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割れた器も捨てずにリユース

ものに新しい価値を与える
「金継ぎ」の魅力

器の割れた部分を漆で接着し、金で装飾する日本古来の修復技法である「金継ぎ」が静かなブームとなっています。壊れてしまった器を捨てずに、ふたたび使えるようにする金継ぎは、「リユース」の原点とも言えるのではないでしょうか。
そこで今回は、年間約400個もの器を「金継ぎ」でよみがえらせている、ワレモノ修理プロジェクト「モノ継ぎ」の代表・持永かおりさんに、いま、金継ぎが注目されている理由やその魅力、金継ぎをはじめるきっかけとなったエピソードなど、さまざまなお話を伺いました。
家具や衣類など、リユース品を暮らしに上手く取り入れている持永さんは、セカンドストリートにもよく行かれるのだとか。持永さんのリユース活用法もあわせて教えていただきました。(2018年8月8日作成)

想いがあって捨てられないものを
よみがえらせる金継ぎの技術

そもそも金継ぎとは、どのような技術なのでしょうか?

陶器などの壊れた器を漆で修理したあとに金や銀で装飾する、日本古来より続くリペア技術です。リペアとは言っても、器に付いた傷跡をなかった状態に戻すわけではありません。

割れてしまった傷跡を模様のようにして継いでいくのが、金継ぎの特徴でもありますよね。

人の作為では太刀打ちできない、偶然できた唯一無二の美しい傷跡を残しながら、もとの形に戻していく金継ぎは、不完全なものに美を感じる日本人ならではの素晴らしい文化だと思います。

割れた器を修理してまた使えるようにすることは、リユースの原点とも言えそうです。

割れた器を買い替えずに、わざわざ修理していきますからね。さらに、金で装飾を施していく。「捨てるのがもったいない」というだけでなく、その傷をなかったことにせず活かして使う、日本独特の美意識が昔からあったんだなと思います。

金は装飾に使い、漆で接着していくので「漆継ぎ」とも呼ばれる

持永さんの考える、金継ぎの魅力について教えてください。

まずひとつは、修理した器の傷跡を見ることで、「労りながら大切に使ってあげよう」という意識が芽生えるところです。もうひとつは、漆で直すことにより、安心して食事に使えるところですね。合成接着剤で器を接着すると、食事に使う器としては不安が残るかと思います。漆で直したあと、仕上げに「蒔絵」の技法を用いて金や銀、色漆で装飾することができるなど、無限のバリエーションがあるところも魅力です。

最近では金継ぎのワークショップなどがさまざまな場所で行われていて、その魅力が広まってきているように感じます。

金継ぎの技法は、昔は「高級な器」を修理するために使われていましたが、今はより身近な器を、自分のために直すことに使われていると感じます。たとえ数百円の器でも、それが大切な人からプレゼントされた器だったら、持ち主にとっては量ることができないほどの価値がある。ほかの人から「新品を買い直せばいいのに」と思われても、その人にとっては替えがきかないものなんです。そのような「想いがあって捨てられないもの」をリユースするために、金継ぎをしたいと思う方が増えているんだと思います。

「捨てない選択肢」のひとつとして金継ぎがあるんですね。

簡単に何でも手に入る時代だからこそ、気に入ったものを捨てずに使い続ける人が増えているのではないでしょうか。大切な洋服もほつれたら直しますよね。服や靴を修理に出すのと同じように、器を直して使うことは、自然な流れなのかもしれません。

ガラスの器も金継ぎで修理できる

大学時代は陶芸やガラス工芸を学ばれていたそうですが、どうして金継ぎをはじめようと思ったのでしょうか?

友人である、陶芸家の住田文生さんがつくった作品を割ってしまったことがきっかけです。陶芸を専攻していたので、割れてしまった陶器を合成接着剤で直すことはできましたが、漆で直す金継ぎはやったことがなかったんです。でも、住田さんのつくった器を割ってしまったときに「直したい」と思い、金継ぎを勉強しようと決心しました。

金継ぎをはじめるきっかけとなった器

持永さんのブログを拝見したのですが、2011年の東日本大震災の復興支援イベントへの参加が「モノ継ぎ」のはじまりだったそうですね。

そうなんです。尊敬する現代美術家の小宮伸二さんから「アーティストにできることで復興支援をしよう」と誘われたイベントに参加したことがきっかけです。そのときはまだ金継ぎの修行中だったのですが、「割れものの修理ならお手伝いできる」と思い、「モノ継ぎ」という名前で参加しました。

割れた器を直すだけではなく
持ち主の気持ちに寄り添う仕事

漆で接着してから傷跡にさらに漆を塗り、乾かないうちに金粉などで装飾する

これまでの依頼の中で、とくに印象深かったエピソードを教えてください。

「モノ継ぎ」を立ち上げたあとに両親を亡くしたのですが、そのとき、陶芸家の小川待子先生からの依頼に救われました。小川先生の作品が好きで、助手として陶芸教室のお手伝いをしていたこともあり、以前から交流はあったのですが、両親を亡くして呆然としているときに、小川先生からダンボールに入った大量の割れた器が送られてきて、「これを直してね」と依頼されたんです。それがなんだか、「あなた、頑張りなさいよ」と背中を押されているような気がして。とても励まされたことを覚えています。

