FASHION
Aloha shirt Design Patterns

デザインパターンによるアロハシャツ選びのススメ。

「夏の装い」というべきか、あるいは「夏を装う」というべきか。とにもかくにも照りつける太陽が無条件に似合う「アロハシャツ」の出番である。

たったその一枚を羽織るだけで、鏡に映った姿はいつもの自分とは見違えているはずだし、加えて休日やバカンスにある自身のモチベーションを大いに盛り上げてくれるわけだから、実に魔訶不思議なアイテムだ。

ところでアロハシャツをセレクトする際の基準といえば、なんといっても「柄」であろう。だが柄のモチーフは多く存在し、ひとつひとつを取り上げることは至難の業だ。一方で、柄の配置や構成、テイストというデザインパターンであれば、先人によって分類されている。それを知ることで、己の好みと目の前の選択肢を結び付ける根拠を生み、アロハシャツ選びに深みが増す。つまりデザインパターンによるアロハシャツ選びのススメである。

さて梅雨明けも間近だ。夏の身支度を大急ぎで完遂する際に、アロハシャツも外せないとなれば、今回の『knowbrand magazine』は、ひとつの指南にはなり得るはずだ。

アロハシャツと日本の関わり。

台襟のない一枚襟である「オープンカラー」いわゆる「開襟襟」は、第一ボタンを留めることを前提としない。そんなオープンカラーを有し、植物や風景、人物などの派手な柄がプリントされたレーヨン、シルク、コットンなどの生地で仕立てられたアウターシャツが、一般的に「アロハシャツ」あるいは「ハワイアンシャツ」と呼ばれるシャツの特徴である。

「アロハ」という言葉は「挨拶」の言葉であると同時に、様々な意味や想いが込められているという。「愛」もそのひとつ。すなわちアロハシャツという呼称は、親しみを込めたまさに「愛称」といえるだろう。

アロハシャツの起源について、19世紀後半以降に主にサトウキビ畑や製糖工場の労働者としてハワイに移民した多くの日本人が関わっていたという説がある。日本移民たちが「パラカ」と呼ばれる現地農夫たちのシャツ状の作業着を日本から持参した着物や浴衣地で仕立て直したものがルーツだというのだ。もしそうだとすれば、チェック柄が特徴であったパラカに対し、日本の着物や浴衣で仕立てられたシャツは鮮やかな柄で、とびきり目立ち、ハワイの人々を魅了したことだろう。やがて現地の人々の手によっても、ハワイならではの派手な柄がデザインされた開襟シャツが自然発生的に製造されるようになったとしても不思議ではない。

しかし日本人にとっても貴重な着物をこぞってシャツに仕立て直したのか、という点では大きな疑問も残る説だ。ただし1930年代には日本から輸入した生地でアロハシャツをつくる日系の仕立屋は実在したようであり、アロハシャツと日本の関わりが深かったことは確かなようである。

いずれにしろアロハシャツは、ビビットな柄を最大の特徴としながら、その歴史の中で様々なデザインパターンを生み出し、現在でも多くの人々に愛されているのだ。

アロハの王道。
-ALL OVER PATTERN- オールオーバー パターン

アロハシャツの、デザインパターンの分類を知る手始めは、やはり王道からであろう。

無造作のごとく組まれ模様やデザインが全面に繰り返し表現された柄は「ALL OVER PATTERN オールオーバー パターン」といわれている。規則性のない柄がゆえ、生地の裁断と縫製もしやすく、生地を無駄にすることも少ないとあって大量生産に向いている。大量生産されるということは、つまりはアロハシャツの普及に大きく貢献したともいえると同時に、もっとも王道的なパターンだといえるのだ。

「アロハシャツ」の典型「ALL OVER PATTERN」

ハワイの景色をコラージュしたものや、人物が登場することが多い

王道のスピンオフ。
-BORDER PATTERN- ボーダー パターン

縦方向に柄が配されたデザインは、「BORDER PATTERN ボーダー パターン」といわれており、オールオーバー パターンのスピンオフ的な柄である。このパターンで多くモチーフとして用いられるのはハワイならではの植物だ。よってトロピカルな南国の雰囲気で夏気分をぐっと盛り上げたいならば、もってこいのパターンといえるだろう。

