INTERVIEW

2nd STREET × COVEROSS 世界を変革し得る加工サービス「魔法のクリーニング」が作る未来【後編】

“サステナブル”はもはや常識となり、豊かさを追求しながらも地球環境を守っていくことが世界共通の目標となった現代。誰かが着た服や使ったモノがまた別の誰かの元に渡り、社会の中で循環させていくリユースショップは、誰しもが気軽にサステナブルに触れることが出来るもっとも身近な入り口となっている。

だがこの理想的な“モノと人の共存関係”にも問題は生じる。それがリユースゆえの経年変化によるコンディションの差異である。「2nd STREETセカンドストリート」はこの問題に対する新たな取り組みとして、“新時代のスタンダード”となり得るサービスをスタートさせるという。

その名は「魔法のクリ―ニング」。

【前編】に引き続き、この【後編】では同サービスの根幹を担う驚愕の後加工技術「COVEROSS® カバロス」を擁する〈hap株式会社 ハップ株式会社〉ラボラトリーに潜入し、どのような作業が行われているのかをレポート。実際の加工工程を追いつつ、その効果のほどを実証していく。語るテーマは、魔法のクリーニングが目指す未来について。

※「魔法のクリーニング」は、2024年09月30日をもちましてサービスを終了いたしました。

手持ちの衣料品に機能性を付与する後加工サービス
「魔法のクリーニング」のラボラトリーに潜入!

場所は埼玉県羽生市。目的地は、家々と田園が交互に並ぶ、のどかな風景の中に立つ大きな工場。カバロスの研究・開発が行われているラボラトリーはその一角にある。全国各地から送られてきたアイテムは全てここに集められ、オーダーとアイテムの種類に合わせた加工が次々と施されていく。ここからは注文の流れと実作業の様子を見ていこう。

①スマホ・PCでサイト上から申し込み

申し込み後、依頼するアイテムとともに自分の氏名と注文番号を記入したメモを同封し、ラボラトリーに発送。なおその際の送料は元払い(自己負担)になるのであしからず。また、使用されている素材などに不安がある場合は、付いている洗濯表示を確認後、サイト内で可否をチェックするのもお忘れなく。

①検品・料金を確定

ラボラトリーに届いたアイテムの素材や作りを簡単にチェックしていく。この時に汚れやダメージの有無も見ておく。表面に汚れが付着していると薬剤が定着しにくく、十分な加工を施すことができないので、状態によっては一度、精錬(洗濯)を必要とする場合も。以上の確認後、注意事項やサービス内容を最終確認し、本申し込みとなる。ここで問題がなければ納品までしばしのウェイティング。

②機能加工を施す

加工作業はアイテムの計量から始まる。計量が終わったら薬剤を調合する。使用する薬剤は、加工を施すアイテムの重さの約10%。この場合だとアイテムが2.26kgなので、薬剤は230g程度。これを、加工を施すアイテムの総量と同じ重さになるように水で希釈する。薬剤は付与する機能性によって必要なものを使い分けて調合していくのだが、詳しいレシピは門外不出のため、ご勘弁を。

ご覧のように作業自体はアナログだが、その様相はまさにラボラトリー(研究室)。現在は熟練のスタッフが手作業で行なっているが、将来的にはコンピューターに総量と付与機能などを入力することで、自動的に薬剤の調合から加工作業までを行えるようにしていく予定だ。

調合された薬剤を専用容器に流し込んだら、しっかり蓋を閉めてコンプレッサーをセット。ここからいよいよ、業務用洗濯機をカスタムしたランドリーによる加工作業に移る。

フロントドアから伸びる2本のチューブが肝。洗濯槽を回転させながら、このチューブを通してさきほどの専用容器に入った薬剤が高圧で噴射されることで、全体に満遍なく薬剤が付着する仕組みだ。

加工を施すアイテムをすべてランドリーの洗濯槽に入れたら、一度全体を水で濡らす。これは乾いた状態よりも全体が濡れている状態の方が、薬剤が均一に塗布されるため。下準備が済んだら、本格的に加工スタート。ここで使用される水の温度も重要だ。一般的に常温の水よりも温度が高い方が、薬剤も定着しやすいと言われる、温水プールと同じくらいの25℃に設定。ただし水を温めるのにもエネルギーは使われる。ラボラトリーでは太陽光発電を導入しており、 Co2排出量も削減。これもサステナブル的観点から重要なポイント。