金継ぎと向き合うことが、前に進むきっかけになったんですね。

むずかしい直しだったので自分の自信にもつながり、前向きな気持ちになりました。お電話で小川先生から、「あなたの仕事は、頼れるお医者さんみたいね」と言っていただいたことは、今でも忘れられません。それから、金継ぎは割れた器をただ直すだけではなく、依頼してくださる方の気持ちに寄り添う仕事なのだと感じるようになりました。ある男性から、10年前に娘さんが割ってしまった「湯呑み」の修理の依頼を受けたことがあるのですが、その方は、「パパの大事なものを割っちゃった」と悲しそうにしている娘さんの姿が忘れられず、割れた湯呑みを10年間捨てられなかったそうなんです。修理してお返ししたときに、「10年間の想いがやっと晴れました。大事に使わせていただきます」とご連絡をいただき、胸を打たれました。

たくさんの道具が並ぶ持永さんの作業場

娘さんの気持ちを気遣っての依頼だったんですね。

ほかにも、亡くなられたお母様が大事にしていた花器を割ってしまい、「どうしても捨てられない」と持ち込まれた方がいました。金継ぎを依頼される方は、その器に大切な人やものとの思い出など、いろいろな想いを持っていらっしゃるんです。

金継ぎをするときに持永さんが大切にしていることを教えてください。

自分の作為は入れずに、シンプルに器を「もとの美しい形」に直してあげることを意識しています。世界にひとつしかない割れ方と、器の持ち味や美しさを優先させるために、器に耳を傾けながらもとの状態へ修理することが大切かなと。

自分でカスタマイズすれば
リユースはもっと楽しめる

パーツの足りない器も、別のパーツを付け加えて修理できる

金継ぎのように壊れた器をリペアすることもそうですが、最近では不要なものを捨てずにリユースする選択肢が増えたような気がします。

そうですよね。世の中全体で、「捨てない」意識が高まっていることを感じています。実は我が家にもリユース品がたくさんあるんです。ただ、我が家ではリユース品をそのまま使うのではなく、使いやすいように修理するなどして、カスタマイズしながら使っています。たとえば、知人にもらった茶箱はテレビ台として再利用していますし、棚なども要らないものを自分たちでカスタマイズしてつくりました。

ご家族もリユース品をカスタマイズされるんですか?

そうなんです。我が家の中学2年生になる長男は、ジャンク品で動かない家庭用ゲーム機『セガサターン』を手に入れて、外側だけ取り外した「セガサターンマスク」という被れるマスクをつくっていました(笑)。「自分がほしいもの」へとカスタマイズすれば、楽しくリユースできますよね。しかも、そういった技術を身につけることで、リユース品を見る目が変わってくると思います。

カスタマイズする技術がなくて、リユースを諦めている人は多そうですよね。

「手先が器用ではないので」とか「漆を扱うとかぶれてしまう体質だから」という理由で私に金継ぎを依頼してくださる人もたくさんいらっしゃいます。器が壊れて使えなくなるということは、「器と人との間で共通に流れていた時間」が止まることだと思うんです。金継ぎは「捨てない選択肢」のひとつの手段と考えて、私の持っている技術によって、一度止まってしまった「モノとヒトとの時間」を再びよみがえらせるお手伝いができればと思っています。

持永さんはセカンドストリートを利用されているそうですが、きっかけを教えてください。

美大時代によく利用していた国分寺や国立にリユース品を扱うお店が立ち並んでいたので、私にとって骨董品や古着は昔から身近な存在ではあったんです。ある日友人が、「いいものがすごい値段で売っているよ」とセカンドストリートのことを教えてくれて。前からお店の存在は知っていたのですが、リユースショップっぽくはなかったので入ったことがなく、いざ入ってみたら友人の言うとおり、いいものが安い値段で売られていました。セカンドストリートは商品が見やすく、綺麗に陳列されているので、どこに何があるのかがわかりやすいですよね。古着屋さん独特の匂いやアンダーグラウンド的な音楽もなく(笑)、ふらっと立ち寄って買いものができるところもいいなと思っています。

「カスタマイズできる技術を身につければ、リユースはもっと楽しくなる」と話す持永さん。金継ぎ師という職業柄か、持永さんのライフタイルにはリユースが当たり前のように取り入れられていました。

リユース品を自分でカスタマイズすれば、さらに愛着が湧いてくるはず。衣類だけでなく、食器や雑貨、小物など、セカンドストリートではさまざまなリユース品を取り扱っています。たくさんの商品の中から掘り出しものを見つけて、「自分のほしいもの」にカスタマイズしてみるのも楽しいかもしれません。ぜひ一度、セカンドストリートのお店に足を運んでみてはいかがでしょうか?

文:流石香織 写真:疋田千里


INTERVIEW GUEST
  • モノ継ぎ
    持永 かおり(もちなが かおり)

    千葉県出身。多摩美術大学でガラス工芸と陶芸を学ぶ。2008年ごろより修理のための漆の勉強をはじめ、2011年の東日本大震災をきっかけにワレモノ修理プロジェクト「モノ継ぎ」を立ち上げる。陶器やガラスなど、年間で300〜400個もの器の修理を手がけており、その仕上げの美しさには定評がある。現在はホームページからの受注に加えて、2ヶ月に一度、<D&DEPARTMENT TOKYO>にて金継ぎの公開受付を行っている。著書に『繕うワザを磨く 金継ぎ上達レッスン』(メイツ出版)がある。
    https://www.monotsugi.com/

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