2nd STREET × COVEROSS 世界を変革し得る加工サービス「魔法のクリーニング」が作る未来【前編】
今や、誰もが知るキーワード“サステナブル”。アパレル産業でも環境負荷の少ない素材や作業工程の採用、労働者の賃金問題といった、これまで累積してきた負の遺産への警鐘を鳴らし、持続性に配慮された生産背景にシフトするブランドが急増。豊かさを追求しながらも地球環境を守っていくことが、世界共通の目標となった。これは規模を増し続けるリユース市場においてもそう。誰かが着た服が、また別の誰かの元に渡り、社会の中で循環していく。
今回のテーマは、この理想的なモノと人の共存関係において生じる“とある問題”を解決し、新時代のスタンダードとなり得る「2nd STREETセカンドストリート」の新たなサービスについて。
※「魔法のクリーニング」は、2024年09月30日をもちましてサービスを終了いたしました。
独自技術により新たな価値を生み出す
機能付与サービス「魔法のクリーニング」とは?
二次流通という性質上、プロパーでの販売時に比べ、どうしても経年変化によるコンディションの差異が生まれてしまうのが、リユース品の宿命。だが秦の始皇帝が追い求めた不老不死の仙薬のように、その宿命に抗い経年変化により失われた輝きを復活させ、より長く快適に着るための魔法が存在するならば…。そう考えていたセカンドストリートが、運命の如く巡り合った驚愕の後加工技術。その名は「COVEROSS®︎ カバロス」。
カバロスの誕生は2016年。〈hap株式会社 ハップ株式会社〉が10年の歳月をかけて開発に成功させた、最新テクノロジーによる環境配慮快適性多機能素材とそれを用いたアパレルシリーズ、そしてそれらに使われた技術を利用して、あらゆる素材に機能性を付与する後加工技術。これらの総称を指す。最大の目的は、服の持つあらゆる可能性を引き出し、愛着のある服を、より快適に大切に着続けられるようにすること。
さて“機能性を付与する”と簡単に述べたのが、どういった原理なのだろうか。聞けば、基本的にはプリントのように素材の表層に後加工を施すものだという。カバロス第一世代では生地の表側に撥水、裏側に吸水拡散と相反する機能性を持たせることに成功。その後、第二世代となる「COVEROSS®WIZZARD カバロスウィザード」では、水と光で汚れを分解する光触媒機能に銀触媒機能などを組み合わせることで、1枚の生地に10種類(「吸収拡散」「接触冷感」「UVカット」「透け防止」「汗染み軽減」「抗菌・防臭」「遮熱」「抗花粉」「セルフクリーンニング」「弱酸性」)にも及ぶ機能を付与させることが可能となった。これこそが世界を見渡しても同社にしか作り得ない独自技術の結晶。
この先進技術を応用して、ハップ株式会社がセカンドストリートと共に創り上げたto C向けの機能付与サービスが「COVEROSS LAUNDRY(カバロスランドリー)」であり、セカンドストリートサイドでは「魔法のクリーニング」の名称で提供される。同サービスでは先述した10の機能のなかから、汎用性が高く需要も多い「透け防止」「吸水速乾」「撥水」の3つをチョイス。それぞれに「透け防止」…汗染み軽減・遮熱、「吸水拡散」…消臭・抗菌防臭・UVカット、「撥水」…撥油・防汚・抗花粉といった複合機能を付与出来るようにチューニングすることで、他にはない独自のサービスとして昇華させている。
「機能性を後から付与することで、
服に関する様々な悩みを解決できたら」
これが発想の原点にして革新的技術の出発点。
ここからは、魔法のクリーニングの根幹をなす技術、カバロスを開発したハップ株式会社のCEOを務める鈴木 素氏と、POP UPや様々な企業とのタイアップを手掛けてきた、セカンドストリート事業課アライアンス担当の井澤拓也の対話の中から、新時代のサービスを紐解いていくとしよう。

右:井澤 拓也(いざわ たくや) ●学生時代からのアルバイトを経て、セカンドストリートに社員として入社。その後、店長・エリアマネージャー、商材のスペシャリストであるストアディレクターを歴任後、アライアンス担当として様々な企業との協業を手掛ける。
左:鈴木 素(すずき もと) ●hap株式会社CEO。世界初の快適多機能性素材「COVEROSS®シリーズ」を手掛ける他、オリジナルアパレルブランドの展開、ファッションの提案・企画・生産管理も行う。第11回「技術経営イノベーション大賞」において内閣総理大臣賞受賞。
―そもそもカバロスは、どういったキッカケから開発がスタートしたんでしょうか?
