、ポケットは左右一対がお約束。だがフレンチワークパンツの世界では片側ひとつ、それも右側のみがお作法。その昔、生産コストを極限まで切り詰めた結果そうなったのだとか。その割には、ちょいと凝った両玉縁仕様というから浮かぶ疑問符。“引いてダメなら足してみよ”かどうかは分からないが、ならばと背面中央部にシンチバッグがドスンと鎮座。このふたつのディテールの相乗効果が、本モデルをワークパンツたらしめていることは間違いない。

フレンチワークパンツ_ストライプ_05

“ワークパンツらしさ”をしっかり感じられるバックスタイル。

名作揃いのフレンチワークの中では目立つ存在ではないかも知れないが、そのおかげでリユースマーケットでのタマ数もまだ期待出来る。プレ値狙いの邪な考えは捨てて、縦縞というのも一計。注目が集まる前に自分に合った一着をキープしておき、シックにフレンチワークを楽しんでみてはいかがだろうか。

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フレンチワークの魅力⑤
「コーデュロイパンツ」
MOTTAINAI精神が息づく
極太ファーマーズパンツ

お次もまた変わり種。太畝のコーデュロイ生地に極太シルエットが際立つ「コーデュロイパンツ」だ。こちらは通称“ファーマーズパンツ”とも呼ばれるように、農場で働く農夫が着用していたとされる。そう言われてみれば、凹凸により保温性を高める効果がある生地表面の畝は、耕された畑の様相にもさも似たり。

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ボテッとしたシルエットと太畝コーデュロイの風合いが、良い意味でイナタさを演出する“ファーマーズパンツ”。

こちらは、先述したブラックのフレンチワークパンツと同じ畑〈アドルフ・ラフォン〉から収穫されたもの。古くから伝統的な絹織物工業や繊維工業により発展してきたリヨン産だけあって、表情豊かな質感と立派なシルエットを併せ持つ。

さて、ここでコーデュロイの語源について一席。通説では、17世紀フランス王朝へ献上された生地をルイ14世が気に入り、召使の制服生地に採用したことで、“畝”を意味する「Corde」と“ルイ14世”を意味する「Roi」から「Corde du Roi」となったとされるが、西イングランド発祥の毛織物「cord + deroy」からとの説も。フレンチワークをお題とする本稿では当然、前者を推す。

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ブランドタグにも注目。当然ながら刺繍タグの方がプリントタグよりも、年代が古いとされる。

本モデルで面白いのが、ワークパンツとして活用されてきたがゆえの痕跡が随所に個性という形で残っている点。例えばフロントのボタンフライ。ボタンの素材や形状が異なるだけでなく、縫い付け糸も違ってチャーミング。これは過去のオーナーたちが、愛着を持ってリペアしつつ穿き続けてきた証左でもある。

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ボタンフライを開けば、チャームポイントのひとつである個性豊かなボタンがお出迎え。

ダメージが著しい裾部分にも見逃せないポイントが。シューズと擦れ合う部分の生地がほつれてこないようにパイピングで縁をカバーしているのだ。表からは見えないため気付きにくいディテールだが、永く愛用するためのさりげない気遣いが感じられる。

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裾部分にはコーデュロイ生地をスレから守るパイピングも。

そして1番の見どころはパンツを裏返すと姿を現わすリペアの数々。色とりどりの生地で当て布された、よく言えば自由、悪く言えば適当なパッチワークと布の強度を高めるために施された刺し子のツープラトン。見た目こそ良くはないが、掛けた手間ヒマはプライスレスな魅力へと変じる。

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これこそ、フランス版の“襤褸(ぼろ)の歴史”。

遠く離れた我が国・日本にも古来より、古くなった着物や布団などを継ぎ接ぎして刺し子を施した襤褸(ぼろ)を大切に使い続ける素晴らしき文化がある。永く残るアイテムには、素材やディテールだけでなく、それを着用する側の“モノを大切にする=MOTTAINAI精神”が息づいているのかも知れない。

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フレンチワークの魅力⑥
「オーバーオール」
アメリカものとは違った良さがある
ワークウェアの代名詞

掘って耕しての本稿も、いよいよ作業終了の鐘が鳴る良き頃合い。最後はワークウェアの代名詞的アイテムである「オーバーオール」で締めるとしよう。その立ち位置はフレンチワークにおいても同様。中でもインクブルーのモールスキン生地は不動の定番だ。ブランドは〈アドルフ・ラフォン〉が三度の登場と相成る。