「BORDER PATTERN」

植物をモチーフにすることが多く、これは「キワタ」という植物がモチーフ

絵画のごとし。
-HORIZONTAL PATTERN- ホリゾンタル パターン

ご承知の通り、空と海が接する水平線(HORIZON)は、構図として美しく絵になりやすい。「HORIZONTAL PATTERN ホリゾンタル パターン」は、まさしく一枚の絵画のごとき仕上がりとなる。

「HORIZONTAL PATTERN」

水平線上の景色を眺めるかのような絵柄が特徴

時にアロハシャツは「着るアート」と称されることがある。一枚絵としての落ち着きと美しさを兼ね備えたホリゾンタル パターンこそが、その由縁なのかもしれない。

表裏の対比の魅力。
-BACK PANEL PATTERN- バックパネル パターン

一枚絵という点では、先のホリゾンタルパターンと共通するが、インパクトという意味では「BACK PANEL PATTERN バックパネル パターン」の方が上かもしれない。比較的淡泊なフロントにくらべ、バックはそれとは対照的に迫力に満ちた一枚絵が描かれている。表と裏のこの対比こそがバックパネル パターンの魅力といえよう。

「BACK PANEL PATTERN」

前面と対照的に背面のプリントのインパクト大

なおホリゾンタル、バックパネルの両パターンは、一枚絵をボディに使用することから、生地へのプリント、裁断において無駄となる部分も多い。裏を返せば総柄であるオールオーバーパターンに比べ贅沢な一枚といえるのだ。

ノスタルジックなリアリティ。
-PICTURE PRINT- ピクチャープリント

とことんこだわった一着を、とお考えであれば、柄のプリント技法も見過ごせないポイントのひとつとなり得る。いまのご時世様々な技術によって、鮮明なフォトプリントも簡単にできてしまう。一方で、細かい穴を打ちながら原版となる写真をなぞって起した型に色を重ね刷りすることで、リアリティある写真風の印刷を実現するのが「網点(あみてん)プリント」だ。この写真を転写する技術が確立される以前の古い技法で刷られたアロハシャツは「PICTURE PRINT ピクチャープリント」というタイプに分類され、ノスタルジックで独特な佇まいが魅力なのである。

「PICTURE PRINT」

「網点プリント」で表現されるとどこか懐かしい雰囲気が漂う

歴史的相性の良さ。
-ORIENTAL DESIGN- オリエンタルデザイン

日本人が、アメリカやイギリスといった欧米の文化やファッションにどうしようもなく憧れるのと同じように、西洋の人々からすると東洋の文化やスタイルをモチーフとした「ORIENTAL DESIGNオリエンタルデザイン」は、エキゾチックで魅力的に映るのだろう。

「ORIENTAL DESIGN」

中でも、アロハシャツにおいては、日本画や和柄がデザインされたものは多く、相性も抜群である。それはアロハシャツのルーツに、日本移民が大きく関わっていたからなのかもしれない。だとすればアロハシャツに和柄という組み合わせが醸す雰囲気は、もはや歴史が織り成すロマンともいっても過言ではなかろう。

錦鯉が色鮮やかにプリントされている

伝統的かつ代表的な柄の配置やテイストといったデザインパターンの違いからアロハシャツを選ぶというのは正攻法である訳だが、少し違った文脈からチョイスするという冒険もおもしろい。

変わり種という選択。

リゾートウエアのブランドとして1956年にホノルルで創業した〈TORI RICHARD トリ リチャード〉が1970年代から製造を開始したアロハシャツは、その上質なプリントと製法から高級リゾートシャツとして扱われている。60年以上の歴史を持つこの老舗ブランドは、意外な企業とコラボレーションしている。アメリカを代表するモーターサイクルメーカーの〈HARLEY DAVIDSON ハーレーダビットソン〉だ。