鈴木:「自分自身も含め、家族や周りの大切な人たちが出来るだけ日々を快適に過ごせるようにするためには?」と考えたのが開発のキッカケです。例えば、誰もが着ているTシャツ1つとっても“汗染みが目立つ”“内側が蒸れる”“汚れが付く”“臭いが気になる”など悩みは尽きないもの。こういった様々な悩みを解決する機能性を後から付与できたら便利なんじゃないか。これが発想の原点にあります。また、企業向けとして定番的な機能でも10種類以上がラインアップされており、それらを自由に組み合わせることも可能です。
―なるほど。井澤さんは、どういった経緯からカバロスの存在を知りましたか?
井澤:当社の別部署から「面白い試みを行なっている会社がある」と教えてもらったのが、最初の出会いでした。そこから詳細に調べていくうちに、我々が広めようとしている“モノを長く大切に使うためのリユース”という文化を、より明確に伝える方法として、カバロスという技術がこれ以上なく打ってつけなのではと思って、本格的に話を進めさせてもらいました。
鈴木:ファッション業界が色んな観点から、環境負荷が大きい産業と言われているなかで、僕らのような製造側と販売を担うセカストさん側。その言わば川上と川下で協業して何かをやっていきたいという気持ちをお互い持っていたこともあって、打ち合わせを重ねるうちに割と自然の流れでスタートしましたよね。
―リユースショップは他にもあるなかで、セカンドストリートをパートナーに選んだ理由とは?
鈴木:最初に井澤さんとお会いして色々な話をするなかで、未来を担う次の世代に対して“大人が今やるべきことを真剣に取り組んでいる”というビジョンや理念を強く感じたのが大きかったですね。僕自身、アパレル産業に携わる企業人の1人として、これまでの使い捨てを前提に置いたファッション文化をちょっとずつでも変えていきたいという思いがあって。その社会変革を一緒に進めていけるのは、業界No.1で世界中に店舗を展開し、意識の高い層のみならず一般の人々にまで行動変容を促すことの出来るセカストさんしかないなと。こうして一緒にやらせていただけることに、非常に意義があると感じています。
井澤:我々の思いがしっかり伝わっているということを今日改めて感じることが出来て嬉しい気持ちでいっぱいです。鈴木さんが仰るように、「リユースショップを利用する人=環境意識やリテラシーが高い」というわけではなく、安くて良いものを探しに来る方、発売当時欲しかったけど手に入らなかったものを探しに来る方など様々な方が当社を利用されます。こちらのサービスを利用いただきたい気持ちもありますが、リユースショップを利用する、その行為だけでも環境に優しい行動であり、サステナブルについて考える1つのキッカケにもなるのかなと思っています。
―こうしてセカンドストリートとカバロスによる協業サービスとして誕生したのが「魔法のクリーニング」。既存のカバロスとはどう違うんでしょうか?
鈴木:一言で言うならば、皆さんが日頃着ている服に色々な機能を付与するサービスになります。長く大切に使うためにはデザインだけでなく、着心地などの快適性も必要ですよね。車をメンテナンスしたり、スマホをバージョンアップしたりするように、服というモノ自体の価値を向上させるというものです。
―提供されるサービスは「Anti Sheer=透け防止」「Breeze Plus=吸水拡散」「Proof=撥水」の3種類。これらの機能の選定はどちらからの提案でしょうか?