10分間回したら、脱水して加工作業は完了。付与する機能によっては脱水NGという場合も。ケース・バイ・ケースで対応出来るのも、少数精鋭ゆえの強み。ちなみに総重量と付与する機能によって回転させる時間も変わる。これに関してはケース・バイ・ケースのため、適切な現場判断が求められる。開発当初は空気圧が弱く、騒音も大きかったが、現在は改良を加えて静音性アップ。システムは日々進化を続けている。

あとは乾燥スペースに移して、しっかりと乾かせば完成。同スペース内の室温は45℃までに設定されており、それ以上の高温では生地に縮みが生じることも。要はなるべく服にストレスを与えないようにすることが肝心だ。これら一連の作業は、現場のリーダーを中心に少数精鋭のスタッフによって行われており、ランドリーは現在3台が稼働中。もし機械トラブルなどで稼働できなくなった時のために、近隣の協力工場にも3台確保済み。これによってオーダー数の増減にもクイックに対応することが可能だ。

加工メニューが「撥水」の場合は、表面組織に薬剤を結合させて、固着させるために熱を加える工程が必要だ。写真のように、衣服がハンガーに吊るされた状態で次々と乾燥マシンに送り込まれる。所要時間は約115℃前後で3分ほど。これによって耐久性が高まり、効果を長持ちさせることが叶う。

②お届け

加工後、指定された送り先へ発送。注文からアイテム到着まで期待に胸を膨らませて仕上がりを待つ時間もまた楽しい。なお、送料は元払い(自己負担)と前述したが、申込金額が10,000円(税込)以上で、アイテム返送時の送料が無料に。複数点をまとめて依頼するというのも手だ。

持ち込んだアイテムに後加工で
「吸水拡散」「撥水」「透け防止」の
3つの機能を付与してみたら……。

作業工程自体が非常にシンプルで、何とも意外だったことだろう。しかしこれには理由がある。カバロスの根幹を担う機能付与のテクノロジーに関しては企業秘密とされている部分が多く、詳細に説明することが叶わないのだ。であるなら、実際に加工を施したアイテムを見せるのが話も早いし、その実力も一目瞭然。というわけでここからは、我々がラボラトリーに持ち込んだリユースアイテムのBefore → Afterと共に、それぞれの機能付与がもたらすメリットについて説明していこう。

【吸水拡散 Breeze Plus】

Tシャツなど直接肌に触れるアイテムにおける、何よりの重要事項が快適性。着ていて不快感を感じるようでは長く着続けることも難しい、そこで一年を通して日常生活における快適性を考えて開発された快適多機能性がこちら。

メインは、汗を吸った生地が肌に触れた際のベタつきを防ぐ吸水拡散性。これに加えて、抗菌性、防臭・消臭性、UVカット、弱冷感性などを副次機能として付与。アイテムとしてはTシャツやインナーといったアイテムに最適だ。レイヤードの機会が増えるこれからの時期、さらなる活躍が見込めよう。

<Case.ピンクTシャツ>

くすみ系カラーは特に濡れ染みが目立ってしまいやすく、なんとなく不潔なイメージを持たれたりも…。

濡らした瞬間に、生地がスッと水分を吸収。同時に拡散されることで、染みが薄く目立ちにくくなった。

【撥水 Proof

日常生活を送るなかで、あったら便利と感じる機能性の最たるものが「撥水」ではないだろうか。大切な服の寿命を伸ばすために環境に配慮したC-0撥水(フッ素不使用)加工を生地表面に施すことで、水や汚れなどを弾く機能が得られる。副次機能としては撥油、防汚、抗花粉など。

さらに撥水性の強度や風合い、柔らかさなどの調整も可能。家庭洗濯10回程度の耐洗濯性を備えており、洗濯を繰り返して撥水性が弱まったらアイロンをかけるだけで回復。基本的にアウター向きといえる。※元々、撥水加工などの加工済みの素材を使っている場合は、注意が必要だ。