〈TORI RICHARD〉×〈HARLEY DAVIDSON〉

武骨なハーレーダビットソンと繊細で確かなつくりの老舗リゾートウェアブランドという異色の組み合わせではあるが、不思議と違和感がない。ハーレーにもアロハシャツを羽織るビーチにも自由な解放感があるからだろうか。こうした「変わり種」を探し出してあえて選択するとういうのも、なんとも夏らしく愉快ではないだろうか。

複雑な絵柄ながら、胸ポケットもボディとしっかり柄合わせされている

アウトドア発の正統派アロハシャツ。

見事なオールオーバーパターンのアロハシャツ。製造したのは、1973年自身も登山家でありサーファーでもあるイヴォン・シュイナードによって設立されたアウトドア界を代表するブランド、ご存知〈patagonia パタゴニア〉である。(→関連する記事はこちら)

パタゴニアのつくりだすアロハシャツは、〈pataloha パタロハ〉というチャーミングな名称がつけられている。だがその実、それが目指すのは古典的で尊厳があり、印象主義的な美しさをもった正統派のアロハシャツだ。

〈patagonia〉社製のアロハシャツ「pataloha」。

2004年製モデル。2003年夏から登場のリミテッド エディションでは、最高品質のオーガニックコットンを使用

毎年のように異なるデザインで発表され、その本物の風格も手伝いコレクターズアイテムとしても人気のパタロハ。デビューは、1986年と30年以上の歴史をもつ。だが実際には1970年代パタゴニアの前身であった「シュイナード・イクイップメント社」の頃よりアロハシャツは製造されていたというから驚きである。登山とともにサーフィンをこよなく愛するイヴォン・シュイナードだけに、アロハシャツへの思いも強かったということだろう。

男が惚れるアロハシャツ。

ある種のクセの強さは、時としてその味を知ってしまった者を、中毒性を帯びた魅力で夢中にさせてしまうことがある。その主義主張や世界観の一貫性、世の潮流に媚びず、我が道を行くものづくりの姿勢において日本発のブランド〈WACKO MARIA ワコマリア〉は、そのクセの強さも含めて群を抜いた存在ではないだろうか。

ワコマリアは、元プロサッカー選手であった森敦彦と石塚啓次によって2005年に設立されたブランドである。クリエイションの根底には常に音楽があり、自分たちの実生活での経験や刺激を反映しながら表現されたアイテムからは、いくばくかの危なっかしさと、そこはかとないセクシーさをともなった「大人の遊び」を感じる。

アロハシャツは、こと日本では危険な香りを漂わすアイテムとも見られがちである。したがってワコマリアの世界観を表現する場としても欠かせないのだろう。実際「天国東京アロハ祭り」というイベントを行うほど同ブランドにとっては重要な存在となっている。

〈WACKO MARIA〉の中でもアロハシャツの人気は高い

2014年のFIFFAワールドカップ ブラジル大会を記念した一枚で使用されたブラジルをストレートに表現されたオリジナルテキスタイル

「アレ、ブレ、ボケ」と称される荒々しい表現が特徴の日本を代表する写真家 森山大道の作品とコラボレーションした2018年モデル

独特なアプローチながらも見事に仕立て上げた王道的アロハシャツや、写真界の巨匠とのコラボレーションによって表現されたエロティックな世界観。潔いほどに筋の通ったブレないモノづくり、その姿勢こそがワコマリアの真骨頂。そこに男たちは惚れるのだ。

伝統的パターンで選ぶもよし、個性派の一枚にこだわり抜くもよし。アロハシャツ選びは楽しい。

だが日本でファッションとしてのアロハシャツを純粋に楽しむとなれば、それは海の似合う7月と8月が最適であって実に短いといえる。むしろ短いからこそ、夏になれば無性にアロハシャツを着たいと思うのだろうか。またはアロハシャツの出自に大きくかかわっている日本人であるがゆえに、DNAレベルで欲するからか。

いや実は大した理由などなくて、強烈な日差しや入道雲、うだるような暑さと碧い海、そんな条件下で、淡く刺激的でスリリングなひと時に焦がれるとき、我々はおのずと南国生まれのアロハシャツを羽織りたくなってしまうのではなかろうか。

ならばそれは全部夏のせいだ。グズグズしている暇はない。

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