鈴木:これも一緒に考えていったという感じですね。カバロスの根幹にあるのが快適性の追求ですので、色々な機能性を複合的に付与する際に“分かりやすく効果が伝わる”というのは非常に重要です。そこで「撥水」「吸水拡散」、そして業界的にも目新しさのある「透け防止」の3つからスタートとする運びとなりました。
井澤:そもそもが“リユース品に加工を施すことでお気に入りのモノを長く使えるようにする”というサービス自体かなり画期的ですよね。なかでも個人的に驚いたのが、透け防止。これって本当にすごい技術じゃないですか。正直、「なぜ透けなくなるんだろう?」と不思議でしょうがない(笑)。
鈴木:酸化チタンという鉱物を使用するのですが、その技術自体は昔から存在しているものなんですよね。ただ、服に付着させると肌触りが硬くなったり、通気性が悪くなったり快適性が損なわれるし、生地へのダメージも大きい。このようにデメリットも多いので量産が難しかった技術を、家庭で洗濯しても落ちにくく、かつ安定したサービスとして提供できるようになったのが大きいです。また製品に後加工することで効果のレベルを変えることも可能。より透けにくくするとか汚れにくくするなど複合的な機能付与が出来るというメリットもあります。
井澤:なるほど。個人的に撥水は一度試してみたいですね。僕自身、キャンプやランニングを趣味としていますが、だからといってアウトドアブランドやスポーツブランドの高機能ウェアを着るのではなく、普段から愛用しているお気に入りの服に便利な機能をプラス出来たら便利だなと感じました。
―サービスの提供はどういった形で行われるのでしょうか?
井澤:店舗でお受けするのではなく、セカンドストリートの公式ウェブサイトからオーダーいただく形になります。製品の後加工サービスでいえば、裾上げやリペアが一般的ですが、この魔法のクリーニングは想像の範疇を超えてくる未知のサービスといえます。こういった未知の体験を発信し、文化として成熟させていけたらなと。
―セカンドストリートとしては、京都紋付との協業で「黒の再生」という黒染めサービスも行ってきました。今回の魔法のクリーニングもまた新たなチャレンジというわけですね。
井澤:仰る通り。おかげ様で黒の再生に関しては、黒染めが一般層に周知される1つのきっかけになったのではないかと捉えており、この魔法のクリーニングも多くの人々にとっての”選択の一つ”になることを大いに期待しています。今後は加工メニューやお直しなどの付随するサービスの追加も検討しながら、より多くの方に、長く愛用いただける商品をお客様に届けられるのではないかと考えています。
―それもハップという心強いパートナーがあってこそですね。
井澤:我々には全国に800以上の店舗があり、売買を通じてリユース品を世の中に広く循環させていけるという強みがあります。ハップさんもまた今後もこういった画期的な技術の開発やサービスを展開されていくとのことなので、これからもお互いの強みを活かしながら、ともに新たな文化の礎を作っていけたらと思っています。そしてこの魔法のクリーニングというサービスを通じて、改めてリユース業界が進めている環境負荷への取り組みを、皆さんに知ってもらえればと願っています。
サステナブルとは、社会や他者から強要される足枷ではない。ユーザー1人1人が自主的にアクションを起こすことで心の変革を促し、明るい未来へと導くパスポートである。
【後編】では、我々が持ち込んだ衣類にハップのラボラトリーで実際に加工を施してもらう様子をリポート。Before & Afterとともに魔法のクリーニングの実力、そしてこの画期的な技術が世界にどんな影響をもたらすのか。その未知の可能性に迫る。
※「魔法のクリーニング」は、2024年09月30日をもちましてサービスを終了いたしました。