<Case.フーデッドジャケット>

薄く軽いコットン素材のジャケットはライトアウターとしては優秀なれど、濡れたら台無し。さすがに撥水加工は難しいかも……。

落とした水滴が球状をキープしたまま表面をコロコロ。コットン素材とは思えない撥水性に驚くばかり。

【透け防止 Anti Sheer】

連日の猛暑日に辟易とさせられた今夏。どうしても気になるのが、汗をかくことによる生地の透け。また生地自体が薄手の場合、下着の色が透けてしまうのも気恥ずかしい。これは、光が生地を通過して、生地の下にあるものを写し出してしまうのが原因。

この「透け防止」では、光の通過を防ぎつつ、生地本体の柔軟性や通気性、耐洗濯性は維持するために独自の加工工程を開発。副次機能として汗染み軽減と遮熱も備える。また、透け防性の濃度や柔らかさなどの調整も可能としている点も大きい。※白い服にのみ加工が可能。

<Case.白Tシャツ>

何度も洗濯を繰り返す内に生地自体も薄くなり、汗で濡れた途端に肌が透けてしまって恥ずかしい……。

生地自体の厚さは変わってないのに、透け感は大違い。これなら1枚で着てもサマになるだろう。

<Case.白パンツ>

クリーンな印象を与える白パンツだが、下着の色が透けてしまい恥ずかしい思いをした人も多いはず。

透け防止のために二重になったインナー部分が透けていたのだが、Afterでは全く気にならない。

サステナブルをもっと身近に感じて、
地球と人類の共存共栄について考えるきっかけに

いかがだろうか?3つの加工が施された各種アイテムを実際に手に取った際に驚かされるのが、その効果の高さである。機能性を付与することにより“新たな価値を生み出す”という看板もまさに偽り無し。そんな魔法のクリ―ニングがもたらす未来、そして今後の展望とは。ハップ株式会社のCEOを務める鈴木 素氏が語った。

–魔法のクリーニングという新たなサービスは、ファッション業界にどういった変化をもたらすと鈴木さんはお考えでしょうか?

鈴木:色々なきっかけ作りになると考えています。これまでファッション業界から生み出されるモノの多くが大量生産・大量廃棄され、これによる地球環境への影響が大きな社会問題となっていました。そんななかにあって“リユース”は環境負荷がもっとも少ない選択肢と言えます。これに魔法のクリーニングという機能付与サービスを組み合わせることで、お気に入りの服を長く快適に楽しめるだけでなく、本来なら捨てられる運命にあった服に新たな可能性を見出すことも可能となります。こうした一連のアクションがファッション業界、ひいては地球と人間の共存共栄について考えるきっかけになったらいいなと思っています。

―使い捨てではない服との付き合い方が、より身近になりますよね。この魔法のクリーニングをサステナブル的観点から見るといかがでしょうか?

鈴木:加工時の洗濯・すすぎといった工程で使用される水や薬剤の使用量が従来よりも少なく、かつ排水自体も非常に少ないので、結果的に電力消費やco2削減にも繋がります。ファッション業界全体で見るとまだまだ小さな部分ではありますが、我々、人類全体が考えて行動していかないと世の中は変わらないので、その変わるきっかけになれたらなと期待しています。

―サービスとしての今後の展望を教えてください。

鈴木:システム面に関していえば、さらに使いやすく改良していけたらと考えています。そして将来的には、魔法のクリーニングのサービスをその場で提供できるランドリーカーを開発し、全国各地をまわる移動式のポップアップが実現出来たら、すごく面白いんじゃないかなと。この魔法のクリーニングがもっと身近なものとして、皆さんのライフスタイルに溶け込んでいったらいいなと思っています。

定められた運命を変革し得る力は、前へと踏み出すその一歩から生まれる。

服を愛する人々のために、サステナブルな世の中のために、そして何より次の世代のために。

セカンドストリートとハップ株式会社が手を取りつつ提供する機能性付与サービス「魔法のクリーニング」によって開かれるのは、新たなリユースの可能性。社会のなかで循環していく服と受け継がれる想いに、幸せの魔法をかけて。

さぁ、歩み出そう。ランドリーのドアを開けたその先に広がる、素晴らしき未来へ。

(→【前編】はこちら)

※「魔法のクリーニング」は、2024年09月30日をもちましてサービスを終了いたしました。

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