フレンチワークにおいても、人気のオーバーオール。フランス式に呼ぶならば「サロペット」が正しい。

フレンチワークを謳いながら、呼び名は英語の「オーバーオール」とは是如何に。

胸当て(ビブ)がつき、肩紐で吊って着用するスタイルのボトムスは、産業革命真っ只中の18世紀イギリスを起源とする。当時、工場労働者たちのための実用的な服として誕生した。これが1848年頃から、ゴールドラッシュに沸くアメリカで、一攫千金の野望を抱いた山師や開拓者たちに大流行。片やフランスでは、「Salope」=“汚れた”から転じた「サロペット」の名で、炭鉱夫だけでなく鉄道や建築現場の労働者たちにも着用されていたとか。

となればフランス式に呼ぶべきか。いや、アメカジ世代が多いKnowbrand Magazine読者に合わせて、ここでは馴染み深いオーバーオールの名で通させていただく。

では、細部を見ていくとしよう。まずは特徴的なフロントのビブから…といっても内側のタグから確認。1940年代頃のアイテムに見られる通称“男女タグ”。オーバーオールを着用した男女のキャラクターが描かれた刺繍タグが特徴だ。

フレンチワークパンツ_アドルフ・ラフォン_オーバーオール_03

ビブの内側には、オーバーオールを着用した男女のキャラクターが描かれた刺繍のブランドタグが。

前面には、左右からアクセスしやすいように八の字型に配置されたジップポケットが待ち構える。デザイン性と使いやすさを融合させた機能美は現代のストリートウェアの如く、見る者に強烈なインパクトを与える。

一方の背面ときたらパックリとオープン。交差させた肩紐で吊る“ローバック”スタイルは、背面上部まで生地で覆われる“ハイバック”や“フルバッグ”とは異なる趣きのバックシャン。着方によっては子供っぽく見えがちなオーバーオールを大人が着る際の一助となる。

フレンチワークパンツ_アドルフ・ラフォン_オーバーオール_05

フロントとバックの両方に、特徴的なディテールが存在する。

使いやすく、末広がりで縁起も良い八の字ジップポケットもたまらないが、着脱を容易にするサイドボタン、内容物が落ちづらく設計された縦型ポケットも地味に嬉しい仕掛け。中央部がくぼんだラッカーボタンも、1940年代頃のアドルフ・ラフォン製オーバーオールでは定番なので、この機会に覚えておきたい。

フレンチワークパンツ_アドルフ・ラフォン_オーバーオール_06

着用しやすさを考慮したサイドのボタン仕様。ラッカーボタンが時代を物語る。

かように“らしさ”を語るならば、ヒップポケットについても触れざるを得ない。当然、右側にひとつというフレンチワークのお作法は遵守しつつ、ジップをあしらい、よりワークな出立ちに。そこに金槌を吊り下げるハンマーループが文字通り脇を固める。

フレンチワークパンツ_アドルフ・ラフォン_オーバーオール_07

ジップ付きのヒップポケットの横には、金槌を吊り下げるハンマーループを装備。

当時はこの上からジャケットを羽織る労働者も多かったというから、まさに公私ともに働く男を支える心強きパートナー。肉の付いたやさしい身体でファニーに着こなすのも一興だが、どうせなら贅肉を削ぎ落とし鍛え抜かれた身体で、タフガイの如く着こなしたいものである。

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日々の暮らしに寄り添い、希少性とシンプルデザインの優位性だけでなく、
毎日を楽しく真剣に生きることの素晴らしさを伝える“フレンチワーク”のアイテムたち。
ここまでご覧いただいたように、さり気なくも光るこだわりは我ら日本人の感性にフィットし、その端々にタフなワークマン精神も垣間見せる。この良い意味での二面性こそが、長きに渡り人々に愛されている理由なのだろう。

好奇心という名のツルハシを振るなら今。この機会により深く掘り下げてみるのも楽しい。

音の響きは軽妙洒脱、なのに実はディープで情熱的。そう、あのフレンチ・キスのように…。

(→魅惑のユーロヴィンテージの世界。いまが狙い目、フレンチワークの魅力とは?定番人気【ジャケット篇】はこちら)

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